不動産売却の知恵袋

不動産売却時のわからないことを解決するサイト

*

不動産に差押登記がされてしまう原因と任意売却をする方法

   

不動産はどのような物件でも売却できる訳でありません。

不動産は高額なものですので、債務不履行などを行った際の担保とされることが多いです。

債務の返済などが滞れば、不動産に差押登記がされる可能性があります。

差押登記をされた場合には、所有者の方が勝手に不動産を処分したり売却したりすることを禁止されます。

この記事では差押登記をされた不動産の売却について記載しておりますので、参考にしてください。

目次

不動産が差押えられる原因

不動産は「差押」をされてしまうことがあります。

「差押登記」をされただけではまだ所有権は債務者の方にありますが、不動産の売却などは自由意思で行えません。

主に不動産が差押となる原因は下記の2つです。

ご事情などで住宅ローンや税金などを滞納しますと、不動産に差押登記をされる可能性があります。

上記につきましては下記の項目から順次ご説明致します。

住宅ローンなどの滞納

マンションや一戸建てなどの不動産を購入する際には、多くの方が住宅ローンを組んだり、借金をしたりします。

その際に債権者の方は、債務者の方の不動産に「抵当権」を登記することが殆どです。

「抵当権」は「担保権」の1種であり、ローンや借金の返済が滞った際に抵当権を登記した不動産を差押える権利があります。

不動産の抵当権の差押
債権者の方が競売を申し立てますと、裁判所から法務局に委託され、不動産に差押登記が行われます。

差押登記がされた不動産は、所有権をお持ちの方でも自由に売却できなくなります。

抵当権につきましては「不動産に残債があり抵当権を設定されている場合の売却方法」の記事にあります「抵当権とは」の項目にて記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。

抵当権の実行をされていない状態では自由に所有者の方が売却できますが、そのような不動産を購入する方は殆どいらっしゃいませんので、買主の方は極めて見つけ辛いです。

抵当権が付いたままの不動産は、債務者の方から所有権が移転しても、売主の方の返済が滞れば債権者の方が抵当権を実行できます。

抵当権の実行をされた場合、例え第三者の方に不動産が渡っていても、差押及び競売にかけられます。

トラブルの原因にもなりますので、返済が困難であれば、まず債権者の方に相談をするようにしましょう。

抵当権付きの不動産は、抹消登記を行ってからの売却が大前提であるとお考えください。

税金の滞納

日本国民であれば税金の納税が必要です。

税金滞納をしてしまった際には、それなりの措置を取られます。

国税や地方税を滞納した際には、まず預金口座が差押えられ、口座がマイナスである場合などは不動産も対象となります。

不動産の税金滞納の差押
急に差押登記がされる訳ではなく、督促状や催促状が届いた後に納税がされなければ財産調査が行われ、不動産に登記が行われます。

差押登記がされた不動産は、所有権をお持ちの方でも自由に売却できなくなります。

差押不動産の強制売却

差押登記がされた不動産は、通常の不動産とは異なります。

登記をされた場合、気になるのが売却についてです。

差押不動産は放っておくと競売や公売にかけられ、所有者の方の意思に関係なく換価されます。

そうなってしまいますと、もうどうしようもありません。

競売と公売につきましては、下記の項目からご説明致します。

差押不動産の競売と公売

差押となった不動産は、「競売」や「公売」で売却されます。

競売や公売では、不動産が強制的に売却されてしまいます。

競売や公売の売買代金は市場価格の7~8割程度となることが多く、通常よりも安い価格で売買されます。

任意売却より多くの点で不利となることも多く、デメリットの多い売却方法です。

インターネットで競売、公売物件は検索でき、チラシなどにも載りますので、ご近所や知人などにもばれてしまう可能性があります。

強制執行が行われますと、不動産の引渡しも所有者の方の意思に関係なく行われますので、住宅などではたちまち住む場所もなくなってしまいます。

競売や公売は所有者の方が段取りをして売却することはできず、今後の計画を立てることも困難です。

競売の場合ですが、通常売却と任意売却との比較を「不動産に残債があり抵当権を設定されている場合の売却方法」の記事にあります「各売却方法の特徴」の項目に載せておりますので、併せてご覧ください。

