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親子間や兄弟間などの親族へ不動産を売却する際の注意点

      2018/10/22

不動産を売却する際には、事情により親子間などで売買をする場合があります。

親族間で不動産を売買する際には、幾つかの点に注意が必要です。

この記事では不動産を親族に売却する場合について記載しておりますので、参考にしてください。

目次

親族間の不動産売買について

不動産売買は、親族間でも行うことができます。

注意点などは後の項目でご説明致しますので、まず親族間の不動産売買についてご説明致します。

親族の範囲とは

不動産を売却する際には、親族の方に譲渡する場合があります。

親族とは「民法第725条」に定められております。

民法第725条(親族の範囲)
  次に掲げる者は、親族とする。
 

  1. 一  六親等内の血族
  2. 二  配偶者
  3. 三  親等内の姻族

ただし、上記の定めが確実に親族と判定される訳ではないという意見もありますので、詳しくは所轄の税務署などにお問い合わせください。

親子間や兄弟間などの間柄であれば、殆どの場合「親族」とみなされます。

親族へ不動産を売却する理由

親族間の不動産売買は、様々な理由で行われます。

やむを得ない事情がある場合もあり、下記などが主な理由となります。

【不動産を親族間売買する理由】
  • 相続対策として親族の方に売却する
  • 住宅のローンを返済できなくなった際に、その家に住み続けるために(抵当権を抹消できない際に競売ではなく任意売却を選択するために)売却する
  • 事業資金を増やすために売却する
  • 離婚する際に名義を1人にするために売却する
  • 複数人の親族の方が所有している共有名義の不動産を1つの名義にするために売却する

上記は理由の一例ですが、相続や金銭的な問題、名義に関する問題などから親族間売買に至るケースがあります。

親族間の不動産売買の流れ

親族間で不動産を売買する際の流れについて記載致します。

大まかな流れは下記のようになります。

【親族間で不動産売買をする際の大まかな流れ】
  1. 建物や土地などの書類(登記簿謄本や権利証、売買契約書など)を確認する
  2. 適正な不動産の価格を調査する
  3. 不動産売買の条件(売買価格、瑕疵担保責任、その他の必要事項)を決めて売買契約書の作成や登記申請の準備をする
  4. 不動産売買の契約、及び登記申請をする
  5. 法務局の手続きが完了する

