不動産を売却した際の諸費用の計算とその後の手取り金額
2017/02/03
不動産を売却するとなると、やはり気になるのが、売却後にどれだけの儲けがでるのかという部分です。
不動産を売却する際には、様々な費用が掛かり、単に成約価格が手取り金となる訳ではありません。
実際の手取り金額を知るためには、発生する可能性のある諸経費を十分に把握しておく必要があります。
不動産売却に必要な諸経費は、不動産の状態や売主の方の事情などで異なってくるのが一般的です。
このページでは、不動産売却時に必要になる可能性のある諸費用と、実際の手取り金額の計算方法について記載を行っていきます。
まずは、不動産売却時に必要になる可能性のある主な費用についてご説明致しますので、必要な方はご覧ください。
目次
手取り金額の算出に必要な諸費用
不動産売却時の手取り金額を計算するためには、やはり売却までに必要な諸費用の計算が必要です。
不動産売却に係る費用の一例としては、
「仲介手数料」
「印紙代」
「登記費用」
などがあります。
これらの費用は、きちんと周辺の情報などを調べることで、ある程予想をできる場合が殆どです。
この項目では、不動産売却時に発生する可能性のある主な諸費用と、その計算方法などについて記載を行っていきます。
なお、これら諸費用を計算する際には、実際の不動産の取引金額(成約価格)を参考にすることも少なくありません。
そのため、不動産の取引金額(成約価格)が分からないという方は、事前にこれらの予想を立ておく必要があります。
不動産売買時の成約価格や査定価格の大まかな予想方法につきましては、お手数をお掛け致しますが、「所有している不動産を売却する際に知っておきたい基礎知識」の記事にあります「不動産の予想売却価格の計算方法」の項目をご覧ください。
では、まずは、不動産売却時の契約書などに貼付が必要な「印紙代」についてご説明致します。
契約書などの印紙代の費用
不動産の売買契約書などは「課税文書」に該当し、作成時には契約額に見合った印紙代の納付が必要になります。
不動産売却後の手取り金額を計算するためには、この印紙代の額も、ある程度把握をしておかなくてはいけません。
不動産売買時の印紙代は、取引金額(成約価格)によって、一定に定められております。
そのため、不動産の取引金額をある程度予想することができれば、その金額から必要な印紙代を知ることができます。
下記は、「平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間」に作成された不動産売買契約書の印紙税の一例です。
上記期間内は、誰でも印紙代の軽減税率措置を受けることができます。
取引金額(成約価格)が、500万円超えで1千万円以下の場合の「本則税率は1万円」→
「軽減税率は5千円」
取引金額(成約価格)が、1千万円超えで5千万円以下の場合の「本則税率は2万円」→
「軽減税率は1万円」
取引金額(成約価格)が、5千万円超えで1億円以下の場合の「本則税率は6万円」→
「軽減税率は3万円」
その他の印紙代につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「必要になる印紙税額について」の項目をご覧ください。
以上が、不動産売却時の契約書などに貼付が必要な印紙代の説明になります。
不動産売買時に、契約書などの作成を行わない場合には、印紙税の納付は必要ありません。
(殆どの場合は契約書の作成を行います)
なお、不動産会社などに仲介を依頼した場合、これら契約書の作成は、殆どの場合不動産会社が代行をしてくださいます。
この場合、契約書作成時の手間を大幅に削減することができますが、やはり後に仲介手数料の支払いなどが必要になってしまうのが一般的です。
そのため、次は、不動産会社に仲介をした場合に必要になる「仲介手数料」についてご説明致します。
仲介手数料の計算と必要な費用
仲介手数料は、不動産の売買を、不動産会社などに仲介して貰う際に必要になる費用です。
その際の料金は、一定の金額が必要になるという訳ではなく、それぞれの不動産会社で設定金額が異なっております。
そのため、仲介依頼を行う予定の不動産会社の仲介手数料を調べ、費用の予想を立てることが大切です。
また、まだ依頼をしたい不動産会社が決まっていない場合には、法で定められた仲介手数料の上限額を参考に、大体の費用を予想することもできます。
もちろん、全ての不動産会社が、この上限価格という訳ではありませんが、これより高い仲介手数料を要求してくる業者はありません。
そのため、この上限額で仲介手数料を計算しておけば、実際の手取り金額が多くなることはあっても少なくなることはなくなります。
以下は、仲介手数料の上限額を計算するための計算式です。
取引価格(成約価格)が200万円以下の場合は、
「取引価格(成約価格)×5%+消費税」
取引価格(成約価格)が200万円超え400万円以下の場合は、
「取引価格(成約価格)×4%+2万円+消費税」
取引価格(成約価格)が400万円を超えの場合は、
「取引価格(成約価格)×3%+6万円+消費税」
なお、上記の計算式は、それぞれの仲介手数料を簡易的に計算する方法です。
更に詳しい仲介手数料の上限額の計算方法につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産売却時の仲介手数料の計算方法と安くするためのコツ」の記事にあります「不動産売却の時の仲介手数料」の項目をご覧ください。