競売と公売の違い

競売と公売は同じ意味として使われることもありますが、実際には異なる売却方法です。

主に下記が競売と公売の違いとなります。

競売 公売
差押条件 住宅ローンの滞納など 税金の滞納など
根拠法 民事執行法 国税徴収法
債権者 金融機関や個人など 国や自治体など
執行 裁判所 国税庁や地方自治体
差押対象 不動産(例外もあり) 預金口座
自動車
不動産
宝飾類
絵画
など
売却方法 期間入札 期日入札
期間入札
インターネット公売
広告随意契約
売却価格 市場価格の7~8割程度 市場価格の7~8割程度
強制執行 不動産の引渡し命令を申し立てることで可能 明渡しの請求訴訟で勝訴すれば可能

大きな違いとしては、競売の債権者は金融機関などですが、公売のほうは国や地方自治体という点です。

強制執行につきましても、競売は引渡し命令を申し立てることで可能ですが、公売は訴訟して勝訴しなければ行えません。

強制売却の流れと登記抹消方法

差押登記がされている不動産は、扱いに注意が必要です。

放っておけば強制的に売却される恐れもあり、売却を望まない場合は早急に対処する必要があります。

差押登記や強制売却は、債務の返済や税金を滞納してすぐに行われる訳ではありません。

下記の項目から競売、公売の流れと差押登記などの抹消方法について記載しておりますので、参考にしてください。

なお、差押登記がされた不動産の任意売却につきましては、「差押不動産と任意売却」の項目にて記載しておりますので、お手数をお掛け致しますがそちらをご覧ください。

ローンや借金などの場合

不動産を購入する際にローンを組んだり、借金をしたりした際には、殆どの場合「抵当権」が設定されております。

抵当権が設定されている不動産は、債権者の方が「抵当権の実行」を行うことで差押登記及び強制売却が行われます。

大まかな流れは、下記のようになります。

  1. 不動産を購入した際に、住宅ローンを組む、又は借金をする
  2. 購入した不動産に「抵当権」が設定される
  3. 債務の返済が滞り、返済期限を過ぎる
  4. 債権者が抵当権を実行し、裁判所に競売の申し立てをする
  5. 裁判所が競売の開始を決定すれば、不動産に「差押登記」がなされ、売却などが禁止される
  6. 価格評価や調査などが行われ、競売が開始される
  7. 債権者の方が売却代金から弁済を受ける(不足分は債務者の方が引き続き返済する)

抵当権の実行が行われますと、不動産の所有者の方(債務者の方)の意思に関係なく差押と競売が行われます。

抵当権が設定されていれば強制執行を行えますので、退去もしなくてはいけません。

抵当権の登記を抹消するには、ローンや借金を完済する必要があります。

不動産は抵当権を抹消してからの売却が前提ですので、残債がある場合は注意が必要です。

住宅ローンの保証会社が金融機関に代位弁済をした場合、保証会社から一括返済を請求されます。

そのような場合では期限内に完済するのは難しく、差押された不動産を売却して得た代金を弁済に充てることになります。

税金の場合

日本国民であれば所得税や住民税、固定資産税など、状況に応じて納税が必要です。

上記などの税金の納税が滞れば、国や地方自治体から不動産の差押をされる場合があります。

大まかな流れは、下記のようになります。

  1. 納めるべき税金を滞納する
  2. 督促状が送られてくる
  3. 督促状が送られてきても納税をしない場合、催告状が送られてくる
  4. 財産調査を行われ、差押予告書が送られてくる
  5. 預金口座や不動産、自動車や宝飾品などが「滞納処分」として差押登記される
  6. 差押となったものが公売される
  7. 国や地方自治体が売却代金から弁済を受ける(不足分は納税義務者の方が引き続き納税する)

