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不動産を売却する際の3種類の手付金と住宅ローン特約の内容

      2018/02/15

初めて不動産を売却する際には、様々な言葉を見聞きする機会があります。

不動産を売買する機会は、一生のうちにそうある経験でない場合が多いのも事実です。

その数少ない機会で、悔いのない売買を行うためには、不動産の売買について多くの知識を持っておくのも大切です。

不動産を売買する際には、いくつもの場面で高額な金銭のやり取りがされるケースも少なくありません。

不動産の売買が行われる際には、「手付金」と呼ばれる金銭のやり取りなども行われるのが一般的です。

この手付金には、売主の方や買主の方にとって様々な意味があり、お互いによく内容を知っておく必要があります。

万が一、手付金の意味についてよくご存じない場合には、後の契約解除などの際に問題が起こってしまう可能性も高まります。

手付金は、売主・買主の双方に関係のある金銭のやり取りです。

個人間売買の際などには手付金のやり取り自体を省くケースもありますが、仲介売買などの際にはほぼ手付金のやり取りがされると考えておいて問題ありません。

この項目では、このような不動産売却の際の手付金について詳しくご説明致します。

目次

不動産売却時の手付金の説明

不動産を売却する際には、手付金などのやり取りが必要となるといった話を聞いたことのある方も多いかもしれません。

手付金は、不動産の買主の方から売主の方に、一定の金銭が渡されるのが一般的です。

手付金のやり取りは、不動産売買の際にほぼ行われるといっても過言ではありません。

手付金の金額は、高額となるケースが殆どであり、実際に何百万円単位となる場合も多くあります。

特に、不動産を仲介売買などで売買する際には、この手付金のやり取りが必須であるといえます。

現在存在している不動産会社の多くは、手付金のやり取りを省いての不動産売買は行いません。

これは、売主の方や買主の方が安全にお取引をできるという意味も含まれています。

どうして不動産売買時に手付金のやり取りを行いますと不動産のお取引に安全性が増すのか、という理由につきましては下記で詳しくご説明致します。

なお、不動産売買時の手付金とは、住宅ローンの申し込み時に必要となる手付金とは異なります。

下記でご説明しますのは、不動産売買時に必要となる手付金となります。

不動産売却時の手付金の意味

不動産の売買が行われる際には、通常は売主の方と買主の方との間で売買契約が締結されます。

その際に、手付金のやり取りの話も出てくるのですが、そもそもどうして売買契約の後に手付金が必要となるのでしょうか。

売買契約を締結してしまった時点で、売主と買主の間で売買に関する契約が締結している状態であることには変わりありません。

ただ、これだけでは後に売主・買主のどちらかが突然に契約の破棄をしてしまうという危険があります。

例えば、契約書を取り交わした後に、突然買主の方が現在の契約を勝手に解除し、他の不動産を購入してしまったといったような事態が起こってしまうかもしれないのです。

また反対に、売主の方が現在の買主の方よりも条件の良い購入希望者が見つかったと、勝手に本来の買主の方以外に不動産を売ってしまうというような事態が起こってしまう可能性もあります。

このような事態が起こり得る状態では、売主・買主共に安全にお取引を進めにくくなってしまいます。

ここで重要となってくるのが「手付金」です。

不動産の売買契約締結の際に、売主の方と買主の方との間で手付金のやり取りが行われますと、
契約が成立したという証明
となり、後にお互いが契約に関しての意義を唱えにくくなるというメリットがあります。

この手付金は、契約の証拠金として買主の方から売主の方に渡されます。

一度手付金のやり取りがされた後は、相応の理由がない限りは契約破棄に関して様々なペナルティが課せられるようになります。

売主の方や買主の方が一方的に不動産の売買契約の破棄を行った際のペナルティにつきましては、同ページの「不動産売買時の3種類の手付金」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

やむを得ない契約解除の場合

不動産の売買契約を行い、手付金のやり取りが行われた後に契約の解除ができないと聞くと、不安を感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

特に、後に住宅ローンを組んだ上で不動産を購入しようとお考えの買主の方などは、後にローンが否認されてしまうなどといった可能性もあり得ます。

これでは、不動産を購入するための資金を用意できなくなり、不動産の購入自体が行えなくなってしまいます。

このような際には、買主の方に悪意があった訳でもないにも関わらず、不動産の売買を破棄せざるを得ない状況となります。

買主の方に悪意がない状況下で、不動産購入のための住宅ローンを組めなかった際などには、通常はそれを理由に契約の解除を行えるのが一般的です。

これは「住宅ローン特約」などと呼ばれ、売主の方に渡した手付金も買主の方に返還されます。

詳しい「住宅ローン特約」の説明につきましては、同ページの「手付金と住宅ローン特約の内容」で詳しくご説明致しますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

