不動産を売却する際の抵当権抹消に対して必要な手続きと書類
2018/04/13
不動産を売却する際には、事前に抵当権設定の確認が必要です。
抵当権が設定されている不動産は、売却の際に悪影響が出る場合も多くあります。
この記事では、このような不動産の抵当権などについてご説明致します。
目次
不動産に対する抵当権の説明
不動産を売却する際に意識をしておきたいのが抵当権です。
抵当権は、金融機関などからお金を借りる際に、お持ちの不動産を借金の担保とした場合に設定がされます。
不動産に対して抵当権が設定されますと、将来的に債務者が借金の返済ができなくなった際などに、その不動産が金融機関に差し押さえられるようになります。
差し押さえられた不動産は金融機関の所有物となり、債務者の所有物ではなくなります。
不動産の抵当権設定の確認方法
不動産に抵当権が設定されているかどうかは、不動産の登記事項証明書(登記簿)により確認が可能です。
登記事項証明書(登記簿)の「権利部(乙区)」に「抵当権設定」と記載されている場合、不動産に対して抵当権が設定されております。
抵当権は例え住宅ローンや借金を完済したとしても、自然と抹消される訳ではありません。
債務者は抵当権に関わる借金の返済を終えた時点で、ご自身で抵当権抹消を行う必要があります。
土地や建物・マンションの抵当権抹消
不動産を売却する際には、抵当権を抹消した状態で売り出すのが通常です。
不動産の買い手からしますと、不動産に抵当権設定がされている状態は好ましい状況ではありません。
例え売主の方が住宅ローンなどを完済していた場合でも、買い手からしますとその事実は不明のままです。
これでは不動産自体が売れにくくなってしまう原因となります。
このような事態を避けるためにも、売主の方は不動産の抵当権を抹消しておくことが大切です。
不動産の抵当権を抹消する方法
不動産の抵当権を抹消するためには、前提として抵当権設定に関わる借金(ローン)の完済が必要です。
ローン残債などが存在する状態での抵当権抹消は原則として行えません。
現在ローンなどを完済しているにも関わらず不動産に抵当権設定がされているという方は、「抵当権抹消登記」を行う必要があります。
抵当権抹消登記を行いますと、登記記録から不動産に設定された抵当権を抹消できます。
抵当権抹消登記を行うための銀行手続きや大まかな流れ、必要な費用などにつきましては、同ページの
「抵当権抹消時の銀行手続き」
「不動産の抵当権抹消登記の流れ」
「抵当権抹消登記を行う際の費用」
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。
所有権移転登記と抵当権抹消登記
抵当権が付いたままの不動産は、他の住宅ローンの担保とできないのが一般的です。
その影響で売主の方が設定した抵当権を抹消しない限り、買主の方は不動産を購入する際に住宅ローンを組めなくなります。
住宅ローンが組めない場合、不動産の売買代金を一括で準備しなくてはならないため、買主の方の負担が多大となってしまいます。
不動産の売れやすさなどを考えた場合でも、抵当権を抹消しておくのが無難です。
また、住宅ローン残債がある状態で不動産を売却する場合も注意が必要です。
この場合、不動産の買主の方に対して所有権移転登記を行うのと同時に、抵当権抹消登記なども行う必要が出てきます。
所有権移転登記と抵当権抹消登記を同時に行う際の詳細につきましては、下記でご説明致します。
売買決済時に同時抹消を行う場合
不動産売却時に所有権移転登記と抵当権抹消登記を同時に行う際には、通常の決済の流れとは少々異なる手続きが必要となります。
【所有権移転登記と抵当権抹消登記を同時に行う大まかな流れ】
- 売主の方が住宅ローンの一括繰上げ返済の手続きを行う
- 不動産の買い手が見つかり不動産の引渡し日が決定した時点で、それに間に合うように住宅ローンを組んだ金融機関に対してローンの一括繰上げ返済手続きを行います。
- 抵当権抹消に向けての銀行手続きにつきましては、同ページの「抵当権抹消時の銀行手続き」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。