以上が、不動産売却時に必要になる可能性のある仲介手数料の説明になります。
仲介手数料は、場合によっては非常に高額になってしまいますので、やはり事前に費用の把握をしておくことが大切です。
なお、不動産売買時に高額になってしまう可能性のある費用は、仲介手数料以外にも存在します。
例えば、不動産売買に係る「登記費用や測量費用」などは、想像以上に高額な費用が必要になってしまうことも珍しくありません。
そのため、次は、「登記や測量」などを行う際に必要な費用についてご説明致します。
登記や測量に必要な費用
売却する不動産に抵当権が設定されていたり、登記事項に不備があったりした場合などには、売主負担でそれらを対処するのが一般的です。
更に、不動産の地積や境界が曖昧な場合には、買主の方から境界確定や測量を求められることもあります。
そのため、これらの問題が起こる可能性のある不動産を売却する場合には、やはり事前に各費用を想定しておくことが大切です。
なお、不動産売却時に行う登記の一例としては、「抵当権抹消登記」などがあります。
抵当権抹消登記を行う際の費用の目安としては、
登録免許税が、1件につき「1,000円(最大で2万円)」、
司法書士への報酬が、大体「10,000円~15,000円」程度
です。
抵当権抹消登記以外に、売主負担となる可能性のある登記とその諸費用につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「不動産売却の際の登記費用」の項目をご覧ください。
また、測量の際には、現況測量と確定測量があり、正確な測量を望むならば「確定測量」を行う必要があります。
一般的な戸建を現況測量で測量し、その費用が数万円~数十万円程度であった場合、確定測量では、その数倍以上の費用が掛かってしまうこともあります。
測量を行う際に必要な費用の説明につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「境界明示・測量に必要な費用とは?」の項目をご覧ください。
以上が、登記や測量などを行う際に必要な費用の説明になります。
なお、登記や測量を行う際には、手続きに時間が掛かってしまうこともありますので、なるべく早くに作業を始めることが大切です。
また、登記や測量以外にも、時間が掛かってしまいそうな作業は、早めに着手しておくようにしてください。
例えば、売主の方の「引越し」などは、費用が高額になりやすいこともあり、作業が長期化してしまうこともあります。
やはり、引越しをスムーズに終えるためには、事前に引越しに必要な費用を把握しておくことが重要です。
そのため、次は、こういった不動産売却時の引越しに必要な費用についてご説明致します。
売主の方の引越しに必要な費用
自己の住居を売却する場合、売主の方は新しい住居に引越しをする必要があります。
その際の費用は、
「引越しをする人数」
「荷物の量」
「引越し先」
などで大幅に変わってしまうため、一概に何円だということはできません。
単身での引越しであれば数万円程度、大人数になると数十万円の引越し費用が必要になってしまうこともあります。
そのため、実際の引越し事例などを参考に、ご自身の状況に近いものを調べ、その料金を目安にしておくなどの対処が必要です。
引越しの際に必要な費用の目安につきましては、お手数をお掛け遺体しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「不動産売却の際の引越し費用」の項目をご覧ください。
以上が、不動産売却時の引越しに必要な費用の説明になります。
なお、引越しを行う際には、引越し業者などに依頼をせず、全てご自身で作業を行うことも可能です。
この場合、必要な費用が大幅に削減できますが、やはりその分時間や労力などが掛かってしまいますのでご注意ください。
なお、万が一、引越しの際や普段の生活で住宅に不備などが見つかった場合、それらのメンテナンスもしておく必要があります。
これらの費用は、場合によっては高額になってしまうこともありますので、事前に費用を調べておくと安心です。
そのため、次は、こういった売却する不動産に対して、何かしろのメンテナンスを行う際の費用についてご説明致します。
メンテナンスなどに必要な費用
不動産を売却する際には、リフォームや各所の修理修繕、ハウスクリーニング、住宅診断(インスペクション)などを行ってから売却をすることも珍しくありません。
更に、土地を売却するために事前に建物を解体することもあり、こういった点検・変更を行う可能性のある方は、事前に諸費用について把握をしておくことが大切です。
やはり、綺麗な不動産は印象が良いですし、住宅の性能が安定していると、当然に買主の方も見つかりやすくなります。
とはいえ、
「リフォーム・修理修繕」
「ハウスクリーニング」
「住宅診断(インスペクション)」
「建物の解体」
のどれを行うにしても、最低でも、万単位の費用が必要になり、多いものだと100万円以上の費用が必要になってしまうこともあります。
特に、リフォーム・修理修繕、建物の解体には高額な費用が必要になってしまう可能性が高いため注意が必要です。
これらの費用の詳しい説明につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「不動産を変更・点検する場合」の項目をご覧ください。
以上が、売却する不動産に対して、何かしろのメンテナンスを行う際の費用の説明になります。
