不動産売却の際に確認が必要な境界線の種類と3つの測量方法
不動産を売却する際には、境界線の問題について十分に意識が必要です。
不動産の境界について意識をしないまま売却をしてしまいますと、後にトラブルが起こりやすくなります。
土地の境界は隣接地などとの兼ね合いもあり、近隣トラブルの引き金となる可能性もあります。
不動産売却後にこのような問題が起こりますと、売主の方は買主の方から責任を追及されてしまいます。
この場合売主の方は責任を持って、その問題を解決しなくてはなりません。
特に個人間売買などでは、境界に関する調査なども売主の方が行っておく必要があります。
比較的近年に境界を確定し、測量などを行ったという場合以外には、一度境界を確認しておくと安心です。
不動産の境界調査は、専門の有資格者の方に依頼をする場合が殆どですので、それらに掛かる調査費用などに関しても予算を立てておきたいものです。
このページでは、このような不動産を売却する際の境界線や測量などについてご説明致します。
目次
不動産売却時の境界の重要性
不動産を売却する際には、事前に確認をしておきたい事項がいくつもあります。
不動産と近隣土地の境界などもその中の1つです。
土地などの不動産は、その所有者の方の大事な資産です。
その資産について勝手に隣人が踏み込んでいるとなると、その所有者の方が怒るというのも頷けます。
不動産の境界は、ここまでが自分の土地だと思っていても、実際には違っていたという状況も少なくありません。
こうなりますと、買主の方から相応の対処を求められてしまうのが一般的です。
買主の方が土地の面積や境界に誤差があることを承知で購入を希望している場合を除いて、この場合に非があるのは売主です。
不動産売買時にスムーズに取引を進めるためには、売却予定の土地などの境界を確定しておくことが重要です。
境界が確定されますと、不動産売却後に土地の境界や地積の誤差などが生じなくなります。
(土地の境界を確定する際には、同時に地積などの測量も行われるのが通常です)
なお、不動産を売却する前に、境界確定などが必要となる状況などにつきましては、下記で詳しくご説明致します。
売却時に土地測量が必要となる状況
不動産売却時には、実際の面積などがその売却価格に影響します。
売却をする不動産の地積が広ければ広いほど、売買時の価値も上がっていくのが一般的です。
不動産を売却する前には測量をしたほうが良いといったような意見を多く聞きますが、土地の面積などは
「登記事項証明書」や
「登記簿」
などに既に記載されているのでは、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに不動産の地積は、多くの場合不動産の登記記録に記載がされております。
ただ、この面積は確実に正しい状態で記載がされている訳ではありません。
現在は技術の進歩と共に、土地に対して正確に測量が行えるようになりました。
しかし、かなり昔に行われた土地測量では、最新の測量技術が培われていない状態で測量がされている場合もあります。
この場合、正確な土地面積の測量ができていない可能性があるため、記録上と実際の土地面積に相違が出てしまう可能性があります。
比較的近年に測量を行ったという方は問題ありませんが、かなり昔に行っただけだという方は注意が必要です。
不動産の購入希望者の方が
登記記録上の土地面積で価格を決める「公簿売買」を希望している場合は問題ありませんが、
実際の土地面積で価格を決める「実測売買」を希望している場合には、正確な地積の情報が必要となります。
なお、土地の公簿売買と実測売買の説明につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「実測売買と公簿売買とは?」の項目をご覧ください。
不動産の購入希望者の方と話し合い、測量が必要な場合には事前に行っておくことが大切です。
境界確定測量が必要となる状況
不動産の境界が曖昧となっている状況は、主に下記の3つが想定されます。
- 今までに一度も不動産の境界を確認したことがない
- 境界は決まっているが近隣の方と認識に違いがある
- 境界に関する記録などはあるがそれが正確とは言えない
これらは、主に「古くからある住宅地」などで起こりやすくなります。
新しい分譲地などの場合は、
事前に区間同士の境界がハッキリしている場合も多いため、境界が曖昧となるケースは多くありません。
それに対して、古くからある住宅地などの中で、1区画だけが売り出されているような土地や物件などは違います。
以前は土地の価格がそれほど高くなかったため、土地境界が1メートルずれていたとしても売買価格に大きな影響はありませんでした。
これにより不動産の境界が重視される場面は少なく、曖昧な境界でも取引が成立する状況が多くありました。
現代では以前に比べて土地自体の価格が高くなり、土地境界が1メートルずれるだけで数十万円~数百万円という価格差が生まれる地域もあります。
土地価格の上昇に伴い、現在では不動産に対して境界線が設けられ、正確な地積で売買ができる「実測売買」が好まれるようになりました。
不動産売買では、例外はありますが、原則は売主の方から買主の方へ境界の明示が必要となります。
これらの義務により、最初に記載しました3つの状況の場合には、事前に「境界確定測量」などを行っておく必要があります。
境界未確定の不動産を売買する際には、買主の方の同意を得た上で取引を行う必要がありますが、このような不動産は買い手が現れる可能性が低いのが通常です。
なお、下記のような土地の地積が曖昧である場合には、測量を行わず公簿売買を行う場合もあります。
- 測量費が膨大になる田舎の大きな土地
- 地価の低い郊外地の土地
上記のような土地以外は、基本的に正確な境界や地積の確認が必要となります。
不動産の売れやすさや後のトラブルを考えても、売主の方は境界の確認をしておくようにしてください。
公図と14条地図の主な違い
不動産の境界は、様々な方法を用いて確認ができます。
中には、法務局に備え付けられている「公図」などで境界の確認ができるのでは、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
公図には主に下記の2種類あります。
【公図の種類】
- 公図(法14条4項地図)
- 法14条地図(法14条第1項地図)
上記のいずれの地図にも、それぞれ土地の形状や地番、道路、水路や隣接地などの位置関係が記載されております。
これらの情報が記載されていると聞くと、わざわざ土地の境界確定を行わなくても、公図を確認すれば事が足りるのではと感じてしまうかもしれません。
しかし、多くの場合、公図を基に土地の境界確定は行えません。
何故、公図を基に境界確定をできないのかは、公図が作成された時期や経緯などが関係しております。
また公図で境界確定ができないといっても、「14条地図(法14条第1項地図)」の場合は例外も存在します。
「法14条地図」は、地域によってはその図面を基に境界確定を行える可能性があります。
これらの図面の違いや特徴などにつきましては、下記で詳しくご説明致します。
公図に分類される図面
先程、公図は2種類に分類され、その中の1つが公図(法14条4項地図)と呼ばれると記載しました。
元々、公図(法14条4項地図)には不動産の境界なども記載されているのが通常です。
では、不動産売却時には、どうして公図(法14条4項地図)により境界を確定できないのでしょうか。
その理由を知るためには、公図(法14条4項地図)が製作された時期や経緯などについて知る必要があります。
公図(法14条4項地図)は、明治初期の地租改正の際に作成された地積図を基に作成されました。
明治初期というと、測量技術なども未熟であり、正確な測量を行うことは難しい状態でした。
更に、当時の測量では、山林などは見取りで済ませたり、税金(地租)が少なくなるよう地積を小さく測定したりする場合もありました。
これらの影響により、公図(法14条4項地図)に記載がされている土地情報は、実際のものとは異なる場合が多くあります。
正確な境界が記載されていなくては、それを基に境界確定を行うことはできません。
不動産売却時に境界線などを明確にするためには、公図(法14条4項地図)以外の書類などを準備しておく必要があります。
場合によっては「境界確定測量」なども必要となりますので、余裕を持って境界の確認をしておくと安心です。
境界を確認する際の主な方法につきましては、同ページの「土地の境界を確認する3つの方法」に記載しておりますので、お手数ですがそちらをご覧ください。
法14条地図に分類される図面
公図には「法14条(第1項)地図」と呼ばれる図面も存在します。
公図(法14条4項地図)が、明治時代の地租改正の際に作成された図面を基にしているのに対し、
法14条地図は、公図の地積や境界線のズレを修正し、正確な地図へ置き換えるために作成されている図面です。
具体的には、平成15年から国土交通省が法務省などと協力して、日本全国の土地を地積調査した上で修正が行われております。
地積調査の際には、土地所有者の方の立会を得た上で、地番・地目を確認し境界を定めて測量がされます。
その際に作製された図面は「地積図」と呼ばれ、これが通常「法14条(第1項)地図」と呼ばれます。
法14条(第1項)地図は、特に「各筆の区画及び地番を明らかにするものであること」とされていますが、これは
「図面における国家基準点等により確実に現地復元が可能」であり、
「各筆の区画及び地番が明らかな図面」
であるという意味となります。
図面における国家基準点等により確実に現地復元ができるのであれば、土地の境界線なども正確に復元できますので、
法14条(第1項)地図は、土地の境界線を確認できる有力な資料となり、境界確定に使用できる可能性があります。
ただ、法14条地図を作成するための地積調査は、全ての地域で行われている訳ではありません。
現在の地積調査の実施状況は全体の「52%」であり、多くの地域では、まだ法14条地図の作成が行われておりません。
下記は、各都道府県に分けた地積調査の実施状況の図になります。
法14条(第1項)地図の作成がされていない地域で不動産を売却する際には、その他の方法で境界線を確定する必要がありますのでご注意ください。
土地の境界を示す境界杭