- 不動産の決済日当日に指定場所に集まる
- 不動産の決済は一般的に買主の方が利用する金融機関で行われるため、売主の方は指定された時間に集合場所へ行きます。
- 所有権移転登記書類の確認
- 不動産の売主の方が準備をした所有権移転登記書類に不備がないかを確認します。
- 買主の方から不動産の売買代金を受け取る
- 不動産の所有権移転登記を行える状態である確認ができた後、売主の方は買主の方から不動産の売買代金を受け取ります。
- 売主の方が住宅ローン残債を一括返済する
- 買主の方から受け取った不動産の売買代金を用いて、住宅ローンを一括返済します(一般的には振り込みで返済します)。
- 抵当権抹消登記に必要な書類を受け取る
- 不動産決済の際に売主側の金融機関担当者が一緒に立ち会っている場合には、その場で抵当権抹消登記に必要な各書類を受け取り、立ち会っていない場合には、該当金融機関に抵当権抹消登記書類を受け取りに行きます。
- 不動産の抵当権抹消登記と所有権移転登記を同時に行う
- 登記を司法書士の方などに委任していらっしゃる場合には司法書士の方が、そうでない場合には売主の方と買主の方がそれぞれ不動産の抵当権抹消登記と所有権移転登記を行います。
住宅ローンの一括繰上げ返済手続きの際には、金融機関によって
変動金利で「3,000円前後~5,000円前後程度」
固定金利で「3万円前後~5万円前後程度」
の手数料が掛かります。
抵当権抹消時の銀行手続き
住宅ローンを完済した際には、該当銀行から抵当権抹消登記に必要な書類が一式送られてきます。
一方、住宅ローンを完済する前に抵当権抹消が必要となりますと、登記に必要な書類は銀行が保管したままとなります。
この場合は、事前に銀行で所定の手続きを行った上で、不動産売買時の売買代金を用いて住宅ローンを一括返済して書類を貰う必要があります。
各段階につきましては、下記で詳しくご説明致します。
1.銀行に抵当権抹消の連絡をする
住宅ローンの一括繰上げ返済を行う際には、最初にその旨を銀行へ連絡する必要があります。
銀行の窓口などで直接説明をしても問題はありませんが、事前に連絡をしておきますとスムーズに手続きを行いやすくなります。
なお、住宅ローンの一括繰上げ返済手続きを行う際には、一般的に下記のような書類が必要となります。
- 返済用預金口座の届出印
- 口座番号が記載された書類
- 通帳又はキャッシュカード
- 住宅ローンの返済予定表
これらはあくまで必要書類の一例ですので、正確な必要書類は住宅ローンを組んだ金融機関にお尋ねください。
2.銀行へ行き所定の手続きを行う
銀行に対して住宅ローンの一括繰上げ返済の連絡が終わりましたら、後日銀行に向かいます。
銀行では担当者の方などが、一括繰上げ返済手続きの説明してくださいますので、それに沿って手続きを行います。
手続きの際には、多くの場合一括繰上げ返済を行うための「依頼書」や「申請書」の記載が必要となります。
書類の記載について分からない箇所がある場合には、担当者の方などに聞きますと教えてくださいます。
書面記載の際には、ローンの一括返済を行う日付なども記載しなくてはならない場合が殆どですので、そこには不動産の決済日を記載します。
3.住宅ローンの一括返済を行う
所定の手続きが終わりましたら、後は不動産の決済日を待ち、買主の方から受け取った売買代金で住宅ローンを一括返済します。
その後、銀行から抵当権抹消登記に関わる書類を受け取ります。
不動産の抵当権抹消登記の流れ
不動産の所有権移転登記は一般的に買主の方の負担で行いますが、抵当権抹消登記は一般的に売主の方の負担で行います。
抵当権抹消登記は主に下記のような手順で申請を行います。
- 登記に必要な書類を集める
- 抵当権抹消登記申請書を記載する
- 登記申請書と必要書類を管轄法務局へ提出する
抵当権抹消登記の必要書類
抵当権抹消登記を行う際には、主に下記のような書類が必要となります。
- 抵当権抹消登記申請書
- 登記識別情報又は登記済証