なお、資金に余裕がない状態で、無理にこれらのメンテナンスを行う必要はありませんので、ご自身が必要だと感じたものだけを実施するようにしてください。
これらの計算が終わりましたら、後は、その他必要になる費用について最終確認を行っていくだけです。
やはり、不動産を売却する際には、突然に想定外の費用が必要になってしまうことも珍しくありません。
そのため、売主の方は、様々な面から不動産を確認し、必要になる可能性のある費用を考えていくことが大切です。
次は、上記以外で、不動産売買時に必要になる可能性のある費用についてご説明致しますので、ご自身の状況と照らし合わせて、必要な費用を検討してみてください。
その他必要になる諸費用
不動産を売却する際には、上記以外にも、様々な費用が必要になる可能性があります。
不動産売却に伴う不用品の処分費用、トラブル対処に必要な費用、賃貸物件の立退料などがその例です。
そのため、これらが必要になる可能性のある方は、事前に各費用を想定しておくと、売却時に対応がしやすくなります。
もちろん、これら以外にも、必要になる可能性のある費用は、なるべく多く想定をしておくと安心です。
やはり、予め必要になる諸費用を多めに想定しておけば、後に予定よりも出費が多くなってしまう事態を防ぐことができます。
なお、不動産売却時に必要になる可能性のある主な費用につきましては、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事をご覧ください。
以上が、上記以外で必要になる可能性のある費用の説明になります
これで、不動産売却時の手取り金額を計算するために必要な諸費用の説明は終わりです。
なお、不動産売却による手取り金額を正確に計算するためには、こういった支払いが必要な費用以外に、「返ってくる可能性のある費用」にも意識をしておかなくてはいけません。
そのため、次の項目では、不動産売却時に帰ってくる可能性のある主な費用についてご説明致します。
不動産売却時に行われる各種返金
不動産を売却する際には、買主の方やその他機関などから、金銭の返金を受けられる場合があります。
やはり、不動産売却時には、必要な諸経費を予想しておくことも大切ですが、こういった収入となる金銭を把握しておくことも大切です。
そのため、この項目では、不動産売却の際に返金される可能性のある費用と、その計算方法について記載を行っていきます。
なお、不動産売買時の各種精算金は、不動産の「取引金額」に加算されるケースが殆どですので、税金計算の際にはお間違いのないようご注意ください。
では、まずは、マンションなどを売却した際に返金される可能性のある主な費用についてご説明致します。
(下記に記載されているものは、主な返金例となりますので、実際にはこれら以外にも返金される金銭が存在する場合があります)
マンションの諸経費の返金計算
マンションなどを購入すると、通常は、毎月、管理費や修繕積立金、駐車場料金などの支払いが必要になります。
これらの費用は、マンションの現所有者が、前月に来月の分まで支払っていることも珍しくありません。
この場合、そのままマンションの売却を行ってしまうと、売主の方が損をしてしまいます。
何故なら、上記のような諸費用を支払い終わっている月に、マンションなどを売却した場合、
本来、「買主の方が負担すべき管理費・修繕積立金・駐車場料金」を、「売主の方が既に支払ってしまっている」といった事態が起こってしまうからです。
これでは、売主の方と買主の方が、公平な取引を行ったとはいえません。
そのため、こういった場合には、売主の方と買主の方の間で、それらの費用を清算するのが一般的です。
(なお、「精算」とは、日割り日数などを用いて、金額を細かく計算することであり、「清算」は、その結果に基づいて、実際に金銭のやり取りをすることです)
その際には、殆どの場合、「お互いの所有日数」をもとに、日割りで返金額を計算していきます。
計算式:
諸費用の金額×それぞれの所有日数÷1ヶ月の日数
例えば、1ヶ月(30日)の内、売主の方が「13日」に不動産を譲渡した場合には、
売主の方が不動産を「12日間所有」し、
買主の方が不動産を「18日間所有」
することとなり、この日数に応じた金額の清算が必要になります。
なお、これら返金額の詳しい計算方法と計算例につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「不動産の各種精算金の返金」の項目をご覧ください。
以上が、マンションなどを売却した際に返金される可能性のある主な費用の説明になります。
なお、不動産を売却した際に返金される可能性のある費用は、これだけではありません。
他にも、固定資産税や都市計画税なども、通常は買主の方から返金をして貰えます。
やはり、不動産売却後の手取り金額を計算するためには、これらの返金額も視野に入れておかなくてはいけません。
そのため、次は、こういった固定資産税や都市計画税、その他費用の返金についてご説明致します。
各種税金などの返金計算
不動産を所有していらっしゃる方は、毎年、固定資産税や都市計画税などの税金を納付しております。
固定資産税や都市計画税は、毎年「1月1日時点の所有者の方」に課税がされるのが一般的です。
そのため、これら税金も、マンションの管理費などと同様、
不動産を売却する時期によっては、本来、「買主の方が負担をすべき税金」を、「売主の方が支払っている」という状況になってしまいます。
これでは、売主の方が損をしてしまい、やはり公平な取引を行ったとはいえません。
