不動産を売却する際に注意が必要なトラブルとその解決方法
2016/09/29
不動産を売却する機会は、人生の中でそうあることではありません。
そのため、手続きの手順などが分からず、売却に時間が掛かってしまうということも多いものです。
更に、経験したことのない手続きを行っていく影響もあり、様々なトラブルが起こってしまう可能性があります。
不動産売却の際に、トラブルが起こってしまうと、多額の損害賠償の支払いが必要となってしまうこともあるため注意が必要です。
また、不動産という高額な資産を狙っての詐欺に出会ってしまうことも少なくありません。
実際に、不動産に関する悪徳商法に出会ってしまい、多くの財産を失ってしまったという方もいらっしゃいます。
やはり、不動産売買をトラブルなく終わらせるためには、事前に適切な知識を持っておくことが重要です。
もちろん、こういった知識を持っておくことは、売却による利益を最大限に高めることにも繋がります。
そのため、このページでは、不動産売却時に注意をしておきたいトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
目次
不動産売却時の主な隣家トラブル
不動産売却を行う際に無視できないトラブルといえば、隣家との揉め事です。
これらの問題を無視してしまうと、後に重大なトラブルが起こってしまう可能性があります。
なお、隣家トラブルといっても、トラブルに対する観点は人それぞれです。
そのため、売主の方が問題ないと感じていたトラブルも、買主の方からすれば大きなトラブルになってしまうこともあります。
やはり、不動産売買時のトラブルは、買主の方の立場になって、状況を思案してみることが重要です。
では、まずは、不動産売却時に起こりやすい境界に関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
境界線・公図に関するトラブル
不動産を売却する際には、境界確定といった言葉を耳にする機会も多いかもしれません。
そもそも、境界とは、土地と土地の境目のことで、隣家とご自身の土地の分かれ目のことです。
そのため、不動産売却を行う際には、これら境界の正確さが重要になってくることも珍しくありません。
やはり、境界が曖昧なままだと、売却後に買主の方と重大なトラブルが起こってしまう可能性も高まります。
ですから、不動産を売却する際には、全ての境界線を確認しておくと安心です。
本来、境界線がある部分には、「境界標」と呼ばれる印があり、その境界標と境界標を結んだものが隣地との境界線となります。
そのため、境界線を確認する際には、この「境界標」の設置を確認し、調べていくのが一般的です。
万が一、境界標を紛失してしまった場合には、境界の座標値を確認できる資料などを用いて、残っている基準点や境界点を点検測量することにより、復元をすることができます。
なお、その際に注意をしておきたいのは、境界を確認する資料として、「公図(旧土地台帳附属地図)」を準備してしまうことです。
公図に記載がされている境界は、明治以降の地租改正と共に作成がされたものです。
この頃は、測量技術が現在ほど発達しておらず、目測や歩測などで測量がされていました。
そのため、境界や地積に正確性がなく、公図の情報では、境界確定を行うことができないのが一般的です。
以下は、公図以外で、境界の座標値を確認できる資料の一覧です。
【境界の座標値を確認できる資料の一例】
- 地積測量図
- 境界確認書
- 土地境界確定図面
なお、境界標を紛失した際に、上記のような資料がない場合や、元から境界確定をしていないという場合には、改めて「境界確定測量」が必要になる可能性もありますのでご注意ください。
更に、お互いの境界線を越えている「越境物」がある際には、それらの対処も売却前に行っておくことが大切です。
(境界線部分にブロック塀などがある場合には、そのブロック塀のどこに境界線が通っているのかも、忘れずご確認ください)
例えば、境界線を越えた場所にブロック塀などがある場合には、
「折半又は片方の負担で、取り壊して作り直す」
「越境分の土地を買い取って貰う・買い取る」
「越境部分を贈与する・贈与して貰う」
などの対処が必要になります。
以上が、不動産売却時に起こりやすい境界に関するトラブルと、その解決方法になります。
なお、土地は、境界確定を行っていなくても売却をすることができますが、この場合、そのことを買主の方に十分に説明しておくようにしてください。
仲介売買であれば仲介業者に、個人間売買であれば直接買主の方に、これらの事情を伝えておくことで、格段にトラブルの発生を抑えることができます。
もし、境界確定がされていないことを、買主の方に伝えずに売買が成立してしまった場合、後に買主から責任を追及されてしまう可能性があります。