差押が行われますと、不動産などの財産は所有者の方の意思に関係なく差押と公売が行われます。

訴訟され国や地方自治体が勝訴した場合は強制執行も行えますので、所有者の方も強制執行に応じなくてはいけません。

差押の登記を抹消するには、滞納した税金を全て納税する必要があります。

納付期限を過ぎた際には「延滞税」も支払わなくてはいけませんので、負担は大きいです。

差押不動産と任意売却

差押となった不動産は、放っておけば強制的に売却される可能性が高いです。

競売は申し立てすることで、公売は訴訟に勝訴することで強制執行できますので、債務者の方の意思に反して売却されます。

競売や公売は市場価格よりも安く売買されることが多く、債務者の方にとって不利となります。

より高く売却することで後の負担が軽減されますので、「任意売却」を希望する方も多くいらっしゃいます。

任意売却は市場価格に近い価格で売却できる可能性があり、債務者の方にとってメリットも多いです。

差押不動産を任意売却できる?

ローンの返済や税金などを滞納した場合、不動産が差押登記される可能性があります。

差押となった不動産は、任意売却が可能なのか疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

結論から申しますと、差押えられた不動産を任意売却することは可能です。

ただし、売主の方の意思のみで売却できず、きちんと手順を踏んで売却する必要があります。

差押えられた不動産を任意売却するには、まず売ることによって債務を完済できるかどうかが重要となります。

残債(金融機関からの借金の残りなど)や滞納税金を全て支払うことが前提であり、不動産を売却してその代金で債務を完済できるのであれば、任意売却できます。

売却代金と持出金で完済できる場合も、任意売却可能です。

いずれも差押や抵当権などの登記を抹消してからの売却が必要ですので、「売却代金(+持出金)で債務が完済できるため不動産を売却したい」と意向を債権者に伝え、了承を得て売却する必要があります。

問題は売却代金と持出金の合計額が残債や滞納税金の額に達さない場合です。

この場合は、債権者の方と話し合いをして了承を得られれば、任意売却ができます。

残った債務につきましては引き続き返済する必要があり、高く売却できればできるほど負担が減ります。

了承を得られなければ競売や公売となり、不動産の任意売却はできません。

任意売却をご希望の際には、交渉などがありますので、専門家の方に相談する方が多いです。

早めの相談が重要ですので、差押となった際には注意が必要です。

任意売却が遅れることで売却期間が短くなったり、売却自体が困難となったりする可能性もあるため、できる限り早めに行動するようにしましょう。

  • 可能:住宅ローンなどの残債や滞納税金 < 売却価格 (+ 持出金)
  • 可能:住宅ローンなどの残債や滞納税金 > 売却価格 (+ 持出金) で債権者の方から了承を得られた場合
  • 不可能:住宅ローンなどの残債や滞納税金 > 売却価格 (+ 持出金) で債権者の方から了承を得られなかった場合

まとめ

不動産は主に「住宅ローンや借金の滞納」、「税金の滞納」によって差押登記をされます。

差押登記がされれば、所有者の方の意思で売却できなくなります。

差押となった不動産は競売や公売にかけられます。

不動産の売却代金は債権者の方への弁済に充てられ、不足分は引き続き返済や納税する必要があります。

しかし、競売と公売は市場価格の7~8割程度の価格で売却されることが多く、債務者の方の負担が大きくなりやすいというデメリットも存在します。

任意売却のほうが市場価格に近い価格で売却できる可能性が高いため、競売や公売よりも有利です。

差押登記がされた不動産でも、状況によっては任意売却できます。

売却代金(+持出金)で全て支払えるのであれば、債権者の方に相談して多くの場合、任意売却が可能です。

売却代金(+持出金)で完済ができないのであれば、債権者の方と話し合い、了承を得られれば任意売却が可能となります。

交渉する際は専門家の方に相談する場合が多く、いずれも早い行動が大切です。

あまりにも遅ければ任意売却の売却期間が短くなったり、最悪の場合は任意売却自体ができなくなったりしますので、ご注意ください。

 - 不動産売却と差押