親族の方に不動産を売却すること自体は法律上に規定はありません。

しかし、親族間売買は通常の不動産売却よりも不利になる点があり、注意が必要です。

親族に不動産を売却する際の注意点

親族の方に不動産を売却できますが、その際には幾つかの点に注意が必要です。

まず確認が必要なのは、贈与について意識をすることです。

贈与について意識をすること

不動産を売買する際、税務署から贈与とみなされてしまう場合があります。

贈与税は譲渡所得税・住民税よりも高額となることがあり、場合によっては納税の負担が大きくなります。

そのため、親族間売買では税務署から贈与とみなされないようにする必要があります。

不動産を贈与するつもりであれば問題ありませんが、そうでない場合は大きなデメリットとなります。

なお、贈与につきましては、「みなし贈与について」の項目に記載しております。

また、不動産の売却時にかかる税金と贈与税の比較につきましては、「親族へ売却や贈与した際の税金」の項目に記載しておりますので、これらも併せてご確認ください。

住宅ローンに注意が必要なこと

不動産を購入する際には、ローンを組む方もいらっしゃいます。

親族間の売買でも住宅ローンを組みたいと思われる場合があるかもしれませんが、その際にも注意が必要です。

親族間で不動産を売買した際、買主の方は融資の審査が通り辛くなります。

親族間の売買では、金融機関も悪用されることを恐れて殆どが融資を行いません。

どうしてもローンなどを組みたい場合には、ご自身の条件で融資が可能な金融機関を探すしかありません。

専門家の方に依頼をすることで融資が通ったケースもありますので、困難であれば相談をしてみるのも1つの手段です。

相続の場合は同意を得ること

親族間で不動産を売買する理由に、相続があります。

相続の際には様々な理由で不動産を売買しますが、話し合いができていなければ後にトラブルとなる可能性が高いです。

想定相続人の方が複数人であれば、売買をする前に同意を得るようにしましょう。

相続の問題は大きく親族同士が揉める可能性があり、関係の悪化などにも繋がりかねません。

事情がある場合は、それを他の想定相続人の方に伝え、必要であれば話し合いを行うことが大切です。

話し合いがまとまっていないのに強行して売買を行いますと、後に売買が無効となる可能性もありますので、注意が必要です。

気持ちよく相続目的で親族間売買を行うためにも、後にトラブルが起こらないように慎重に行動をしましょう。

不動産会社を通すこと

親族間売買では、不動産会社を通さないことも多いです。

個人間売買でトラブルがなければいいのですが、個人では不明な点が多いのも事実です。

トラブルを避けるためには、個人で売買をするよりも、不動産会社を通すほうが無難です。

不動産会社の方は売買についてプロですので、不明な点は相談できるというメリットがあります。

書類の作成などもご自身で行う必要がなくなり、そういった面の手間も省けます。

必ず不動産会社へ相談をするほうがいい、又、相談すればトラブルがなくなる訳ではありませんが、専門家の方がいるほうが安心感もあります。

贈与などの心配がある際には、特に専門家の方に依頼するほうが無難です。

仲介手数料などがかかるというデメリットはありますが、状況に応じてご選択ください。

みなし贈与について

親族間で売買をする際には、贈与とならないように注意が必要です。

元から贈与のつもりであればいいのですが、そうでなければ手順を踏んで売却しなくてはいけません。

この項目では、より贈与などについて詳しく記載しておりますので、参考にしてください。

みなし贈与とは

親族で売買をする際には、「みなし贈与」に注意が必要です。

贈与の意思がないのに贈与とみなされてしまうことを「みなし贈与」といい、税務署に売買を証明できなければ贈与税がかかります。

例えば、親族間では売買をしたつもりでも、相応な売却価格で取引されなかった場合、それは贈与とみなされます。

【適正価格の場合】
不動産の親族間売買と贈与01

【不適正価格の場合】
不動産の親族間売買と贈与02
そうなりますと、贈与税を納める必要があり、大きく納税の負担が増える可能性があります。

また、相応の価格で売買をしても、贈与となってしまう場合があります。

そのようにならないためには、下記の点に注意が必要です。

【贈与にならないために注意が必要な点】
  • 売買契約書や領収証などの書類を作成すること
  • 登記名義を変更すること

贈与とみなされないようにするには、売却価格を適正に設定し、売買を証明できる書類を作成することが重要となります。

売買契約書は売主の方も買主の方も保管しておくほうが無難です。

書類の内容は、売買を証明できるように必要事項を必ず書き込むようにしましょう。

下記などが必要事項となります。

【売買契約書に記載が必要なもの】
  • 不動産の種類、面積、所在
  • 売買価格
  • 所有権移転時期
  • 代金の支払い方法と時期
  • 売買契約書の作成日時
  • 売主と買主の方の住所、氏名、実印

売買契約書を作成する際には、上記などを記載します。
(確実なのは専門家の方に作成をお願いすることです)