なお、これは土地の地積に関しても同様です。
不動産売買時に、これら必要情報の提示を疎かにしてしまうと、やはり、それだけトラブルが起こりやすくなってしまいます。
そのため、次は、土地の地積や測量に関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
地積と測量に関するトラブル
不動産の境界を確定する際には、同時に土地の測量も必要になります。
本来、土地の地積は、登記事項証明書(登記簿)などで確認をすることができます。
それにも関わらず、何故測量が必要となるのかというと、登記記録には、実際の土地面積と異なる地積が記載されている可能性があるからです。
実際に、現在のような測量技術が培われる前に測量を行い、そのまま登記をした土地などは、記録上の地積と実際の地積に大幅な誤差があることも珍しくありません。
そのため、不動産を売却する際には、登記記録と実際の地積が合致しているか確認をしておくことが重要です。
なお、土地を売買する際には、「公簿売買」と「実測売買」の2種類があり、それぞれ売買方式が異なっております。
【公簿売買と実測売買の特徴】
- 公簿売買
- 実際に土地の面積を測量してから売買を行うのではなく、土地登記簿の表示面積をもとにして売買代金を確定する売買方式のことです。
- 売買後に、実際の土地面積と登記簿上の表示面積に違いがあったとしても、原則、お互いに文句を言わないと合意し、清算などは行いません。
- 実測売買
- 契約時などに実際の土地面積を測量し、その面積に基づいて売買代金を決定する売買方式のことです。
- この場合、正確な土地面積を相手に提示することができるため、土地の面積と合致した売買代金を設定することができます。
山林や農地のような測量面積が広大になる可能性のある土地は、「公簿売買」で取引を行う場合が多いようです。
ただし、「公簿売買」を選択した場合、やはり「実測売買」よりも、トラブルが起こりやすくなります。
実際に、公簿売買で取引を行った際に、実際の地積と記録上の地積が大幅に異なっていたために、
売主と買主の間でトラブルが起こり、買主に対して損害賠償の支払いが必要となってしまった事例もあります。
そのため、公簿売買で取引を行う際には、
「実際の地積と登記簿上の地積に大幅な誤差がある可能性があるが、後にその誤差分の清算は行わない」ということを、お互いに同意しておくことが大切です。
【買主の方に伝えておきたい主な事項】
- 境界確定測量の有無
- 境界標の打ち込みの有無
- 測量図の作成の有無
- 登記記録の更生の有無(間違いがあった場合)
更に、巻尺などで土地を簡易計測し、その結果をまとめて提示しておくと、取引後にトラブルが起こってしまう可能性を減らすことができます。
この簡易計測の際に、余りにも地積の誤差が大きい場合には、そのことを買主の方に伝え、合意が取れない場合には取引をやめるなどの対処も必要です。
やはり、買主の方に提示をした地積が、実は隣家の方の土地の一部を含んだ数値であったとなると、後に隣家の方ともトラブルになってしまいかねません。
こういったトラブルを避けたいという方は、やはり実測売買を用いて取引をすることが必要です。
以上が、土地の地積や測量に関するトラブルと、その解決方法になります。
これで、境界と土地の地積に関する主なトラブルの説明が終わりました。
なお、不動産売却時に起こり得る隣家トラブルは、こういった境界や地積に関するものだけではありません。
中には、近隣の方との人間関係のトラブルにより、買主の方に迷惑が掛かってしまうこともあります。
そのため、次は、近隣の方とのトラブルを、買主の方に告知する際の注意点についてご説明致します。
近隣環境や関係に関するトラブル
不動産売却の際には、現存する問題点などを、買主の方に説明する義務があります。
もちろん、近隣環境・人間関係のトラブルなども、場合によっては買主の方に告知をしておかなくてはなりません。
とはいえ、現在、抱えている近隣トラブルが、どの程度まで告知が必要なのかという線引きは、なかなか判断が難しいものです。
そのため、売却後、買主の方に影響が出る可能性のあるトラブルを基準に、告知の必要性を考えていくと判断がしやすくなります。
近隣の方との関係が、売主の方との個人的なトラブルであれば、住民が変わればトラブルが起こる可能性はありません。
ですから、そういったトラブルは、買主の方に伝える必要はないということになります。
一方、不動産の所有者が変わっても、近隣の方とトラブルが起こってしまう可能性がある場合はどうでしょうか。
こういった場合、買主の方が不動産を購入した後にも、同じトラブルが起こってしまう可能性があります。
