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売却予定の不動産に根抵当権が設定されている場合の抹消方法

   

不動産売却時には、抵当権以外に「根抵当権」にも意識が必要です。

根抵当権が設定された不動産は、抵当権の場合と同様に買い手が見つかりにくくなってしまいます。

この記事では、このような不動産売却時の根抵当権についてご説明致します。

不動産の根抵当権とは

抵当権は、土地やマンション・住宅などの不動産が、ローンなどの借金の担保とされた際に設定がされる登記です。

不動産を担保として借金をした場合、借り入れた借金を完済して抵当権を抹消しなくては、その不動産を担保に新しい借金はできないのが原則です。

それに対して、根抵当権は、一回不動産を担保としますと、「予め決められた極度額」内で、何度でもお金を借りられるようになります。

例えば、Aさんが不動産を担保に根抵当権を設定し、極度額を「3,000万円」とした場合、この範囲内であれば
最初に「300万円」、次に「350万円」を借り、それを返済する前に「400万円」借りた後、一気に借金を返済するという借入・返済も可能となります。

根抵当権の説明

抵当権では、最初に「300万円」を借りた時点で、それを全額返済しなくては次の「350万円」は借りられません。

根抵当権を設定する際のルール

根抵当権を設定する際には、予め決めておかなくてはならない3つのルールがあります。

【根抵当権設定時のルール】

極度額
債務者が債権者から根抵当権で借りられるお金の上限額のことです。
債務者
根抵当権を設定する債務者のことです。
担保される債権の範囲(被担保債権の範囲)
根抵当権による融資を受ける際には、どんな債権も担保とできる訳ではありません。
例えば、個人事業のために不動産を担保としたにも関わらず、その根抵当権を利用して個人事業に関係のないマイカーなどを購入しては、元の使用用途と異なる融資が行われてしまいます。
そのような事態を防ぐために、事前に「どのような用途や種類でお金の貸し借りが行われるのか(債権の範囲)」を決めておく必要があります。
なお、「債権」と「債務」の違いにつきましては、下記のようになります。
債権
特定の人が他の人の財産などに対して、特定の行為をさせる権利
債務
特定の相手に対して、金銭を支払ったり、物を渡したりする法律上の義務
根抵当権でお金を借りる際の「債権」と「債務」は下記の関係となります。
債権と債務の違い

根抵当権設定を行うメリット

不動産を担保に何度も借金をする場合、その都度抵当権の手続きを行うのは非常に手間です。

そのような際に、根抵当権の設定をしますと、余計な手間を削減できます。

また、根抵当権を設定するメリットはこれだけではありません。

抵当権を設定・抹消する際には、毎回登録免許税などの納付が必要となります。

借金をする度に抵当権の設定・抹消を繰り返してしまいますと、多くの費用を用意しなくてはなりません。

そのような際に根抵当権を設定しますと、限度額内であれば1回分の登記費用で何度でも借金と返済を繰り返せるようになり、余計な費用を削減できます。

抵当権と根抵当権の登記費用の例

1,000万円の借り入れを3回行った場合、抵当権と根抵当権では、どの程度必要費用が変わるのかを計算してみます。

【抵当権と根抵当権の基本情報】

抵当権・根抵当権の設定時の登録免許税
債権金額の「4/1000(0.4%)」
抵当権・根抵当権の抹消時の登録免許税
登記する不動産の個数 × 1,000円

【計算例】

抵当権の場合
設定時の登録免許税:1,000万円 × 4/1000(0.4%) × 3 = 120,000円
抹消時の登録免許税:1,000円 × 3 = 3,000円
合計:120,000円 + 3,000円 = 123,000円
根抵当権の場合
設定時の登録免許税:1,000万円 × 4/1000(0.4%) = 40,000円
抹消時の登録免許税:1,000円 × 1 = 1,000円
合計:40,000円 + 1,000円 = 41,000円

上記を見てみると、合計費用が「82,000円」も変わるという結果となります。

不動産売却時の根抵当権の問題点

何度もお金の借り入れをする際には便利な根抵当権ですが、場合によってはそれが問題となるケースもあります。

その主な状況として、不動産の相続と売買の際が挙げられます。

不動産の相続がされる際に根抵当権が設定されている場合、その抵当権は自然には受け継がれません。

被相続人が、そのまま根抵当権を受け継ぎたくない場合は良いのですが、受け継ぎたい場合には、「相続発生から6ヶ月以内」に遺産分割と債務引受の手続きを終える必要があります。