そのため、売主の方は、買主の方から「買主の方の所有期間分に相応する税金」の返金を受け取ることができます。
この場合の返金額も、先程と同様に、「お互いの所有日数」による日割りで計算をしていきます。
計算式:
税金の金額×それぞれの所有日数÷1年間の日数
なお、税金の負担額を日割り計算する際には、所有日数の起算日を「1月1日」にするケースと「4月1日」にするケースがありますのでご注意ください。
これら返金額の詳しい計算方法と計算例につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「固定資産税・都市計画税の返金」の項目をご覧ください。
なお、今までは、「買主の方から返金が行われる費用」について記載を行ってきましたが、中には、「買主の方以外から返金される費用」が発生することもあります。
不動産を購入する際に支払った
「火災保険料・地震保険料」や
「住宅ローン保証会社保証料」
の途中解約による返金などがその例です。
これらの返金額につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります
「火災保険料・地震保険料の返金」と、
「住宅ローン保証会社保証料の返金」
の項目をご覧ください。
以上が、固定資産税や都市計画税、その他費用の返金についての説明になります。
これで、不動産売却の際に、返金される可能性のある主な費用の説明は終わりです。
これら返金される可能性のある費用の把握が終わりましたら、今度は、住宅ローンの状態などについて考えていきます。
不動産を売却する場合、通常は抵当権を抹消してから売却を行うのが一般的です。
不動産の抵当権を抹消するということは、残っている住宅ローンを全額返済する必要があるということです。
万が一、住宅ローンを残したままで不動産の売買を行ってしまうと、後に深刻な問題が起こってしまいかねません。
そのため、次の項目では、住宅ローンを完済していない状態の不動産を売却する際に、発生する可能性のある諸費用についてご説明致します。
住宅ローンを完済していない場合
不動産は、住宅ローンが残っている状態でも売却をすることができます。
この場合、通常と異なる費用が必要になってしまうことも多く、やはり事前にそれらの費用を把握しておくことも重要です。
そのため、この項目では、住宅ローンを完済していない状態の不動産を売却する際に、必要になる可能性のある費用について記載を行っていきます。
(なお、住宅ローンの返済を終えていらっしゃるにも関わらず、抵当権が設定されているという方は、抵当権抹消登記を行うだけで抵当権の抹消が可能です)
まずは、不動産売却後のローン残債処理についてご説明致します。
不動産売却による残債の処理
住宅ローンを完済していない不動産を売却する場合、通常は設定されている抵当権を抹消しなくてはいけません。
不動産の抵当権を抹消するためには、ローン残債を一括で返済する必要があります。
その際には、不動産売却によって得られた「売却金」を返済に充てるのが一般的です。
そのため、住宅ローンの残高は、最終的な手取り金額に大きな影響があると考えておいてください。
住宅ローンの残高は、各金融機関の窓口へ問い合わせなどをすることによって確認をすることができます。
また、既に「残高証明書」などをお持ちの方は、これらの書類でも確認が可能です。
なお、金融機関によっては、ローンの残高をインターネットなどから確認できる場合もありますので、各金融機関に従い処理を行ってください。
以上が、住宅ローン残債の処理についての説明になります。
なお、住宅ローンを一括返済する際には、ローンの残高だけを支払えば良いという訳ではありません。
何故なら、住宅ローンを一括返済するためには、金融機関にそれ相応の手数料の支払いが必要になってしまう場合が多いからです。
その際の手数料は、「一括繰上げ返済手数料」などと呼ばれており、それぞれの金融機関で金額が異なっているのが一般的です。
そのため、次は、住宅ローンを一括返済する際に必要になる「一括繰上げ返済手数料」の金額についてご説明致します。
住宅ローンの一括返済に係る処理
住宅ローンを完済していない不動産を売却するためには、ローン残債の一括返済が必要だということは既に書きました。
その際には、ローン残債を一括繰上げ返済できるよう、金融機関にローンの返済期間を変更して貰わなくてはいけません。
この手続きは、本来必要のない手続きであり、金融機関は余計な手間を掛けなくてはいけないということになります。
そのため、通常は銀行に対して、返済期間変更の手間に応じた「一括繰上げ返済手数料」の支払いが必要です。
一括繰上げ返済手数料の金額は、各金融機関や契約形態などで異なる場合が多く、
変動金利であれば「数千円程度」
固定金利であれば「数万円程度」
と、大きな金額幅があることも珍しくありません。
そのため、正確な金額を知るためには、やはり融資を受けている金融機関の手数料を確認することが大切です。
なお、住宅ローンの一括繰上げ返済手数料の詳しい内容につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「一括繰上げ返済手数料の費用」の項目をご覧ください。
以上が、住宅ローンを一括返済する際に必要になる一括繰上げ返済手数料の説明になります。
これで、住宅ローンを完済していない状態の不動産を売却する際に、発生する可能性のある主な費用の説明は終わりです。
これら諸費用の確認ができましたら、次は、売却後の税金を計算していきます。