そのため、事前に買主の方にそのことを告知し、詳しい事情を説明しておかなくてはいけないということになります。
以下は、告知が必要になる可能性のある主な近隣トラブルの一例を書き出したものです。
(これら以外に告知が必要なトラブルがある場合には、その告知も必要です)
【告知が必要になる可能性の高い近隣トラブルの一例】
- 近隣にゴミ屋敷がある。
- 近くにゴミ置き場がある。
- 近隣から異様な騒音がする。
- 近隣から異様な異臭がする。
- 近隣の飲食店などの匂いがきつい。
- 近隣のペットの鳴き声がうるさい。
- 近隣の方の人間性に大きな問題がある。
- 近隣に生活し辛くなるような嫌悪施設がある。
- 隣家の境界近くに建物を建設しているなど、不動産同士の影響により近隣の方とトラブルが発生している。
- 近隣と排水管などの問題が起こっている。
- 近隣に工場などがあり、化学物質過敏症などの症状が出てしまう可能性がある。
やはり、重要な近隣トラブルを買主の方に伝えないまま売買を行った結果、後に裁判問題となってしまったという事例も存在します。
ですから、近隣の環境などについて、的確に判断し、必要な情報を余さず買主の方へ告知するようにすることが重要です。
以上が、近隣の方とのトラブルを、買主の方に告知する際の注意点になります。
これで、不動産売却時に意識をしておきたい主な隣家・近隣トラブルと、その解決方法の説明は終わりです。
なお、不動産売却を行う際に注意をしておきたいトラブルは、これだけではありません。
例えば、不動産の売買を仲介業者に依頼する際にも、意識をしておきたいことが数多くあります。
仲介業者は、不動産の販売活動が終わるまで付き合うことになる存在です。
そのため、事前に問題になりそうな事柄を解決し、トラブルが起こらないように意識をしておくことが大切です。
そこで、次の項目では、不動産の仲介業者との間に起こる可能性のあるトラブルと、その解決方法について記載を行っていきます。
仲介業者との主なトラブル5選
近年、不動産を売却する際には、専門会社に仲介を依頼するのが定説となってきております。
やはり、仲介会社に売買を仲介して貰えば、作業の多くを専門の方に代行して貰うことができます。
そのため、各段階でトラブルが起こる機会が減り、取引をスムーズに行いやすくなるのが一般的です。
ただし、これはあくまで「トラブルの発生を抑制できる」というだけであって、「全くトラブルが起こらなくなる」という意味ではありません。
ですから、不動産売買を仲介して貰う際にも、事前に各トラブルの解決方法を知っておくことが重要です。
では、まずは、不動産売却時に、トラブルが起こりにくい仲介業者を探す方法についてご説明致します。
仲介先を探す際のトラブル
不動産仲介とは、不動産の売買などを、仲介業者などにサポートして貰うことです。
そのため、
「信頼」、
「販売実績」
があり、尚且つ納得のいく価格で売却ができる仲介業者に依頼をできるよう、意識をしておくことが大切です。
仲介業者の中には、自社の利益主義に営業が傾き、「売れると見込まれている不動産」にしか販売活動を積極的に行わない業者も存在します。
この場合、最終的に、不動産自体の販売価格を下げざるを得ない状況になってしまうことも少なくありません。
更に、売却価格の相場を知らないことに付け込まれ、非常に安い価格で話を進められてしまうこともあります。
また、査定の際には親切であったのに、契約をしてから態度が急変するといった業者も存在します。
そのため、こういったトラブルを無くすためには、契約前に、仲介業者や担当者の方の実績などを調べておくことが重要です。
下記は、不動産業者を探す際に意識をしておきたい主な事項をまとめたものです。
【事前に調べておきたい情報まとめ】
- 仲介業者の実績(相場と売却価格の関係性)
- 今までに数多くの不動産を売却してきた業者は、少なからず相場よりも高い価格で取引が成立した経験があります。
- そのため、こういった実績が多い仲介業者や担当者の方は、信頼できる可能性が高いようです。
- 相場よりも高く売った際の価格
- 仲介業者が、相場よりも高い価格で不動産を売却したことがある場合には、その際に、「どの程度高い価格で売却ができたのか」を調べておけば、実際に仲介依頼をする際の選別基準の1つとすることができます。
- 不動産の販売活動の方法(売れ残った場合の対処なども含む)
- 不動産の売却を仲介業者に依頼した際に、重要となるのが実際の販売活動です。
- 過去にどういった販売方法を行っており、どの程度の期間で売れたのかを調べておくと、販売活動に非協力的な業者に依頼をしてしまうことが少なくなります。