以前に土地に対して境界確定測量などを行った場合には、隣接地との境界に境界杭(境界標)が設置されております。
境界杭の設置された点が境界の境界点であり、それを結び境界線を引きます。
境界杭は地面に設置されているため、売却前に設置がされているかを確認しておくようにしてください。
後に買主の方が土地の境界トラブルに巻き込まれないようにするためにも、境界線の説明は大切です。
売却予定の不動産について、今までに境界確定を行っていない方は、売却までに土地境界確定測量などを行っておく必要があります。
土地境界確定測量を行った際には、通常は「土地境界確定図」が作成されますので、それを買主の方に提示すれば境界線を明示できます。
なお、もし土地境界確定図を紛失してしまったとしても、境界杭さえあればそれを基に境界線を復元することが可能です。
この項目では、このような境界杭と境界点について詳しくご説明致します。
よく使用される6種類の境界杭
不動産を売却する際には、境界を明らかにした上で、買主の方に引き渡す場合が殆どです。
隣接地との境界部分に「塀」や「フェンス」などがある場合には、それで現況確認ができますが、これには正確な境界であるという証明が必要となります。
境界を示す印として設置されている境界杭などは、その際に重要な指標となる場合も少なくありません。
現在土地に設置される境界杭には、主に下記の6つの種類がありますが、
境界杭の種類が違う場合でも、杭自体の模様はほぼ同様です。
【主な6種類の境界杭】
- コンクリート杭
- 永続性があり、一般的に最も多く使用されている境界杭です。
- サイズ、大きさ、長さも様々ですので、場所によって適切なものが使い分けられます。
- 御影石
- 花崗岩でできた境界杭で、他の材質と比べて最も優れた永続性があります。
- 花崗岩は堅く希少価値のある自然石で、加工に手間も掛かりますので、杭自体が若干高価になります。
- 根巻
- コンクリート杭などの根元を、更にコンクリートなどで根巻した境界杭です。
- 境界杭の根元を根巻するため、通常のコンクリート杭よりも費用は掛かりますが、その分土で埋め戻しただけの杭よりも大幅に堅固となります。
- プラスチック杭
- 市場には、加工が簡単なプラスチックで作られた境界杭も多く出回っております。
- プラスチック杭は軽いため、安定性に欠ける部分もありますが、最近ではコンクリートや御影石などを継いだ杭やステンレスで頭部を巻き安定性を高める工夫がされた杭も存在します。
- 木杭
- 木杭には様々なサイズがありますが、1年~2年程度で腐食します。
- 耐久性に欠けるという点から、仮杭又は一時的な杭として使用されるのが一般的です。
- 金属標
- 金属標は鋳鉄杭、真鍮、ステンレス、アルミなどといった材質で作られている場合が多いです。
- 市街地などで多く使われており、現地の状況により上記以外にも様々な材質・形状で作成がされております。
なお、設置された境界杭の境界点の見方につきましては、次の項目で詳しくご説明致します。
設置された境界杭の見方
売却する予定の土地などに境界杭を見つけた場合、その見方などが分からないケースも多くあります。
本来不動産売買時の境界は、「土地家屋調査士」の方に依頼をして確認を行うのが一般的です。
土地家屋調査士の方は、境界などについて熟知しておりますので、見間違いなどが起こる場面はほぼありません。
問題となるのは、売主の方と買主の方が双方で境界などを確認する場合です。
買主の方が後に土地などに塀などを建設する場合、近隣の方と境界紛争を防ぐために境界点の確認は重要です。
境界杭の種類は主に6つあり、そこに5つの模様が記載されているということは先程の項目で記載しました。
境界杭の境界点は、その記載された模様ごとに確認方法が異なります。
該当の土地に設置されている境界杭の模様を確認し、その中のどこが境界点となるのかを知っておくと、買主の方に境界の明示もしやすくなります。
境界杭の模様と、それが示す境界点の確認方法につきましては、下記の画像のようになります。
上記の画像の赤い点部分が、それぞれの境界杭が示す境界点です。
これらの境界点を結んだ線が境界線となり、隣接地と所有土地との境界になります。
境界杭の境界点の確認方法を誤ってしまいますと、根本的に境界が変わってしまうため、十分に注意をして確認をするようにしてください。
境界杭を紛失した場合の対処
土地などに対して境界杭などを紛失してしまった場合、杭を復元するためには状況に応じた対処が必要となります。
比較的最近に土地境界測量を行い、境界に関する正確な資料がある場合には、境界杭の復元費用も低くなるのが一般的です。
それに対して、境界を証明できるような資料がなく、かなり昔に測量を行っただけである場合には、高額な復元費用が必要となる可能性があります。
上記の2パターンでは、境界の復元方法と必要な費用が大幅に異なります。
これら両方のパターンの境界杭の復元方法につきましては、下記の項目で詳しくご説明致します。
境界を証明できる資料がある場合
以前に所有している土地に対して境界杭が存在していたにも関わらず、現在確認を行うと元あった場所から杭が消えているという状況は珍しくありません。
境界杭は、様々な事情などにより紛失や欠損してしまう可能性があります。
境界杭が紛失してしまった場合、境界杭の復元をしなくては境界線の確認が困難となってしまいます。
買主の方も、境界杭が紛失している不動産の購入には慎重になる場合が多いです。
スムーズに不動産を売却するためには、境界杭の状態を整えておくようにしたいものです。
境界杭を復元するためには、「境界復元測量」などを土地家屋調査士に依頼する必要があります。
土地の境界確定測量を行ったのが比較的近年(GPS測量など)であり、下記のような資料がある場合には、それを基に境界杭を復元できます。
- 土地境界確定測量図
- 近年に作成された地積測量図
- 境界確認書
- お住いの地域の法14条(第1項)地図
この場合の境界杭の復元には、境界杭やその設置に関する費用のみが掛かります。
境界杭の設置や土地家屋調査士の方への報酬額につきましては、下記の「境界の復元に必要な費用」でご説明致しますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。
境界を証明できる資料がない場合
境界杭を紛失した際に、
「ご自身の土地の境界を証明できる資料がない場合」や、
「何かしろの理由により資料の信憑性が薄く、近隣の土地所有者の方などに立ち会いを依頼しなくてはならない場合」
などには、境界杭の再設置に関して、高額な費用が必要となってしまう可能性があります。
境界を正確に証明できる資料がない場合には、境界の復元を土地家屋調査士の方などに依頼し、主に下記のような手順で境界杭の復元を行う必要があります。
(下記の手順は、依頼先や必要な作業により変わる可能性もあります)
- 資料調査などの事前調査
- 法務局や市役所などで(古い)公図、地積測量図、登記事項証明書、土地台帳などを調査します。
- 事前調査を基とした現地調査
- 現地で境界杭の有無を確認し、資料調査で取得した公図、地積測量図、登記事項証明書などとの整合性を調査します。
- 隣接の土地所有者の方との境界立会
- 調査した境界の適性を確認するために、現地で隣接の土地所有者の方と境界立会を行った上で、コンクリート杭などの境界杭を仮設置します。
- 境界立会後の境界測量
- 隣地所有者の方が立会のもと確認をした境界を基に、土地の測量を行います。
- 境界確認書などの作成と境界杭埋設
- 境界測量の結果と既存資料を基に消失した境界杭の復元点の計算・設置を行い、境界確認書などを作成して図面と共に土地の隣接所有者の方に印鑑を貰います。
- 土地境界確定測量の費用を支払う
- 土地の境界に関する図面、調査資料、境界確認書などを受け取り、作業に応じた報酬を支払います。
この場合の境界の復元には、
「隣地所有者の方との境界立会」と
「境界復元測量」
が必要となります。
これらを行うためには、高額な費用が必要となるのが通常です。
隣地所有者の方との境界立会や、境界復元測量などに伴う境界杭の設置、土地家屋調査士の方への報酬額につきましては、次の項目でご説明致します。
境界の復元に必要な費用
境界の復元には主に2つのケースがあり、それぞれで費用も異なります。
境界点の位置を特定できる資料などが多ければ、それだけ必要な調査なども少なくなります。
境界を復元する際の費用の目安としては、
- 境界を証明できる資料がある場合
- 50,000円前後~ + (10,000円前後~ × 杭の数)
- 境界を証明できる資料がない場合
- 150,000円前後~ + (10,000円前後~ × 杭の数)
となります。
なお、上記の金額はあくまで目安ですので、実際は異なる可能性もあります。
境界の復元を行う土地の状態や広さ、条件などにより、必要な費用は変わります。
境界の復元に必要な正確な費用を知るためには、実際に土地家屋調査士の方などに見積などを依頼する以外に方法がないのが現状です。
不動産の2種類の境界と特徴
お持ちの土地などの境界を確認する際には、境界の種類などについても意識をする必要があります。
一様に土地の境界といっても、境界には大きく分けて2つの呼び方が存在します。
【境界の種類】
- 筆界
- 所有権界
どちらも同じ境界を指す言葉ですが、その意味合いは少々異なります。
筆界と所有権界の違いは、不動産を売却する際には重要な意味を持ちます。
特に土地が他の方の土地などと隣接している場合などには、境界の確認は十分に行っておくことが大切です。
筆界と所有権界との違いを知らないまま境界の説明を行ってしまいますと、後に重大なトラブルの元となってしまう可能性もあります。
買主の方に詳細な境界の説明を行うためにも、筆界と所有権界の違いについて理解しておかなくてはなりません。
筆界と所有権界につきましては、下記で詳しくご説明致します。
筆界と所有権界の違い
不動産の境界には、「筆界」と「所有権界」の2種類があります。
筆界と所有権界はどちらも土地の境界ではありますが、その概念は大きく異なります。
例えば下記の画像のような土地があり、それぞれ「筆界」と「所有権界」が存在する際には、それぞれの境界により土地の境界線も変わります。
【筆界と所有権界の違い】
- 筆界
- 筆界とは、不動産登記法上の地番と地番の境界のことで「公法上の境界」とも呼ばれます。