なお、不動産売却後の税金は、「取得費・譲渡費用」を漏れなく計上することで、大きく削減ができることも珍しくありません。
そのため、次の項目では、この「取得費・譲渡費用」に計上できる費用について説明を行っていきます。
取得費と譲渡費用の説明
不動産を売却する際には、取得費や譲渡費用に計上できる費用を的確に把握しておくことが大切です。
やはり、これらの費用を漏れなく計上することができれば、不動産売却後の税金を減らすことができます。
不動産売却後の税金を減らせるということは、最終的な手取り金額を増やすことに繋がるということです。
とはいえ、中には、取得費や譲渡費用という言葉を聞いただけでは、どのような費用が計上できるのか分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
そのため、この項目では、取得費と譲渡費用に計上ができる諸費用についてご説明致します。
取得費と譲渡費用への計上
不動産売却時には、実際の譲渡価額(成約価格)から「取得費・譲渡費用」を差し引いた金額を「課税譲渡所得」とすることができます。
そのため、不動産売却後に発生する税金を減らすためには、いかに取得費と譲渡費用に諸費用を計上できるかが鍵です。
なお、
取得費とは、「売却をした不動産を取得するまでに要した費用」、
譲渡費用とは、「売却をした不動産を譲渡するまでに要した費用」
のことです。
取得費と譲渡費用に計上ができる具体的な費用につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります
「取得費として計上できる費用」と
「譲渡費用として計上できる費用」
の項目をご覧ください。
以上が、取得費と譲渡費用に計上ができる費用の説明になります。
これらの確認が終わりましたら、次は、とうとう不動産売却後の税金計算です。
なお、不動産売却によって得た譲渡所得は、分離課税となりますので、他の所得とは合算をしません。
万が一、間違えて他の所得と合算をして税金の計算をしてしまった場合、必要な税額が大きく狂ってしまします。
そのため、次の項目では、こういった不動産売却に係る税額の計算方法について記載を行っていきます。
不動産を売却した後の税金
不動産を売却した場合、その譲渡所得が高額になってしまうことも珍しくありません。
不動産の譲渡所得が高額な場合、やはりその後に必要となる税金も高額になってしまいます。
そのため、手取り金額を計算する際には、必要な税額がどの程度であるか把握をしておくことも重要です。
そこで、この項目では、不動産売却後の税金の税率とその計算方法についてご説明致します。
不動産売却による税金と特例
不動産の譲渡所得は、立派な「所得」に分類されますので、それに応じた「譲渡所得税」と「住民税」の支払いが必要になります。
そのため、不動産の売却を考えた時点で、これら税金の支払いを視野に入れておくことが大切です。
なお、不動産売却時の課税譲渡所得は、上記の「取得費と譲渡費用」以外にも、「各種控除額」を差し引いて計算をすることができます。
計算式:課税譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-各種控除額
この場合の「各種控除額」とは、特例による控除のことです。
不動産売却時の特例には、「3,000万円の特別控除」や「買換え特例」、「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」など様々なものがあります。
そのため、不動産売却時に、これら特例の適用要件を満たしていらっしゃる場合には、きちんと適用をしておくことが大切です。
なお、特例の適用要件に関する注意点につきましては、同ページの「不動産売却後の税金の削減」の項目をご覧ください。
課税譲渡所得の計算が終わりましたら、次は、不動産の所有期間を確認し、必要な税率を確認します。
不動産の所有期間が5年以内【短期譲渡所得】→
税率は「39.63%」
不動産の所有期間が5年超【長期譲渡所得】→
税率は「20.315%」
不動産の所有期間が10年超【長期譲渡所得(軽減税率を適用した場合)】→
6000万円以内の部分の税率が「14.21%」、6,000万円超の部分の税率が「20.315%」
なお、更に詳しい税金や特例の説明につきましては、「不動産売却をした際に適用できる特例や2種類の税率と計算」の記事をご覧ください。
以上が、不動産売却後の税金の税率と、その計算方法になります。
万が一、不動産を売却し、その譲渡所得が赤字になってしまった場合には、税金の支払いは必要ありませんのでご安心ください。
ここまで計算が終わりましたら、次は、とうとう実際の手取り金額がどの程度になるかを計算していきます。
なお、その際には、計算に算入をする費用をきちんと把握しておかなくては、正確な金額を計算することができません。
そのため、次の項目では、不動産売却時の手取り金額を計算する際に算入が必要な費用と、その計算方法についてご説明致します。
不動産売却時の手取り金額の計算
不動産売却を行うために必要な諸費用と各種精算金の確認が終わりましたら、やっと手取り金額を計算するための準備が整いました。
後は、これら諸費用を、不動産の取引金額(成約価格)から差し引いていけば、手取り金額の予想を算出することができます。
しかし、手取り金額の計算時には、どういった費用を算入すれば良いのか曖昧になってしまうことも少なくありません。
そのため、この項目では、不動産売却後の手取り金額の計算方法について記載を行っていきます。