他にも、売主の方に過失がない状態(自然災害や犯罪に巻き込まれたなど)で、不動産を紛失してしまった場合にも、通常は売買契約の解除を行えます。

ただ、これらの要因による契約解除を行うためには、契約書内に上記の内容を定めた規定が記載されている必要があります。

仲介売買などでは、多くの場合仲介業者が契約書などの準備もしてくださいますので、これらの内容がきちんと記載されているのが通常です。

契約書をご自身で作成した場合などには、このような内容の記載がされているかを確認した上で、契約を進めるようにしてください。

不動産売買時の3種類の手付金

不動産を売買する際の手付金には、先ほど、当事者が安全にお取引を進めやすくする効果があると記載しました。

実際に手付金のやり取りが行われた後には、適切な理由がない限りはお互いに契約の解除が行えないような状態となります。

正確には、手付金のやり取りが行われた後であっても、不動産売買契約の解除自体は可能ではあります。

問題となるのは、その際に必要となるペナルティが大きいという点です。

不動産の売買契約時における手付金は、主に下記の3つの種類があり、それぞれ内容が異なります。

不動産売買の契約時には、通常は上記のうち解約手付が用いられるのが一般的です。

不動産売買契約書などに手付金の種類の記載がない場合にも、判例上「解約手付」と推定されるのが通常です。

売主の方と買主の方のうち、どちらかが不正な行為を行った際には、上記の解約手付として大きなペナルティが必要となる可能性があります。

また、不動産の売買契約の際に違約手付が選択されている場合には、解約手付とは違ったペナルティが課せられます。

これらのペナルティは、行われた不正行為の種類などにより、その金額などが変動するのが一般的です。

これらの手付金につきましては、下記の項目で詳しくご説明致します。

解約手付

解約手付とは、不動産の売買契約締結が終わり「売買契約履行に着手するまで」の間に、売主・買主のいずれかが一方的に契約を解除したくなった際に必要となる手付金です。

この場合、売主の方と買主の方は、それぞれ相応のペナルティである解約手付金を相手に支払わなくてはなりません。

売主の方と買主の方に発生する解約手付の主な内容につきましては、下記のようになります。

売主
不動産の売買契約締結の際に受け取った手付金を買主の方に倍返しする(手付倍返し)
例:事前に買主の方から「300万円」を受け取っている場合には、契約解除のために「600万円」の解約手付を買主の方に支払う必要があります。
不動産売買時に売主の都合で売買契約を解約・違約する場合
買主
不動産の売買契約締結の際に支払った手付金の返還を受けられない(手付流し)
例:事前に売主の方に「300万円」の手付金を支払っている場合には、支払った「300万円」を解約手付とし、契約解除後も手付金は返還されません。
不動産売買時に買主の都合で売買契約を解約・違約する場合

手付金の金額にもよりますが、解約手付では、多くはこのように高額なペナルティが発生します。

売主の方や買主の方にやむを得ない事情などがある場合には、ペナルティなく契約解除を行える場合もありますが、
片方の一方的な理由などの場合には、相応の出費が必要となるという点に意識が必要です。

このような影響で、手付金は契約成立をより強固としやすくなる効果があり、売主・買主共に中途半端な契約を行えないようにする効力を期待できます。

違約手付

違約手付とは、不動産の売買契約が締結された後に、「売買契約に対して売主の方や買主の方が契約違反(不履行)」を行った際に必要となる手付金です。

この場合、解約手付と同様に、売主の方と買主の方は相手に対して、それぞれ相応のペナルティである違約手付の支払いが必要となります。

売主の方と買主の方に発生する違約手付の主な内容につきましては、下記のようになります。

売主
不動産の売買契約締結の際に受け取った手付金を買主の方に倍返しする
例:事前に買主の方から「300万円」を受け取っている場合には、契約解除のために「600万円」の違約手付を買主の方に支払う必要があります。
不動産売買時に売主の都合で売買契約を解約・違約する場合
買主
不動産の売買契約締結の際に支払った手付金の返還を受けられない
例:事前に売主の方に「300万円」の手付金を支払っている場合には、支払った「300万円」を違約手付とし、後に契約を履行した場合でも手付金は返還されません。
不動産売買時に買主の都合で売買契約を解約・違約する場合

本来、不動産の売買契約が締結された後の契約解除に関しては、事前に損害賠償金額などが設定されているのが通常です。

不動産売買契約時に違約手付が設定されておりますと、その損害賠償金額よりも高い金額の支払いが必要となったとしても、
そのままの金額を違約手付として支払わなくてはなりません。

売主側や買主側にやむを得ない事情がある場合などは別ですが、こちらも多額の金銭の支払いが必要となるケースも少なくありません。

不動産の売買契約締結後には、契約の不履行とならないよう十分な注意をしておくようにしてください。

証約手付

証約手付とは、不動産の売買に限らず、一般的な契約や約束事などについて、契約が締結したと証明する意味合いで使われる手付金です。

不動産売買時に証約手付を選択しますと、買主の方から受け取る金額が、他の手付金と比べて少額となる場合が多くなります。

証約手付の金額は、
「5万円~10万円」程度
となるのが一般的であり、契約不履行時などには、お互いに別途決められた損害賠償の支払いが必要となります。

現在の日本では、不動産売買時に証約手付が選択されるケースは殆どないのが実情です。

特に仲介売買の場合には、証約手付が選択されるケースはほぼありません。

仲介により不動産の売買を行う際には、通常は解約手付が選択されます。

証約手付が選択される状況の例としては、仲介業者を通さず個人間で不動産を売買する場合などが挙げられます。

不動産の個人間売買などの際などには、どの手付金を選択するかは、当事者間に委ねられます。

親族間での不動産売買などの際には、この証約手付などを選択するなどといった方もいらっしゃいます。

また、親族間などで不動産の個人間売買を行う際には、根本的に手付金のやり取り自体を行わないというケースもありますので、ご自身の都合の良い方法をご選択ください。

ただ、個人間売買の際に、売主の方と買主の方に信頼関係がない場合には、手付金なしでの売買が危険となる可能性もあります。

お互いの関係がそれほど深くない場合には、通常通り「解約手付」などを選択しておく場合も多いようです。

手付金は、後の契約履行を促すために大きな意味合いを持ちますので、それぞれの方の状況により適切な方法をご検討ください。

売買契約時の手付金の相場

不動産売買時の手付金には、実は金額の規定などはありません。

金額の規定がないという面から、基本的に売主の方と買主の方が自由に手付金額を決められます。

とはいえ、仲介売買などを選択している際には、多くの場合、依頼先の仲介業者に従い手付金の金額を設定します。

既に記載をしましたが、手付金は、不動産売買時のお取引を安全にするための証拠金です。

その影響で、売主の方と買主の方が簡単に契約解除をできない金額となるケースも多くあります。

手付金の金額は、売主の方にとっても、買主の方にとっても大きな影響が出る部分です。

手付金の金額に規定などはないとはいえ、実際には相場などは存在しております。

現在の不動産売買時に関わる手付金は、多くの場合、この相場の範囲内となるのが一般的です。

状況などによっては一般的な相場と金額が異なってしまうケースもありますが、そのような場合には事前に話し合いなどがあるのが通常です。

実際の不動産売買時の手付金の相場につきましては、下記で詳しくご説明致します。

売買契約時の手付金の金額

不動産の売買契約締結時に必要となる手付金には、一般的な相場が存在します。

買主の方は、この相場を知っておきますと、不動産購入時の資金の工面などを行いやすくなります。

不動産の売主の方も、受け取れる可能性のある手付金の金額を事前に想定した上でお取引を行えるようになります。

一般的に言われている不動産売買時の手付金の相場は、
「物件価格の5%~10%」
又は、
「物件価格の10%~20%」
程度です。

不動産会社が物件の売主となっている場合には、物件価格の20%が手付金額の上限となります。

上記の範囲を見ますと、大体物件価格の5%~20%の間で手付金が決められるということになるのですが、その中でも設定される可能性の高い手付金の金額は
「物件価格の10%」
です。