- 仲介業者の販売活動について調べる際には、不動産が長期間売れ残ってしまった場合の対応についても調べておくことが大切です。
- 定められた法令を厳守しているかどうか
- きちんとした仲介業者は、法令で定められた事項を厳守しつつ、業務を行ってくださいます。
- そういった業者を差し置き、中には、堂々と法令違反である行為を行なっている業者も少ないながら存在しております。
- そのため、仲介を依頼する際には、事前にその会社が、法令に従った業務をしているかどうかを明確にしておくことが大切です。
- 今までに重大なトラブルを起こしていないかどうか
- 不動産を売却する上では、トラブルが起こってしまうことも少なくありません。
- その際には、仲介を受けた業者の方が、トラブルの対処をしてくださるのが普通です。
- そのため、今までに重大なトラブルがさほど発生していない仲介業者は、各所の問題対策に優れ、経験が豊富である可能性が高いということになります。
- 開示されている情報が頻繁に変更されていないか
- 仲介業者の情報を調べてみると、「商号」、「代表者」、「役員」、「事務所の所在地」、「専任の取引主任者」などが度々変更されている業者があります。
- 善良な業務を行っており、特に事情がない業者は、これらの情報を頻繁に変える必要がありません。
- そのため、頻繁に開示情報を変更しているということは、その仲介業者自体に悪評が立っていることが理由である可能性があります。
- 特別な事情がある場合は別として、頻繁に開示されている情報が変わっている業者に仲介を依頼する際には、よく過去の営業実績などを調べてから契約をすることが大切です。
- 調査・説明義務がきちんとしているか
- 不動産売却を行う際に、トラブルを防止するためには、やはり不動産に対して、細かい調査を行っておく必要があります。
- そのため、実際に不動産を見た際に、不明な点や危険な点、注意が必要な点などについて、十分に調査を行ってくださる仲介先を探しておくと安心です。
- 例えば、天井などを確認し、その際に傷んでいる部分やシミなどを見つけ、雨漏りやその他原因を売主の方に聞けるような方であれば、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
- 査定などを依頼した際には、担当者の方がこういったことに関して、よく気が付く方であったかを意識してみてください。
- 査定時に的確な価格を提示されたか
- 査定の際に、他の業者と比べて、極端に高い価格を提示してくる業者にも注意が必要です。
- やはり、仲介業者からすれば、自社で不動産の売却を行って貰いたいのが本音です。
- そのため、意図的に他社よりも高額な査定価格を提示し、契約を促すといった業者も存在します。
- その際に、他社には分からなかった価格の根拠があれば話は別ですが、特に根拠もないのに高額な価格になっている際には、仲介依頼をやめておくのが無難です。
- 査定価格を提示して貰う際には、その価格の根拠などについて確認し、その際に信頼ができる業者を選択するようにすることが大切です。
なお、宅地建物取引業者の名簿・免許申請書などは、
「国土交通省の各地方整備局」や「各都道府県の担当課」などで閲覧をすることができます。
以上が、不動産売却時に、トラブルが起こりにくい仲介業者を探す方法になります。
なお、不動産の売買仲介を選択した場合、基本的に、後に仲介手数料などの支払いが必要になります。
この仲介手数料に関しても、売主の方と仲介業者との間に、トラブルが起こりやすい部分です。
そのため、次は、仲介手数料の請求に関する主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
仲介手数料に関するトラブル
不動産の売却を仲介業者に依頼する場合、必要となるのが仲介手数料です。
仲介手数料は、法でその上限額が定められており、その金額以上の設定はできないことになっております。
なお、詳しい仲介手数料の上限額の計算方法につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産売却時の仲介手数料の計算方法と安くするためのコツ」の記事にあります「不動産売却の時の仲介手数料」の項目をご覧ください。
そのため、取引完了後に、これ以上の金額を求められた場合、その仲介業者は悪徳である可能性があります。
例:非常に売れにくい不動産なので、仲介手数料を本来の倍払って欲しいなど
また、仲介手数料の支払い時期についても注意が必要です。
仲介手数料は、本来、売買契約が成立した後に支払いが必要となる費用です。
更に、通常の仲介業務で発生する費用(広告費など)は、仲介手数料に、加算されないのが普通です。
