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不動産に残債があり抵当権を設定されている場合の売却方法

   

不動産を売却する際には、ローンなどの残債を消滅させてからというのが一般的です。

しかし、不動産を売却する際には、やむを得ず残債がある状態で売却しなければならないことがあります。

残債がある不動産には、抵当権が設定をされていることが殆どです。

抵当権が設定されている不動産は、生活などに使用するのには問題ありませんが、売却をする際には注意が必要となる点が存在します。

今回は不動産売却と残債についてご説明致します。

目次

抵当権について

残債のある不動産には、殆どの場合「抵当権」が設定されております。

不動産売却時には「抵当権」が深く関係しますので、まだローンなどが完済できていない方は要注意です。

まず、抵当権とはどういったものなのかご説明致します。

抵当権とは

マンションや一戸建てなどを購入する際には、多くの方が銀行などから融資を受けます。

借りたお金はローンなどを組んで返済していきますが、その際にご自身の不動産を担保として金融機関に提供します。

債務者の方のローン返済などが滞納した場合、債権者の方はその不動産を差し押さえる権利があり、これを「抵当権」といいます。

不動産の抵当権の設定
ローンなどを完済すれば、抵当権は抹消されます。

不動産を売却する際には抵当権を抹消してからが前提ですが、中にはそれが難しい方もいらっしゃいます。

特に債務の返済が困難となった方や、既に滞納している方は、不動産の売却が必要となります。

一般的には、残債があり抵当権が設定されている不動産は売却できませんが、一定の条件を満たせば売却が可能となります。

その際には3つの売却方法のいずれかで不動産を売却しますので、ご自身の状況に合わせて計画を立てなくてはいけません。

残債のある不動産の売却について

残債のある不動産は、普通通りに売却できない可能性があります。

売主の方の意思に反する場合もあり、状況などによって売却方法は異なります。

下記に残債のある不動産の売却方法についてまとめておりますので、参考にしてください。

残債のある不動産の3つの売却方法

残債のある不動産には、抵当権が設定されていることが殆どです。

抵当権が設定されている不動産は、譲渡して不動産の所有権が移転しても、抵当権は抹消されず、そのまま不動産は担保となったままです。

仮に買主の方がその不動産に居住していても、以前の所有者の方(売主の方)がローン返済を滞納すれば、競売にかけられてしまいます。

そのような危険な物件は、よほどの理由がない限りは誰も購入したがりません。

上記だけを見ますと残債のある不動産は売却できないように思えますが、実際には一定の手順を踏むことで譲渡できます。

残債のある不動産の売却方法は、下記の3つが挙げられます。

上記の売却方法を行うには、それぞれ条件があります。

「通常売却」と「任意売却」につきましては、売主の方の意思で売却することになります。

「競売による不動産の売却」につきましては、売主の方の意思に反して行われるものです。

各売却方法につきましては、下記から順次ご説明致します。

不動産を通常売却する方法

残債のある不動産であっても、通常売却をすることは可能です。

ただし、残債がある以上、売却するには条件があります。

条件を満たしていなければ通常売却をできませんので、ご注意ください。

不動産の通常売却とは

不動産を売却する際には、抵当権を抹消してから売却しなくてはいけません。

しかし、中にはご事情により、ローン残高などが残った状態で不動産を売却しなければいけない場合もあります。

まだ残債のある不動産であっても、売却金額がローンなどの残債を上回るのであれば、通常通りに売却可能です。

売却金額が残債分の金額を下回っても、売却代金では不足している分の残高を自己資金で追加すれば、売却できます。

上記のように、売却によって債務が完済できるのであれば、通常通りに不動産を売却できます。

残債が少額で不動産が高く売却でき、自己資金もある状態でのみ選択できる売却方法といえます。

売却代金で債務を完済した後に抵当権を抹消し、それから引き渡しますので、買い手の方も安心して購入できます。

不動産を売却する際に金融会社から合意を得る必要はなく、裁判所などの介入も一切ありません。

全ての売却方法の中で最も好条件となることが多いため、売主の方の負担も少ない売却方法です。

また、マイホームを買い換える場合、新居の住宅ローンに残債分を上乗せする「買い換えローン」などもあります。

利用するにあたっては条件がありますが、新居を買い換える場合は、「買い換えローン」を組むことで、通常売却ができる可能性もあります。

不動産を任意売却する方法

残債がある不動産で売却金額が低く、自己資金もなければ、通常売却をすることはできません。

そのような場合には、「任意売却」で不動産を売却できる可能性があります。

任意売却につきましては、下記の項目にてご説明致します。

不動産の任意売却とは

抵当権が設定されている不動産は、売却することが困難です。

通常では抵当権のある不動産は売却できませんが、「任意売却」を選択することで不動産売却が可能となります。

「任意売却」とは、ローンなどの残債が残っていても、抵当権を抹消して売却できる方法です。

住宅ローンなどを滞納した際に、金融機関と話し合いを行い、通常の売却に近い形で不動産売却を行います。
(必ず任意売却が認められるわけではありませんのでご注意ください)

通常の売却と近い形ですので、制約などはあるものの、残債がある不動産でも有利に売却できます。

売却によって得た代金は残債の返済に充て、残ったローン残高は通常通りに返済していきます。

返済の計画などを相談できる場合もありますので、不都合が少ない売却方法です。

競売よりもメリットが多い売却方法ですので、競売にかけられる前に、任意売却を視野に入れてみてはいかかでしょうか?