例えば、物件価格が3,000万円の場合には、その10%である「300万円」が手付金となる可能性が多いということになります。

ただ、物件価格の10%の手付金となりますと、物件価格によっては手付金が膨大になり過ぎる可能性もあります。

例えば、物件価格が5,000万円の場合には、手付金が「500万円」も必要です。

これは、現実的とはいえない金額であり、買主の方も準備に対して多大な負担が必要となります。

そのような場合には、物件価格の10%を手付金とはせず、
「100万円」
のみを手付金とするのが一般的です。

100万円は、買主の方が準備をするという点でも現実的であり、かといって契約解除による放棄も容易にはできない金額です。

その影響で、手付金を物件価格に関係なく100万円とするケースは、最も多い事例といっても過言ではありません。

なお、売主の方は、手付金を受け取った際に買主の方へ領収書の発行を行う必要があります。

不動産を個人で売買した際には、領収書に対して印紙は不要ですが、それ以外の場合には金額に応じた印紙が必要となりますのでご注意ください。

これら一連の作業が終わりましたら、手付金のやり取りは終わりです。

買主の方から受け取った手付金は、通常は不動産の決算の際の頭金となるケースが多く、そのまま不動産の売買代金に充当されるのが一般的です。

手付金のやり取りが行われる時期

不動産の売買時に実際に手付金のやり取りが行われる時期は、通常は一定の時期に決まっております。

それぞれの状況により、細かい違いなどはありますが、実際にやり取りがされるタイミングに関してはほぼ相違はありません。

特に買主の方は、事前に手付金の準備などが必要となるため、手付金のやり取りがされるタイミングについて事前に確認をしておくと安心です。

売主の方も、手付金という大金を受け取ることとなりますので、ある程度受け取るタイミングなどを知っておくことが必要です。

仲介売買では、多くの場合、依頼先の仲介業者が手付金のやり取りについてのサポートを行ってくださいますが、
個人間売買などの際には、当事者間で手付金のやり取りを進めていく必要があります。

