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不動産を売却した時に売却益の計算に必要になる減価償却

      2016/01/25

不動産を売却する時は、譲渡価額から取得費と譲渡費用などを差し引いた金額が売却益(譲渡所得)となります。

譲渡費用には、不動産の売却を行うまでにかかった特定の費用を含めることができます。

取得費には、売却を行った不動産の取得価額などを含めることができますが、売却を行うものによっては、そのままの取得価額を含めることはできません。

そのため、取得費を計算するためには、減価償却の知識が必要となります。

今回の記事では、この減価償却についてご説明致します。

目次

不動産の減価償却について

減価償却について知らないことが多い状態では、不動産の売却益を正しく計算することはできません。

やはり、想像をしていた売却益と売却を行った後の売却益に大きな違いが出てしまっては、後に後悔をしてしまうこともあります。

そういった事態を避けるためにも、減価償却についての知識は重要となりますので、不動産を売却する前に一度確認をしておくほうが無難かもしれません。

それでは、まず不動産と減価償却の関係性についてご説明致します。

不動産と減価償却の関係性

取得をした不動産の中には、年数が経つにつれて価値が下がってしまうものがあります。

不動産の下がってしまった分の価値は、毎年減価償却費として「損金」や「必要経費」に算入をすることが可能で、これを減価償却と言います。

「損金」と「必要経費」はどちらも所得金額を計算する時に必要となり、法人は「益金-損金」を計算することで所得金額が求められ、個人事業は「総収入金額-必要経費」で所得金額を求められます。

そのため、法人は「損金」に、個人事業は「必要経費」に減価償却費を算入することになります。

当期に「損金」や「必要経費」に算入をできる減価償却費の限度額を「償却限度額」と言い、定められている計算をすることで求めることができ、この金額をもとに毎年減価償却を行います。

減価償却を行うと、帳簿上の価値が下がっていき、まだ償却を行っていない残高を「未償却残高」と言います。

法人は法人税法によって「任意償却」と定められており、赤字の時に減価償却を行わなくてもよく、次期以降に繰り延べることができます。

償却限度額に満たない減価償却費の計上を行うことも可能で、減価償却を行った分だけ未償却残高が減っていきます。

1年の償却限度額に小数点以下の端数がある場合、法人は「切り捨て」とされていることが多いようです。

個人事業は所得税法によって「強制償却」と定められており、赤字の時も償却限度額分を減価償却費として「必要経費」に計上する必要があります。

法人とは異なり、例え減価償却費を「必要経費」に計上をしなかった年でも、未償却残高が減ってしまいます。

1年の償却限度額に小数点以下の端数がある場合、個人事業は「切り上げ」とされていることが多いようです。

また、個人事業主の方などが建物を貸付している場合は、所得税法の規定により、規模によって「事業用」と「業務用」の建物に区分をされます。

建物の貸付が事業的規模かどうかにつきましては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模かどうかにより判定をされます。

「5棟10室基準」というものがあり、「アパートで10室」、「独立の貸家なら5棟以上」を満たしていれば、「事業」と判定をされ、使用中の建物は「事業用建物」となります。
(「5棟10室基準」を満たしていなくても、相当の対価を得ており、貸付期間などが相当期間継続して行われていれば、「事業」と判定をされることもあるようです。)

上記の規模を満たしていない時は「業務」と判定をされ、使用中の建物は「業務用建物」となります。

事業用建物と業務用建物は、「必要経費」に算入をできる費用の種類や控除に違いはありますが、減価償却費は共通ですので、減価償却という場面ではそこまで意識をする必要はありません。

なお、減価償却費として「損金」や「必要経費」に算入ができるのは、法人や個人事業などで使用中の事業用、業務用の不動産だけとなります。

自宅やセカンドハウスのような非事業用、非業務用の不動産は、減価償却を行わず、減価償却費を「損金」や「必要経費」に算入することはできません。

また、不動産の中でも土地は劣化をするものではありませんので、例え事業用、業務用に使用をしていても減価償却は行いません。

当然に、こちらも減価償却費を「損金」や「必要経費」に算入することはできませんので、ご注意ください。

以上が、不動産と減価償却の関係性についてとなります。

次は、売却益と税金との関係性についてご説明致します。

売却益と税金との関係性

一見、こう見ると減価償却は不動産の売却には関係がなさそうですが、実は売却益の算出をする時にこの減価償却が必要になってきます。

不動産の売却益は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で算出をすることができ、この取得費を求める時に減価償却が必要になります。

不動産の取得価額は取得費に含めることができますが、売却を行う不動産が減価償却資産であれば、失った価値分の金額を差し引いてから取得費に含めなくてはいけません。

不動産の中では建物が減価償却資産に分類をされ、使用をした年月に応じて取得価額から失った価値分の金額を差し引く必要があります。

土地は劣化をするものではありませんので、減価償却は行わず、取得価額をそのまま取得費に含めます。

建物の取得費は、「建物の取得価額(建物の購入金額などの合計額)-減価償却費相当額(減価償却費の累計額)」で求めることができます。

そのため、減価償却費相当額が多ければ、その分取得費が少なくなりますので、最終的な売却益自体は出やすくなると言えます。

売却益が多ければ多いほどいいと思われがちですが、実は一概にそうとは言い切れません。

なぜ、そのようなことが言えるのかというと、5年前に購入をした取得価額が「3,000万円(土地+建物)」の不動産を、同額の「3,000万円」で売却できた場合を例にしてご説明致します。

購入をした「3,000万円」の不動産は、土地の取得価額は「1,200万円」、建物の取得価額は「1,800万円」と仮定をします。

土地は減価償却を行わなくてもいいため、取得価額をそのまま取得費に含めることができます。

建物は劣化をするものですので、取得価額から経過をした年月分の減価償却費を差し引いてから、取得費に含めます。

これを踏まえて売却益を求める式に直しますと、「売却益=3,000万円-{(1,800万円-減価償却費相当額+1,200万円+その他に計上ができる取得費)+譲渡所得費用}-特別控除」となります。

上記の式から、その他の費用や控除金額が減価償却費相当額よりも少なければ、その分売却益が出てしまうと分かります。

今回は、取得価額が「3,000万円」の不動産を「3,000万円」で売却を行ったため、実質的な利益は「0円」です。

それなのに、減価償却費相当額を差し引いたために売却益が発生をしてしまった場合は、その分の税金がかかってしまいます。

これが、一概に売却益が多ければ多いほどにいいと言い切れない理由です。

よく、減価償却は税金の節約に効果があると聞きますが、これは建物を事業用や業務用などで利用をしている場合の話です。

建物を売却する時には、減価償却費相当額を取得費から差し引くため、税金の節約をすることはできません。

今まで事業や業務に使っており、減価償却費を「損金」や「必要経費」に計上をしてきた建物を売却する時にも注意が必要です。

当然に、今まで減価償却費分を「損金」や「必要経費」に計上をしていた建物も、先程の例のように利益がないのに売却益が発生をしてしまえば、その分の税金がかかります。

せっかく今まで税金の節約をできていても、売却によって無駄な税金がかかってしまえば、減価償却による効果が薄れてしまいます。

以上が、売却益と税金との関係性についてとなります。

次は、減価償却後の価値と簿価の関係性についてご説明致します。

減価償却後の価値と簿価の関係性

減価償却について調べていると、よく「簿価」という言葉を見かけます。

「簿価」とは帳簿価額の略称であり、帳簿上の価値のことを指します。

前期末帳簿価額のことを「期首帳簿価額」、決算後の帳簿価額のことを「期末帳簿価額」と言い、一般的には「期首帳簿価額」のほうを「簿価」と言います。

「簿価」は、「資産の取得価額(資産の購入金額などの合計額)-減価償却費相当額(減価償却費の累計額)」で求めることができます。

こういった関係性があるため、減価償却について調べている時は、「簿価」という言葉を見かけやすいのです。

自宅などの非事業用、非業務用建物は減価償却を行いませんが、事業用、業務用建物は減価償却を行っていることが殆どです。

「建物の簿価」も上記の式で求めることができ、既に減価償却後の場合は、既に「建物の簿価」が計算をされていることになります。

減価償却後の金額が「建物の簿価」となりますので、「建物の簿価=建物の取得費」と考えられ、「建物の簿価」を既にご存知の時には売却前に減価償却費相当額を計算する必要はありません。

また、「建物の未償却残高」も「建物の簿価」と同様に、「建物の取得価額(建物の購入金額などの合計額)-減価償却費相当額(減価償却費の累計額)」で求めることができます。

そのため、「建物の簿価=建物の未償却残高」となり、「建物の未償却残高」を既にご存知の時にも、売却前に減価償却費相当額を計算する必要はありません。

以上が、減価償却後の価値と簿価の関係性についてとなります。

今度は、減価償却費を計算するために必要になる建物の「耐用年数」と「償却率」についてご説明致します。

耐用年数と償却率を知る方法

減価償却費を計算するには、まずご自身が所有をしていらっしゃる建物の「耐用年数」と「償却率」を知る必要があります。

「耐用年数」は減価償却資産を利用できる年数のことで、この年数を基準に定められているものが「償却率」となります。

建物の耐用年数と償却率は、計算などを行うことで求めることができますので、ご存知ない方はご自身で算出を行うことが可能です。

新築の建物」と「中古の建物」では、耐用年数と償却率の求め方が異なりますので、この点にはご注意ください。

それでは、まず売却をする建物が新築の場合の法定耐用年数と償却率の求め方についてご説明致します。

新築の建物の耐用年数と償却率

新築の場合は、建物の構造・用途などによって定められている法定耐用年数をそのまま適用することができます。

償却率も法定耐用年数に応じたものを使用しますので、ご自身が所有をしていらっしゃる建物の構造・用途などを既にご存知であれば、比較的簡単に求めることが可能です。

下記の表に、各建物の法定耐用年数と償却率をまとめてありますので、参考にしてください。

平成10年4月1日以後に取得をした建物は、「旧定額法」もしくは「定額法」で減価償却費を計算する必要があります。

そのため、下記の表には、現在選択をする可能性の高い「旧定額法」と「定額法」の償却率を記載しております。

建物を「平成19年3月31日以前に取得をした場合」は旧定額法の償却率、「平成19年4月1日以後に取得をした場合」は定額法の償却率が必要になります。

それでは、まず平成19年3月31日以前に取得をした場合の法定耐用年数と旧定額法の償却率からご紹介致します。

建物の法定耐用年数と旧定額法の償却率
(平成19年3月31日以前に取得)
構造・用途 細目 法定
耐用年数
旧定額法
償却率
木造のもの
合成樹脂造のもの
事務所用のもの 24 0.042
店舗用・住宅用のもの 22 0.046
飲食店用のもの 20 0.050
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの 17 0.058
公衆浴場用のもの 12 0.083
工場用・倉庫用のもの 15 0.066
木骨モルタル造のもの 事務所用のもの 22 0.046
店舗用・住宅用のもの 20 0.050
飲食店用のもの 19 0.052
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの 15 0.066
公衆浴場用のもの 11 0.090
工場用・倉庫用のもの 14 0.071
鉄骨鉄筋コンクリート造のもの
鉄筋コンクリート造のもの
事務所用のもの 50 0.020
住宅用のもの 47 0.022






延面積のうちに占める
木造内装部分の面積が
30%を超えるもの
34 0.030
その他のもの 41 0.025










延面積のうちに占める
木造内装部分の面積が
30%を超えるもの
31 0.033
その他のもの 39 0.026
店舗用・病院用のもの 39 0.026
車庫用のもの 38 0.027
公衆浴場用のもの 31 0.033
工場用・倉庫用のもの 38 0.027
れんが造のもの
石造のもの
ブロック造のもの
事務所用のもの 41 0.025
店舗用・住宅用・飲食店用のもの 38 0.027
旅館用・ホテル用・病院用のもの 36 0.028
車庫用のもの 34 0.030
公衆浴場用のもの 30 0.034
工場用・倉庫用のもの 34 0.030
金属造のもの





骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
38 0.027
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
30 0.034
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
22 0.046









骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
34 0.030
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
27 0.037
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
19 0.052










骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
31 0.033
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
25 0.040
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
19 0.052














骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
29 0.035
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
24 0.042
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
17 0.058







骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
27 0.037
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
19 0.052
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
15 0.066









骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
31 0.033
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
24 0.042
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
17 0.058

以上が、平成19年3月31日以前に取得をした場合の法定耐用年数と旧定額法の償却率となります。

次は、平成19年4月1日以後に取得をした場合の法定耐用年数と定額法の償却率をご紹介致します。

建物の法定耐用年数と定額法の償却率
(平成19年4月1日以後に取得)
構造・用途 細目 法定
耐用年数
定額法
償却率
木造のもの
合成樹脂造のもの
事務所用のもの 24 0.042
店舗用・住宅用のもの 22 0.046
飲食店用のもの 20 0.050
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの 17 0.059
公衆浴場用のもの 12 0.084
工場用・倉庫用のもの 15 0.067
木骨モルタル造のもの 事務所用のもの 22 0.046
店舗用・住宅用のもの 20 0.050
飲食店用のもの 19 0.053
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの 15 0.067
公衆浴場用のもの 11 0.091
工場用・倉庫用のもの 14 0.072
鉄骨鉄筋コンクリート造のもの
鉄筋コンクリート造のもの
事務所用のもの 50 0.020
住宅用のもの 47 0.022






延面積のうちに占める
木造内装部分の面積が
30%を超えるもの
34 0.030
その他のもの 41 0.025










延面積のうちに占める
木造内装部分の面積が
30%を超えるもの
31 0.033
その他のもの 39 0.026
店舗用・病院用のもの 39 0.026
車庫用のもの 38 0.027
公衆浴場用のもの 31 0.033
工場用・倉庫用のもの 38 0.027
れんが造のもの
石造のもの
ブロック造のもの
事務所用のもの 41 0.025
店舗用・住宅用・飲食店用のもの 38 0.027
旅館用・ホテル用・病院用のもの 36 0.028
車庫用のもの 34 0.030
公衆浴場用のもの 30 0.034
工場用・倉庫用のもの 34 0.030
金属造のもの





骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
38 0.027
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
30 0.034
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
22 0.046









骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
34 0.030
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
27 0.038
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
19 0.053










骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
31 0.033
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
25 0.040
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
19 0.053














骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
29 0.035
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
24 0.042
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
17 0.059







骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
27 0.038
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
19 0.053
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
15 0.067









骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
31 0.033
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
24 0.042
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
17 0.059

以上が、平成19年4月1日以後に取得をした場合の法定耐用年数と定額法の償却率となります。

平成24年度税制改正により、一部の償却率が変更をされましたが、定額法の償却率は変更をされていません。

そのため、平成24年4月1日以後に取得をした建物も、「建物の法定耐用年数と定額法の償却率(平成19年4月1日以後に取得)」の償却率を適用してください。

1つ注意事項があるのですが、上記の2つの表の法定耐用年数と償却率は、建物を事業や業務に使用をする場合のものとなっております。

非事業用、非業務用建物は事業用、業務用建物よりも劣化が少ないと考えられているため、上記の法定耐用年数を1.5倍(端数は切り捨て)にした年数が適用をされます。

下記の表に、非事業用、非業務用建物の法定耐用年数などをまとめてありますので、参考にしてください。

なお、非事業用、非業務用建物は多くの場合が「住宅用」であり、減価償却費相当額を計算する時には取得年月日に関係なく「旧定額法」を選択します。

そのため、下記の表の法定耐用年数は事業用、業務用建物の「住宅用」を基準に作成しており、償却率は「旧定額法」のものを記載しております。

非事業用、非業務用建物の建物の耐用年数
構造
用途
法定
耐用年数
(事業用
業務用)
法定
耐用年数
(非事業用
非業務用)
旧定額法
償却率
(非事業用
非業務用)
木造のもの
合成樹脂造のもの
22 33 0.031
木骨モルタル造のもの 20 30 0.034
鉄骨鉄筋コンクリート造のもの
鉄筋コンクリート造のもの
47 70 0.015
れんが造のもの
石造のもの
ブロック造のもの
38 57 0.018
金属造のもの 骨格材の肉厚が、
4mmを超えるもの
34 51 0.020
骨格材の肉厚が、
3mmを超え、4mm以下のもの
27 40 0.025
骨格材の肉厚が、
3mm以下のもの
19 28 0.036

万が一、平成10年3月31日以前に取得をした建物で「旧定率法」を選択する場合は、お手数ですが「中古の建物の償却率の求め方」にあります「建物の償却率表(平成19年3月31日以前に取得)」にて償却率をご確認ください。

ご自身が所有をしていらっしゃる建物の法定耐用年数と同じ年数の償却率を見ればいいだけですので、比較的簡単に旧定率法の償却率も知ることができます。

例えば、木造の住宅を事業用や業務用に使用する場合は、法定耐用年数が「22年」ですので、年数が「22年」の欄の「0.099」が旧定率法の償却率となります。

非事業用、非業務用建物は「旧定額法」以外は選択をしませんので、旧定率法の償却率が必要になることはありません。

以上が、売却をする建物が新築の場合の法定耐用年数と償却率の求め方についてとなります。

次は、売却をする建物が中古の場合の耐用年数と償却率の求め方についてご説明致します。

なお、建物が中古の場合は、少し耐用年数と償却率の求め方が複雑になりますので、まず耐用年数の求め方からご説明致します。

中古の建物の耐用年数の求め方

中古で購入をした建物は、新築よりも価値が下がっているため、耐用年数が短くなります。

そのため、中古の建物は新築の法定耐用年数を適用せずに、使用可能期間を見積もって、その年数を耐用年数とすることができます。
(非事業用、非業務用建物は中古であっても、新築の時と同じ法定耐用年数を使って減価償却費相当額を計算します。)

使用可能期間を見積もる時には、「見積法」と「簡便法」の2つの方法から選択をすることが可能です。

「見積法」は中古の建物を事業や業務の用に供した日以後の使用可能期間の年数を耐用年数にする方法で、使用可能期間の見積もりが可能である時に選択をします。

「簡便法」は計算によって耐用年数を求める方法で、使用可能期間の見積もりが困難であるという時に選択をします。

使用可能期間の見積もりは困難であることが多いため、一般的には「簡便法」を選択して耐用年数を求めることが多いようです。

「簡便法」の計算方法は、下記の通りとなります。

  1. 築年数が法定耐用年数を経過している場合
    「法定耐用年数×20%」
  2. 築年数が法定耐用年数の一部を経過している場合
    「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」
  3. 中古の建物に改良などを行い、その改良費が取得価額の「50%」を超える場合
    「(中古の建物の取得価額+改良費などの額)÷(中古の建物の取得価額÷中古の建物の簡便法による耐用年数+改良費などの額÷法定耐用年数)」
  4. 中古の建物に改良などを行い、その改良費が再取得価額の「50%」を超える場合
    「新築と同様の法定耐用年数を適用」

計算をして1年未満の端数がある場合は、その端数を切り捨て、計算結果が「2年」に満たない場合は耐用年数を「2年」とします。

また、上記の改良費とは「資本的支出」に当たる金額のことであり、その他の費用は改良費に含めませんのでご注意ください。

「資本的支出」とは、建物自体の価値を高めたり、使用期間を延長させたりするような改良にかけた費用のことです。

建物を改良しても、改良費が取得価額の「50%」を超えなければ、「1」か「2」の計算方法で耐用年数を求めます。

以上が、中古の建物の耐用年数の求め方についてとなります。

次は、中古の建物の耐用年数の計算例をご紹介致します。

中古の建物の耐用年数の計算例

それでは、先程の計算方法を踏まえて、中古の建物の耐用年数を計算してみます。

「見積法」は特別な計算などは必要ありませんので、この場では「簡便法」を使用して中古の建物の耐用年数を求めます。

耐用年数を計算するのは、中古の木造の住宅用の建物で、法定耐用年数は「22年」と仮定をします。

まず、改良などを行っていない中古の建物で、築年数が法定耐用年数を経過している場合と、築年数が「3年」と「5年3ヶ月」を経過している場合の計算例をご紹介致します。

これらの条件で耐用年数の計算を行いますと、下記の表の通りとなります。

「簡便法」による耐用年数の計算例
(改良をしていない場合)
築年数 計算方法 耐用年数
法定耐用年数を経過 22年×0.2=4.4年 4年
「3年」を経過 (22年-3年)+3年×0.2=19.6年 19年
「5年3ヶ月」を経過 (264ヶ月-63ヶ月)+63ヶ月×0.2=213.6ヶ月
213.6ヶ月÷12ヶ月=17.8年
17年

築年数が法定耐用年数を経過している場合は、「法定耐用年数×20%」を用いて耐用年数を求めます。

築年数が「3年」の場合は、「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」を用いて耐用年数を求めます。

築年数が「5年3ヶ月」の場合も築年数が「3年」の時と根本的な計算方法は同じですが、こちらは築年数に1年未満の端数があります。

そのため、築年数が「5年3ヶ月」の場合は、まず法定耐用年数と築年数を月数に直してから計算を行います。

法定耐用年数「22年」を月数に直しますと「12ヶ月×22=264ヶ月」となり、築年数「5年3ヶ月」を月数に直しますと「12ヶ月×5+3ヶ月=63ヶ月」となります。

これらの月数を踏まえて計算を行いますと、上記の表のような計算式となり、まず耐用年数が月数で算出をされます。

1年は12ヶ月ですので、後は算出を行った月数を12で除し、年数を計算すれば耐用年数を求められます。

また、今回は法定耐用年数と築年数を月数に直して計算を行いましたが、求めた築年数の月数を年数に直してから計算をすることもできます。

その場合は、まず築年数のみを月数に直しますが、今回、築年数の月数は「63ヶ月」と既に算出ができているためこちらを使用し、次は算出を行った月数を年数に直します。

「63ヶ月」を年数に直しますと、「63ヶ月÷12=5.25年」となります。

これを式に当てはめて計算を行いますと「(22年-5.25年)+5.25年×0.2=17.8年」となり、表と同じく耐用年数は「17年」と算出ができます。

このようにして、築年数に1年未満の端数がある場合は、計算を行っていきます。

以上で、改良などを行っていない中古の建物の耐用年数を全て求めることができました。

次は、改良などを行った中古の建物で、改良費が「1,000万円」の場合と、改良費が「1,800万円」の場合の計算例をご紹介致します。

中古の建物の取得価額は「1,000万円」、再取得価額は「3,000万円」、築年数は「3年」で耐用年数は先程算出を行いました「19年」という設定のもとで計算をしております。

これらの条件で耐用年数の計算を行いますと、下記の表の通りとなります。

「簡便法」による耐用年数の計算例
(改良をした場合)
改良費 計算方法 耐用年数
1,000万円 (1,000万円+1,000万円)÷(1,000万円÷19年+1,000万円÷22年)=20.3…年 20年
1,800万円 再取得価額の「50%」を超えているため、法定耐用年数を適用 22年

改良費が「1,000万円」の場合は、改良費が建物の取得価額の「50%」相当額を超えていることになります。

そのため、こちらは「(中古の建物の取得価額+改良費などの額)÷(中古の建物の取得価額÷中古の建物の簡便法による耐用年数+改良費などの額÷法定耐用年数)」を用いて耐用年数を求めます。

設定上の取得価額や改良費、耐用年数などを当てはめて計算を行いますと、上記の表の通りとなります。

改良費が「1,800万円」の場合は、改良費が建物の再取得価額の「50%」相当額を超えているため、法定耐用年数である「22年」が耐用年数となります。

以上が、中古の建物の耐用年数の計算例となります。

次は、求めた耐用年数をもとに、償却率の求め方についてご説明致します。

中古の建物の償却率の求め方

それでは、「中古の建物の耐用年数の計算例」にて算出を行いました耐用年数をもとに、今度は償却率を求めていきます。

中古の建物は、求めた耐用年数に応じた償却率を調べることで、適用をする償却率を求めることができます。

中古の建物も新築の建物と同様に、平成10年4月1日以後に取得をしたものは「旧定額法」もしくは「定額法」で減価償却費の計算を行います。

そのため、今回も主に必要になるのは、「旧定額法」と「定額法」の償却率です。

平成19年3月31日以前に取得をした建物は「旧定額法」、平成19年4月1日以後に取得をした建物は「定額法」の償却率を適用するという点も新築の建物と同様です。

下記に、「平成19年3月31日以前に取得をした場合」、「平成19年4月1日以後に取得をした場合」、「平成24年4月1日以後に取得をした場合」の償却率をまとめてありますので、参考にしてください。