- 法務局で取り扱っている境界は全て筆界となりますので、登記記録や公図、地積測量図などの境界も全て筆界となります。
- 筆界は個人が簡単に変更することはできず、変更をするためには分筆登記や合筆登記などの公的な処理が必要です。
-
【筆界の場合の土地の範囲】
- 所有権界
- 所有権界とは、土地の所有者同士が生活上の利便性などから合意の上で、お互いに取り決めた境界で、「私法上の境界」とも呼ばれます。
- 所有権界の決定は個人間で行うため、公的に記録がされている境界と実際の境界が異なる場合もあります。
- 所有権界は個人が自由に変更することができるため、後に位置を変更したとしても分筆登記や合筆登記などの公的な処理は必要ありません。
-
【所有権界の場合の土地の範囲】
不動産を売却する際には、筆界と所有権界を一致させておく必要があります。
境界杭などは筆界と所有権界のどちらの場合でも使われておりますので、杭と筆界が一致していない場合もあります。
隣接の土地所有者の方と境界についてよく話し合い、その境界を登記し直すなどの作業が必要です。
なお、その際に所有権界を決めた当時の当事者の方がいなくなっている場合には、「状況で境界を判断する」以外に境界確認の方法はありません。
この場合は土地家屋調査士の方などに境界の調査を依頼する必要がありますが、最悪は裁判問題となってしまう可能性もありますので十分な注意が必要です。
土地の境界を確認する3つの方法
土地の境界が確定されていない場合には、通常は買主の方から測量などの要望を受けます。
土地を測量し境界を確定しておけば、後に境界によるトラブルが起こる可能性も低くなります。
土地に対して測量や境界の確認をする際には、土地境界確定測量を行う場合も多いです。
土地境界確定測量には、高額な費用が必要となるのが一般的です。
その影響で状況によっては、土地境界確定測量よりも簡易的な測量を行う場合もあります。
不動産を測量する際には、主に下記の3つの方法を選択できます。
- 現況測量
- 土地境界確定測量
- 額縁分筆
上記のどの方法を選択するかは、売主の方と買主の方の意思に委ねられます。
それぞれの測量方法の詳しい説明につきましては、下記でご説明致します。
現況測量の説明
土地境界確定測量には、多くの場合高額な費用と期間が必要となります。
測量費用を少なく抑えたいという場合には、「現況測量」を選択するのも手です。
現況測量は、土地に存在する
- 境界杭(境界標)
- 建物
- ブロック塀
- 電柱
- 道路
などから、現況のおおよその地積を求め、平面図を作成する測量です。
現況測量では、隣接の土地所有者の方や市町村との立会が必要ありませんので、測量の期間が短くて済みます。
現況測量による平均測量期間は約5日~約7日の間です。
なお、現況測量は正確な測量を行う訳ではないため、境界の確定などはできませんが、必要な費用はその分少なくなります。
もし買主の方が、正確な地積が分からなくても良いとお考えの場合には、現況測量を選択しますと必要な費用を削減できます。
土地境界確定測量の説明
不動産を売却する際には、土地境界確定測量などを行う場合が多くあります。
土地境界確定測量では、土地に対して正確な測量と境界確定を行いますので、境界トラブルの回避に対して非常に有効です。
その分、測量などに必要な期間なども多くなってしまいますが、トラブルのない売買を望む際には選択をしたい方法です。
土地境界確定測量では、隣地所有者の方との立合なども必須となります。
それに伴い、お互いのスケジュールを合わせるなどの手間も必要であり、場合によっては想像以上の測量期間が必要となる可能性もあります。
土地境界確定測量による測量期間は、実際の土地がどのような状況なのかで変わってきます。
特に問題がない平均的な広さの不動産であれば、平均して「約1ヶ月~約2ヶ月」の期間が必要です。
不動産自体に複雑な問題があるなど、平均的な不動産でない場合には「約3ヶ月~約4ヶ月」の期間が必要となる場合もあります。
不動産売却時に慌てないためには、期間に余裕を持った上で測量を実施することが大切です。
額縁分筆の詳細と境界
境界紛争の解決策として、「額縁分筆」を選択するという方法もあります。
額縁分筆では、「未確定の境界付近」を図面上30センチ幅で帯のように切り取り、その辺を4つ作ることで額縁状態を作り、
4つの辺の内側を境界確定状態として、30センチの帯部分を保留にする(捨てる)ことで境界を確定します。
正確な境界確定とはいきませんが、取り急ぎで境界を確定したい場合などには、額縁分筆が行われた上で土地が売買されるケースも多くありました。
以前は、額縁分筆後の地積は「残地求積」という方法で計算がされておりました。
残地求積とは、「分筆された新たな土地部分」を測量し、「分筆前の土地面積」から差し引いた上で、それぞれの地積を計算する方法です。
計算式:「分筆前の土地の面積」 – 「分筆された新たな土地の面積」 = 「分筆部分以外の土地面積」
現在、この残地求積が廃止され、「全筆求積」で土地を求積するように統一されました。
なお、全筆求積の詳しい説明につきましては、下記の項目の「全筆求積での土地の測量」で記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。
土地の求積方法が全筆求積に統一された現在は、額縁分筆後に残地求積で地積を計算しただけでは土地の登記ができなくなりました。
額縁分筆を行った場合には、全筆求積により、新たに分筆された土地と、それ以外の土地部分を測量してから登記を行うようにしてください。
現況測量の測量手順
現況測量を行う際には、その流れなどについて知らなくても、通常は測量を行う土地家屋調査士の方などが説明をしてくださいますが、
事前に大まかな流れを把握していれば、スムーズに説明を聞くことができます。
また依頼主の方が境界に関して知識を持っていることで、測量に関する作業の助けとなる場合もあります。
例えば、境界杭などの確認をする際に、依頼主の方に十分な知識があれば、調査の際に正確な情報を土地家屋調査士の方などに提示できます。
スムーズに測量を終えるためにも、現況測量の流れについて知っておくと安心です。
現況測量は簡易測量ですので、個人でも主な流れについて容易に把握できます。
実際の現況測量の大まかな流れと、後に必要な費用などについては、下記の項目でご説明致します。
現況測量の大まか流れ
現況測量では、土地境界確定測量ほど複雑な手続きや作業は必要ありません。
その影響で、依頼主の方も土地家屋調査士の方も負担が少なくて済みます。
土地境界確定測量のように準備が必要な書類なども少ないため、書類作成に関する費用も少額となります。
現況測量では、主に下記の手順で測量が行われます。
(これらの手順は現況測量の一例ですので、異なる手順で測量が行われる場合もあります)
- 土地家屋調査士の方などに現況測量を依頼する
- 土地家屋調査士の方などに現況測量を依頼し、必要な作業に関する説明などを受け、様々な事前確認が行われます。
- 依頼した土地に関する資料調査が行われる
- 法務局、市役所、官公署で、該当土地の資料の収集・調査が行われます。
- 依頼した土地に対して現場調査が行われる
- 収集・調査した資料を基に、現況調査・測量が行われ、土地の物理的状況が確認されます。
- 依頼した土地の測量が行われる
- 土地にポイントが定められ、各種測量が行われます。
- 現況測量の結果がまとめられる
- 現況測量図や各種資料がまとめられます。
- 現況測量の結果を受け取る
- 現況測量の結果と各種書類や図面を受け取ります。
これらの工程が終わり、何も問題がなければ現況測量は終了です。
現況測量は簡易測量ですので、境界の確定などが行われた訳ではありませんが、おおよその地積は計測できます。
なお、買主の方が土地境界確定測量の実施を望んでいらっしゃる場合には、現況測量を実施しただけでは後のトラブルの元となります。
現況測量を選択する際には、買主の方に同意を取っておくようにしてください。
現況測量に必要な費用
現況測量は正確な地積・境界の調査を行いませんので、土地境界確定測量より費用も低く抑えられます。
費用が安いといっても、通常は何万円も程度の費用が必要となるのが一般的です。
現況測量に必要な費用は、測量を行う不動産の状態や面積などによって大きく変動します。
土地の面積が小さく、状態も良好なものなら「数万円程度」、
土地の面積が大きく、状態が悪いものなら「20万円以上」
の費用が必要となる可能性があります。
必要な費用は、実際に現況測量を依頼してみなくては判断が難しいというのが実情です。
現況測量に必要な費用の詳細な相場につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「境界明示・測量に必要な費用とは?」の項目をご覧ください。
上記のリンク先の料金相場もあくまで目安ですので、実際の金額とは異なる可能性があるという点にご注意ください。
土地境界確定測量の測量手順
土地境界確定測量は、その作業の多くに専門の知識が必要となります。
土地の測量から境界点の確認など、これらの作業を個人で行うのはほぼ不可能です。
境界の確定を行うためには、専門の免許などを取得している方の協力が不可欠です。
隣接した土地所有者の方に、立ち合いをお願いするなどといった作業も必要となります。
もし土地が公共地などと隣接している場合には、「官民立会」なども行わなくてはなりません。
官民立会が必要となると、それだけ費用なども高騰しやすくなります。
調査などに時間や手間などが掛かれば掛かるほど、必要な費用は高くなっていきます。
土地境界確定測量をスムーズに行うためにも、事前にこのような知識を持っておくようにしたいものです。
この項目では、土地境界確定測量の大まかな流れと、後に必要な費用などについてご説明致します。
土地境界確定測量の大まかな流れ
土地境界確定測量では、主に下記の手順で測量が行われます。
(これらの手順は土地境界確定測量の一例ですので、実際は異なる手順で測量が行われる場合もあります)
- 土地家屋調査士の方などに土地境界確定測量を依頼する
- 土地家屋調査士の方などに土地境界確定測量を依頼し、必要な作業に関する説明などを受け、様々な事前確認が行われます。
- 依頼した土地に関する資料調査が行われる