不動産売買時の手付金は、一定の時期を過ぎてしまいますと手付金とならない場合もあります。

その影響で、不動産を売買する際には、手付金のやり取りのタイミングを間違えないようにすることが大切です。

特に個人間売買などの際には、適切な時期に手付金の支払い・受け取りを行うように意識をしておかなくてはなりません。

不動産売買時に手付金のやり取りが行われるタイミングにつきましては、下記で詳しくご説明致します。

手付金を受け取るタイミング

不動産売買の際には、ほぼ売主と買主の間で手付金のやり取りが必要となります。

手付金の支払い・受け取りは、その時期が自由に決められる訳ではありません。

通常は、一定の決まりがあり、その決められたタイミングで手付金のやり取りを行う必要があります。

元々、不動産売買時の手付金は、売買契約を締結する際の証拠金です。

これらの影響から、手付金のやり取りが行われる一般的なタイミングは「不動産の売買契約を締結した時点」となります。

不動産の売主の方は、不動産の売買契約が締結されたと同時に、買主の方から手付金を受け取ります。

原則、
不動産の売買契約を締結するのと同時でなくては手付金とはなりません
ので、タイミングには十分な注意が必要です。

時には例外なども存在しますが、通常は不動産の売買契約締結時以外に受け取ったお金は手付金とは呼ばれません。

不動産売買契約を締結する際には、売主と買主の間で忘れずに手付金のやり取りを行うようにしてください。

手付金の金額による取引の安全性

不動産売買時には、契約時の手付金によりお取引の安全性が高まります。

売主の方や買主の方が、締結された不動産の売買契約を一方的な理由で解除しようとした際には、手付金の金額に応じたペナルティが生じます。

このペナルティが大きくなればなるほど、当然にお互いが契約解除を行いにくくなります。

その影響で、売主の方は、なるべく高額な手付金を受け取りたいとお考えになる方も多いようです。

ただ、不動産売買時の手付金は、全ての状況において、手付金が高額であるほうが有利になるとは言えないのも事実です。

実際に、あまりに高額な手付金を設定しますと、買主の方が準備できないなどの問題が起こってしまうケースもあります。

売主の方が買主の方に対して無理な手付金を提示しますと、買主の方が売買契約の締結を見送ってしまう原因となる可能性も否定できません。

不動産売買時の手付金は、相場に近い金額を提示するのが無難ではありますが、
時には諸事情などによりそれ以外の金額となってしまうケースもあります。

そのような際には、売主の方もどのようなデメリットが存在するかを意識した上で、お取引を進めていく必要があります。

この項目では、このような不動産売買時に相場以外の手付金を設定する際の注意点などについてご説明致します。

相場よりも多い金額の場合

不動産売買時の手付金が相場よりも高くなってしまった場合、売主の方はより安心感が高くなる場合も少なくありません。

手付金が50万円であるよりも、100万円であるほうが、買主の方が不動産の売買契約を解除してしまう可能性を低くできるのは当然です。

更に言えば、200万円、300万円といったように手付金の金額が跳ね上がれば上がるほど、売主の方はお取引に対して安心感を得られるかもしれません。

ただ、これは買主の方からしますと、負担が跳ね上がっていくという大きなデメリットとなります。

必要以上の金額の手付金を提示されますと、買主の方が不安を覚えてしまうのも頷けます。

不安などがない場合でも、根本的に手付金の準備がすぐに行えず、契約が白紙となってしまうといったような状況となる可能性もあります。

売主の方からしますと高額な手付金は安心感が増しますが、買主の方からしますと反対の心中となってしまう場合も少なくありません。

また、手付金を必要以上に高額とするのは、売主の方に対して悪い影響が出る場合もあります。

例えば、売主の方が物件価格「5,000万円」のマンションを売り出し、その手付金を「500万円」としたとします。

買主の方は、その高額な手付金を売主の方に支払い、お互いに不動産の売買契約を締結しました。

その後、どうしても売主の方が締結された売買契約を解除したい状況となり、契約解除を申し出た場合、売主の方は解約手付の支払いが必要となります。

今回やり取りをした手付金は「500万円」であり、売主の方が支払う解約手付は、買主の方から受け取った手付金の倍の金額です。

その影響で、このケースでは、売主の方は買主の方に対して
「1,000万円」もの解約手付
の支払いが必要となります。

このように、万が一の状況を考えますと、高額な手付金は売主の方にとっても大きなデメリットとなる可能性が出てきます。

不動産の売買契約の解除を行う予定がないという方でも、将来的にどのような問題が起こるかは分かりません。

不動産売買時の手付金の金額は、相場程度の金額でも十分な効果があるのも事実です。

万が一、相場よりも高額な手付金を設定する予定の方は、このようなリスクを想定しておくようにしてください。

相場よりも低い金額の場合

不動産売買時の手付金を相場よりも低い金額に設定する際にも、売主の方は十分な注意が必要となります。

不動産売買時の手付金は、通常は決められた金額によりやり取りがされますが、中には例外なども存在します。

例えば、買主の方にまとまった手付金を準備できない場合には、手付金の減額に関する交渉がされる場合もあります。

実際の手付金の交渉時には、「絶対に不動産を買いますので……」など、不動産の購入を途中でやめないといった旨の話が買主の方からされるケースも多いです。

売主の方が買主の方の意見を受けた場合、手付金は話し合いの結果出された金額となります。

その後、手付金の減額交渉時の言葉通り、そのまま契約を進めてくださる買主の方も多いのですが、
中には、他に良い物件を見つけたという理由をもとに、不動産の売買契約の解除を求めてくる方も少なからずいらっしゃいます。

不動産の売買契約は、一定期間内であれば、買主の方が手付金を放棄しますと簡単に契約解除を行えます。

その際に、売主の方が約束と違うといったような話をしたとしても、手付金を放棄する以上、契約解除は成立してしまいます。

こうなりますと、売主の方はまた最初から不動産の買主の方を探していかなくてはなりません。

他の購入希望者の方がいらっしゃる場合には、すぐに次の契約を行える可能性もありますが、
そうでない場合には長い期間また販売活動を行わなくてはならない場合もあります。

少額な手付金では、最悪はこのような詐欺まがいの行為が行われてしまう可能性も否めません。

少額な手付金での契約を望んでいる方が、皆このような行為を行う訳ではありませんが、少々意識をしておきたい点です。

不動産の売主の方は、手付金について減額交渉がされた時点で、慎重な対応を心掛けるようにしてください。

手付金の条文や契約に関する確認

手付金に関する話などがまとまりましたら、不動産の売買契約を締結していきます。

その際には、売主の方と買主の方との間で不動産売買契約書などが取り交わされます。

不動産の売買契約書は、多くの場合仲介業者などが準備をしてくださいます。

個人間売買などの場合は、個人で契約書を作成する必要があるのですが、インターネットなどで検索をしますと多くのテンプレートが準備されております。

これらの契約書には、不動産の売買に関する様々な契約内容などが記載されております。

その中には、手付金に関する部分や契約に関する部分も記載されているのが一般的です。

これらの記載内容は、不動産の売買契約が締結された後に、原則変更などはできません。

売主の方や買主の方は、契約書の内容に目を通し、間違いや勘違いなどがないかを確認しておく必要があります。

手付金に関する内容やそれに関わる記載なども、しっかりと確認をしておくことが大切です。

事前に確認をしておきたい手付金に関する契約内容につきましては、主に下記の4つになります。

これらの詳しい説明につきましては、下記で詳しくご説明致します。

手付金の金額に関する記載の確認

不動産の売買契約を締結する段階では、既に手付金の金額が決まっているのが通常です。

売主の方も買主の方も、実際の手付金の金額と、契約書内の金額が合っているかを確認しておく必要があります。

不動産売買時の手付金につきましては、同ページの「売買契約時の手付金の金額」で既に記載を行いましたように、
「物件価格の10%」
又は
「100万円」
が相場です。

実際の手付金額と契約書の記載金額に誤差がある場合には、的確に修正をしておく必要があります。

不動産売買契約が締結されますと、一般的にはその契約書の内容に従ってお取引が進んでいきます。

その影響で、実際の手付金と契約書に記載がされていた金額に誤差がありますと、結果的に契約書に記載がされた金額のほうが正規の金額となります。

その結果、実際の手付金の金額と異なる金額を手付金としてやり取りする必要が出てきます。

万が一、契約書に記載された手付金の金額が実際よりも大幅に多い場合、買主の方は当初の予定以上の手付金の準備が必要となります。

売主の方も、当初予定していた手付金の金額が変わってしまいますと、状況によっては面倒な事態が起こってしまう可能性もあります。

契約書内の手付金の金額が間違っているという状況は、多く起こり得る状況ではありませんが、一応確認をしておくと安心です。

間違いを見つけた際には、早急に仲介業者に申し出る、ご自身で契約書を直すなどして、記載内容を改めた上で契約を進めていくようにしてください。

手付金の性質を定めた記載の確認

契約書内の手付金に関する記載のうち、確認をしておきたい箇所は他にも存在します。

不動産の売主の方と買主の方は、将来的に不動産の売買契約解除をしなくてはならない状況となる可能性もゼロではありません。

その際のために、それぞれ契約解除の条件などを確認しておくのが無難です。

不動産の契約解除を行うためには、多くの場合解約手付が必要となりますので、契約書内の「解約手付」などという規定を確認しておきます。

多くの規定では、
売主の方が契約解除を行う際には、受け取った手付金の倍返しが、
買主の方が契約解除を行う際には、支払った手付金の放棄が
解約手付として記載されております。