それでは、まず平成19年3月31日以前に取得をした場合の償却率からご紹介致します。

なお、平成19年3月31日以前に取得をした場合ですので、こちらは「旧定額法」と「旧定率法」の償却率を記載しております。

建物の償却率表(平成19年3月31日以前に取得)
平成19年3月31日以前に取得
耐用年数 旧定額法
償却率
旧定率法
償却率
2 0.500 0.684
3 0.333 0.536
4 0.250 0.438
5 0.200 0.369
6 0.166 0.319
7 0.142 0.280
8 0.125 0.250
9 0.111 0.226
10 0.100 0.206
11 0.090 0.189
12 0.083 0.175
13 0.076 0.162
14 0.071 0.152
15 0.066 0.142
16 0.062 0.134
17 0.058 0.127
18 0.055 0.120
19 0.052 0.114
20 0.050 0.109
21 0.048 0.104
22 0.046 0.099
23 0.044 0.095
24 0.042 0.092
25 0.040 0.088
26 0.039 0.085
27 0.037 0.082
28 0.036 0.079
29 0.035 0.076
30 0.034 0.074
31 0.033 0.072
32 0.032 0.069
33 0.031 0.067
34 0.030 0.066
35 0.029 0.064
36 0.028 0.062
37 0.027 0.060
38 0.027 0.059
39 0.026 0.057
40 0.025 0.056
41 0.025 0.055
42 0.024 0.053
43 0.024 0.052
44 0.023 0.051
45 0.023 0.050
46 0.022 0.049
47 0.022 0.048
48 0.021 0.047
49 0.021 0.046
50 0.020 0.045
51 0.020 0.044
52 0.020 0.043
53 0.019 0.043
54 0.019 0.042
55 0.019 0.041
56 0.018 0.040
57 0.018 0.040
58 0.018 0.039
59 0.017 0.038
60 0.017 0.038
61 0.017 0.037
62 0.017 0.036
63 0.016 0.036
64 0.016 0.035
65 0.016 0.035
66 0.016 0.034
67 0.015 0.034
68 0.015 0.033
69 0.015 0.033
70 0.015 0.032
71 0.014 0.032
72 0.014 0.032
73 0.014 0.031
74 0.014 0.031
75 0.014 0.030
76 0.014 0.030
77 0.013 0.030
78 0.013 0.029
79 0.013 0.029
80 0.013 0.028
81 0.013 0.028
82 0.013 0.028
83 0.012 0.027
84 0.012 0.027
85 0.012 0.026
86 0.012 0.026
87 0.012 0.026
88 0.012 0.026
89 0.012 0.026
90 0.012 0.025
91 0.011 0.025
92 0.011 0.025
93 0.011 0.025
94 0.011 0.024
95 0.011 0.024
96 0.011 0.024
97 0.011 0.023
98 0.011 0.023
99 0.011 0.023
100 0.010 0.023

以上が、平成19年3月31日以前に取得をした場合の償却率となります。

次は、平成19年4月1日以後に取得をした場合の償却率をご紹介致します。

なお、平成19年4月1日以後に取得をした場合ですので、こちらは「定額法」と「定率法」の償却率を記載しております。

建物の償却率表(平成19年4月1日以後に取得)
平成19年4月1日以後に取得
耐用年数 定額法
償却率
定率法
償却率 改定
償却率
保証率
2 0.500 1.000
3 0.334 0.833 1.000 0.02789
4 0.250 0.625 1.000 0.05274
5 0.200 0.500 1.000 0.06249
6 0.167 0.417 0.500 0.05776
7 0.143 0.357 0.500 0.05496
8 0.125 0.313 0.334 0.05111
9 0.112 0.278 0.334 0.04731
10 0.100 0.250 0.334 0.04448
11 0.091 0.227 0.250 0.04123
12 0.084 0.208 0.250 0.03870
13 0.077 0.192 0.200 0.03633
14 0.072 0.179 0.200 0.03389
15 0.067 0.167 0.200 0.03217
16 0.063 0.156 0.167 0.03063
17 0.059 0.147 0.167 0.02905
18 0.056 0.139 0.143 0.02757
19 0.053 0.132 0.143 0.02616
20 0.050 0.125 0.143 0.02517
21 0.048 0.119 0.125 0.02408
22 0.046 0.114 0.125 0.02296
23 0.044 0.109 0.112 0.02226
24 0.042 0.104 0.112 0.02157
25 0.040 0.100 0.112 0.02058
26 0.039 0.096 0.100 0.01989
27 0.038 0.093 0.100 0.01902
28 0.036 0.089 0.091 0.01866
29 0.035 0.086 0.091 0.01803
30 0.034 0.083 0.084 0.01766
31 0.033 0.081 0.084 0.01688
32 0.032 0.078 0.084 0.01655
33 0.031 0.076 0.077 0.01585
34 0.030 0.074 0.077 0.01532
35 0.029 0.071 0.072 0.01532
36 0.028 0.069 0.072 0.01494
37 0.028 0.068 0.072 0.01425
38 0.027 0.066 0.067 0.01393
39 0.026 0.064 0.067 0.01370
40 0.025 0.063 0.067 0.01317
41 0.025 0.061 0.063 0.01306
42 0.024 0.060 0.063 0.01261
43 0.024 0.058 0.059 0.01248
44 0.023 0.057 0.059 0.01210
45 0.023 0.056 0.059 0.01175
46 0.022 0.054 0.056 0.01175
47 0.022 0.053 0.056 0.01153
48 0.021 0.052 0.053 0.01126
49 0.021 0.051 0.053 0.01102
50 0.020 0.050 0.053 0.01072
51 0.020 0.049 0.050 0.01053
52 0.020 0.048 0.050 0.01036
53 0.019 0.047 0.048 0.01028
54 0.019 0.046 0.048 0.01015
55 0.019 0.045 0.046 0.01007
56 0.018 0.045 0.046 0.00961
57 0.018 0.044 0.046 0.00952
58 0.018 0.043 0.044 0.00945
59 0.017 0.042 0.044 0.00934
60 0.017 0.042 0.044 0.00895
61 0.017 0.041 0.042 0.00892
62 0.017 0.040 0.042 0.00882
63 0.016 0.040 0.042 0.00847
64 0.016 0.039 0.040 0.00847
65 0.016 0.038 0.039 0.00847
66 0.016 0.038 0.039 0.00828
67 0.015 0.037 0.038 0.00828
68 0.015 0.037 0.038 0.00810
69 0.015 0.036 0.038 0.00800
70 0.015 0.036 0.038 0.00771
71 0.015 0.035 0.036 0.00771
72 0.014 0.035 0.036 0.00751
73 0.014 0.034 0.035 0.00751
74 0.014 0.034 0.035 0.00738
75 0.014 0.033 0.034 0.00738
76 0.014 0.033 0.034 0.00726
77 0.013 0.032 0.033 0.00726
78 0.013 0.032 0.033 0.00716
79 0.013 0.032 0.033 0.00693
80 0.013 0.031 0.032 0.00693
81 0.013 0.031 0.032 0.00683
82 0.013 0.030 0.031 0.00683
83 0.013 0.030 0.031 0.00673
84 0.012 0.030 0.031 0.00653
85 0.012 0.029 0.030 0.00653
86 0.012 0.029 0.030 0.00645
87 0.012 0.029 0.030 0.00627
88 0.012 0.028 0.029 0.00627
89 0.012 0.028 0.029 0.00620
90 0.012 0.028 0.029 0.00603
91 0.011 0.027 0.027 0.00649
92 0.011 0.027 0.027 0.00632
93 0.011 0.027 0.027 0.00615
94 0.011 0.027 0.027 0.00598
95 0.011 0.026 0.027 0.00594
96 0.011 0.026 0.027 0.00578
97 0.011 0.026 0.027 0.00563
98 0.011 0.026 0.027 0.00549
99 0.011 0.025 0.026 0.00549
100 0.010 0.025 0.026 0.00546

以上が、平成19年4月1日以後に取得をした場合の償却率となります。

最後は、平成24年4月1日以後に取得をした場合の定率法の償却率をご紹介致します。

定額法の償却率は、「建物の償却率表(平成19年4月1日以後に取得)」と同じです。

建物を減価償却する時は、「定率法」を選択することはできませんが、その他の減価償却資産を償却したいという時には参考にしてください。

建物の償却率表(平成24年4月1日以後に取得)
平成24年4月1日以後に取得
耐用年数 定率法
償却率 改定償却率 保証率
2 1.000
3 0.667 1.000 0.11089
4 0.500 1.000 0.12499
5 0.400 0.500 0.10800
6 0.333 0.334 0.09911
7 0.286 0.334 0.08680
8 0.250 0.334 0.07909
9 0.222 0.250 0.07126
10 0.200 0.250 0.06552
11 0.182 0.200 0.05992
12 0.167 0.200 0.05566
13 0.154 0.167 0.05180
14 0.143 0.167 0.04854
15 0.133 0.143 0.04565
16 0.125 0.143 0.04294
17 0.118 0.125 0.04038
18 0.111 0.112 0.03884
19 0.105 0.112 0.03693
20 0.100 0.112 0.03486
21 0.095 0.100 0.03335
22 0.091 0.100 0.03182
23 0.087 0.091 0.03052
24 0.083 0.084 0.02969
25 0.080 0.084 0.02841
26 0.077 0.084 0.02716
27 0.074 0.077 0.02624
28 0.071 0.072 0.02568
29 0.069 0.072 0.02463
30 0.067 0.072 0.02366
31 0.065 0.067 0.02286
32 0.063 0.067 0.02216
33 0.061 0.063 0.02161
34 0.059 0.063 0.02097
35 0.057 0.059 0.02051
36 0.056 0.059 0.01974
37 0.054 0.056 0.01950
38 0.053 0.056 0.01882
39 0.051 0.053 0.01860
40 0.050 0.053 0.01791
41 0.049 0.050 0.01741
42 0.048 0.050 0.01694
43 0.047 0.048 0.01664
44 0.045 0.046 0.01664
45 0.044 0.046 0.01634
46 0.043 0.044 0.01601
47 0.043 0.044 0.01532
48 0.042 0.044 0.01499
49 0.041 0.042 0.01475
50 0.040 0.042 0.01440
51 0.039 0.040 0.01422
52 0.038 0.039 0.01422
53 0.038 0.039 0.01370
54 0.037 0.038 0.01370
55 0.036 0.038 0.01337
56 0.036 0.038 0.01288
57 0.035 0.036 0.01281
58 0.034 0.035 0.01281
59 0.034 0.035 0.01240
60 0.033 0.034 0.01240
61 0.033 0.034 0.01201
62 0.032 0.033 0.01201
63 0.032 0.033 0.01165
64 0.031 0.032 0.01165
65 0.031 0.032 0.01130
66 0.030 0.031 0.01130
67 0.030 0.031 0.01097
68 0.029 0.030 0.01097
69 0.029 0.030 0.01065
70 0.029 0.030 0.01034
71 0.028 0.029 0.01034
72 0.028 0.029 0.01006
73 0.027 0.027 0.01063
74 0.027 0.027 0.01035
75 0.027 0.027 0.01007
76 0.026 0.027 0.00980
77 0.026 0.027 0.00954
78 0.026 0.027 0.00929
79 0.025 0.026 0.00929
80 0.025 0.026 0.00907
81 0.025 0.026 0.00884
82 0.024 0.024 0.00929
83 0.024 0.024 0.00907
84 0.024 0.024 0.00885
85 0.024 0.024 0.00864
86 0.023 0.023 0.00885
87 0.023 0.023 0.00864
88 0.023 0.023 0.00844
89 0.022 0.022 0.00863
90 0.022 0.022 0.00844
91 0.022 0.022 0.00825
92 0.022 0.022 0.00807
93 0.022 0.022 0.00790
94 0.021 0.021 0.00807
95 0.021 0.021 0.00790
96 0.021 0.021 0.00773
97 0.021 0.021 0.00757
98 0.020 0.020 0.00773
99 0.020 0.020 0.00757
100 0.020 0.020 0.00742