更に、代金を支払う際も領収証を発行し、必ず登記名義を変更する必要があります。

適正な売買価格の設定

親族間売買では、不相応な価格で不動産が売買されてしまうことがあります。

例えば、親から子供に不動産を譲渡する場合、負担を減らそうと安い価格で売却する方がいらっしゃいます。

一見、安い価格で売買できれば子供側は得をしたように見えますが、これでは贈与とみなされ、後に高い贈与税を負担しなくてはいけない可能性があります。

贈与とみなされないためには、適正な価格で不動産を売買しなくてはいけません。

適正な価格で売買をするには、不動産の価値を調査する必要があります。

不動産の価格は、下記の方法で調査できます。

【不動産の価格を調査する方法】
ご自身で調べる方法
ご自身で不動産の価格を調べる場合、近隣の物件について調べる必要があります。
過去や現在に近隣に類似物件が売り出されている場合、その価格を調べることで大まかな相場を調査できます。
その後に固定資産税納税通知書から固定資産税評価額を調べて、そこから価格を設定していくと不相応な価格となりにくいです。
類似物件がなければ、立地、築年数(建物)、面積、状態などから総合的に価格を判断する必要があります。
土地や建物の価格は難しい計算が必要ですので、困難であれば専門家の方に依頼するほうが無難です。
土地であれば、国土交通省や国税庁のホームページで公示価格や路線価、不動産取引価格情報が掲載されておりますので、こちらも参考にしてください
専門家に依頼する方法
現在ではインターネットからも、簡単に一括査定サービスなどを利用できます。
一括査定サービスは複数社で不動産の価格を査定できますので、相場などを調べやすいです。
ただし、厳密な価格ではありませんので、査定後にはご自身で調査した価格などを踏まえて検討する必要があります。
専門家の方に調査してもらうこともでき、確実な価格を調べる際には依頼をするほうが無難です。

最も安心なのは専門家の方に相談をすることですが、ご自身での調査が可能であれば無理に依頼する必要はありません。

親族へ売却や贈与した際の税金

親族間売買をするつもりが贈与となってしまった場合、税金に注意が必要です。

安く売買しても贈与税がかかってしまいますと、反対に損をする可能性もあります。

下記の項目で売却した際の税金と贈与した際の税金の計算例をご紹介致しますので、参考にしてください。

譲渡所得税・住民税と贈与税の計算例

不動産を売却した際の譲渡所得税・住民税と贈与税を比較致します。

売却した際と贈与した際の税額を記載しておりますので、税額がどの程度異なるか比較してみてください。

計算例では、下記の設定で計算致します。

不動産の売却価格
(財産の価額)
3,000万円
取得費 1,000万円
譲渡費用 200万円

上記の場合、譲渡所得税・住民税と贈与税は下記のようになります。

譲渡所得税・
住民税
長期 3,000万円 – (1,000万円 + 200万円) × 20.315% = 3,656,700円
短期 3,000万円 – (1,000万円 + 200万円) × 39.63% = 7,133,400円
贈与税
(一般贈与)
3,000万円 – 110万円(基礎控除) × 50% – 250万円 = 11,950,000円

上記の場合では、贈与税が最も高額になります。

贈与税の税率は財産の価額によって変化しますので、高額な財産ほど損になる可能性が高いです。

まとめ

不動産は親子や兄弟姉妹など、親族間で売買することができます。

しかし、親族間で売買をする際には、通常の売却とは異なる点もあります。

まず、親族間で売買をする際には、下記の点にご注意ください。

  • 贈与とみなされる可能性があること
  • 住宅ローンを受け辛いこと
  • 相続で揉める場合があること
  • 不動産会社を通さなければトラブルが増える可能性があること

上記の中でも贈与に関する問題はご自身で対策ができる点もありますので、意識して売買する必要があります。

不相応な価格で取引した場合や売買を証明できない場合などは、「贈与」とみなされる可能性が高いです。

贈与となってしまいますと、贈与税の支払いが必要になります。

贈与税は財産の価額が高額になるほど税率が高くなり、納税の負担が大きくなる可能性があります。

贈与とみなされれば売主の方と買主の方にその意思がなくても贈与税がかかり、そのような場合を「みなし贈与」といいます。

みなし贈与とならないためには、下記の点にご注意ください。

  • 適正な価格で売買すること
  • 不動産売買契約書や領収証などの書類を作成すること
  • 売買後は登記名義を変更すること

贈与とみなされないように、注意をしながら売買を行うことが大切です。

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