なお、不動産売買時に選択がされる可能性のある手付金の種類は、解約手付だけではありません。

他にも、違約手付などの規定がある場合もありますので、それら一連の規定を確認しておきます。

手付金の種類が違約手付などとなっている際には、その性質や後に必要となる可能性のある手付金の金額なども確認をしておくようにしてください。

不動産売買時に必要となる手付金の種類と性質などにつきましては、同ページの「不動産売買時の3種類の手付金」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

現在、売買契約を解除する予定のない方も、一応、これらの規定の確認を忘れずに行うことが大切です。

契約解除ができる期間の確認

不動産の売買契約締結後には、契約解除ができる期間に限りがあります。

一般的な契約解除の期限は、数週間程度となる場合が多いため、それ以外では契約解除に対して相応の理由が必要となります。

また、手付金を倍返し又は、放棄することで契約を解約できるのは、売主の方が「売買契約履行に着手するまで」となるのが一般的です。

ここで問題となるのは、「売買契約履行に着手した」との解釈の部分です。

売買契約の履行とは、一般的な解釈としては、売主の方が不動産のお取引に関する何かしろの行動を起こした場合となります。

とはいえ、これだけでは具体的にどのような状況が該当するのか、分かり辛いかもしれません。

売主の方が売買契約履行に着手したとみなされるのは、主に下記のような状況が挙げられます。

  • 売主の方が不動産を買主の方へ引き渡した場合
  • 売主の方が、買主の方へ不動産の所有権移転をするための手続きに着手した場合
  • 売主の方が買主の方へ不動産の一部を引き渡した場合
  • 売主の方が買主の方の事情などで、所有権移転登記を不動産の売買代金の決算前に行った場合
  • 売主の方が買主の方の希望に応じた工事を開始した又は、建築材料を発注した場合
など

不動産の売買契約締結後に、このような状況となった場合には、解約手付により売買契約を解除できなくなります。

不動産の売買契約締結後に、契約を解除したくなった際には、なるべく早めに解除手続きを始めることが大切です。

損害賠償の予定額と手付金を確認

不動産の売買契約は、解約手付以外にも契約を解除できる状況が存在します。

それは、売主の方あるいは買主の方が、お取引の内容などについて違反を行った場合です。

通常の不動産売買契約書などでは、この契約違反に関して必ず規定が記載されております。

一度締結した売買契約に対して何かしろの違反をしますと、一般的には契約違反を行った側に対して損害賠償などの支払いが必要となります。

その際の損害賠償は、事前に予定額が定められており、金額としては「物件価格の10%~20%」程度の場合が多いです。

物件価格が3,000万円の場合には、「300万円~600万円」程度の損害賠償が必要ということになります。

ここで、解約手付の金額を思い出してください。

不動産の解約手付の相場は、「物件価格の10%~20%」又は「100万円」です。

では、契約の際に
「解約手付が物件価格の20%」、
「契約違反時の損害賠償の予定額が物件価格の10%」
であった場合はどうでしょうか。

本来、解約手付はお取引に関して、一定期間にスムーズに契約解除をできるという救済のルールです。

にも関わらず、上記の状態では、後の契約違反の損害賠償のほうがペナルティとして軽くなってしまいます。

本来、解約手付の金額は、契約違反時の損害賠償の予定額よりも少なくなるのが一般的です。

手付金の金額などにつきましては、このように契約違反の損害賠償の予定額と比較して、売主の方と買主の方が納得のいく金額となるよう設定するのが通常です。

契約書を確認した際にこのような状況となっている場合には、当事者間で話し合った上で適正な金額を決めていくようにしてください。

手付金を受け取った際の注意点

不動産売買時の手付金は、後に不動産の売買代金に充当されるのが一般的です。

売主の方は、この手付金分の金額を不動産の売買代金から差し引いた残額を、後に買主の方から受け取ります。

お取引の方法によっては、後に手付金を買主の方へ返還し、そのままの売買代金を受け取る場合もありますが、
多くは、その際の手間などを考慮し、手付金を売買代金に充当する方法がとられます。