もしも相続発生後6ヶ月以内に各手続きができなかった場合には、根抵当権は普通の抵当権となります。

相続不動産の根抵当権を継続したい場合には、このような点に意識をする必要があります。

なお、不動産の売買時に根抵当権が設定されている場合のデメリットにつきましては、下記でご説明致します。

根抵当権と売却時のデメリット

抵当権や根抵当権が設定されている不動産は、何かの借金の担保となっている状態です。

このような状態で不動産を売り出してしまいますと、買主の方から嫌煙されてしまう原因となります。

不動産の売主の方は、特別な事情がない限りは、根抵当権を抹消しておくのが無難です。

根抵当権設定の外し方

根抵当権は、主に下記の3つのいずれかの方法を用いますと抹消ができます。

  1. 債務を全額返済する方法
  2. 新たな担保物件を提供する方法
  3. 元本確定をする方法

これらの方法につきましては、下記で詳しくご説明致します。

1.債務を全額返済する方法

不動産売却時に根抵当権を抹消するためには、根抵当権を設定している金融機関に対して解除契約を行う必要があります。

根抵当権の解除契約を行うためには、現在借り入れている債務を全額返済しなくてはなりません。

ただ、根抵当権による借り入れを一気に返済する際には、高額な手数料や違約金が発生する可能性があります。

既に借り入れを完済している方は問題ありませんが、まだ多額の借り入れが残っている方は注意が必要です。

2.新たな担保物件を提供する方法

根抵当権は、不動産を担保にして借金をしている状態です。

その影響で、通常は借金の返済を行わなくては解除が行えません。

ただ、現在担保となっている不動産と同等以上の価額のある別の不動産を準備した場合に限り、それを新たな担保物件とできるのが一般的です。

新しい担保物件に根抵当権を変更する手続きが終わりますと、元々担保となっていた不動産の根抵当権を抹消できます。

3.元本確定をする方法

根抵当権を抹消する際には、「元本確定」という方法もあります。

根抵当権の元本確定とは、何月何日時点で何円の返済義務があるのかを確定し、それ以降は新たな借り入れをできなくする手続きです。

根抵当権の元本が確定しますと、その権利は抵当権と同じとなります。

元本確定は行える期間に決まりがあり、根抵当権者と根抵当権設定者でその期間が異なります。

根抵当権者は、いつでも元本確定請求を行え、請求時にすぐ元本確定がされます。

それに対して、根抵当権設定者は、根抵当権設定後3年が過ぎている場合のみ請求が行え、請求から2週間後に元本確定がされます。

元本確定の説明

元本の確定が終わりましたら、後は通常の抵当権の同様の手順で抹消時を行えます。

根抵当権抹消に必要な書類

前項のいずれかの方法を用いて根抵当権自体の効力を無くしたとしても、登記記録から根抵当権が消える訳ではありません。

登記記録自体から根抵当権を抹消するためには、「根抵当権抹消登記」を行う必要があります。

根抵当権抹消登記を行う際には、事前にいくつかの書類の準備が必要となります。

手続きに必要な書類と取得費用

根抵当権抹消登記には、主に下記の書類が必要となります。

根抵当権抹消登記の必要書類
必要書類 取得場所 取得費用
根抵当権設定契約証書 ご自身所有 0円
登記原因証明情報
(根抵当権解除証書など)
金融機関 0円
根抵当権者(金融機関)
の委任状
金融機関 0円
根抵当権者(金融機関)
の資格証明書
(発行から3ヶ月以内)
金融機関 金融機関によります
根抵当権設定の ご自身所有 0円
根抵当権設定者(不動産所有者)
の委任状
ご自身作成 0円
根抵当権設定者(不動産所有者)
の印鑑証明書
(発行から3ヶ月以内)
法務局 【個人の場合】
1通300~400円程度

【法人の場合】
「登記所にて請求・取得した場合」
1通450円程度
「オンラインで請求の場合(郵送取得)」
1通410円程度
「オンラインで請求の場合(窓口取得)」
1通390円程度