なお、これらの計算で得ることのできる金額は、あくまで手取り金額の予想ですので、そのことを踏まえた上で計算を行うようにしてください。
手取り金額の詳しい計算方法
不動産売却時の手取り金額を計算するためには、取引金額(成約価格)から差し引く金銭の把握が必要です。
例えば、税金計算を行う際には、「取得費・譲渡費用」を取引金額から差し引いたものに課税がされましたが、手取り金額の計算時には違います。
「取得費・譲渡費用」は、あくまで税金を計算する際に、算入をする費用です。
そのため、手取り金額を計算するためには、これらの費用の中から、必要なものだけをピックアップして計算を行う必要があります。
取得費に計上がされている費用は、「売却をした不動産を取得するまでに掛かった費用」であり、過去の売買において発生した費用です。
一方、譲渡費用のほうは、「売却をした不動産を譲渡するまでに掛かった費用」であり、今回の売買において発生した費用です。
これらのことから、
取得費のほうは、今回の不動産売却によって発生した諸費用に該当せず、
譲渡費用のほうは、その内訳の多くが、今回の不動産売却よって発生した諸費用であるということが分かります。
更に、売却の際に発生した費用の内、譲渡費用として計上がされていない費用がある場合にも、それらの費用を諸費用にプラスして計算を行わなくてはいけません。
(住宅ローン残債処理のために発生した費用や、その他譲渡費用として計上ができなかった諸費用など)
なお、不動産売却時に各種精算金を受け取る予定の方は、それらを取引金額にプラスするのも忘れないようにしてください。
これらの確認が終わりましたら、それぞれの金額を下の画像に当てはめていきます。
なお、上記画像の各項目の説明につきましては、下記をご覧ください。
- 取引金額(成約価格)
- 不動産の取引価格のことであり、「固定資産税の精算金」や「都市計画税の精算金」、「その他精算金」なども含まれます。
- 諸費用
-
不動産を売却するために必要になる費用の合計額です。
- 売買契約書に貼付する印紙代
- 売買仲介を選択した際の仲介手数料
- 抵当権抹消登記の費用
- その他登記が必要な場合の費用
- 測量や境界確定の費用
- 売主の方の引越しに必要な費用
- 不動産のメンテナンスなどに必要な費用
- 住宅ローンの一括繰り上げ返済手続きに必要な費用
- その他売却の際に必要になる可能性のある費用
- 譲渡所得税・住民税
- 不動産売却後に、その譲渡所得に応じて課せられる税金のことです。
- 住宅ローン残債
- 売却する不動産の住宅ローンの残高のことです。
これらの税率は、不動産の所有期間によって異なりますので、適切な税率をご確認の上、計算を行うようにしてください。
こうして算出された金額が、「不動産売却時の予想手取り金額」となります。
では、これから、下記の条件で不動産を売却した場合の手取り金額を計算してみます。
例:中古一戸建を「3,000万円」で売却した場合
【売却時の前提条件】
- 売買契約書を作成する
- 不動産会社に仲介を依頼する
- 住宅ローンが「1,300万円」残っている(変動金利を選択している)
- 抵当権抹消手続きを司法書士にお願いする
- 金融機関にローンを一括返済できるよう手続きをする
- 売却前に測量を行う
- 引越しは全て家族だけで行う(車などはレンタルをする)
- 不動産のメンテナンスなどは行わず、その他費用は発生しない
- 固定資産税などの返金は考えずに計算をする
- 取得費は不明である
- 不動産は住居用であり所有期間は5年を超え10年以下
- 特例の中の「3,000万円の特別控除」を適用する
【必要な諸経費の予想】
上記の前提条件をもとに、必要になる可能性のある費用を考えていきます。
なお、この条件で必要となる可能性の高い費用とそのおおよその金額は、下記の表をご覧ください。
- 印紙代
-
- 10,000円
- 軽減税率を適用した場合の価格です。
- 本来、取引金額が3,000万円の場合の本則税率は「20,000円」です。
- 仲介手数料
-
- 1,036,800円
- 取引金額が400万円を超えておりますので、「3,000万円×3%+6万円+消費税」の計算式を用いて上限額を算出します。
- 抵当権抹消登記などの費用
-
- 20,000円と仮定
- 抵当権抹消登記をするために必要な登録免許税は、1件につき「1,000円(最大で2万円)」ですので、土地と建物の2つに抵当権が設定されている場合には、「2,000円」の登録免許税が必要になります。
- なお、上記の金額は、抵当権抹消登記に必要な登録免許税と司法書士への報酬を合計したものです。
- 住宅ローンの一括繰り上げ返済手数料
-
- 3,000円と仮定
- 今回は、住宅ローンの金利タイプが「変動金利」という設定ですので、一括繰り上げ返済手数料を3,000円程度と仮定して計算を行います。
- 測量などの費用
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- 300,000円と仮定
- 測量や境界確定に必要な費用は、不動産の状態や状況などによって大きく異なってしまいますので、なるべく正確な金額を調べておくことが大切です。
- 今回は、測量に必要な費用が「300,000円」程度であると仮定しております。
- 引越し費用
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- 10,000円と仮定