その影響で、買主の方から売主の方へ手付金が渡った際には、実質上は売買代金の一部が支払われたのと同じ状況となります。

こう聞きますと、売主の方がその手付金をどのように扱っても問題がないように感じるかもしれません。

手付金は高額となるケースも多く、売主の方の都合によってはすぐに使ってしまいたい状況もないとは言い切れません。

ここで問題となるのは、不動産の売買契約が終わるまでに売主の方が手付金を使ってしまっても良いのかという点です。

確かに、手付金は受け取った時点で、実質上売主の方のお金になります。

後に買主の方が不動産の売買契約の解除を申し出てきたとしても、解約手付の規定により、買主の方に手付金の返還をする必要はありません。

売主の方が契約の解除を申し出た場合などは別ですが、それ以外の状況で手付金の返還が必要となる状況もほぼありません。

しかし、売主の方が手付金を受け取った後に、すぐに使ってしまって良いとも言えないのが実情です。

この項目では、このような売主の方が不動産の手付金を受け取った際の扱いなどで注意をしておきたい点についてご説明致します。

手付金に対する売主の方の注意点

売主の方が、買主の方から手付金を受け取った際には、その手付金の扱いなどについて注意をしておきたい点が存在します。

不動産の売買契約に関する手付金は、売買代金の一部という扱いとなる場合が多く、将来的には全額が売主の方のものとなります。

売主の方は、不動産の売買代金の一部を受け取った状況であるため、その手付金を自由に使っても良いとお考えになる方もいらっしゃるようです。

ただ、不動産売買時にやり取りがされる手付金は、一定の条件下の際に買主の方に返還が必要となります。

その状況というのは、売主の方から不動産の売買契約の解除を申し出た際です。

その際には、解約手付という手付金の倍返しが必要となるため、手付金を使ってしまっている状況では負担が多大となります。

例え手付金を使ったとしても、後に手付金を倍返しできる状態の場合には問題ありませんが、そのような状況は稀であるのが実情です。

売主の方が自分から契約解除を申し出る予定がない場合でも、実際にはどのような問題が起こるかは分かりません。

そのような万が一に備え、受け取った手付金はなるべく保管をしておくようにしておくのが無難です。

また、不動産の売買契約締結時に、後に買主の方へ手付金の返還をしなくてはいけないという契約を行った際には、根本的に手付金の使用は厳禁です。

売主の方にも様々な都合があるかもしれませんが、一度受け取った手付金を使用する際には、細心の注意を払うようにしてください。

手付金を受け取る際の受領方法

不動産売買に関わる手付金は、売買契約締結と同時に買主の方から売主の方へ渡されます。

その際には、状況にもよりますが百万円単位での金銭が必要となる場合もあり、少ない金額でのやり取りは通常は行われません。

売主の方や買主の方は、そのような大金を持ち歩く際に大きな不安を感じてしまう場合も少なくありません。

しかし、不動産の売主の方と買主の方が手付金のやり取りを行う際には、手渡しにより金銭をやり取りするのが原則です。

手付金は高額となりやすいため、振込などでやり取りを行いたいという意見も多いようですが、実際に振込によるやり取りが行われるケースは多くありません。

これには、振込により手付金のやり取りを行いますと、それが手付金と呼べなくなる可能性があるという点が関係しております。

手付金は、売買契約締結と同時にやり取りがされなくてはいけないということは既に記載をしました。

手付金のやり取りを振込などで行った場合、各金融機関により振込期間が異なります。

その影響で、手付金を不動産の売買契約締結時に振込できず、タイムラグが生じてしまう可能性があります。

このような事態を避けるため、手付金のやり取りは手渡しで行われます。

その際には、主に下記の2つの方法で、手付金を受け取ります。

これらの方法で手付金を受け取る際の説明につきましては、下記で詳しくご説明致します。

現金で手付金を受け取る方法

不動産売買に関わる手付金は、一般的に封筒などに全額が入れられた状態でやり取りがされます。

金額にもよりますが、封筒に高額な現金が入れられた状態ですので、封筒自体がかなり厚くなってしまうのが一般的です。

売主の方や買主の方は、このような状態で高額な手付金を持ち歩くという不安な状況下におかれることとなります。
(中には、事前に仲介業者などに手付金分の金額を振込しておき、契約時に仲介業者に手付金の持参を行って貰うといったような方法を選択できる場合もあります)

手付金は、不動産売買契約の締結と同時にやり取りがされるのですが、その際には買主の方から売主の方へ手渡しで渡されるケースが殆どです。

そうして、売主の方は買主の方から手付金を受け取った後に、仲介業者から中身の金額を確認するように促されるのが一般的です。

手付金の金額は高額の場合が多いですので、数えるのに時間が掛かってしまう場合もあります。

封筒の中身が新札などの場合は、お札同士が貼り付いている可能性もありますので、その点を意識して数えると数え間違いをしにくくなります。

ここで、受け取った金額に間違いがある場合には、早急に買主の方に申し出た上で、正確な金額を再度受け取ります。
(金額の数え間違いには細心の注意をしておいてください)

問題がない場合には、そのまま手付金を受け取り、手付金のやり取りが完了します。

小切手で手付金を受け取る方法

高額な手付金を現金でやり取りするのが不安である場合には、小切手により手付金のやり取りをする方法もあります。

小切手で手付金をやり取りしますと、目視では封筒に大金が入っているとは分からなくなります。

その結果、多額の現金を持ち歩くよりも、精神的な面での負担が軽減されやすくなります。

実際のやり取りの際にも、売主の方が小切手の金額を確認するだけですので、
「金額の数え間違いをなくす効果」や
「確認する際の手間を削減できる効果」
など、現金でのやり取りにはないメリットを期待できます。

不動産売買時の手付金を小切手によりやり取りするケースは実際にありますので、売主の方と買主の方の都合により選択するのも手です。

ただ、手付金を小切手で準備しますと、売主の方に対してデメリットとなるケースも存在します。

小切手を作る際には、金融機関に対して相応の現金を入金するのですが、
それに加えて、小切手の発行に関わる発行手数料が発生するのが通常です。

不動産売買時の手付金のために小切手を作る際には、多くの場合、その発行手数料を売主の方が負担します。

小切手の発行手数料は、それぞれの金融機関で異なり、「1,000円前後~数千円程度」の金額となる場合が多いようです。

現金により手付金のやり取りを行う際には、このような出費は発生しません。

手付金のやり取りを小切手で行う際には、売主の方にこのようなデメリットがあるという点を意識した上で選択をするようにしてください。

住宅ローン特約による契約解除

不動産の売買契約が成立した後、多くの場合、買主の方はその不動産を購入するために住宅ローンを組みます。

住宅ローンを組む際には、金融機関から融資を受けられるのかどうかの審査があるのが通常です。

そのローンの承認審査に合格しなくては、買主の方は住宅ローンを組めません。

審査の内容などは各金融機関で異なりますので、一定の基準によりローンの承認を得られるという確証はありません。

場合によっては、買主の方の状態などにより、土壇場で住宅ローンの審査に通らないといった事態が起こってしまう可能性もあります。

このような状態となってしまった際には、買主の方に悪意がある訳ではなく、買主の方は実際に売主の方の不動産を買おうとしていたという事実に変わりはありません。

それにも関わらず、買主の方に対して契約解除のペナルティが発生してしまうのは、あまりにも理不尽です。

そのため、買主の方の救済措置として用意されているのが、「住宅ローン特約」です。

万が一、不動産売買時にこの住宅ローン特約がない状態では、買主の方に大きなリスクが伴ってしまいます。

この項目では、この不動産売買契約時の住宅ローン特約について詳しくご説明致します。

手付金と住宅ローン特約の内容

不動産売買契約が締結された後に、買主の方が住宅ローンを利用する際には、通常は住宅ローン特約の規定が契約書に記載されております。

住宅ローン特約とは、万が一買主の方が売買契約締結後に住宅ローンの審査に通らなかったとしても、その売買契約をペナルティなしで白紙にできるという特約です。

この場合、不動産の売買契約自体が白紙となりますので、買主の方から受け取った手付金は全額返済しなくてはなりません。

金融機関による住宅ローンの審査は、約1ヶ月程度掛かりますので、その間は住宅ローンの審査結果を待っておく状態となります。

買主の方も、できる限りはこの審査に受かりたいとお考えの場合が殆どであり、最初から審査に落ちるという心構えで申請している訳ではありません。

とはいえ、確実に審査に通るとも言い切れないのが実情であり、契約の際には不安を抱えてしまう場合も多いです。

このような住宅ローンの審査に関する不安をなくすためには、住宅ローン特約の存在が必要不可欠です。

売主の方からしますと、せっかくの売買契約が白紙となってしまう状況とはなりますが、結果的に悪意のない買主の方から解約手付を受け取るという後味が悪い状況を避けることに繋がります。