以上が、平成24年4月1日以後に取得をした場合の定率法の償却率となります。

それでは、これらの表をもとにして、「中古の建物の耐用年数の計算例」にて算出を行いました耐用年数の償却率を調べていきます。

求めた耐用年数と同じ耐用年数の償却率を適用しますので、複雑な計算などは必要ありません。

上記の表から、「中古の建物の耐用年数の計算例」にて算出を行いました耐用年数の償却率は、下記の通りとなります。

  • 築年数が法定耐用年数を経過している場合
    耐用年数は「4年」…旧定額法の償却率「0.250」、定額法の償却率「0.250」
  • 築年数が「3年」を経過している場合
    耐用年数は「19年」…旧定額法の償却率「0.052」、定額法の償却率「0.053」
  • 経過年数が「5年3ヶ月」を経過している場合
    耐用年数は「17年」…旧定額法の償却率「0.058」、定額法の償却率「0.059」
  • 中古の建物に改良などを行い、改良費が「1,000万円」の場合
    耐用年数は「20年」…旧定額法の償却率「0.050」、定額法の償却率「0.050」
  • 中古の建物に改良などを行い、改良費が「1,800万円」の場合
    耐用年数は「22年」…旧定額法の償却率「0.046」、定額法の償却率「0.046」

減価償却費を計算する時に「旧定額法」を選択した場合は旧定額法の償却率を、「定額法」を選択した場合は定額法の償却率を適用します。

平成10年3月31日以前に取得をした建物で「旧定率法」を選択する場合も、求めた耐用年数と同じ耐用年数の償却率を適用します。

以上が、中古の建物の償却率の求め方となります。

ご自身の建物の耐用年数と償却率が求められましたら、次は減価償却費の計算を行う前に、選択をできる償却方法を知っておかなくてはいけません。

建物の場合、選択をできる償却方法は限られており、ご自身で選定をするということは殆どありません。

それでは、今度はこの建物の減価償却費の償却方法についてご説明致します。

建物の減価償却費の償却方法

建物の減価償却の償却方法は、主に「定額法」と「定率法」の2つに分けられます。

「定額法」は原則として毎年減価償却費が同額となり、「定率法」よりも計算が複雑になりません。

「定率法」は年数が経つにつれて減価償却費が減少をしていき、「定額法」よりも計算が複雑になります。

償却方法は事業形態や建物の取得年度によって、選択をできる種類が限られます。

そのため、この項目では事業形態や建物の取得年度などによって、どの償却方法を選択できるのかご説明致します。

選択をできる償却方法について

償却方法には幾つかの種類がありますが、建物を減価償却する時は、ほぼ1つの償却方法に限られます。

法人は、平成10年3月31日以前に取得をしたものであれば「旧定額法」もしくは「旧定率法」を選択することができ、原則として「旧定率法」を選択します。

個人事業は、平成10年3月31日以前に取得をしたものであれば「旧定額法」もしくは「旧定率法」を選択することができ、原則として「旧定額法」を選択します。

税務署に届け出をすることで、どちらも違う償却方法に変更をすることが可能です。

平成10年4月1日以後に取得をした建物は、法人も個人事業も「旧定額法」もしくは「定額法」を選択しなくてはいけません。

平成10年4月1日以後から平成19年3月31日以前に取得をした建物は「旧定額法」、平成19年4月1日以後に取得をした建物は「定額法」となります。

非事業用、非業務用建物は、取得年月日に関係なく「旧定額法」を選択して減価償却費の計算を行います。

選択をできる償却方法の種類
事業用建物
業務用建物
非事業用建物
非業務用建物
法人 個人
平成10年3月31日以前 旧定額法
旧定率法
旧定額法
旧定率法
旧定額法
平成10年4月1日以後
から
平成19年3月31日以前
旧定額法 旧定額法 旧定額法
平成19年4月1日以後 定額法 定額法 旧定額法

上記のことから、不動産を売却する時に知っておかなくてはいけないのは、「旧定額法」、「旧定率法」、「定額法」の3種類ということになります。

ご自身が選択をできる償却方法を知ることができましたら、今度はご自身が選択をする償却方法の計算方法を知っておかなくてはいけません。

そのため、今度は「旧定額法」、「旧定率法」、「定額法」の計算方法と償却例をご紹介致します。

それでは、 まず「旧定額法」についてご説明致します。

「旧定額法」について

「旧定額法」は、事業用、業務用建物も、非事業用、非業務用建物も選択をする可能性のある償却方法です。

平成10年4月1日以後~平成19年3月31日以前に取得をした事業用、業務用建物はこちらを選択します。

非事業用、非業務用建物は、取得年月日に関係なくこちらを選択します。

それでは、まず「旧定額法」の計算方法についてご説明致します。

「旧定額法」の償却費の計算方法

「旧定額法」は以前には「定額法」と呼ばれていましたが、平成19年度税制改正によって新たな「定額法」が制定をされ、それに伴い「旧定額法」と呼ばれるようになりました。

計算に必要な償却率は、旧定額法の償却率です。

「旧定額法」の計算方法は、「取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月」となっております。

使用月数とは1年間の間に建物を使用した月数のことで、1ヶ月未満の端数がある時は1ヶ月としてください。

この計算をすることにより、法人は1年分の償却限度額を求めることができ、個人事業は1年分の減価償却費を求めることができます。

「90%」を乗じてから計算をする理由は、会計上「残存価額」として取得価額の「10%」を残し、それ以外の部分「90%」を耐用年数にわたって減価償却を行っていくためです。

建物の「残存価額」は「取得価額×10%」で算出をすることができ、乗じている「10%」は「残存割合」と言います。

「取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月」ではただ単に「90%」としておりますが、「取得価額×90%」の部分を「(取得価額-取得価額×10%)」と置き換えることもできます。

「取得価額×90%」も、「(取得価額-取得価額×10%)」も、結果的には同じ計算をしていることになり、求められる金額も同じです。

また、税務上では耐用年数が過ぎても建物を使用する時には、更に「5%」を追加して、取得価額の「95%」相当額まで減価償却を行うことが可能です。

この取得価額の「95%」相当額のことを「償却可能限度額」と呼び、耐用年数を経過しても使用をした時は、残存簿価が取得価額の「5%」になるまで減価償却を行います。

以上が、従来の「旧定額法」の計算方法となりますが、平成19年度税制改正によって、残存価額及び償却可能限度額が廃止をされました。

その改正により、「旧定額法」も影響を受けており、計算方法自体に変更はありませんが、償却可能限度額の廃止に伴い、残りの「5%」も償却を行えるようになりました。

そのため、改正後は残存簿価が「1円」になるまで減価償却を行います。

取得価額の「95%」相当額まで減価償却をした翌年分以降は、5年間で残存簿価が「1円」になるまで均等償却をしていきます。

法人は平成19年4月1日以後に開始する事業年度から適用をされ、個人事業は平成20年1月1日以後に開始する事業年度から適用をされます。

平成19年3月31日以前に取得をしており、既に償却可能限度額まで減価償却後の建物であっても、平成19年4月1日以後に事業や業務の用に供した場合は残りの「5%」を均等償却します。

法人は「任意償却」ですので、5年間で均等償却を終える必要はありませんが、個人事業は「強制償却」ですので、5年間で均等償却を終える必要があります。

均等償却の計算方法は、法人は「(取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月」、個人事業は「(取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月」となります。

こちらの使用月数も1年間の間に建物を使用した月数のことで、1ヶ月未満の端数がある時は1ヶ月としてください。

非事業用、非業務用建物は、改正によって影響を受けず、従来の「旧定額法」の計算方法で計算を行います。

償却可能限度額も存続となりますので、均等償却を行う必要はありません。

以上が、「旧定額法」の償却費の計算方法についてとなります。

次は、「旧定額法」を選択した時の事業用、業務用建物の償却例をご紹介致します。

事業用、業務用建物の償却例

この項目では、事業用、業務用建物を「旧定額法」で減価償却を行う場合の償却例をご紹介致します。

事業用、業務用建物の「旧定額法」の償却例を下記の表にまとめてありますので、参考にしてください。

建物の取得価額は「300万円」、耐用年数は「5年」、償却率は「0.200」という設定のもとで計算をしております。

また、1年間事業(業務)に使用をしており、法人の計算例(上の表)は小数点以下の端数は「切り捨て」、個人事業の計算例(下の表)は小数点以下の端数は「切り上げ」となっております。

旧定額法による減価償却費の償却例
(法人の場合)
年数 期首
帳簿価額
償却限度額
1 3,000,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
2 2,460,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
3 1,920,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
4 1,380,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
5 840,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
6 300,000円 150,000円

(300,000円-3,000,000円×0.05)
(期首帳簿価額-取得価額×5%)
7 150,000円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
8 120,001円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
9 90,002円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
10 60,003円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
11 30,004円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
12 5円 4円

(5円-1)
(期首帳簿価額-1)
13~ 1円
旧定額法による減価償却費の償却例
(個人事業の場合)
年数 期首
帳簿価額
減価償却費
1 3,000,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
2 2,460,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
3 1,920,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
4 1,380,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
5 840,000円 540,000円

(3,000,000円×0.9×0.200×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
6 300,000円 150,000円

(300,000円-3,000,000円×0.05)
(期首帳簿価額-取得価額×5%)
7 150,000円 30,000円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)÷5×12ヶ月÷12ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月)
8 120,000円 30,000円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)÷5×12ヶ月÷12ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月)
9 90,000円 30,000円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)÷5×12ヶ月÷12ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月)
10 60,000円 30,000円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)÷5×12ヶ月÷12ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月)
11 30,000円 29,999円

(30,000円-1)
(期首帳簿価額-1)
12~ 1円

以上が、事業用、業務用建物を残存簿価が「1円」になるまで減価償却を行った償却例となります。

事業用、業務用建物を「旧定額法」で減価償却を行う時には、このような流れで償却を行っていきます。

しかしながら、事業用、業務用建物は減価償却を行っているものが多く、既に建物の取得費を算出できていることが多いです。

減価償却を行っている建物は、取得をしてから売却をするまで「損金」や「必要経費」に計上をした減価償却費の合計額が減価償却費相当額になります。

なお、どちらの場合も均等償却までを終えた建物は、建物の取得費を「1円」とします。

以上が、「旧定額法」を選択した時の事業用、業務用建物の償却例となります。

次は、「旧定額法」を選択した時の非事業用、非業務用建物の償却例をご紹介致します。

非事業用、非業務用建物の償却例

この項目では、非事業用、非業務用建物を「旧定額法」で減価償却を行う場合の償却例をご紹介致します。

非事業用、非業務用建物の「旧定額法」の償却例を下記の表にまとめてありますので、参考にしてください。

こちらも、建物の取得価額は「300万円」、耐用年数は「5年」として計算を行いますが、非事業用、非業務用建物の場合は耐用年数を1.5倍にしなくてはいけません。

そのため、こちらは耐用年数が「7年(5年×1.5)」、償却率が「0.142」として計算をしております。

旧定額法による減価償却費の償却例
(非事業用、非業務用)
年数 期首
帳簿価額
減価償却費
1 3,000,000円 383,400円

(3,000,000円×0.9×0.142)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率)
2 2,616,600円 383,400円

(3,000,000円×0.9×0.142)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率)
3 2,233,200円 383,400円

(3,000,000円×0.9×0.142)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率)
4 1,849,800円 383,400円

(3,000,000円×0.9×0.142)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率)
5 1,466,400円 383,400円

(3,000,000円×0.9×0.142)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率)
6 1,083,000円 383,400円

(3,000,000円×0.9×0.142)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率)
7 699,600円 383,400円