- 今回は、引越し業者に依頼をしないという条件ですので、荷物を運ぶための車のレンタル料と、ガソリン代以外に費用は掛かりません。
- これらの費用は、引越し先によっても異なりますが、今回は1万円程度と仮定をし、計算を行っていきます。
- 取得費
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- 1,500,000円
- 取得費が不明である場合には、概算計算による取得費を使用します。
- この場合、取得費は取引金額の5%となりますので、「3,000万円の5%」である「1,500,000円」を取得費とします。
- 譲渡費用
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- 1,346,800円
- 上記費用の中から、譲渡費用に計上ができる費用を合計します。
- なお、「抵当権抹消のために掛かった費用」である「抵当権抹消登記などの費用」と「住宅ローンの一括繰り上げ返済手数料」、「売主の方の引越し費用」などは、譲渡費用に計上をすることはできませんのでご注意ください。
- 課税譲渡所得
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- 0円
- 課税譲渡所得を計算するためには、取引金額(成約価格)から、上記の取得費と譲渡費用を差し引く必要があります。
- 更に、今回は「3,000万円の特別控除」の特例を受ける予定ですので、課税譲渡所得は、「3,000万円-(1,500,000円+1,346,800円)-3,000万円=0円」となります。
- 不動産譲渡所得税・住民税
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- 0円
- 上記で計算をした課税譲渡所得に、対応した税率を掛けていきます。
- 今回、譲渡する不動産は、所有期間が5年を超えているという設定ですので、税率は「20.315%」です。
- これらをもとに、実際の税額を計算すると「0円×20.315%=0円」となります。
- 住宅ローン残債
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- 1,300万円
- 不動産を売却する時点での住宅ローンの残高です。
- これらは、不動産売却後に一括返済を行う必要がありますので、取引金額から差し引いておきます。
これらの費用を全て合計すると(住宅ローン残債以外)、諸費用に算入する金額が、「1,379,800円」であるということが分かります。
【不動産売却によって得られる手取り金額の計算】
上記の情報から、実際に手取り金額を計算すると、その金額は以下のようになります。
なお、今回は固定資産税などの返金を考えずに計算を行うため、取引金額から直接、諸費用などを差し引いていきます。
計算式:30,000,000円-1,379,800円-13,000,000円=15,620,200円
よって、上記条件で、不動産を売却した場合の手取り金額の予想は「15,620,200円」ということになります。
もちろん、これらはあくまで手取り金額の予想ですので、実際の金額とは異なる可能性があるということを視野に入れておいてください。
以上が、不動産売却時の手取り金額の計算方法になります。
これで、やっと、不動産売却時の手取り金額を計算することができました。
こうして計算を行ってみると、諸費用や税金の金額がいかに手取り金額に影響を与えているかが分かります。
やはり、手取り金額を増やすためには、これら諸費用をなるべく多く削減していくことが大切です。
そのため、最後の項目では、少しでも手取り金額を高めるために、意識をしておきたい費用やその注意点などについてご説明致します。
手取り金額を少しでも増やす方法
不動産売却時の手取り金額を増やすためには、なるべく必要な諸費用や税金を削減していく必要があります。
そのため、各所で必要経費を削減することができるよう、意識をしておくことが大切です。
そこで、この項目では、不動産売却時に必要な諸費用や税金を削減できるポイントなどについて記載を行っていきます。
なお、下記の内容は、あくまで一例であり、必ず全ての費用を削減できるという訳ではありませんのでご注意ください。
では、まずは、不動産売却時の仲介手数料やその他手続きでの費用を削減する方法についてご説明致します。
売却に必要な手続きの費用を削減
不動産を売却する際に下記のような状況があった場合、通常は各種費用が発生します。
- 専門業者に売買の仲介を依頼する
- 必要な登記を司法書士に依頼する
- 専門業者に測量や境界確定などを依頼する
- 引越しを業者に依頼をする
- 不用品の処分を業者に依頼する
- 専門業者に不動産の変更・点検を依頼する
- 税金の計算や確定申告の作成を委託する
- 各所のトラブル対策のために弁護士の方に相談をする
- ライフラインに関するトラブルにより工事などを行う
そのため、不動産売却時になるべく手取り金額を増やしたいという方は、こういった費用をいかに削減できるかが大きなポイントとなります。
これらの費用を削減するためには、なるべく料金が安い不動産会社や司法書士、土地家屋調査士、引越し業者、不用品処分業者、税理士、弁護士などに依頼するなどの対策が必要です。
とはいえ、中には、激安の料金を設定し、詐欺や悪質な運営を行っている業者も存在します。
そのため、それぞれの料金と質を総合的に判断し、選択をするようにしてください。