不動産の売主の方は、手付金を受け取った後にも、この住宅ローン特約の存在を忘れないようにしてください。

なお、契約が白紙となる可能性を少しでも低くするためには、不動産の売買契約を結ぶ前に、売主の方が買主の方の住宅ローンの仮審査の状況などを確認しておくなどの対処が必要です。

住宅ローンの仮審査が通っているからといって、必ず本審査が通るという訳ではありませんが、確認をしないよりは住宅ローンの審査に関して安心感を得られます。

住宅ローン特約が否認されるケース

住宅ローン特約は、どのような状況でも適用がされるとは限りません。

例えば、買主の方が意図的に住宅ローンの審査に通らないように行動した場合は明らかな悪意があります。

このような状況下でも住宅ローン特約を認めてしまいますと、売主の方に対してあまりに不利な特約となってしまいます。

その影響で、住宅ローン特約を受ける際には、その適用に関して一定の要件が設けられております。

買主の方が不動産売買契約締結後に、住宅ローン特約の適用ができない主な状況につきましては、大まかに下記のようになります。

買主の方が住宅ローンの審査に対して誠実でない場合
住宅ローン特約により不動産の売買契約を白紙とできるのは、「買主の方が誠実に住宅ローンの申請手続きを進めていた場合」のみです。
不動産の買主の方が誠実に住宅ローンの申請手続きを進めていないと判断がされる可能性のある状況の例につきましては、主に下記のようになります。

  • 住宅ローンを申請する際に、あえて不動産の売買代金を大幅に超える融資金額の申し込みをした場合
  • 住宅ローンを申請する際に保証人をつける努力をしなかった場合
  • 住宅ローンを申請する際に担保に供することが可能な物件があったにも関わらず、それを担保に供さなかった場合
  • 買主の方が不動産を共同購入する状況下において、一方の買主の方が住宅ローンを申し込む際に連帯保証人になることを拒んだ場合
など

上記のような状況で、必ず住宅ローン特約が適用できなくなる訳ではありませんが、高い確率で適用ができなくなると考えておいて問題ありません。

不動産売買契約書などに住宅ローンの申請を行う金融機関の指定がない場合
不動産の売買契約書のうち、住宅ローン特約に関する項目には住宅ローン特約の期間などの他にも、買主の方が住宅ローンとして借りる「借入額」や「住宅ローンを申請する金融機関名」なども記載されているのが一般的です。
その際に、金融機関が1社だけに指定されている場合には、「金融機関名」の項目で「○○銀行」などと金融機関名の記載がされており、その1社のみに住宅ローンの申し込みを行う必要があります。
また、契約書内に複数の金融機関名が記載されている場合には、その全ての金融機関に対してローンの審査を申し込みする必要があります。

一般的な住宅ローンの申請を行っていますと、通常は住宅ローン特約を適用できますので、そこまで神経質になる必要はありません。

住宅ローン特約の延長が必要な場合

住宅ローン特約は、事前に適用ができる期限が定められております。

一般的には、その期限を過ぎますと、住宅ローン特約を適用できなくなります。

ただ、場合によっては買主の方の住宅ローン審査が、住宅ローン特約の期限に間に合わないケースも存在します。

そのような際には、買主の方から住宅ローン特約の期限延長を求められるといった可能性もあります。

ここで売主の方が住宅ローン特約の期間延長に応じない場合には、結果的に買主の方が契約解除を申し出ざるを得ない状況となります。

買主の方が不動産の売買契約の解除を申し出た場合、売主の方はまた最初から不動産の買主の方を探していかなくてはなりません。

これでは、いつ不動産の買主の方が見つかるか不明となり、最悪はそのままいつまでも売れ残ってしまう可能性もあります。

そのような状況を避けるためにも、買主の方から住宅ローン特約の期限延長の相談を受けた際には、柔軟に対応をしていくことが大切です。

その際には、無制限に期間を延長していくような状況とならないように注意し、
「1週間~2週間」
程度の延長に留めておくのが一般的です。

買主の方が住宅ローン申請を行った金融機関に問い合わせを行いますと、あと何日程度で審査結果が出るのかを教えて貰える場合もあります。

住宅ローン特約の延長期限に迷った際には、金融機関から聞いた審査結果までの期間を参考にしますと、無駄のない期限に延長しやすくなります。

解約手付以外での売買契約の解除

不動産は高額な売買となる可能性も高く、お互いに簡単に契約解除ができる状況では安全なお取引を行いにくくなるため、
売主の方と買主の方の双方が、一度締結した売買契約を簡単に解除ができないのが一般的です。

しかし、場合によっては、どうしても不動産の売買契約の解除が必要となる場合もあります。

そのような際には、一定の条件を満たしている場合に限り、不動産の売買契約を解除できるケースも存在します。

既に記載をしましたが、一定期間内であれば解約手付による契約解除も可能であり、一定のペナルティを受けますとすぐに不動産売買契約を解除できます。

ただ、これは不動産の売買契約締結後の一定期間に限られ、期間を過ぎた後には解約手付による売買契約の解除はできません。

その影響で、解約手付を行える期間を過ぎた後の契約解除に関しては、他の方法を選択する必要が出てきます。

解約手付以外で不動産の売買契約を解除できる可能性のある方法につきましては、主に下記の3つがあります。

不動産の売主の方や買主の方は、このような不動産の売買契約の解除方法があるという点を意識しておくことが大切です。

上記の契約解除ができる状況の詳しい説明につきましては、下記で詳しくご説明致します。

クーリングオフによる売買契約の解除

通販などで商品を購入した際に、その商品をクーリングオフできるといったような話を見かけます。

クーリングオフとは、「一定期間内であれば消費者が業者との間で締結した契約を一方的に解除できる」といった制度です。

このクーリングオフですが、一定の条件を満たしている売買に限り、不動産にも適用ができる可能性があります。

通常、売主の方と買主の方との間で不動産の売買契約が締結しますと、そのお取引に関して取り消しを行えないのが原則です。

しかし、不動産の売主が不動産会社などの宅地建物取引業者であり、その他の一定の条件を満たしている場合に限り、不動産をクーリングオフできるケースがあります。

その一定の条件とは、不動産の売買契約を締結してから8日以内であること、実際に不動産の引き渡しが行われる前である状態であること、不動産の売買代金を全額支払う前であることとなります。