- 法務局、市役所、官公署で、該当土地の資料の収集・調査が行われます。
- 依頼した土地に対して事前の現場(事前)調査が行われる
- 収集・調査した資料を基に、現況調査・測量が行われ、土地の物理的状況が確認されます。
- 隣地所有者の方への挨拶回り
- 土地境界確定測量の依頼をしますと、依頼先の土地家屋調査士の方は依頼主の代わりに、隣地所有者の方々などに対して境界立会や測量の事前承諾のための挨拶を行い、境界に関する資料をお持ちかどうか尋ねてくださいます。
- 依頼先によっては、粗品などを準備してくださる場合もあります。
- 測量計算及び(仮ポイント付けの)測量
- 依頼先の土地家屋調査士の方が既設の境界杭などを探し、ない(見つからない)場合には、「既存資料のデ-タ」、「現況測量のデ-タ」、「現地占有状況」などを照らし合わせ、適切なポイントを定めた上で境界線を計算し(境界点を現地にペンキなどで仮表示します)、その範囲に対して事前測量を行います。
- 「官民境界(道路や水路などの市の公共用地)」が隣接している場合には、依頼主の代わりに区役所などに境界線についての打ち合せをしてくださいます。
- 測量データと既存資料などの照合
- 測量により得たデータに対して、収集した資料や過去の測量図との寸法の差異などの照合が行われます。
- 関係者の方へ境界立会の依頼・確認
-
- 隣接地が個人所有の土地のみの場合(官民立会が不要)
- 挨拶回りの際に確認をした立会の日程に応じて、依頼主の方と隣地所有者の方が現地に集まり、既存の境界杭や作成された仮ポイント(ペンキ印)などを確認し、土地家屋調査士の方から境界に関する説明を受けます。
- 挨拶回りの際に境界立会に関して日程などの話し合いをしていない場合には、ここで立会の日程を調整します。
- 隣接地に公共用地がある場合(官民立会が必要)
- 官民立会には市職員の方の立会が必要となりますので、用地課へ官民立会などに関する申請書などの提出を行わなくてはなりません。
- これらの作業は、土地家屋調査士の方が代行をしてくださいます。
- 関係役所協議が整い、ある程度予定ポイントが決まった後、現場で区役所担当者の方などが立会、境界を確認していきます。
- なお、下記のような場合には、市議員の方以外にも隣地所有者の方の立会も必要となりますのでご注意ください。(これらの判断は土地家屋調査士や区役所担当者の方がしてくださいます)
-
- 境界点が「公共用地」、「依頼主の土地」、「隣の土地」の3者の境界点となっている場合(隣の土地の境界点に対して、依頼主と市だけでは境界点が決められません)
- セットバック(道路の中心線から2メートル以内には建築物・構造物は建てられないという規定)が必要な道路が接している場合(道路の中心線を決めるために、対側者の立会いが必要となります)
- 隣接している道路などの幅が予め決まっている場合(依頼主の土地に対して境界点を決めると、対側地の境界に影響が出てしまうため)
- 関係者の方の合意及び境界杭(境界標)の埋設
- 境界立会いの結果、関係者の方々に異議がなければ、境界杭のない箇所に杭が埋設されます。
- 必要書類や図面の作成
- 土地境界確定測量の結果を基に、土地家屋調査士の方が「境界確認書」や「土地境界確定測量図」、「地積測量図」など登記に必要な書類や図面などを作成してくださいます。
- 官民境界確定時には、区役所の定める様式に従い、「公共用地境界協議確定図」などといった書類の作成も行われます。
- 境界確認書への押印
- 境界確認書は「依頼主」と「隣地所有者の方」の双方の署名と捺印がなければ有効となりませんので、土地家屋調査士の方が代理で隣接地の地主の方などに署名と捺印をお願いしてくださいます。
- 官民境界を確定する場合には、利害関係者全員から必要書類などに署名と捺印を貰った後に、区役所に土地家屋調査士の方が作成した測量図を提出する必要があります(この作業も土地家屋調査士の方が代行してくださいます)。
- その後、その図面が記載された「官民境界確定証明書」の交付を受けます。
- 土地境界確定測量の結果がまとめられる
- 土地境界確定測量図や各種資料がまとめられます。
- 土地境界確定測量の結果を受け取る
- 土地境界確定測量の結果と各種書類や図面を受け取ります。
これらの作業が終われば、土地の境界が確定された状態となります。
境界確定測量に必要な費用
土地境界確定測量は正確な地積・境界の調査を行う必要がありますので、費用も高くなるのが通常です。
比較的良好な状態の土地の場合でも、数十万円もの費用が掛かってしまう場合もあります。
土地境界確定測量の費用は、測量を行う不動産の状態や面積などによって、大きく変動するのが一般的です。
また境界立会の際に、「官民立会」が必要となる場合には、更に費用が多くなる傾向にあります。
同じ土地でも、
官民立会が必要ないなら「数十万円程度」で済むにも関わらず、
官民立会が必要なら「50万円以上」
もの費用が掛かってしまう場合もあります。
土地境界確定測量に必要な費用も、実際に測量を依頼してみなくては正確に分からないというのが実情です。
ただ、現況測量よりも多くの作業が必要な分、それよりも多くの費用が掛かると考えておいて問題ありません。
土地境界確定測量に必要な費用の詳細な相場につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「境界明示・測量に必要な費用とは?」の項目をご覧ください。
なお、登記記録上の地積が測量結果と同じ場合には問題ありませんが、違っている場合には訂正が必要です。
土地の地積を改めて登記し直すためには、「土地地積更正登記」をしなくてはいけません。
この「土地地積更正登記」を行う際には、登録免許税は必要ありません。
ただ、「土地地積更正登記」を司法書士の方などに代理で申請して貰う際には、代理報酬などの支払いが必要となります。
「土地地積更正登記」を司法書士の方に代理申請して貰う場合の報酬相場につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「登記の代理申請時の報酬目安」の項目をご覧ください。
上記のリンク先の料金相場もあくまで目安ですので、実際の金額とは異なる可能性があるという点にご注意ください。
土地を分筆した際の境界確定測量
土地を分筆した上で売却する際には、事前に「分筆登記」などを行う必要があります。
土地の分筆登記を行うためには、土地の境界確定と測量が必要です。
以前は、土地の分筆時に残地求積という方法で測量を行えましたが、現在はこの方法は選択できません。
(残地求積の説明につきましては、同ページの「額縁分筆の詳細と境界」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください)
今では、「全筆求積」により土地の測量を行った上で分筆登記を行うように統一されております。
とはいえ、全筆求積と言われても、その内容についてよくご存じないという方もいらっしゃるかもしれません。
この項目では、この全筆求積について詳しくご説明致します。
全筆求積での土地の測量
土地を分筆した際には、通常は「分筆登記」などを行います。
分筆登記をしていない土地は、土地の境界が確定されていない土地同様に売れにくくなるのが一般的です。
例え売れたとしても、後に様々なトラブルの元となってしまう可能性もあるため注意が必要です。
土地を分筆した後に分筆登記をするためには、「新しく分筆した土地部分」と「その残りの土地部分」の両方の面積を測量しなくてはなりません。
このように分筆後の土地と残りの土地の両方を測量することを「全筆求積」と言います。
以前は、新しく分筆した土地部分のみを測量し、分筆前の土地の面積からその面積を差し引く「残債求積」により登記を行えました。
現在は「全筆求積」を行わなくては分筆登記ができなくなりましたので、残積求積による登記は行えません。
全筆求積の際には、多くの場合「土地境界確定測量」などが必要となります。
分筆後の土地と、それ以外の土地の両方に土地境界確定測量を行い、その結果をそれぞれ登記します。
土地境界確定測量の大まかな手順と、必要な費用につきましては同ページの「土地境界確定測量の測量手順」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。
土地境界紛争の3つの解決方法
不動産を売却する際などの境界問題は、時として大事となってしまう場合もあります。
土地の境界は、近隣の方との兼ね合いが重要となるケースも多く、簡単に境界確定や測量を行えない状況も存在します。
特に地価の高い地域などでは、土地の境界について隣地所有者の方と揉める場合も多くあります。
土地境界確定測量などを行ったとしても、境界立会の際に隣地所有者の方が納得をしてくださらない状況も存在します。
このような境界紛争などが起こりますと、売主の方は隣地所有者の方と、土地の境界について話し合いなどを進めていかなくてはなりません。
境界紛争を解決するにはいくつかの方法がありますが、問題の深刻さなどによって適切な対処が変わってきます。
軽い紛争なら両者の話し合いなどで解決ができる場合もありますが、深刻なものとなると裁判問題などが必要となってしまう可能性もあります。
【境界紛争を解決するための主な方法】
- 土地の所有者同士で話し合いをする
- 筆界特定制度により境界を特定する
- 境界確定訴訟により問題を解決する
上記の解決方法の詳細につきましては、下記でご説明致します。
話し合いによる問題の解決
売却予定の土地に対して、隣地所有者の方と境界紛争が起こった際には、その問題の解決が必要です。
土地境界確定測量などの立会時に、確定したい境界点や境界線の位置に関して、相手側が納得してくださらないケースもあります。
このようなトラブルが起こったとしても、境界の正当性がわかるような資料がある場合や、お互いの関係がさほど悪くなければ、話し合いで問題を解決できる可能性があります。
資料を基に境界点や境界線を確認すれば、その正当性が明らかになるため、お互いに納得がしやすくなります。
なお、ここで売主の方が隣地所有者の方と仲違いしてしまいますと、後にその不動産を購入した買主の方にも悪影響が出る可能性があります。