(3,000,000円×0.9×0.142)
(取得価額×90%×旧定額法の償却率)
8 316,200円 166,200円

(316,200円-3,000,000円×0.05)
(期首帳簿価額-取得価額×5%)
9~ 150,000円

以上が、非事業用、非業務用建物を残存簿価が「取得価額×5%」になるまで減価償却を行った償却例となります。

非事業用、非業務用建物は、1年の途中で取得や売却をした場合、6ヶ月未満の端数は「切り捨て」、6ヶ月以上の端数は「切り上げ」にして経過年数とします。

そのため、使用をした年数に1年未満の端数が出た場合でも、事業用、業務用建物のように厳密に計算を行う必要はありません。

均等償却を行う必要もなく、非事業用、非業務用建物は「取得価額×90%×旧定額法の償却率×経過年数」で減価償却費相当額を算出できます。

例えば、「3年3ヶ月」使用をしている建物は、経過年数は「3年(端数は切り捨て)」となり、「300万円×0.9×0.142×3年」で減価償却費相当額を求めることができます。

「3年6ヶ月」使用をしている建物は、経過年数は「4年(端数は切り上げ)」となり、「300万円×0.9×0.142×4年」で減価償却費相当額を求めることができます。

これらを計算していきますと、「3年」の時は「1,150,200円」、「4年」の時は「1,533,600円」となり、上記の表と合わせても算出ができていると分かります。

なお、計算をして減価償却費相当額が取得価額の「95%」相当額を超える建物は、建物の取得費を「取得価額×5%」とします。

以上が、「旧定額法」を選択した時の非事業用、非業務用建物の償却例となります。

今度は、「旧定率法」についてご説明致します。

「旧定率法」について

「旧定率法」は、事業用、業務用建物のみが選択をする可能性のある償却方法です。

平成10年3月31日以前に取得をした事業用、業務用建物はこちらを選択することが可能です。

なお、非事業用、非業務用建物は、「旧定率法」を選択することはできません。

そのため、この項目では事業用、業務用建物で、「旧定率法」を償却方法として選択した時の計算方法と償却例のみをご紹介致します。

それでは、まず「旧定率法」の計算方法についてご説明致します。

「旧定率法」の償却費の計算方法

「旧定率法」は以前には「定率法」と呼ばれていましたが、平成19年度税制改正によって新たな「定率法」が制定をされ、それに伴い「旧定率法」と呼ばれるようになりました。

計算に必要な償却率は、旧定率法の償却率です。

「旧定率法」の計算方法は、「未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月」となっております。

使用月数とは1年間の間に建物を使用した月数のことで、1ヶ月未満の端数がある時は1ヶ月としてください。

この計算をすることにより、法人は1年分の償却限度額を求めることができ、個人事業は1年分の減価償却費を求めることができます。

「旧定率法」も「旧定額法」と同様に、会計上「残存価額」として取得価額の「10%」を残すことになっており、それ以外の部分「90%」を耐用年数にわたって減価償却を行います。

こちらは取得価額に「90%」を乗じなくても、耐用年数分の減価償却を行えば、残存簿価が「10%」になるように償却率が設定をされております。

また、「旧定率法」も税務上では耐用年数が過ぎても建物を使用する時には、更に「5%」を追加して、取得価額の「95%」相当額まで減価償却を行うことが可能です。

以上が、従来の「旧定率法」の計算方法となりますが、「旧定額法」でもお話をした通り、平成19年度税制改正によって、残存価額及び償却可能限度額が廃止をされました。

その影響により、「旧定率法」も影響を受けており、計算方法自体に変更はありませんが、償却可能限度額の廃止に伴い、残りの「5%」も償却を行えるようになりました。

そのため、「旧定率法」も改正後は残存簿価が「1円」になるまで減価償却を行います。

取得価額の「95%」相当額まで減価償却をした翌年分以降は、5年間で残存簿価が「1円」になるまで均等償却をしていきます。

法人は平成19年4月1日以後に開始する事業年度から適用をされ、個人事業は平成20年1月1日以後に開始する事業年度から適用をされます。

平成19年3月31日以前に取得をしており、既に償却可能限度額まで減価償却後の建物であっても、平成19年4月1日以後に事業や業務の用に供した場合は残りの「5%」を均等償却します。

法人は「任意償却」ですので、5年間で均等償却を終える必要はありません。

個人事業は「強制償却」ですので、5年間で均等償却を終える必要があります。

均等償却の計算方法は、法人は「(取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月」、個人事業は「(取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月」となります。

こちらの使用月数も1年間の間に建物を使用した月数のことで、1ヶ月未満の端数がある時は1ヶ月としてください。

以上が、「旧定率法」の償却費の計算方法についてとなります。

次は、「旧定率法」を選択した時の事業用、業務用建物の償却例をご紹介致します。

事業用、業務用建物の償却例

この項目では、事業用、業務用建物を「旧定率法」で減価償却を行う場合の償却例をご紹介致します。

「旧定率法」は、事業用、業務用建物のみが選択をすることができます。

そのため、今回は建物が事業用、業務用である場合の償却例のみをご紹介致します。

事業用、業務用建物の「旧定率法」の償却例を下記の表にまとめてありますので、参考にしてください。

建物の取得価額は「300万円」、耐用年数は「5年」、償却率は「0.369」という設定のもとで計算をしております。

また、1年間事業(業務)に使用をしており、法人の計算例(上の表)は小数点以下の端数は「切り捨て」、個人事業の計算例(下の表)は小数点以下の端数は「切り上げ」となっております。

旧定率法による減価償却費の償却例
(法人の場合)
年数 期首
帳簿価額
償却限度額
1 3,000,000円 1,107,000円

((3,000,000円-0)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
2 1,893,000円 698,517円

((3,000,000円-1,107,000円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
3 1,194,483円 440,764円

((3,000,000円-1,805,517円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
4 753,719円 278,122円

((3,000,000円-2,246,282円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
5 475,597円 175,495円

((3,000,000円-2,524,404円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
6 300,102円 110,737円

((3,000,000円-2,699,899円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
7 189,365円 39,365円

(189,363円-3,000,000円×0.05)
(期首帳簿価額-取得価額×5%)
8 150,000円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
9 120,001円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
10 90,002円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
11 60,003円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
12 30,004円 29,999円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)×12ヶ月÷60ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)×使用月数÷60ヶ月)
13 5円 4円

(5円-1)
(期首帳簿価額-1)
14~ 1円
旧定率法による減価償却費の償却例
(個人事業の場合)
年数 期首
帳簿価額
減価償却費
1 3,000,000円 1,107,000円

((3,000,000円-0)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
2 1,893,000円 698,517円

((3,000,000円-1,107,000円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
3 1,194,483円 440,765円

((3,000,000円-1,805,517円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
4 753,718円 278,122円

((3,000,000円-2,246,282円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
5 475,596円 175,495円

((3,000,000円-2,524,404円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
6 300,101円 110,738円

((3,000,000円-2,699,899円)×0.369×12ヶ月÷12ヶ月)
(未償却残高×旧定率法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
7 189,363円 39,363円

(189,363円-3,000,000円×0.05)
(期首帳簿価額-取得価額×5%)
8 150,000円 30,000円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)÷5×12ヶ月÷12ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月)
9 120,000円 30,000円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)÷5×12ヶ月÷12ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月)
10 90,000円 30,000円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)÷5×12ヶ月÷12ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月)
11 60,000円 30,000円

((3,000,000円-3,000,000円×0.95-1)÷5×12ヶ月÷12ヶ月)
((取得価額-取得価額×95%-1)÷5×使用月数÷12ヶ月)
12 30,000円 29,999円

(30,000円-1)
(期首帳簿価額-1)
13~ 1円

以上が、事業用、業務用建物を残存簿価が「1円」になるまで減価償却を行った償却例となります。

事業用、業務用建物を「旧定率法」で減価償却を行う時には、このような流れで償却を行っていきます。

事業用、業務用建物は「旧定額法」でもお話をしたように、減価償却を行っているものが多く、既に建物の取得費を算出できていることが多いです。

減価償却を行っている建物は、取得をしてから売却をするまで「損金」や「必要経費」に計上をした減価償却費の合計額が減価償却費相当額になります。

なお、どちらの場合も均等償却までを終えた建物は、建物の取得費を「1円」とします。

以上が、「旧定率法」を選択した時の事業用、業務用建物の償却例となります。

今度は、「定額法」についてご説明致します。

「定額法」について

「定額法」は、事業用、業務用建物のみが選択をする可能性のある償却方法です。

平成19年4月1日以後に取得をした事業用、業務用建物は、「定額法」によって計算を行います。

なお、非事業用、非業務用建物は、「定額法」を選択することはできません。

そのため、「旧定率法」と同様に、この項目では事業用、業務用建物で、「定額法」を償却方法として選択した時の計算方法と償却例のみをご紹介致します。

それでは、まず「定額法」の計算方法についてご説明致します。

「定額法」の償却費の計算方法

「定額法」は平成19年度税制改正によって、新たに制定をされた償却方法です。

計算に必要な償却率は、定額法の償却率です。

「定額法」の計算方法は、「取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月」となっております。

使用月数とは1年間の間に建物を使用した月数のことで、1ヶ月未満の端数がある時は1ヶ月としてください。

この計算をすることにより、法人は1年分の償却限度額を求めることができ、個人事業は1年分の減価償却費を求めることができます。

平成19年度税制改正により残存価額及び償却可能限度額が廃止をされているため、「定額法」は耐用年数経過時点で残存簿価が「1円」になるように減価償却を行います。

そのため、「旧定額法」や「旧定率法」のように、均等償却をする必要はありません。

均等償却がない分、計算自体は先程の2つの償却方法よりも簡単になります。

以上が、「定額法」の償却費の計算方法についてとなります。

次は、「定額法」を選択した時の事業用、業務用建物の償却例をご紹介致します。

事業用、業務用建物の償却例

この項目では、事業用、業務用建物を「定額法」で減価償却を行う場合の償却例をご紹介致します。

「定額法」は「旧定率法」と同様に、事業用、業務用建物のみが選択をすることができます。

そのため、今回も建物が事業用、業務用である場合の償却例のみをご紹介致します。

事業用、業務用建物の「定額法」の償却例を下記の表にまとめてありますので、参考にしてください。

建物の取得価額は「300万円」、耐用年数は「10年」、償却率は「0.100」という設定のもとで計算をしております。

また、1年間事業(業務)に使用をしているという設定のもとで計算を行っており、今回の計算では小数点以下の端数は出ませんので、法人と個人事業の償却例は共通となります。

定額法による減価償却費の償却例
(法人、個人事業共通)
年数 期首
帳簿価額
償却限度額
減価償却費
1 3,000,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
2 2,700,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
3 2,400,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
4 2,100,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
5 1,800,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
6 1,500,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
7 1,200,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
8 900,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
9 600,000円 300,000円

(3,000,000円×0.100×12ヶ月÷12ヶ月)
(取得価額×定額法の償却率×使用月数÷12ヶ月)
10 300,000円 299,999円

(300,000円-1)
(期首帳簿価額-1)
11~ 1円

以上が、事業用、業務用建物を残存簿価が「1円」になるまで減価償却を行った償却例となります。

事業用、業務用建物を「定額法」で減価償却を行う時には、このような流れで償却を行っていきます。

事業用、業務用建物は「旧定額法」、「旧定率法」でもお話をしたように、減価償却を行っているものが多く、既に建物の取得費を算出できていることが多いです。

減価償却を行っている建物は、取得をしてから売却をするまで「損金」や「必要経費」に計上をした減価償却費の合計額が減価償却費相当額になります。

なお、「定額法」では耐用年数経過時点で残存簿価が「1円」になるように減価償却を行います。

そのため、使用年数が耐用年数を経過した建物は、建物の取得費を「1円」とします。

以上が、「定額法」を選択した時の事業用、業務用建物の償却例となります。

これで、3種類の償却方法の全ての計算方法と償却例をご紹介することができました。

上記の3種類の償却方法の償却例(非事業用、非業務用建物以外の償却例)では、全て使用月数が12ヶ月として計算を行っておりますが、事業や業務をしていれば、事業年度の途中で建物を売却することもあります。