- 登記原因証明情報
- 抵当権者の委任状(登記を委任する場合)
- 代理権限証明情報(金融機関の委任状)
- 金融機関の有資格証明情報(代表者事項証明書又は登記事項証明書)
上記のうち、
「登記原因証明情報」
「代理権限証明情報(金融機関の委任状)」
「金融機関の有資格証明情報(代表者事項証明書又は登記事項証明書)」
は、通常は住宅ローンを組んだ金融機関から受け取りますので、ご自身で準備をする必要はありません。
(登記原因証明情報の説明につきましては同ページの「抵当権抹消登記の登記原因証明情報」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください)
なお、上記の必要書類はあくまで一例ですので、正確な必要書類は管轄法務局へお尋ねください。
抵当権抹消登記の登記原因証明情報
不動産の抵当権抹消登記を行う際には、「住宅ローンなどの返済が終わったため抵当権の抹消をする」という理由を証明する登記原因証明情報が必要となります。
抵当権抹消登記を行う際の登記原因証明情報は、主に下記の書類を用います。
- 解除証書
- 弁済証書
- 放棄証書
上記の書面は、住宅ローンを組んだ金融機関から受け取ります。
抵当権抹消登記申請書の書き方
抵当権抹消登記を行う際には「抵当権抹消登記申請書」の記載が必要です。
抵当権抹消登記申請書は、法務局のホームページからダウンロードができます。
【申請書のダウンロード先】
不動産登記の申請書様式について
上記リンク先の「16)抵当権抹消登記申請書」の項目の申請書をお使いください。
(様式の下部に記載例もあります)
通常の一戸建ての場合には上部の申請書を、
マンションなどの敷地権付き区分建物の場合には下部の申請書をダウンロードします。
抵当権抹消登記を行う際の費用
抵当権抹消登記は、ご自身で行う場合と司法書士の方などに委任をする場合で必要費用が変わってきます。
この項目では、不動産の抵当権抹消登記に必要となる費用の目安についてご説明致します。
抵当権抹消登記に必要な費用
不動産の抵当権抹消登記を行う際には、登録免許税と必要書類の取得費用が必要となります。
登記を司法書士の方に委任する際には、司法書士の方に対しての報酬も発生します。
抵当権抹消登記の登録免許税や司法書士の方の報酬額につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります
「必要になる登録免許税額の目安」と
「登記の代理申請時の報酬目安」
の項目をご覧ください。
下記は不動産の抵当権抹消を行った際に必要となる可能性のある費用と、その大まかな目安をまとめた表です。
登記申請書 | 0円 |
---|---|
登記原因証明情報
(解除証書・弁済証など) |
0円 |
登記識別情報
又は
登記済証
|
600円
(窓口で取得)
|
抵当権設定時の
登記識別情報
又は
登記済証
|
0円 |
抵当権者の委任状 | 0円 |
代理権限証明情報
(金融機関の委任状)
|
0円 |
金融機関の
代表者事項証明書
又は
登記事項証明書
|
0円
(金融機関から送付されます)
|
登録免許税 | 1,000円 |
司法書士の報酬 | 14,203円 |
上記表の金額を合計しますと、この例では抵当権抹消登記に対して「15,803円」が必要という計算になります。
ご自身で抵当権抹消登記を行う場合には「1,600円」のみが必要費用となります。
なお、これら金額はあくまで目安ですので、実際の金額は登記を委任した司法書士の方などへお尋ねください。
まとめ
不動産売却の際には、登記記録上の抵当権設定を確認しておく必要があります。
住宅ローンを完済しているにも関わらず抵当権が設定されている場合には、事前に抵当権抹消登記をした上で不動産売却を行うのが無難です。
また、住宅ローンなどを完済していない状態で不動産を売却する場合には、不動産決済の際に所有権移転登記と同時に抵当権抹消登記を行わなくてはなりません。
不動産の抵当権は売れやすさなどにも影響がありますので、忘れず事前にご確認ください。