競売による不動産の売却

債務の返済が滞り、通常売却や任意売却ができない場合、残債のある不動産は「競売」にかけられます。

競売は3つの売却方法の中で、最もデメリットが多くなります。

競売につきましては、下記の項目にてご説明致します。

不動産の競売とは

残債のある不動産は、ローンなどの返済が必要です。

ローンが完済できていないのに債務の支払いが滞納すれば、債権者の方は「抵当権の実行」を行います。

「抵当権の実行」が行われますと、抵当権が設定されている不動産は差し押さえられます。

差し押さえられた不動産は、そのまま競売にかけられ、強制的に売却されます。

「競売」とは、裁判所の管理下で債権者の方が債務者の方の不動産を強制的に売却することです。

売主の方の意思に関係なく実行され、売却代金は債務の返済に充てられます。

売却価格は市場価格の50%~70%程度であり、強制退去も必要ですので、他の売却方法よりもデメリットが多いです。

売却代金で充当しきれなかった残債は引き続き返済義務があるため、他の売却方法よりも負担が大きくなる可能性も高いです。

任意売却のように、債務の返済について話し合いを行えず、厳しい状況が続く可能性もあります。

債務者の方の意見は全く通りませんので、そういった面でも任意売却より不利となります。

3つの売却方法の比較

「通常売却」、「任意売却」、「競売」には、それぞれ特徴があります。

メリットが多いものもあれば、デメリットが多いものもありますので、選択する売却方法によって大きく残債額が異なる可能性も高いです。

通常売却と任意売却は、必ず選択できる売却方法ではありませんので、その点も意識して比較してください。

各売却方法の特徴

残債がある不動産を売却する際には、3つの売却方法から選択できます。

競売は選択するというよりも強制的に実行されるものですが、各売却方法には下記のような特徴があります。

通常
売却
任意
売却
競売
売却条件 債務が売却代金、又は、売却代金+自己資金で完済できる場合 債務の完済が難しく、金融会社から合意を得られた場合 債務の返済を滞納し、強制的に実行される場合
売主の方の意思 売主の方の意思で売却可能 売主の方の意思で売却可能
(金融機関からの合意が必要)
売主の方の意思で売却不可能
(金融機関が強制的に実行)
売却価格 市場価格 市場価格
(安い価格で売却する可能性はあり)
市場価格の50%~70%程度
残債額 なし 低額になりやすい 高額になりやすい
売却代金が残る可能性 あり あり 殆どなし
プライバシー 事情を知られない 事情を知られない 競売物件と知られる可能性あり
引越し代 捻出可能 交渉次第で捻出可能 殆ど捻出不可能
持ち出し資金 仲介手数料などの支払いが必要 殆どなし 一切なし
残債務の交渉 必要なし 可能 不可能
退去日 売主の方次第 協議して決定できる 強制的、交渉不可能
裁判所の介入 なし なし あり
解決までの期間 短い(調整できる) 短い(調整できる) 長い

各売却方法には、上記のような特徴があります。

通常売却は売却によって債務を完済できる場合に選択でき、任意売却は債務が残っても金融機関から合意を得た場合に選択できます。

競売は売主の方の意思に関係なく、債務の返済が滞納すれば強制的に実行されます。

債務の完済が難しく、金融機関の合意を得られなければ、必然的に競売を選択することになります。

残債のある不動産を売却する際には、上記の点を踏まえた上で、売却方法を選択してください。

売却する上で有利なのは「通常売却 > 任意売却 > 競売」となります。

残債を減らすための対策

「通常売却」、「任意売却」、「競売」につきましては、上記のような特徴があります。

最も理想的なのは「通常売却」ですが、残債が多額で経済的に余裕がない状況では、選択できない方法です。

売却しても残債が完済できないのであれば、「任意売却」か「競売」を選択する必要があります。

「競売」につきましては、売主の方の意思ではなく、強制的に実行されるものですので、選択というには少し語弊があるかもしれません。

他の売却方法より不利な点も多く、残債が多額に残りやすいというのも競売の特徴です。

「任意売却」と「競売」を比較した場合、任意売却のほうが多くのメリットがあります。

売却価格も競売より高くなりやすいため残債を圧縮できますし、売主の方の意思が尊重される点も多いです。

早期売却をする際には通常売却より売却価格を安く設定することもありますが、それでも競売より高く売れる場合が多いです。

任意売却は債務者の方と債権者の方の間に不動産コンサルトが入り、売却後に債務が残っても不動産を売却できるように相談します。

相談して金融機関から合意を得られれば、任意売却を選択できます。

ただ1つ注意が必要なのは、任意売却は早いうちから行動をするほうがいいという点です。

競売開始時点からでも相談をして、合意を得られれば任意売却をすることはできますが、買い手の方を探せる期間はその分短くなります。

期間内に買い手の方が探せなければ、競売によって売却されますので、結局任意売却をできません。

余裕を持って任意売却をするためには、早めの行動を心がけるようにしましょう。

まとめ

残債のある不動産は、債務を意識した売却が必要です。

「通常売却」は、売却代金(不足分は自己資金で上乗せ)で債務を完済できる場合に選択できます。

売却しても残債がある場合は、「任意売却」か「競売」で不動産を売却します。

上記の2つでは任意売却のほうがメリットも多いですが、実際に売却するには金融機関からの合意が必要です。

早めの行動を心がける必要もあり、競売開始時点などから任意売却を行った場合、買い手を探す期間が短くなります。

一定の期間内に買い手が見つからなければ、結局は競売にかけられてしまいますので、その点に注意が必要です。

金融機関からの合意が得られなければ、どちらにしても競売にかけられて売却されます。

競売は売主の方の意思に関係なく行われ、強制的に不動産が売却されてしまいます。

売却価格が相場より安くなり、強制退去なども必要となりますので、負担の大きな売却方法です。

売却代金は債務の返済に充てられますが、売却価格が安い分、残債が圧縮され辛いです。

最も条件がいいのは「通常売却」、次に「任意売却」、最終手段として「競売」とお考えください。

 - 残債のある不動産の売却