いくら売り出されている不動産が良いものでも、近隣の方との関係が悪い状態では、購入希望者の方が購入を見送ってしまいかねません。
不動産売買時に気持ちの良い取引を行うためにも、近隣の方との関係は悪化させないようにしたいものです。
近隣の方が、境界紛争に関して話し合いをする意思がある場合には、お互いに意見を交換しながら慎重に境界を決めていくようにしてください。
話し合いにより境界の位置などが決定した際には、後にもその取り決めた境界が確認できるように、書類や図面などの作成を行っておくと安心です。
(土地境界確定測量などを行った場合には、ほぼ確実に「境界確認書」や「測量図」などの作成が行われるのでそれを保管します)
なお、境界について長期間話し合いをしているにも関わらず、お互いに意見が合わないという場合には、土地家屋調査士会ADR(境界問題相談センター)に相談をするという手もあります。
土地家屋調査士会ADR(境界問題相談センター)に境界トラブルの相談をしますと、土地家屋調査士の方と弁護士の方が調停人として当事者間の話し合いの手伝い、
話がまとまった後には、確認した筆界に境界杭を埋設し、調停の合意内容に基づく登記手続きなどを行ってくださいます。
この場合、後に相応の報酬の支払いが必要となりますので、その点には注意が必要です。
【土地家屋調査士会ADR(境界問題相談センター)に依頼をした際の報酬費用の目安】
- 申立費用
- 数万円程度
- 基本調査料
- 3万円前後(印紙代などは別納)
- 期日費用(1回当たり)
- 5,000円前後 × 当事者数
- 成立費用
- 5万円前後~15万円前後
- 調査・測量費用、鑑定費用、登記費用
- 事件ごとに見積もりが必要
- 土地家屋調査士会ADRの代理人報酬額(本人が申請した場合には不要)
- 40万円前後~
なお、話し合いが終わった後に、土地の地積が登記記録と異なる場合には、その土地に対して「土地地積更正登記」を行う必要があります。
「土地地積更正登記」をする際に、司法書士の方などに代理申請を依頼しますと、相応の報酬の支払いを行わなくてはなりません(登録免許税は掛かりません)。
「土地地積更正登記」を司法書士の方に代理申請して貰った際の報酬目安につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「登記の代理申請時の報酬目安」の項目をご覧ください。
筆界特定制度による問題の解決
土地の境界に関するトラブルが起こった際には、裁判などで解決するイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
裁判となると多くの手間と時間、費用が掛かってしまうため、当事者間の負担が大きくなってしまうのが一般的です。
土地の境界トラブルを裁判なしで解決しようと、近隣の方と話し合いをしても、お互いに納得ができないまま話し合いが終わってしまう場合もあります。
このような場合の対策として、「筆界特定制度」を利用するという方法があります。
筆界特定制度とは、その土地が登記された際の境界(筆界)について、現地における位置を公的機関が調査し、境界線などを明らかにする制度です。
筆界特定制度による筆界の特定は、境界などの位置を示す有力な証拠となるため、これを基に境界の正当性を主張できます。
境界確定訴訟と比べると、必要な費用や期間などが少なくて済むため、売却までに猶予のない状況でも実施できます。
筆界特定制度の詳しい説明につきましては、同ページの「筆界特定制度の詳細な説明」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。
境界確定訴訟による問題の解決
土地の境界に関してトラブルが起こり、お互いの話し合いでは解決ができない場合には、「境界確定訴訟」が必要となる場合もあります。
境界確定訴訟では、境界が不明な土地などに対して、裁判所にその位置を定めて貰います。
境界確定訴訟は、普通の訴訟とは異なる点が数多く存在しますので、その点について意識をしておく必要があります。
また境界確定訴訟により確定ができる境界は、「公法上の境界(筆界)」のみです。
「私法上の境界(所有権界)」の境界トラブルにつきましては、「所有権確認訴訟」により解決を図る必要があります。
とはいえ、不動産売却の際には、「私法上の境界(所有権界)」を「公法上の境界(筆界)」と合致させる場合が殆どです。
「私法上の境界(所有権界)」を「公法上の境界(筆界)」に登記し直す場合はあっても、
「公法上の境界(筆界)」を「私法上の境界(所有権界)」にする状況はほぼありません。
その影響で不動産売却前には、多くの場合所有権確認訴訟でなく、境界確定訴訟が必要となると考えておいて問題ありません。
境界確定訴訟の詳しい説明につきましては、同ページの「境界確定訴訟の詳細な説明」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。
筆界特定制度の詳細な説明
筆界特定制度では、筆界特定登記官が民間の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の境界(筆界)の位置を特定する制度です。
ここでの筆界特定とは、新たに筆界を決めるのではなく、
現地調査や測量を含む様々な調査を行い、過去に元々定められていた筆界を、筆界特定登記官が明らかにするという意味になります。
筆界特定制度では、裁判などをしないため、比較的低費用・短い期間で境界の確認ができます。
不動産売却時に境界に関する問題が起こった際には、この筆界特定制度によりトラブルが解決される場合も少なくありません。
筆界特定制度を行う際には、制度自体の特徴や流れ、必要な費用などについて把握しておくとスムーズに作業が進みやすくなります。
この項目では、このような筆界特定制度の詳しい内容についてご説明致します。
なお、筆界特定が終わった後に、土地の地積が登記記録と異なる場合には、その土地に対して「土地地積更正登記」を行う必要があります
「土地地積更正登記」をする際に、司法書士の方などに代理申請を依頼しますと、相応の報酬の支払いを行わなくてはなりません(登録免許税は掛かりません)。
「土地地積更正登記」を司法書士の方に代理申請して貰った際の報酬目安につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「登記の代理申請時の報酬目安」の項目をご覧ください。
筆界特定制度を行うメリット
境界トラブルを解決する方法はいくつかありますが、その中に筆界特定制度という方法があります。
境界特定制度では、土地家屋調査士会ADR(境界問題相談センター)とは違い、相手が話し合いに応じない場合でも筆界を特定できます。
土地の境界トラブルの解決に関しては、境界確定訴訟などといった方法もありますが、その場合、筆界の判断基準となる資料の収集は、所有者自身が行わなければなりません。
筆界特定制度では、筆界調査委員などが境界調査に必要な資料などを収集してくださいます。
また公的な判断として筆界を明らかにできるため、隣人関係に悪影響が少ないというメリットもあります。
裁判を行う必要もないため、境界確定訴訟と比べて、迅速、低コストで境界を定められます。
筆界の特定に必要な筆界調査も、筆界調査委員(専門家)の方々がしてくださり、最終的な筆界の判断は、筆界・土地・登記の専門家である筆界特定登記官がしてくださいますので、
間違った筆界特定が行われてしまう可能性も低くなり、納得のいく結果を受けやすくなります。
【筆界特定制度の主なメリットまとめ】
- 隣地所有者の方が話し合いに応じなくても筆界の特定ができる
- 境界を特定するために必要な資料を依頼者の方が収集する必要がない
- 境界確定訴訟と比べると近隣関係に悪影響が少ない場合が多い
- 境界確定訴訟よりも必要な時間や費用が少なくて済む
- 境界の調査にあたるのは必ず専門知識を持っている筆界調査委員
- 筆界の判断は筆界・土地・登記の専門家である筆界特定登記官が行う
筆界特定制度を行うデメリット
筆界特定制度には、多くのメリットがありますが、中にはデメリットといえる点も存在します。
例えば、筆界特定制度は筆界を特定する制度であるため、
起こっている境界トラブルが、「私法上の境界(所有権界)」に係るものである場合には、選択ができないという問題があります。
不動案売却の際には、通常は所有権界を筆界と合致させるため、所有権界として特定を行うことはないかもしれませんが、一応知っておきたい点となります。
所有権界の境界について確認をするためには、土地家屋調査士会ADR(境界問題相談センター)に相談をするか、所有権確認訴訟を起こす必要があります。
他にも、筆界の特定を依頼した際に、その土地に関して境界を特定しきれないと判断された場合には、特定された境界が線ではなく範囲だけにとどめられてしまう場合もあります。
筆界特定制度では、できる限り曖昧な特定は避けられますが、必ず境界特定がされるという訳ではないという点には注意が必要です。
また境界が特定された際に支払いが必要な費用は、原則として申請人側が負担をします。
特定申請を出された相手側は費用を負担しないため、ある程度費用についての予算も立てておく必要があります。
(筆界特定制度で特定がされた境界点には、境界杭を設置されないためその点にも注意が必要です)
土地に対して境界杭などの設置を行いたい場合には、
「土地境界確定測量」や
「境界復元測量」
などの実施が必要です。
【筆界特定制度の主なデメリットまとめ】
- 私法上の境界(所有権界)の特定はできない
- 状況によっては境界の特定が行えない場合がある
- 筆界特定制度に掛かった費用は申請人が負担しなくてはいけない
- 筆界特定制度により特定した境界点には境界杭が設置されない
筆界特定制度の申請を行う際には、このようなデメリットの存在も知っておくことが大切です。
筆界特定制度を行う際の主な流れ
筆界特定制度により境界を特定するには、手順に従い必要な手続きを行う必要があります。
一度、手続きを終えれば、後は法務局や筆界調査委員の方々が作業を進めてくださいます。
筆界特定を申請するためには、まずその土地の所有者として登記がされている方、又はその相続人が筆界特定の実施を申請する必要があります。
筆界特定を申請する際には、「筆界特定申請書」に必要事項を記載しておかなくてはなりません。