印鑑証明書などの取得費用につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「その他登記に必要な費用の目安」の項目をご覧ください。

根抵当権者(金融機関)の資格証明書の取得につきましては、各金融機関により費用が異なります。

無料で書面を送ってきてくださる金融機関もあれば、取得に費用が必要となる金融機関もあります。

その際には、書面の取得費用である「450円」程度の費用を請求されるケースが多いです。

根抵当権設定抹消の期間

根抵当権抹消登記は、登記申請時にすぐに手続きがされる訳ではありません。

必要書類や申請書の準備は通常は1週間程度で終えられますが、場合によってはもっと時間が掛かってしまう可能性もあります。

登記申請から手続きまでの期間

不動産の根抵当権を抹消する際には、抵当権抹消登記に掛かる期間を考えた上で申請を行うことが大切です。

特に不動産を売却する際には、買主の方との売買契約に間に合うように手続きを終えておく必要があります。

根抵当権抹消登記は、登記申請を行ってから「約1週間」程度で終わります。

不動産を売却する際には、早めに手続きを始めるようにしてください。

根抵当権抹消の費用

根抵当権を抹消する際に忘れてはならないのが、登記手続きに必要となる費用です。

根抵当権抹消登記には、登録免許税や司法書士の方への報酬など、様々な費用が必要となります。

この項目では、根抵当権抹消登記に必要な費用についてご説明致します。

ご自身で手続きを行う場合

ご自身で根抵当権抹消登記を行う際には、必要書類の収集費用と登録免許税の納付が必要となります。
(登録免許税は「登記する不動産の個数 × 1,000円」です)

例えば、必要書類を全て取得し、1個の不動産の登記を行った際の費用は下記のようになります。

なお、
「根抵当権者(金融機関)の資格証明書」には「450円」の発行手数料が掛かり、
「根抵当権設定者(不動産所有者)の印鑑証明書」は登記所にて請求・取得した
と仮定します。

ご自身で根抵当権抹消登記を行う際の必要費用の例
必要書類 取得費用
根抵当権設定契約証書 0円
登記原因証明情報
(根抵当権解除証書など)
0円
根抵当権者(金融機関)
の委任状
0円
根抵当権者(金融機関)
の資格証明書
(発行から3ヶ月以内)
450円
根抵当権設定の 0円
根抵当権設定者(不動産所有者)
の委任状
0円
根抵当権設定者(不動産所有者)
の印鑑証明書
(発行から3ヶ月以内)
450円
登録免許税 1,000円

上記を合計しますと、今回の例では「1,900円」の費用が必要という計算となります。

司法書士の方に委任する場合

司法書士の方に根抵当権抹消登記を委任する際には、必要書類の収集費用と登録免許税の納付に加え、委任に対する報酬が必要となります。
(登録免許税は「登記する不動産の個数 × 1,000円」です)

例えば、必要書類を全て取得し、1個の不動産の登記を行った際の費用は下記のようになります。

なお、
「根抵当権者(金融機関)の資格証明書」には「450円」の発行手数料が掛かり、
「根抵当権設定者(不動産所有者)の印鑑証明書」は登記所にて請求・取得した、
司法書士の方の報酬額は「日本司法書士会連合会」が「平成25年2月」に行ったアンケートによる報酬の平均額である「14,203円」
と仮定します。

司法書士の方に根抵当権抹消登記を委任する際の必要費用の例
必要書類 取得費用
根抵当権設定契約証書 0円
登記原因証明情報
(根抵当権解除証書など)
0円
根抵当権者(金融機関)
の委任状
0円
根抵当権者(金融機関)
の資格証明書
(発行から3ヶ月以内)
450円
根抵当権設定の 0円
根抵当権設定者(不動産所有者)
の委任状
0円
根抵当権設定者(不動産所有者)
の印鑑証明書
(発行から3ヶ月以内)
450円
登録免許税 1,000円
司法書士への報酬 14,203円

上記を合計しますと、今回の例では「16,103円」の費用が必要という計算となります。

まとめ

根抵当権が設定された不動産を売却する際には、根抵当権の抹消が必要となります。

根抵当権が設定されたままの不動産は、買い手が見つかりにくく、売却に不利となりやすいのが一般的です。

根抵当権は、根抵当権抹消登記で抹消ができます。

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