事業年度の途中で建物を売却した時に問題となってくるのが、建物の取得費とする金額についてです。

この場合、建物の取得費となるのは「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」の2つであり、どちらを選択するかはご自身で決定をする必要があります。

税法上の規定などもありますので、今度はこの事業年度の途中で建物を売却した場合の取得費についてご説明致します。

期中売却をした場合の取得費

事業年度の途中に、建物などを売却することを「期中売却」と言います。
(事業年度は、法人は期間を自由に定めることができ、個人事業は必ず1月~12月の期間となります。)

建物を期中売却した場合は、建物の取得費を「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」の2つから選択をすることができます。

どちらを選択するかは、実務上の取り扱いとしては任意となっており、どちらを選択しても犯罪などになってしまうことはありません。

しかし、法人税法と所得税法では減価償却費の計上の規定が異なっているため、税法に従うのであれば注意が必要です。

まず、法人税法の観点での期中売却についてご説明致します。

法人税法の観点での期中売却

法人は不動産を売却した時には、譲渡所得ではなく、事業所得に売却益を算入することになります。

事業所得に不動産の売却益が算入をできるため、建物の取得費に「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても当期純利益に違いはありません。

当期純利益に違いがないのであれば、どちらを選択しても差し支えはなさそうですが、法人税法では「各事業年度終了の時において有する減価償却資産」に対して減価償却費が計上をできるという規定があります。

そのため、税法上の規定に従うのであれば、法人は「期首帳簿価額」を選択したほうがより正しいと言えるかもしれません。

「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択した場合は、その年度の「損金」に「売却直前までの減価償却費」を計上する必要があります。

そうなってしまうと、「各事業年度終了の時において有する減価償却資産」ではないのに、その年度の「損金」に「売却直前までの減価償却費」を計上するため、規定に反していることになります。

必ず「期首帳簿価額」を選択しないといけない訳ではありませんが、法人税法の規定が気になるようであれば、「期首帳簿価額」を選択したほうが無難かもしれません。

以上が、法人税法の観点での期中売却についてとなります。

次は、所得税法の観点での期中売却についてご説明致します。

所得税法の観点での期中売却

個人事業の方は所得税法で「その年の12月31日において有する減価償却資産」に対して減価償却費が計上をできるという規定があります。

しかし、所得税法は通達により、便宜的に、年初から「売却直前までの減価償却費」の計上を認められております。

そのため、所得税法上、個人事業は建物の取得費に「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても、税法上の規定に反することにはなりません。

「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を建物の取得費とした時には、その年度の「必要経費」に「売却直前までの減価償却費」を含めます。

「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても、最終的には同じ利益となります。

利益が異なってしまう場合は、慎重にどちらを選択するのか考える必要がありますが、同じであればどちらにしても損はありません。

以上が、所得税法の観点での期中売却についてとなります。

これらを踏まえて、今度は一般的な建物の取得費の計算例をご紹介致します。

建物の取得費の計算例(一般)

それでは、これまでのことを踏まえて、一般的な建物の取得費を計算してみます。

一般的な計算例では、「新築の建物を売却する場合」、「中古の建物を売却する場合」、「改良した建物を売却する場合」の3つの例をご紹介致します。

特に、減価償却を行わない非事業用、非業務用建物を売却する時には、参考にしてください。

それでは、まず新築の建物を売却する場合の計算例をご紹介致します。

新築の建物を売却する場合

新築の建物を売却する場合は、建物の取得価額、定められている法定耐用年数、償却率などをご存知であれば、すぐに建物の取得費を計算することができます。

それでは、これから新築の建物を売却する場合の建物の取得費を計算していきます。

下記の表の条件で建物の取得費の計算を行いますので、まずはこちらをご確認ください。

なお、この建物は法人と個人事業は取得をしてからずっと賃貸による不動産収入があり、非事業用、非業務用は一度も事業用、業務用に供していないものとします。

事業年度につきましては、法人は4月1日~3月31日、個人事業は1月1日~12月31日の期間と設定をしております。

今回の計算例で減価償却費相当額を求める建物
(新築の建物を売却する場合)
建物の取得価額 1,800万円
建物の耐用年数 「22年」
(木造の住宅用のものの法定耐用年数)
建物を取得した日 平成23年6月15日
建物を売却した日 平成26年4月30日
法人の各年度の
使用月数
平成23年度 10ヶ月
(平成23年6月~平成24年3月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年4月~平成25年3月)
平成25年度 12ヶ月
(平成25年4月~平成26年3月)
平成26年度 1ヶ月
(平成26年4月~平成26年4月)
個人事業の各年度の
使用月数
平成23年度 7ヶ月
(平成23年6月~平成23年12月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年1月~平成24年12月)
平成25年度 12ヶ月
(平成25年1月~平成25年12月)
平成26年度 4ヶ月
(平成26年1月~平成26年4月)
非事業用、非業務用の
使用年数
3年
(2年10ヶ月と15日の端数を切り上げて算出)

設定では平成26年4月30日に建物の売却を行っているため、法人も個人事業も期中売却を行っていることになります。

そのため、法人は法人税法上(詳しくは「期中売却をした時の取得費」をご覧ください)、平成26年度の「期首帳簿価額」を建物の取得費とします。

個人事業は所得税法上、建物の取得費に「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても差し支えはありません。

そのため、個人事業は今回の計算では「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択したものとして建物の取得費の計算を行います。

「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択した時には、平成26年度の「必要経費」に「売却直前までの減価償却費」を計上します。

上記の設定で計算を行いますと、法人、個人事業、非事業用、非業務用の場合の減価償却費相当額は下記の表の通りです。

減価償却費の計算例(新築の建物を売却する場合)
計算方法 減価償却費
相当額
法人 平成23年度 1,800万円×0.046×10ヶ月÷12ヶ月=690,000円 2,346,000円
平成24年度 1,800万円×0.046×12ヶ月÷12ヶ月=828,000円
平成25年度 1,800万円×0.046×12ヶ月÷12ヶ月=828,000円
個人事業 平成23年度 1,800万円×0.046×7ヶ月÷12ヶ月=483,000円 2,415,000円
平成24年度 1,800万円×0.046×12ヶ月÷12ヶ月=828,000円
平成25年度 1,800万円×0.046×12ヶ月÷12ヶ月=828,000円
平成26年度 1,800万円×0.046×4ヶ月÷12ヶ月=276,000円
非事業用
非業務用
1,800万円×0.9×0.031×3年=1,506,600円 1,506,600円

法人と個人事業は、建物の取得年度が平成19年4月1日以後となりますので、償却方法は「定額法」で計算を行っております。

適用をしている償却率は、「0.046(耐用年数が「22年」の定額法の償却率)」です。

非事業用、非業務用建物は、建物の取得年月日によって償却方法を変更しませんので、「旧定額法」で計算を行っております。

適用をしている償却率は、「0.031(耐用年数が「33年(22年×1.5)」の旧定額法の償却率)」です。

ここまで計算ができましたら、後は算出を行った減価償却費相当額を建物の取得価額から差し引けば、建物の取得費を求めることができます。

設定では、建物の取得価額は「1,800万円」です。

上記の表の計算結果を踏まえますと、建物の取得費は下記の通りとなります。

  • 法人が事業に使用をしている建物の取得費
    「18,000,000円-2,346,000円=15,654,000円」
  • 個人事業が事業や業務に使用をしている建物の取得費
    「18,000,000円-2,415,000円=15,585,000円」
  • 非事業用、非業務用建物の取得費
    「18,000,000円-1,506,600円=16,493,400円」

法人は「任意償却」ですが、上記の表の減価償却費を全て「損金」に計上したものとして計算をしております。

以上が、新築の建物を売却する場合の計算例となります。

次は、中古の建物を売却する場合の計算例をご紹介致します。

中古の建物を売却する場合

中古の建物を売却する場合は、同じ条件の建物であっても、事業用、業務用建物と非事業用、非業務用建物で適用をする耐用年数が異なる可能性があります。

事業用、業務用建物は見積もりや計算によって算出を行った使用可能期間を耐用年数とすることができますが、非事業用、非業務用建物は新築の時と同様の法定耐用年数を耐用年数とします。

それでは、これから中古の建物を売却する場合の建物の取得費を計算していきます。

下記の表の条件で建物の取得費の計算を行いますので、まずはこちらをご確認ください。

なお、この建物は法人と個人事業は取得をしてからずっと賃貸による不動産収入があり、非事業用、非業務用は一度も事業用、業務用に供していないものとします。

事業年度につきましては、法人は4月1日~3月31日、個人事業は1月1日~12月31日の期間と設定をしております。

今回の計算例で減価償却費相当額を求める建物
(中古の建物を売却する場合)
建物の取得価額 600万円
建物の耐用年数 「22年」
(木造の住宅用のものの法定耐用年数)
建物を取得した日 平成23年12月10日
(取得時には築年数が「3年」を経過)
建物を売却した日 平成26年1月31日
法人の各年度の
使用月数
平成23年度 4ヶ月
(平成23年12月~平成24年3月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年4月~平成25年3月)
平成25年度 10ヶ月
(平成25年4月~平成26年1月)
個人事業の各年度の
使用月数
平成23年度 1ヶ月
(平成23年12月~平成23年12月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年1月~平成24年12月)
平成25年度 12ヶ月
(平成25年1月~平成25年12月)
平成26年度 1ヶ月
(平成26年1月~平成26年1月)
非事業用、非業務用の
使用年数
2年
(2年1ヶ月と21日の端数を切り捨てて算出)

設定では平成26年1月31日に建物の売却を行っているため、法人も個人事業も期中売却を行っていることになります。

そのため、法人は法人税法上(詳しくは「期中売却をした時の取得費」をご覧ください)、平成25年度の「期首帳簿価額」を建物の取得費とします。

個人事業は所得税法上、建物の取得費に「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても差し支えはありません。

そのため、個人事業は今回の計算では「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択したものとして建物の取得費の計算を行います。

「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択した時には、平成26年度の「必要経費」に「売却直前までの減価償却費」を計上します。

また、耐用年数についてですが、この建物は取得をした時には既に築年数が「3年」を経過していることになります。

中古の事業用、業務用建物の減価償却費を計算する時には、法定耐用年数ではなく使用可能期間を耐用年数として適用することができますので、この計算例ではこちらを適用します。

今回は、使用可能期間の見積もりが困難であるため、「簡便法」により耐用年数を求めます。

築年数が法定耐用年数の一部を経過している場合は、「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」で耐用年数を求めることができます。

上記の式を用いて計算を行いますと「(22年-3年)+3年×0.2=19.6年」となり、1年未満の端数は切り捨てですので、この建物の「簡便法」による耐用年数は「19年」と算出ができます。

事業用、業務用建物は、この「19年」を耐用年数として計算を行います。

上記の設定で計算を行いますと、法人、個人事業、非事業用、非業務用の場合の減価償却費相当額は下記の表の通りとなります。

減価償却費の計算例(中古の建物を売却する場合)
計算方法 減価償却費
相当額
法人 平成23年度 600万円×0.053×4ヶ月÷12ヶ月=106,000円 424,000円
平成24年度 600万円×0.053×12ヶ月÷12ヶ月=318,000円
個人事業 平成23年度 600万円×0.053×1ヶ月÷12ヶ月=26,500円 689,000円
平成24年度 600万円×0.053×12ヶ月÷12ヶ月=318,000円
平成25年度 600万円×0.053×12ヶ月÷12ヶ月=318,000円
平成26年度 600万円×0.053×1ヶ月÷12ヶ月=26,500円
非事業用
非業務用
600万円×0.9×0.031×2年=334,800円 334,800円