「筆界特定申請書」の記載例につきましては、法務局のホームページで確認ができます。
【「筆界特定申請書」の記載例】
「筆界特定申請書」の記載例
筆界特定申請書の作成が終わりましたら、その対象となる土地の所在地を管轄する「法務局」や「地方法務局」の筆界特定登記官に対して、申請書と必要書類などを提出します。
必要書類とは、筆界特定を依頼した対象土地の境界を示す資料を指し、
「測量図面」や
「契約書」
などになります。
これらの資料は提出が必須ではありませんが、多く提出すればするほどに調査が進みやすくなります。
筆界特定の申請が受理されると、筆界特定登記官は筆界特定の手続きを開始します。
これで本格的に、筆界調査委員(土地家屋調査士や弁護士などの専門家)による境界調査が始まります。
筆界調査委員は、土地の実地調査や測量を行うなど様々な調査を行った上で、筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出します。
筆界特定登記官は、その意見と様々な事情を考慮して、筆界特定を行います。
【筆界特定制度の大まかな流れ】
- 境界(筆界)トラブルが起こる
- 近隣の方と境界トラブルが起こり、相手に話し合う気がない場合などには、筆界特定制度の利用を考えます。
- 法務局や地方法務局の筆界特定登記官に対して筆界特定の申請をする
- 「筆界特定申請書」などの作成を行い、お住いの地域の法務局に筆界特定の申請をします。
- 申請の際には、対象土地の境界について参考になる資料を多く添付しますと、調査がスムーズに行われやすくなります。
- 筆界特定登記官による審査
- 筆界特定登記官が境界特定の申請に関して審査し、問題のない場合には手続きが開始されます。
- 筆界調査委員による調査
- 筆界調査委員の方々が、対象土地に対して境界の調査を行います。
- 実際に行われる調査につきましては、主に下記のようになります。
-
- 登記記録、地図、地積測量図などの資料調査
- 申請人や関係者に対し対象土地の測量・実地調査に立ち会う機会の付与
- 申請人や関係者への事情聴取
- 周辺の実地調査や測量
など - 筆界調査委員による意見の提出
- 筆界調査委員の調査内容や意見などが筆界特定登記官に提出されます。
- 筆界特定登記官による筆界特定
- 提出された筆界調査員の調査結果や意見を基に、筆界特定登記官が筆界の特定を行います。
ここまでの作業が全て終われば、該当土地に関して境界が特定されます。
筆界特定制度に必要な費用
筆界特定制度を利用しますと、後に筆界特定に関する費用を支払う必要があります。
筆界特定において必要となる費用は、大きく分けて主に下記の3つになります。
- 申請手数料
- 筆界特定の申請に必要な手数料です。
- 手数料の金額は、対象土地の固定資産税評価額を基に計算を行いますが、対象土地が固定資産課税台帳に登録されていない場合には、近傍類似の土地の価格を基礎として筆界特定登記官が認定した価額で計算を行います。
- この場合申請人は、対象土地の価額が決定するまで、一旦「自己の土地の固定資産税評価額」のみで「基礎となる金額」と申請手数料を仮計算し、筆界特定の申請時にその金額を仮納付します。
- 後に筆界特定登記官により、固定資産課税台帳に登録されていない土地の価額が決められた後には、正確な手数料額を計算し補正納付を行います。
- 申請手数料は、原則申請の際に申請書に収入印紙を貼り付けて納付しますが、電子申請で特定の申請を行った場合には、現金により納付できます。
- 手続き費用
- 筆界特定の調査や手続きなどに必要になる測量費用などです。
- 筆界特定に必要な手続き費用は、事前にその概算額を予納する必要があります。
- 手続き費用の予納は、筆界特定登記官から保管金提出書が交付された際に、筆界特定手続きがなされている「法務局」又は、「地方法務局」の本局の「供託課」に現金を持参するか、取扱日本銀行に相応の費用を振り込むことで完了します。
- 代理人の費用(本人が申請する際には不要)
- 筆界特定の申請を代理人にお願いする際に必要となる費用です。
- 費用の納付方法は、各依頼先により異なります。
これらの費用の内、「手続き費用」と「代理人の費用」は状況などにより変動しますが、
申請手数料のみは正確な金額の計算が可能です。
それぞれの費用の計算方法や相場などにつきましては、次の項目でご説明致します。
筆界特定制度に必要な費用の計算
筆界特定制度に必要な費用のそれぞれの計算方法や相場につきましては、下記のようになります。
【申請手数料の計算方法】
筆界特定制度の申請手数用は、「基礎となる金額」を定められた計算式に算入して計算を行います。
基礎となる金額は、下記の計算式により算出します。
【計算式】
(申請人の土地の固定資産税評価額 + 相手方の土地の固定資産税評価額) ÷ 2 × 0.05(5%) = 基礎となる金額
基礎となる金額の計算が終わりましたら、その金額を基に、下記の表の対応する計算式で必要な申請手数料を算出します。
基礎となる金額 | 切り上げ単位 | 単位 | 基礎加算額 | 計算式 |
---|---|---|---|---|
100万円まで | 10万円 ごと |
800 円 |
0 円 |
(x ÷ 10) × 800 |
100万円~ 500万円 |
20万円 ごと |
800 円 |
8,000 円 |
{(x – 100) ÷ 20} × 800 + 8,000 |
500万円~ 1,000万円 |
50万円 ごと |
1,600 円 |
24,000 円 |
{(x – 500) ÷ 50} × 1,600 + 24,000 |
1,000万円~ 10億円 |
100万円 ごと |
2,400 円 |
40,000 円 |
{(x – 1,000) ÷ 100} × 2,400 + 40,000 |
10億円~ 50億円 |
500万円 ごと |
8,000 円 |
2,416,000 円 |
{(x – 100,000)} ÷ 500 × 8,000 + 2,416,000 |
50億円~ | 1,000万円 ごと |
8,000 円 |
8,816,000 円 |
{(x – 500,000) ÷ 1,000} × 8,000 + 8,816,000 |
なお、表内の「x」は、「基礎となる金額」から「切り上げ単位」の刻み額を、切り上げた数字となります。
(計算式に算入する際には、基礎となる金額から更に「10,000」を割った数値となります)
例:
計算後の金額が「165万円」であれば、切り上げ単位は「20万円」となり、「165万円」では「5万円」の端数が出ておりますので、
その端数である「5万円」を「20万円」単位で切り上げた「180万円」が「基礎となる金額」となります。
切り上げ単位が20万円ごとですので、計算後の金額が「175万円」などでも、基礎金額は同じ「180万円」となります。
(xに算入する数値は、先程の金額から更に「10,000」を割った「180」となります)
申請手数料の実際の計算例は、次の項目で記載しておりますので、記載例をご覧になりたい方は、お手数をお掛け致しますが「筆界特定の申請手数料の計算例」の項目をご覧ください。
【手続き費用の相場】
筆界の特定が必要な土地の状態や広さによりますが、一般的には「十万前後~数十万円前後」と言われております。
代理人申請を選択し、筆界特定の申請前に前に土地などに対して調査や測量などが行われた場合には、その際に作成がされた資料を基に筆界を特定できます。
この場合は、筆界特定の手続き費用は無料となります。
【代理人の費用の相場】
依頼先や対象土地に対して行われる調査・測量にもよりますが、費用相場は「40万円前後~」となります。
筆界特定制度をご自身で申請した場合には、代理人への報酬は発生しません。
なお、「手続き費用の相場」と「代理人の費用の相場」はあくまで目安ですので、正確な金額は実際に依頼をした際にご確認ください。
筆界特定の申請手数料の計算例
前項では、筆界特定制度の申請手数料の計算方法について記載をしました。
この項目では、その計算方法を用いた実際の申請手数料の計算例をご紹介致します。
【筆界特定に関わる土地が2つの場合】
下記の図のような2つの土地があり、「土地A」の所有者の方が「点A」から「点B」の筆界特定を依頼した場合
申請人の対象土地の固定資産税評価額が「3,000万円」
相手方の対象土地の固定資産税評価額が「3,300万円」
これらの金額を前項の【申請手数料の計算表】の計算式に当てはめると、下記のようになります。
「基礎となる金額の計算」
(3,000万円 + 3,300万円) ÷ 2 × 0.05 = 1,575,000円
【申請手数料の計算表】で「1,575,000円」を確認しますと、「100万~500万円まで」の欄の金額に当てはまります。
表から、切り上げ単位が「20万円」だと分かりますので、端数を切り上げます。
1,575,000円→160万円(基礎となる金額)
「申請手数料の計算」
基礎となる金額が「160万円」ですので、表の「100万円~500万円まで」部分の欄の計算式を使用します。
なお、表内の「x」には、基礎となる金額から「10,000」を割った数値を算入します。
160万→160
{(160 – 100) ÷ 20} ×800 + 8,000 = 10,400円
この場合の申請手数料の金額は、「10,400円」となります。
【筆界特定に関わる土地が3つの場合】
下記の図のような3つの土地があり、「土地A」の所有者の方が
「土地B」の「点A」から「点B」、
「土地C」の「点B」から「点C」
の筆界特定を依頼した場合
申請人の対象土地の固定資産税評価額が「6,000万円」
相手方の対象土地Bの固定資産税評価額が「2,800万円」
相手方の対象土地Cの固定資産税評価額が「2,900万円」
筆界特定を行う境界線が2つある場合には、それぞれの申請手数料を計算し、その金額を合計します。
「基礎となる金額の計算」
対象土地B:
(6,000万円 + 2,800万円) ÷2 × 0.05 = 2,200,000円
対象土地C:
(6,000万円 + 2,900万円) ÷2 × 0.05 = 2,225,000円
【申請手数料の計算表】で確認をしますと、
「2,200,000円」
「2,225,000円」
のいずれも、表の「100万~500万円まで」の欄の金額に当てはまります。