また、これらの中で、ご自身で手続きや作業が行えるものを、他の業者に委託しないようにするだけでも、多くの費用を削減できる可能性があります。
例えば、登記や引越し、不用品の処分、確定申告などは、知識と時間さえあれば、ご自身で手続きや作業行うことが可能です。
しかし、これらの作業を無理にご自身で行なった場合、作業が遅れたり、反対にトラブルが起こったり、間違った手続きをしてしまったりと逆効果になってしまう可能性もあります。
そのため、これらの中からできると感じたものを選択し、個人では無理だと感じたものは、専門の方に依頼をするようにするようにしてください。
以上が、不動産売却時の仲介手数料やその他手続きでの費用を削減する方法の一例になります。
(もちろん、これら以外にも削減できそうな費用がある場合には、個人的に節約を行っておく尚効果的です)
なお、不動産売買において意識しておきたい費用は、上記の費用だけではありません。
やはり、不動産売却後に必要となる「税金」なども、なるべく削減ができるように意識をしておくことが重要です。
不動産売却後に支払いが必要な税金は、特例などを適用することで金額を低く抑えることができますが、その適用方法にも意識をしておくことによって、更に税額を減らせる可能性があります。
そのため、各種特例の適用要件を把握し、なるべく効果的に適用ができる状態を整えておくことが大切です。
最後は、こういった不動産売却時に意識をしておきたい、特例の適用要件の例をご紹介致します。
不動産売却後の税金の削減
不動産を売却して利益が出た場合、その後の税金をなるべく削減するように意識することで、後の手取り金額を増やすことができます。
不動産売却に関する税額を削減するためには、特例の適用が大切だということは既に書きましたが、特例を適用するためには、各種適用要件を満たしていなければいけません。
例:「3,000万円の特別控除」であれば、適用要件の1つに、その住居が「自己の住居用」でないといけないという決まりがあります。
そのため、親族などから相続を受けた不動産を売却する場合、それが「売主が住んでいなかった不動産」であれば、この特例を適用することはできません。
これらを踏まえた上で、下記の事例をご覧ください。
【参考事例】
「Aさん」は既婚者であり、既に実家を出ております。
「Aさん」には、弟(「Bさん」)がおり、弟はまだ実家で両親と一緒に住んでいました。
そうして、月日は流れ、2人の両親が亡くなり、両親と弟の「Bさん」が住居としていた不動産を「Aさん」と「Bさん」が相続しました。
「Aさん」と「Bさん」は、その不動産を売却し、その売却金を2人で分けようと考えております。
この場合、「Aさん」と「Bさん」の共有名義で不動産の売却を行ったほうが良いのでしょうか?
上記の事例を参考に、不動産売却後の税金を低くする方法を考えていきましょう。
まず、上記の不動産は、「両親とBさん」だけが自己の住居用として使用していました。
そのため、「Aさん」は、その住居を「自己の住居用」としていなかったということになります。
ここで、「3,000万円の特別控除」の適用要件を思い出してみてください。
この特例を受けるためには、その住居を「自己の住居用」としていたことが条件の1つです。
そのため、この状況で、相続を受けた不動産を「2人の共有名義」として売却してしまうと、特例の適用が少々ややこしくなってしまいます。
というのも、弟である「Bさん」は、売却不動産を「自己の住居用」としていました。
そのため、もし、「Bさん」が、上記の不動産を売却した場合、「Bさん」の持分の譲渡所得には「3,000万円の特別控除」を適用することができます。
一方、既に違う住居に住んでいた「Aさん」は、その不動産を「自己の住居用」としていませんでした。
そのため、「Aさん」の持分の譲渡所得には、特例を適用することができません。
そうなると、「Aさん」と「Bさん」は、売却益の一部にしか特別控除を受けられず、後の税金が多くなってしまいます。
そのため、こういった場合には、不動産を共有名義にせず、全ての売却益に「3,000万円の特別控除」を受けられる「Bさん」1人の名義で売却を行うことで、後の税金を減らすことができます。
更に、相続した不動産を売却する際には、相続から「3年以内」に売却を行うことで、「相続時に支払った相続税を取得費として加算」することができます。
万が一、不動産を相続してから3年が経ってしまった場合には、もう相続時の相続税を取得費に計上することはできません。
そのため、相続した不動産を売却する際には、「相続から3年以内を目安に売れるよう販売活動を行っていく」ことが重要です。
これらのことから、上記の参考事例では、「Bさんの1人の名義」で「3年以内」に不動産を売却することによって、税金を最大限に削減できるということになります。
また、特例は「3,000万円の特別控除」以外にも、いくつも存在しておりますので、それぞれの適用要件をご確認の上、売却条件など整えていくようにしてください。
以上が、不動産売却時に意識をしておきたい、特例の適用要件の例となります。
これで、不動産売却時に必要になる可能性のある諸費用と、手取り金額の計算方法の説明は全て終わりです。
やはり、不動産売却による利益を最大にするためには、事前に必要な費用を把握し、各場面で最大利益を得ることができよう意識をしていく必要があります。
そのため、現在、不動産を売却する予定のある方は、事前に必要費用を計算し、削減できる費用などを十分に検討するようにしてみてください。