法人と個人事業は、建物の取得年度が平成19年4月1日以後となりますので、「定額法」で計算を行っております。

適用をしている償却率は、「0.053(耐用年数が「19年」の定額法の償却率)」です。

非事業用、非業務用建物は、建物の取得年月日によって償却方法を変更しませんので、「旧定額法」で計算を行っております。

適用をしている償却率は、「0.031(耐用年数が「33年(22年×1.5)」の旧定額法の償却率)」です。

法人、個人事業は「簡便法」で算出を行った耐用年数を、非事業用、非業務用は新築と同様の法定耐用年数を適用するという点にご注意ください。

ここまで計算ができましたら、後は算出を行った減価償却費相当額を建物の取得価額から差し引けば、建物の取得費を求めることができます。

設定では、建物の取得価額は「600万円」です。

上記の表の計算結果を踏まえますと、建物の取得費は下記の通りとなります。

  • 法人が事業に使用をしている建物の取得費
    「6,000,000円-424,000円=5,576,000円」
  • 個人事業が事業や業務に使用をしている建物の取得費
    「6,000,000円-689,000円=5,311,000円」
  • 非事業用、非業務用建物の取得費
    「6,000,000円-334,800円=5,665,200円」

法人は「任意償却」ですが、上記の表の減価償却費を全て「損金」に計上したものとして計算をしております。

以上が、中古の建物を売却する場合の計算例となります。

次は、改良した建物を売却する場合の計算例をご紹介致します。

改良した建物を売却する場合

建物を改良して売却する場合は、その改良費も建物の取得費に含めることができます。
(こちらの改良費も、建物自体の価値を高めたり、使用期間を延長させたりするような改良にかけた費用のことを指し、それ以外のものは該当をしませんのでご注意ください。)

基本的な計算方法は、「新築の建物を売却する場合」や「中古の建物を売却する場合」と変わりません。

それでは、これから改良した建物を売却する場合の建物の取得費を計算していきます。

下記の表の条件で建物の取得費の計算を行いますので、まずはこちらをご確認ください。

なお、この建物は法人と個人事業は取得をしてからずっと賃貸による不動産収入があり、非事業用、非業務用は一度も事業用、業務用に供していないものとします。

事業年度につきましては、法人は4月1日~3月31日、個人事業は1月1日~12月31日の期間と設定をしております。

今回の計算例で減価償却費相当額を求める建物
(改良した建物を売却する場合)
建物の取得価額 600万円
建物の改良費 400万円
建物の再取得価額 1,000万円
建物の耐用年数 「22年」
(木造の住宅用のものの法定耐用年数)
建物を取得した日 平成23年12月10日
(取得時には築年数が「3年」を経過)
建物を売却した日 平成26年1月31日
法人の各年度の
使用月数
平成23年度 4ヶ月
(平成23年12月~平成24年3月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年4月~平成25年3月)
平成25年度 10ヶ月
(平成25年4月~平成26年1月)
個人事業の各年度の
使用月数
平成23年度 1ヶ月
(平成23年12月~平成23年12月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年1月~平成24年12月)
平成25年度 12ヶ月
(平成25年1月~平成25年12月)
平成26年度 1ヶ月
(平成26年1月~平成26年1月)
非事業用、非業務用の
使用年数
2年
(2年1ヶ月と21日の端数を切り捨てて算出)

設定では平成26年1月31日に建物の売却を行っているため、法人も個人事業も期中売却を行っていることになります。

そのため、法人は法人税法上(詳しくは「期中売却をした時の取得費」をご覧ください)、平成25年度の「期首帳簿価額」を建物の取得費とします。

個人事業は所得税法上、建物の取得費に「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても差し支えはありません。

そのため、個人事業は今回の計算では「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択したものとして建物の取得費の計算を行います。

「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択した時には、平成26年度の「必要経費」に「売却直前までの減価償却費」を計上します。

また、耐用年数についてですが、この建物は取得をした時には既に築年数が「3年」を経過していることになります。

中古の事業用、業務用建物の減価償却費を計算する時には、法定耐用年数ではなく使用可能期間を耐用年数として適用することができますので、この計算例ではこちらを適用します。

今回は、使用可能期間の見積もりが困難であるため、「簡便法」により耐用年数を求めます。

築年数が法定耐用年数の一部を経過している場合は、「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」で耐用年数を求めることができます。

上記の式を用いて計算を行いますと「(22年-3年)+3年×0.2=19.6年」となり、1年未満の端数は切り捨てですので、この建物の「簡便法」による耐用年数は「19年」と算出ができます。

今回の設定では、取得価額の「50%」相当額を超える「400万円」をかけて建物を改良しているため、上記の「19年」をもとに更に計算をして、改良をした後の建物の耐用年数を算出する必要があります。

改良費が取得価額の「50%」相当額を超える時は、「(中古の建物の取得価額+改良費などの額)÷(中古の建物の取得価額÷中古の建物の簡便法による耐用年数+改良費などの額÷法定耐用年数)」を用いて耐用年数を求めます。

そのため、「(600万円+400万円)÷(600万円÷19年+400万円÷22年)=20.0…年」となり、1年未満の端数は切り捨てですので、改良をした後の建物の「簡便法」による耐用年数は「20年」となります。

事業用、業務用建物は、この「20年」を耐用年数として計算を行います。

上記の設定で計算を行いますと、法人、個人事業、非事業用、非業務用の場合の減価償却費相当額は下記の表の通りです。

今回の計算では、法人と個人事業の減価償却費に小数点以下の端数が出る年度があったため、端数が出た場合、法人は「切り捨て」、個人事業は「切り上げ」で計算をしております。

減価償却費の計算例
(改良した建物を売却する場合)
計算方法 減価償却費
相当額
法人 平成
23
年度
(600万円+400万円)×0.050×4ヶ月÷12ヶ月=166,666円 666,666円
平成
24
年度
(600万円+400万円)×0.050×12ヶ月÷12ヶ月=500,000円
個人事業 平成
23
年度
(600万円+400万円)×0.050×1ヶ月÷12ヶ月=41,667円 1,083,334円
平成
24
年度
(600万円+400万円)×0.050×12ヶ月÷12ヶ月=500,000円
平成
25
年度
(600万円+400万円)×0.050×12ヶ月÷12ヶ月=500,000円
平成
26
年度
(600万円+400万円)×0.050×1ヶ月÷12ヶ月=41,667円
非事業用
非業務用
(600万円+400万円)×0.9×0.031×2年=558,000円 558,000円

法人と個人事業は、建物の取得年度が平成19年4月1日以後となりますので、償却方法は「定額法」で計算を行っております。

適用をしている償却率は、「0.050(耐用年数が「20年」の定額法の償却率)」です。

非事業用、非業務用建物は、建物の取得年月日によって償却方法を変更しませんので、「旧定額法」で計算を行っております。

適用をしている償却率は、「0.031(耐用年数が「33年(22年×1.5)」の旧定額法の償却率)」です。

ここまで計算ができましたら、後は算出を行った減価償却費相当額を建物の取得価額から差し引けば、建物の取得費を求めることができます。

設定では、建物の取得価額は「600万円」、改良費は「400万円」です。

上記の表の計算結果を踏まえますと、建物の取得費は下記の通りとなります。

  • 法人が事業に使用をしている建物の取得費
    「(6,000,000円+4,000,000円)-666,666円=9,333,334円」
  • 個人事業が事業や業務に使用をしている建物の取得費
    「(6,000,000円+4,000,000円)-1,083,334円=8,916,666円」
  • 非事業用、非業務用建物の取得費
    「(6,000,000円+4,000,000円)-558,000円=9,442,000円」

法人は「任意償却」ですが、上記の表の減価償却費を全て「損金」に計上したものとして計算をしております。

以上が、改良した建物を売却する場合の計算例となります。

これで、一般的な建物の取得費の計算例を全てご紹介することができました。

今度は、特殊な建物の取得費の計算例をご紹介致します。

建物の取得費の計算例(特殊)

それでは、次はこれまでのことを踏まえて、特殊な建物の取得費を計算してみます。

主に、こちらは事業用、業務用建物を売却したいという方に関係があります。

自宅などを売却したいという方にはあまり関係がありませんが、これから事業や業務などを始めたいと考えていらっしゃる方には、関係のある項目もあるかもしれません。

特殊な計算例では、「事業用などに転用した新築の建物」、「事業用などに転用した中古の建物」、「事業年度が12ヶ月未満の建物」を売却する場合の計算例をご紹介致します。

それでは、まず、最初は自宅として使用をしていた新築の建物を、事業用や業務用などに転用をして、その後に売却をする場合の建物の取得費の計算例をご紹介致します。

事業用などに転用した新築の建物

自宅として使用をしていた新築の建物を、事業用や業務用などに転用をして、その後に売却をする場合、建物の取得費は普通に計算をするだけでは求めることはできません。

このような建物は、まず自宅として使用をしていた時の減価償却費の合計額の計算を行います。

自宅として使用をしていた時の減価償却費の合計額を計算できましたら、次は転用後の減価償却費の合計額の計算を行います。

そして、求められた2つの合計額を合算した金額が、この建物の減価償却費相当額となりますので、後は建物の取得価額からこの金額を差し引けば建物の取得費を求めることができます。

それでは、これから事業用などに転用した新築の建物を売却する場合の建物の取得費を計算していきます。

下記の表の条件で、個人事業主の方が建物を取得し、売却をする場合の建物の取得費の計算を行いますので、まずはこちらをご確認ください。

なお、事業年度につきましては、1月1日~12月31日の期間と設定をしております。

今回の計算例で減価償却費相当額を求める建物
(事業用などに転用した新築の建物)
建物の取得価額 3,000万円
建物の耐用年数 「47年」
(鉄筋コンクリート造の住宅用のものの法定耐用年数)
建物を取得した日 平成15年2月1日
自宅用だった期間 平成15年2月1日~平成23年8月31日
賃貸用だった期間 平成23年9月1日~平成25年9月19日
建物を売却した日 平成25年9月20日
自宅用だった期間の
経過年数
9年
(8年7ヶ月の端数を切り上げて算出)
賃貸用だった期間の
各年度の使用月数
平成23年度 4ヶ月
(平成23年9月~平成23年12月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年1月~平成24年12月)
平成25年度 9ヶ月
(平成25年1月~平成25年9月)

設定では平成25年9月20日に建物の売却を行っているため、期中売却を行っていることになります。

個人事業は所得税法上、建物の取得費に「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても差し支えはありません。

そのため、今回の計算では「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択したものとして建物の取得費の計算を行います。

「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択した時には、平成25年度の「必要経費」に「売却直前までの減価償却費」を計上します。

上記の設定で計算を行いますと、減価償却費相当額は下記の表の通りです。

減価償却費の計算例
(事業用などに転用した新築の建物)
計算方法 減価償却費
相当額
自宅用だった
期間
3,000万円×0.9×0.015×9年=3,645,000円 3,645,000円
賃貸に出した
期間
平成23年度 3,000万円×0.9×0.022×4ヶ月÷12ヶ月=198,000円 1,237,500円
平成24年度 3,000万円×0.9×0.022×12ヶ月÷12ヶ月=594,000円
平成25年度 3,000万円×0.9×0.022×9ヶ月÷12ヶ月=445,500円

建物の取得年度が平成19年3月31日以前ですので、自宅として使用をしていた期間も賃貸に出していた期間も「旧定額法」で計算を行っております。

自宅として使用をしていた期間は非事業用、非業務用建物となりますので、この建物の法定耐用年数である「47年」を1.5倍にした年数を耐用年数とします。

「47年」を1.5倍にしますと「47年×1.5=70.5年」となり、1年未満の端数は切り捨てですので、耐用年数は「70年」となります。

耐用年数が「70年」の旧定額法の償却率は「0.015」であるため、自宅として使用をしていた期間はこちらを適用しております。

賃貸に出していた期間は、非事業用、非業務用建物となりませんので、この建物の法定耐用年数である「47年」を耐用年数とします。

耐用年数が「47年」の旧定額法の償却率は「0.022」であるため、賃貸に出していた期間はこちらを適用しております。

上記の表で算出を行った減価償却費を合算しますと「3,645,000円+1,237,500円=4,882,500円」となり、この金額がこの建物の減価償却費相当額となります。