表から、切り上げ単位が「20万円」だと分かりますので、端数を切り上げます。
2,200,000円(切り上げは不要)→220万円(基礎となる金額)
2,225,000円→240万円(基礎となる金額)
「申請手数料の計算」
基礎となる金額が
「220万円」と
「240万円」
ですので、いずれも表の「100万円~500万円まで」部分の欄の計算式を使用します。
計算式に当てはめる前に、基礎となる金額から「10,000」を割ります。
対象土地B:
220万円→220
対象土地B:
{(220 – 100) ÷ 20} × 800 + 8,000 = 12,800円
対象土地C:
240万円→240
対象土地C:
{(240 – 100) ÷ 20} × 800 + 8,000 = 13,600円
最後に、算出されたそれぞれの金額を合計します。
12,800円 + 13,600円 = 26,400円
この場合の申請手数料の金額は、2つの金額を合計した「26,400円」となります。
境界確定訴訟の詳細な説明
土地の境界トラブルが起こった際に、話し合いや筆界特定制度では境界が確定できないという場合もあります。
このような事態に陥ってしまった際には、最終的に裁判により境界を確定しなくてはなりません。
不動産の境界を裁判で確定する際には、通常「境界確定訴訟」が行われます。
境界確定訴訟では、裁判が行われるため、他の方法と比べて精神的・肉体的な疲労が多くなります。
また通常の裁判とは異なる点も多く、独特のシステムにより裁判が行われるのが一般的です。
境界確定訴訟を起こす際には、これらの特徴について知識を持った上で裁判に臨むようにしたいものです。
この項目では、このような境界確定訴訟の内容についてご説明致します。
なお、境界確定訴訟が終わった後に、土地の地積が登記記録と異なる場合には、その土地に対して「土地地積更正登記」を行う必要があります。
「土地地積更正登記」をする際に、司法書士の方などに代理申請を依頼しますと、相応の報酬の支払いを行わなくてはなりません(登録免許税は掛かりません)。
「土地地積更正登記」を司法書士の方に代理申請して貰った際の報酬目安につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「登記の代理申請時の報酬目安」の項目をご覧ください。
境界確定訴訟の主な特徴
境界確定訴訟は、通常の裁判とは異なる点が多く存在します。
下記は、境界確定訴訟を行う際に意識をしておきたい特徴の一覧です。
【境界確定訴訟の特徴】
- 境界確定訴訟について法律上特別の規定はない
- 境界確定訴訟は、法律的な規定がないため、通常の裁判と異なり特殊な訴訟となります。
- 所有権界ではなく筆界を確定する
- 境界確定訴訟は、「公法上の境界(筆界)」を確定する訴訟ですので、「私法上の境界(所有権界)」を争う場合には「所有権確認訴訟」を行う必要があります。
- 原告・被告になれるのは隣接地所有者のみ
- 境界確定訴訟で被告・原告となれるのは、それぞれ隣接地所有者のみとなります。
- 双方の当事者が隣接地の所有者であるかどうかの判断は、口頭弁論終結時点で行なわれますが、所有権を持っていない物権者は当事者となれません。
- 共有の土地に対して境界確定訴訟を起こす場合には、共有者全員が当事者となる必要があります。
- 判決に対して勝ち負けはない
- 通常の裁判と異なり、境界確定訴訟には勝ち負けという概念はなく、判決は裁判所が境界を確定するだけとなります。
- どのような場合でも境界が確定される
- 境界確定訴訟では、裁判所が原告や被告から受けた証拠を調べて客観的な境界が発見できなかったとしても、その請求を棄却(請求を退ける)できず、判決により必ず境界線を形成しなくてはなりません。
- 境界は裁判所が独自に判断する
- 境界確定訴訟での境界確定は、原告の主張、被告の主張、参考資料に基づきますが、裁判所は当事者の主張に拘束されることなく、審理の結果、正当と判断するところを境界として確定します。
- 裁判を当事者間の和解・調停で終了できない
- 境界確定訴訟を起こした後に、任意に「お互いが境界線に対して譲り合い、口頭弁論期日等を行った上で合意し和解した(裁判上の和解)」としても、裁判所が独自に境界確定の判決を行うまでは訴訟の終了はできません。
- 当事者間で境界を定めて確定することができなくなる
- 境界確定訴訟では、「原告が自らの請求に理由がないと認め、被告の境界主張を全面的に受け入れたり(請求の放棄)」、「被告が原告の訴訟上の境界主張を全面的に承認したり(請求の認諾)」した場合でも、裁判の判決がその主張通りとはならず、あくまで裁判所が審理した上で境界線を確定します。
- 判決の結果は他の隣接地所有者の方の境界に影響しない
- 境界確定訴訟で確定するのは、当事者間の土地境界線のみで、他の隣接土地所有者の方の境界には影響しません。
- 訴訟の当事者は判決で定められた境界に対して争うことはできない
- 当事者は、境界確定訴訟により創設された境界に関して、以後異議を唱えることはできません。
上記を見ても分かるように、境界確定訴訟は通常の裁判とは異なる特殊な規定が存在します。
これらの特徴を把握し、十分に注意をした上で境界確定訴訟を行うようにしてください。
境界確定訴訟のメリット・デメリット
境界確定訴訟は、筆界特定制度と比べると、少々メリットよりもデメリットが目立ちます。
境界確定訴訟により境界トラブルを解決するメリットといえば、必ず境界の確定が行えるという点が挙げられます。
筆界特定制度では、境界に対して正確な境界が判断できない場合には、その境界が確定されないケースもあります。
境界確定訴訟では、そのような事例はなく、裁判により必ず境界の確定が行われます。
その影響で境界確定が困難である土地などでも境界確定をできますので、場合によっては助かる場面もあります。
ただ、裁判により必ず境界が確定されるとはいえ、その結果が正当でなければ近隣関係が更に悪化してしまいかねません。
境界確定訴訟による境界確定は、筆界特定制度のように専門家の方が必ず携わる訳ではありません。
場合によっては、土地の境界などについて専門知識のない調査員や裁判官の方が境界の調査・確定を行うケースもあります。
これにより本来とは異なる境界が確定されてしまう可能性もあり、境界に関して不満が残る結果となってしまう可能性もゼロではありません。
更に、境界確定に必要な資料などは当事者が提出するため、資料の収集に関して手間が掛かる上、資料の数や正確さが不十分となる場合もあります。
お互いに納得のいく判決が出たとしても、裁判を行うという面で時間や経済面に大きなコストが掛かるという点にも意識をする必要があります。
【境界確定訴訟の主なメリット・デメリットまとめ】
- メリット
-
- どのような状態の土地でも必ず境界を確定できる
- デメリット
-
- 筆界調査の際に専門家でない方が携わる可能性がある
- 専門知識のない裁判官の方が判決をする可能性がある
- 境界に関する資料を当事者が提出する必要がある(収集に手間が掛かり、資料の数や正確さに難が出る可能性がある)
- 近隣関係が更に悪化してしまう可能性がある
- 裁判が行われるため境界確定までに時間が掛かり、経済的にも負担が大きくなる
不動産売却の際に境界確定訴訟を起こす場合には、これらのデメリットを照らし合わせた上で選択をするようにしてください。
境界確定訴訟を行う際の主な流れ
境界確定訴訟を行う際には、裁判を起こすという点から様々な手続きが必要となります。
境界確定訴訟の大まかな流れにつきましては、下記のようになります。
(これらの手順あくまで一例ですので、実際は異なる流れが必要となる場合もあります)
- 境界トラブルが起こる
- 近隣の方と境界トラブルが起こり、話し合いでも筆界特定制度でも解決ができない場合、境界確定訴訟の実施を考えます。
- 原告が訴状の提出をする
- 境界確定訴訟の訴状を裁判所に提出し、裁判の手続きを開始します。
- 初回期日の指定後に被告へ訴状が送達される
- 訴状を提出した日から、1~2週間程度で、裁判所と原告の間で初回期日が決定されますので、その期日が被告へ送達されます。
- 被告が初回期日までに答弁書を提出する
- 被告は、初回期日の1週間前に答弁書を提出するように裁判所から指示されます。
- 初回期日までに、答弁書を提出すれば、被告は初回期日を欠席できます。
- 裁判で行う弁論やそれに関わる準備
- 法廷(弁論の場合)や準備手続室(弁論準備の場合)において、双方の主張の整理や交互に証拠の提出を行います。
- これにより、本人尋問や証人尋問が必要となる争点を明らかにします。
- また当事者双方の主張する境界線を、1つの図面に表示した共通図面の作成も行われます(ここで作成された図面が、判決書や和解調書に添付されます)。
- 現地見分や検証・現地における進行協議が行われる
- 原告・被告の土地に対して、現地見分や検証、現地における進行協議が行われ、境界が調査されていきます。
- 境界に関して本人や証人に尋問が行われる
- 明らかになった争点に合わせて、本人や証人に対して尋問が行われます。
- 境界に関しての和解協議が行われる
- 裁判所が、原告と被告に対して和解協議を行います。
- 裁判所は、訴訟がどの程度進んでいるかに関わらず和解協議を行えますが、多くの場合は尋問までが終了した際に行われます。
- 境界に関する取り調べや審理が終わる
- 和解協議により、原告・被告の和解が成立しますと、境界に関する取り調べや審理が終わります。
- 境界確定に対して判決が下される
- これまでに審理された内容を基に、境界に関する判決が下されます。
- 確定した境界に応じて、土地の登記をし直せば、土地の境界確定は終了です。
境界確定訴訟では、確定した境界について今後一切争えなくなるため、正確な境界確定がされるよう十分な証拠・証言が必要となります。
原告・被告共に、的確な資料収集と証言の提示を心がけることが大切です。
境界確定訴訟に必要な申立手数料
境界確定訴訟では、通常、多くの費用が必要となります。
その中でも、
「裁判所に提出する訴状に掛かる申立手数料」
は、計算などが少々複雑となるケースも多いです。
今回は、この「裁判所に提出する訴状に掛かる申立手数料」について、詳しくご説明致します。