これらの条件を満たしている状況で、買主の方が売買契約を解除したくなった際には、後に不動産のクーリングオフを行えます。

売主の方が個人である場合には、根本的にクーリングオフはできませんのでご注意ください。

【不動産のクーリングオフを行える条件まとめ】

  • 不動産の売主が不動産会社などの宅地建物取引業者であること
  • 不動産の売買契約を締結してから8日以内であること
  • 実際に不動産の引き渡しが行われる前であること
  • 不動産の売買代金を全額支払う前であること

危険負担による売買契約の解除

不動産などは、いつどのような問題が起こり、欠損してしまうか分かりません。

実際に、台風や地震などの天災により、所有している不動産を喪失してしまうケースもあります。

その際に喪失した不動産が、万が一売買契約を締結した状態であった場合、売主の方は買主の方に不動産を引き渡せなくなります。

これでは締結した売買契約を履行できないため、買主の方に対して損害賠償の支払いなどが必要となってしまいます。

このような事態を避けるために用意されているのが「危険負担」です。

不動産の危険負担とは、「台風や地震などの自然災害などにより売買予定の不動産を喪失してしまった際に、ペナルティなしで契約解除ができる」という決まりです。

売主の方が危険負担を適用しますと、一度締結された売買契約であっても解除され、手付金なども買主の方に返還されます。

ここで注意が必要であるのは、売主の方に非のある状況で不動産を損失した場合には危険負担を適用できないという点です。

その影響で、売主の方の不注意などで不動産を喪失してしまった際には、買主の方に対して相応の損害賠償の支払いが必要となります。

不動産の危険負担の範囲は、あくまで売主の方に非のない状態での損失です。

売主の方は、ちょっとした気の緩みなどで不動産を損失してしまわないよう、注意をしておくようにしてください。

瑕疵担保責任による売買契約の解除

不動産は、年数が経つにつれ劣化していきます。

その影響で、新築当時のままの状態を保ちつつ築年数を重ねていくケースはほぼありません。

建築から年数を重ねた影響などで、不動産に対して何かしろの欠陥などが生まれる場合もあります。

このような不動産の欠陥は「瑕疵」と呼ばれ、不動産の売買にも大きな影響があります。

通常、不動産売買の際には、この不動産の瑕疵に対して取引後にも保証が設けられているのが一般的です。

それが「瑕疵担保責任」です。

不動産の瑕疵担保責任とは、「不動産の引き渡しを行った後に、該当不動産に対して通常の注意をしても気が付かない隠れた瑕疵(欠陥)が発覚した場合、売主の方が買主の方に相応の損害賠償などを支払わなくてはならない」という決まりです。

売主の方が相応の損害賠償を行えない場合には、不動産売買契約の解除などが行われる場合もあります。

詳しい瑕疵担保責任の説明につきましては、お手数をお掛け致しますが、「所有している不動産を売却する際に知っておきたい基礎知識」の記事にあります「売買時の瑕疵担保責任について」の項目をご覧ください。

瑕疵担保責任は、通常の不動産売買の際には、ほぼ規定がされている決まりです。

売主の方は、取引不動産の状態に注意し、後に隠れた瑕疵が発覚した際には的確な対処を行う必要があります。

その際に十分な対処が行えた場合には、売買契約の解除まではいかないケースが殆どですので、
隠れた瑕疵が発覚した際には、早急に対処をとることが大切です。

まとめ

不動産を売却する際には、売主の方と買主の方との間で手付金のやり取りが行われます。

この手付金のやり取りは、不動産の売買契約を安全に行いやすくする効果があるのが一般的です。

手付金のやり取りを行いますと、不動産の売主の方も買主の方も売買契約の解除をしにくくなります。

不動産売買時の手付金には「解約手付」、「違約手付」、「証約手付」の3種類あり、それぞれ性質が異なるのがる通常です。

不動産売買時に選択される可能性が高いのは、解約手付ですので、その内容について知っておくことが大切です。

なお、不動産売買時の手付金には相場があり、大体「物件価格の10%」又は、「100万円」となるケースが多いです。

手付金のやり取りは、通常は不動産の売買契約締結と同時に行われます。

不動産の売買契約が締結されますと、契約に不備があったとしても、その内容を簡単には変更ができません。

不動産の売買契約を行う際には、手付金に関する規定などについても十分に確認をしておくと安心です。

契約時に買主の方から手付金を受け取った後は、その扱いについても注意が必要です。

売主の方は、特別な事情などがない限りは、受け取った手付金を使わないのが無難です。

なお、手付金の受領方法は主に2種類あり、「現金」又は、「小切手」で受け取るのが一般的です。

現金と小切手により手付金を受け取る際には、それぞれメリットとデメリットがありますので、ご自身の都合の良いほうをご選択ください。

また、買主の方が住宅ローンの審査に通らなかった際には、住宅ローン特約により売買契約を解除できます。

住宅ローン特約による契約解除では、解約手付などのペナルティは発生しません。

住宅ローン特約以外では、「クーリングオフ」、「危険負担」、「瑕疵担保責任」などにより不動産の売買契約が解除できる場合もあります。

不動産売買時の手付金は、お取引に対して重要な部分ですので、十分に意識をしておくようにしてください。

 - 不動産売却の基礎知識, 不動産売却の流れ, 不動産売却時の手付金