ここまで計算ができましたら、後は算出を行った減価償却費相当額を建物の取得価額から差し引けば、建物の取得費を求めることができます。

設定では、建物の取得価額は「3,000万円」です。

上記の計算結果を踏まえますと、建物の取得費は「30,000,000円-4,882,500円=25,117,500円」となります。

以上が、最初は自宅として使用をしていた新築の建物を、事業用や業務用などに転用をして、その後に売却をする場合の建物の取得費の計算例となります。

次は、最初は自宅として使用をしていた中古の建物を、事業用や業務用などに転用をして、その後に売却をする場合の建物の取得費の計算例をご紹介致します。

事業用などに転用した中古の建物

自宅として使用をしていた中古の建物を、事業用や業務用などに転用をして、その後に売却をする場合、新築の時とは少し計算方法が異なってしまいます。

中古の建物も、自宅として使用をしていた期間と賃貸に出していた期間の減価償却費を合算するという点と、自宅として使用をしていた期間の減価償却費の求め方は新築の時と同様です。

問題は賃貸に出していた期間の減価償却費の計算で、こちらは新築の時とは計算方法が異なります。

それでは、これから事業用などに転用した中古の建物を売却する場合の建物の取得費を計算していきます。

下記の表の条件で、個人事業主の方が建物を取得し、売却をする場合の建物の取得費の計算を行いますので、まずはこちらをご確認ください。

なお、事業年度につきましては、1月1日~12月31日の期間と設定をしております。

今回の計算例で減価償却費相当額を求める建物
(事業用などに転用した中古の建物)
建物の取得価額 1,000万円
建物の耐用年数 「47年」
(鉄筋コンクリート造の住宅用のものの法定耐用年数)
建物を取得した日 平成15年1月20日
(平成13年5月20日が新築)
自宅用だった期間 平成15年1月20日~平成23年7月31日
賃貸用だった期間 平成23年8月1日~平成25年10月30日
建物を売却した日 平成25年10月31日
自宅用だった期間の
経過年数
9年
(8年6ヶ月と12日の端数を切り上げて算出)
賃貸用だった期間の
各年度の使用月数
平成23年度 5ヶ月
(平成23年8月~平成23年12月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年1月~平成24年12月)
平成25年度 10ヶ月
(平成25年1月~平成25年10月)

設定では平成25年10月31日に建物の売却を行っているため、期中売却を行っていることになります。

個人事業は所得税法上、建物の取得費に「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても差し支えはありません。

そのため、今回の計算では「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択したものとして建物の取得費の計算を行います。

「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択した時には、平成25年度の「必要経費」に「売却直前までの減価償却費」を計上します。

また、耐用年数についてですが、この建物は平成13年5月20日に新築をされ、取得をしたのは平成15年1月20日です。

中古の事業用、業務用建物の減価償却費を計算する時には、法定耐用年数ではなく使用可能期間を耐用年数として適用することができますので、この計算例ではこちらを適用します。

今回は、使用可能期間の見積もりが困難であるため、「簡便法」により耐用年数を求めます。

築年数が法定耐用年数の一部を経過している場合は、「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」で耐用年数を求めることができます。

しかし、この建物は取得をするまでに築年数が「1年8ヶ月(平成13年5月20日~平成15年1月19日)」を経過しており、年数に端数があります。

そのため、耐用年数の計算を行うためには、まずこの建物の法定耐用年数と取得をした時に経過をしていた築年数を月数に直さなくてはいけません。

こちらの年数を月数に直しますと「47年×12=564ヶ月」、「1年×12+8ヶ月=20ヶ月」となります。

上記の月数を「簡便法」の計算式に当てはめて計算を行いますと、「(564ヶ月-20ヶ月)+20ヶ月×0.2=548ヶ月」となり、この建物の耐用年数が月数で算出をされます。

後は算出を行った月数を12で除し、年数に直せば耐用年数を求められます。

「548ヶ月」を年数に直しますと、「548ヶ月÷12=45.6…年」となり、1年未満の端数は切り捨てですので、この建物の「簡便法」による耐用年数は「45年」と算出ができます。

建物を賃貸に出していた期間は、この「45年」を耐用年数として計算を行います。

上記の設定で計算を行いますと、減価償却費相当額は下記の表の通りです。

減価償却費の計算例
(事業用などに転用した中古の建物)
計算方法 減価償却費
相当額
自宅用だった
期間
1,000万円×0.9×0.015×9年=1,215,000円 1,215,000円
賃貸に出した
期間
平成23年度 1,000万円×0.9×0.023×5ヶ月÷12ヶ月=86,250円 465,750円
平成24年度 1,000万円×0.9×0.023×12ヶ月÷12ヶ月=207,000円
平成25年度 1,000万円×0.9×0.023×10ヶ月÷12ヶ月=172,500円

建物の取得年度が平成19年3月31日以前ですので、自宅として使用をしていた期間も賃貸に出していた期間も「旧定額法」で計算を行っております。

自宅として使用をしていた期間は非事業用、非業務用建物となりますので、この建物の法定耐用年数である「47年」を1.5倍にした年数を耐用年数とします。

「47年」を1.5倍にしますと「47年×1.5=70.5年」となり、1年未満の端数は切り捨てですので、耐用年数は「70年」となります。

耐用年数が「70年」の旧定額法の償却率は「0.015」であるため、自宅として使用をしていた期間はこちらを適用しております。

賃貸に出していた期間は、非事業用、非業務用建物とならず、更に中古の建物となっておりますので、こちらは「簡便法」で算出を行った「45年」を耐用年数とします。

耐用年数が「45年」の旧定額法の償却率は「0.023」であるため、賃貸に出していた期間はこちらを適用しております。

上記の表で算出を行った減価償却費を合算しますと「1,215,000円+465,750円=1,680,750円」となり、この金額がこの建物の減価償却費相当額となります。

ここまで計算ができましたら、後は算出を行った減価償却費相当額を建物の取得価額から差し引けば、建物の取得費を求めることができます。

設定では、建物の取得価額は「1,000万円」です。

上記の計算結果を踏まえますと、建物の取得費は「10,000,000円-1,680,750円=8,319,250円」となります。

以上が、最初は自宅として使用をしていた中古の建物を、事業用や業務用などに転用をして、その後に売却をする場合の建物の取得費の計算例となります。

次は、事業年度が12ヶ月未満の期間に使用をした建物を売却する場合の取得費の計算例をご紹介致します。

事業年度が12ヶ月未満の建物

事業などを始めた年は、事業年度が12ヶ月に満たないことがあり、その年度に取得をして使用を始めた建物を売却する場合は、特別な計算を行って減価償却費を計算する必要があります。

まず、その年度に適用をする償却率を計算し、その後は事業年度の月数と建物を使用した月数を踏まえて計算を行います。

これは、事業を解散して、事業年度が12ヶ月に満たない時にも使用をします。

それでは、これから事業年度が12ヶ月未満の建物を売却する場合の建物の取得費を計算していきます。

下記の表の条件で、法人の方と個人事業主の方が建物を取得し、売却をする場合の建物の取得費の計算を行いますので、まずはこちらをご確認ください。

なお、事業年度につきましては、法人は4月1日~3月31日、個人事業は1月1日~12月31日の期間と設定をしております。

今回の計算例で減価償却費相当額を求める建物
(事業年度が12ヶ月未満の建物)
建物の取得価額 3,000万円
建物の耐用年数 「47年」
(鉄筋コンクリート造の住宅用のものの法定耐用年数)
事業の開始日 平成23年9月1日
平成23年度の
事業年度の月数
法人…7ヶ月
(平成23年9月~平成24年3月)
個人事業…4ヶ月
(平成23年9月~平成23年12月)
建物を取得した日 平成23年11月1日
建物を売却した日 平成26年2月28日
法人の各年度の
使用月数
平成23年度 5ヶ月
(平成23年11月~平成24年3月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年4月~平成25年3月)
平成25年度 11ヶ月
(平成25年4月~平成26年2月)
個人事業の各年度の
使用月数
平成23年度 2ヶ月
(平成23年11月~平成23年12月)
平成24年度 12ヶ月
(平成24年1月~平成24年12月)
平成25年度 12ヶ月
(平成25年1月~平成25年12月)
平成26年度 2ヶ月
(平成26年1月~平成26年2月)

設定では平成26年2月28日に建物の売却を行っているため、法人も個人事業も期中売却を行っていることになります。

そのため、法人は法人税法上(詳しくは「期中売却をした時の取得費」をご覧ください)、平成25年度の「期首帳簿価額」を建物の取得費とします。

個人事業は所得税法上、建物の取得費に「期首帳簿価額」と「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」のどちらを選択しても差し支えはありません。

そのため、個人事業は今回の計算では「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択したものとして建物の取得費の計算を行います。

「期首帳簿価額-売却直前までの減価償却費」を選択した時には、平成26年度の「必要経費」に「売却直前までの減価償却費」を計上します。

上記の設定で計算を行いますと、法人、個人事業の場合の減価償却費相当額は下記の表の通りです。

今回の計算では、法人と個人事業の減価償却費に小数点以下の端数が出る年度があったため、端数が出た場合、法人は「切り捨て」、個人事業は「切り上げ」で計算をしております。

減価償却費の計算例
(事業年度が12ヶ月未満の建物)
計算方法 減価償却費
相当額
法人 平成23年度 3,000万円×0.013×5ヶ月÷7ヶ月=278,571円 938,571円
平成24年度 3,000万円×0.022×12ヶ月÷12ヶ月=660,000円
個人事業 平成23年度 3,000万円×0.008×2ヶ月÷4ヶ月=120,000円 1,550,000円
平成24年度 3,000万円×0.022×12ヶ月÷12ヶ月=660,000円
平成25年度 3,000万円×0.022×12ヶ月÷12ヶ月=660,000円
平成26年度 3,000万円×0.022×2ヶ月÷12ヶ月=110,000円

建物の取得年度が平成19年4月1日以後ですので、法人も個人事業も「定額法」で計算を行っております。

償却率は法定耐用年数が「47年」の建物ですので、「定額法」の「0.022」を適用しますが、平成23年度は法人も個人事業も事業年度の月数が12ヶ月未満です。

平成23年度は、法人は「7ヶ月」、個人事業は「4ヶ月」が事業年度の月数となります。

そのため、平成23年度の償却率は「0.022」を適用せず、改めて事業年度の月数に見合った償却率を適用する必要があります。

事業年度が12ヶ月に満たない場合、「旧定額法」、「定額法」、「定率法」は、「耐用年数に定められた償却率×当該事業年度の月数÷12ヶ月 」で償却率を算出します。

求めた償却率に小数点以下3位未満の端数がある時は、その端数を切り上げます。

「旧定率法」は、「法定耐用年数×当該事業年度の月数÷12ヶ月」で算出ができた耐用年数に応じた償却率を適用します。

求めた耐用年数に1年未満の端数がある時は、その端数を切り捨てます。

なお、当該事業年度の月数に端数がある場合は、どちらの計算でも1ヶ月とします。

これらを踏まえて償却率の計算を行いますと、法人は「0.022×7ヶ月÷12ヶ月=0.0128…」となり、小数点以下3位未満の端数は切り上げですので、平成23年度の償却率は「0.013」となります。

個人事業は「0.022×4ヶ月÷12ヶ月=0.0073…」となり、小数点以下3位未満の端数は切り上げですので、平成23年度の償却率は「0.008」となります。

その他の期間は事業年度が12ヶ月ありますので、通常通りの償却率で計算をしております。

ここまで計算ができましたら、後は算出を行った減価償却費相当額を建物の取得価額から差し引けば、建物の取得費を求めることができます。

設定では、建物の取得価額は「3,000万円」です。

上記の表の計算結果を踏まえますと、法人の建物の取得費は「30,000,000円-938,571円=29,061,429円」となります。

個人事業の建物の取得費は、「30,000,000円-1,550,000円=28,450,000円」となります。

法人は「任意償却」ですが、上記の表の減価償却費を全て「損金」に計上したものとして計算をしております。

以上が、事業年度が12ヶ月未満の期間に使用をした建物を売却する場合の建物の取得費の計算例となります。

これで、特殊な建物の取得費の計算例を全てご紹介することができました。

これらの計算例はあくまで一例ですので、同じ条件であっても減価償却費相当額や建物の取得費が異なる場合があります。

ご自身で減価償却費などを計算することが困難でしたら、税理士の方などに依頼をすることも可能です。

依頼をするとその分費用などがかかってしまいますが、確実な減価償却費相当額を知ることができます。

 - 不動産売却時の減価償却