【裁判所に提出する訴状に掛かる申立手数料】
裁判所に提出する訴状には、申立手数料と呼ばれる費用が掛かり、その費用は収入印紙で支払いをします。
境界確定訴訟の際の申立手数料は、「訴えの提起」となりますので、「訴えの提起」の場合の申立手数料の計算式を用いて金額を計算します。
まず、申立手数料を計算するには、「訴訟の目的の価額(訴額)」を計算しなくてはいけません。
境界確定訴訟の場合は、「係争地域(主権を巡って領土の争いが存在する場所)の物の価額」に2分の1を乗じた金額となります。
「係争地域の物の価格」といっても、これでは具体的に内容が分かりにくいかもしれません。
この場合の「係争地域」とは、原告側と被告側の主張する境界線に囲まれた間の土地になります。
また「物の価額」とは、係争地域部分の固定資産税評価額(通常は最高裁の訴額通知により通知がされます)のことです。
上記の図の中の真ん中にある「係争地域」部分の評価額に、2分の1を乗じた金額が、「訴訟の目的の価額(訴額)」となります。
(原告側と被告側の主張する境界線と、固定資産税評価額の記載された評価証明を提示した上で、裁判所の窓口に相談をすれば対応金額について教えて貰えます)
計算式:係争地域部分の固定資産税評価額 × 2分の1
例えば、係争地域の固定資産税評価額が「300万円」の場合には、「150万円」が「訴訟の目的の価額(係争地域の物の価格)」となります。
この「訴訟の目的の価額(係争地域の物の価格)」が
「140万円を超えていたら地方裁判所」に提訴し、
「140万円以下なら簡易裁判所」
に提訴します。
「訴訟の目的の価額(訴額)」の計算が終わりましたら、その金額を基に、下記の表の対応する計算式で必要な申立手数料を算出します。
訴訟の目的の 価額区分(訴額) |
切り上げ単位 | 単位 | 基礎加算額 | 計算式 |
---|---|---|---|---|
100万円まで | 10万円 ごと |
1,000 円 |
0 円 |
(x ÷ 10) × 1,000
【簡易計算式】100x
|
100万円~ 500万円 |
20万円 ごと |
1,000 円 |
10,000 円 |
{(x – 100) ÷ 20} × 1,000 + 10,000
【簡易計算式】50x + 5,000
|
500万円~ 1,000万円 |
50万円 ごと |
2,000 円 |
30,000 円 |
{(x – 500) ÷ 50} × 2,000 + 30,000
【簡易計算式】40x + 10,000
|
1,000万円~ 10億円 |
100万円 ごと |
3,000 円 |
50,000 円 |
{(x – 1,000) ÷ 100} × 3,000 + 50,000
【簡易計算式】30x + 20,000
|
10億円~ 50億円 |
1,000万円 ごと |
10,000 円 |
3,020,000 円 |
{(x – 100,000)} ÷ 500 × 10,000 + 3,020,000
【簡易計算式】20x + 1,020,000
|
50億円~ | 1,000万円 ごと |
10,000 円 |
11,020,000 円 |
{(x – 500,000) ÷ 1,000} × 10,000 + 11,020,000
【簡易計算式】10x + 6,020,000
|
なお、表内の「x」は、「訴訟の目的の価額(訴額)」から「切り上げ単位」の刻み額を、切り上げた数字となります。
(計算式に算入する際には、基礎となる金額から更に「10,000」を割った数値となります)
例:
計算後の金額が「565万円」であれば、切り上げ単位は「50万円」となり、「565万円」では「15万円」の端数が出ておりますので、
その端数である「15万円」を「50万円」単位で切り上げた「600万円」が「訴訟の目的の価額(訴額)」となります。
(xに数値を算入する際には、先程の金額から更に「10,000」を割った「600」となります)
境界確定訴訟に関する申立手数料の実際の計算例は、同ページの「境界確定訴訟の申立手数料の計算例」に記載しておりますので、記載例をご覧になりたい方は、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。
境界確定訴訟に必要なその他の費用
境界確定訴訟には、訴訟の申立手数料以外にも、
「当事者の方々に書面を郵送する際の郵便切手代」、
「弁護士の方などへの費用」、
「測量などの土地調査に必要な費用」
などが必要となります。
「当事者の方々に書面を郵送する際の郵便切手代」に必要な金額は、事前に裁判所から通知が来るのが通常ですが、
その他の費用は、正確な金額の算出が困難である場合が殆どです。
下記は、それぞれの料金相場を書き出したものですが、これらの相場は、実際の土地の状態などにより大きく変動する可能性があります。
- 当事者の方々に書面を郵送する際の郵便切手代
- 裁判所に提出する訴状は当事者の方々にも郵送されるため、そのための郵便切手代の支払いが必要となります。
- 必要な切手代は、それぞれの地域で変動しますが、相場としては「5,000円前後」となり、相手方が1名増すごとに「2,200円前後」の切手の追加が求められます。
- 弁護士の方などへの費用
- 裁判をする際には、多くの方が、弁護士の方に代理をお願いします。
- その際の費用は、弁護士の方へ掛かる手間などによって変動します。
- 境界確定訴訟の際に必要となる弁護士費用につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「売却時の弁護士への相談費用」の項目をご覧ください。
- 測量などの土地調査に必要な費用
- 土地の境界についての現地調査や資料調査などに掛かる費用です。
- 依頼先の弁護士の方や裁判所が測量など行う場合もあり、その際には高額な費用が必要となる可能性があります。
- 一般的な宅地などを測量する場合、「数十万円」以上の費用が掛かるケースも多いです。
- 裁判所が測量を行う場合などには、手続き費用として事前に予想金額の予納を行う必要があるため、裁判所からおおよその必要な金額が提示されるのが一般的です。
正確な金額は、実際に裁判を行わなくては分からないため、事前に弁護士の方や裁判所などに問い合わせをしてみる必要があります。
なお、境界確定訴訟の費用は、一般の民事裁判のように「裁判費用は敗訴した側が負担する」という規定はありません。
境界確定訴訟費用の負担は、原告・被告が話し合い、自由に負担側や負担割合を決められます。
境界確定訴訟の申立手数料の計算例
境界確定訴訟の申立手数料を計算する際には、予め用意されている計算式を使用します。
この項目では、その計算式を用いた実際の申立手数料の計算例をご紹介致します。
【境界確定訴訟に必要な申立手数料(訴えの提起)の計算例】
係争地域の固定資産税評価額が「300万円」の場合
「訴訟の目的の価額(訴額)の計算」
境界確定訴訟の「訴訟の目的の価額(訴額)」は、係争地域の固定資産税評価額に2分の1を乗じますので、
300万円 × 2分の1 = 150万円
が「訴訟の目的の価額(訴額)」となります。
「150万円」を【申立手数料(訴えの提起)の計算表】の計算式に当てはめますと、
「100万~500万円まで」の欄の計算式を用いて申立手数料を計算すれば良いと分かります。
表から、切り上げ単位が「20万円」だと分かりますので、端数を切り上げます。
150万円→160万円
「申立手数料の計算」
訴訟の目的の価額(訴額)が「160万円」ですので、表の「100万円~500万円まで」部分の欄の計算式を使用します。
なお、表内の「x」には、訴訟の目的の価額(訴額)から「10,000」を割った数値を算入します。
160万→160
{(160 – 100) ÷ 20} × 1,000 + 10,000 = 13,000円
なお、申し込み手数料を計算する際には、表の【簡易計算式】を用いても計算ができます。
50 × 160 + 5,000 = 13,000円
両方の計算式が同じ金額となり、「13,000円」の申立手数料が必要だと分かります。
他の計算式に関しても、通常の計算式と簡易計算式の計算金額は同じとなりますので、お好きなほうで計算を行ってください。
まとめ
不動産を売却する際には、境界を正確に証明できる資料などが必要となります。
境界を確認できる資料して、「公図(法14条4項地図)」と「法14条地図(法14条第1項地図)」がありますが、「公図(法14条4項地図)」では境界の確定は行えません。
それぞれの図面の主な特徴につきましては、下記のようになります。
【公図(法14条4項地図)の特徴まとめ】
- 明治時代の地租改正の際に作成された図面を基にしている
- 測量が正確に行われていない場合が多い
- 境界も正確に記載されていない場合が多い
- 境界確定に使用できない
【法14条地図(法14条第1項地図)の特報まとめ】
- 平成15年から国土交通省が法務省などと協力し実施している地積調査の結果から作成されている
- 測量が正確に行われている場合が多い
- 境界も正確な場合が多い
- 境界確定に使用できる
以前に境界が確定された土地であっても、定位置に「境界杭(境界標)」が設置されていない可能性もあります。
境界杭を紛失してしまった際には、境界復元測量などが必要となりますので、注意が必要です。
また境界杭が設置されている境界が、「公法上の境界(筆界)」であるのか「私法上の境界(所有権界)」であるのかも、事前に確認をしておくようにしてください。
不動産を売却する際には、通常は「公法上の境界(筆界)」を基にしますので、「私法上の境界(所有権界)」と「公法上の境界(筆界)」を合致させる作業が必要です。
なお、土地を測量する際には、主に下記の3つの方法があります。
- 土地境界確定測量
- 現況測量
- 額縁分筆
これらの測量方法には、それぞれ特徴がありますので、ご自身の状況に合ったものを選択することが大切です。
境界確定や測量を行う際に、近隣の方とトラブルが起こった際には、適切な方法で問題の解決にあたる必要があります。
境界トラブルを解決するためには、下記の方法のいずれかを選択するのが一般的です。
- 当事者間での話し合い
- 筆界特定制度
- 境界確定訴訟
不動産売却の前には、十分に境界の確認をしておくと安心です。