それにも関わらず、たまに、売買契約締結前に、広告費などの名目で、不正に仲介手数料を請求してくる業者が存在します。
これは、仲介業者に不動産売却を依頼したけれど、
「長期間売れ残ってしまった」
「他の業者のほうが早く売買契約まで辿り着いた」
場合などに多い事例です。
そのため、こういった詐欺行為に出会ってしまった際には、業者に対して、不正の事実を伝えた上で、支払いを拒否することが重要です。
(依頼主が、余りにも一方的で理不尽な理由で契約を解除した場合には、支払いが必要となるケースがあります)
ただし、売主の方の特別な依頼に基づき発生した広告費用などは、別途支払いが必要になることもあります。
例えば、売主の方の希望により、
「仲介業者が特別な広告宣伝を行った」、
「遠隔地の購入希望者の方と交渉を行い、交通費が掛かった」
場合などについては、それ相応の金銭の支払いが必要になる可能性があります。
【仲介会社の実費請求が認められる条件】
- 売主の方の希望によって発生した費用である場合
- 普段の仲介業務では発生しない費用である場合
- 実際に掛かった実費である証明が取れる場合
- 事前に実費の支払いが必要であると告げられていた場合
そのため、こういった特殊な要求を仲介先に行う可能性がある場合には、仲介業者と後の支払いについて、打ち合わせをしておくことが大切です。
以上が、仲介手数料請求に関する主なトラブルと、その解決方法になります。
なお、不動産売却の仲介を依頼する際には、最終的に仲介業者と媒介契約を結ぶ作業が必要となります。
この媒介契約の段階で、契約形態を間違ってしまうと、それだけで深刻なトラブルが起こってしまいかねません。
そのため、媒介契約を結ぶ際には、それぞれの契約内容を十分に検討しておくことが大切です。
次は、こういった媒介契約の形態に関する主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
媒介契約の形態に関するトラブル
媒介契約とは、仲介業者と不動産売買の仲介契約を結ぶことです。
媒介契約の形態には、「専属専任媒介契約」、「専任媒介契約」、「一般媒介契約」の3種類があります。
そのため、それぞれの契約形態の内容を把握し、状況に合っているものを選択することが大切です。
なお、契約形態の種類と、その簡易的な説明につきましては下記をご覧ください。
「専属専任媒介契約」
1社の不動産業者以外に、重ねて仲介を依頼することができない契約です。
仲介先は、依頼主に対して1週間に1回以上の頻度で、売却活動の状況を報告する義務があります。
また、依頼主は、ご自身で売買相手を見つけることはできません。
「専任媒介契約」
具体的な契約内容は、上記の専属専任媒介契約とほぼ同じです。
ただし、売主の方は、ご自身で売買相手を見つけることができます。
「一般媒介契約」
複数の仲介業者に、重ねて仲介を依頼することができる契約です。
仲介先は、販売活動などを、依頼主に報告する義務はありません。
依頼主は、ご自身で購入希望者を見つけることができます。
なお、これら媒介契約の詳しい内容につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産の売却時に選択をできる二種類の方法とそれぞれの特徴」の記事にあります「媒介契約の種類と内容の特徴」の項目をご覧ください。
これらの特徴を総合的に判断し、契約をしたい形態を決めていきます。
万が一、この段階で契約形態を間違えてしまうと、契約解除などを巡ってトラブルが起こってしまう可能性もあるため注意が必要です。
やはり、一度結んだ契約をすぐに解除するといったような行為は、仲介業者からしても迷惑となります。
そのため、最初に仲介業者とよく意思を疎通し、望む契約形態を模索していくことが大切です。
ただ、これは、一度媒介契約を結んでしまうと、不動産が売れるまで、永遠に契約を続けなくてはいけないという意味ではありません。
基本的に、一般媒介契約では、有効期限である「3ヶ月」を過ぎた際に、契約期間を更新しなければ契約の解除ができます。
更には、契約期間内であっても、電話で契約解除を申し出るだけで、解除ができることも少なくありません。
ただし、これは、一般媒介契約の場合や、違約金の規定がない場合に限っての話です。
専属専任媒介契約・専任媒介契約を選択している場合や、契約書に契約解除に関する違約金などの規定が記載されている場合には、それらを支払ってからでないと契約を解除することはできません。
そのため、媒介契約の際には、契約解除に関する事項についても、十分に確認を行った上で契約を行うことが重要です。
以上が、媒介契約の形態に関する主なトラブルと、その解決方法になります。
こうして媒介契約が完了すれば、次は、実際に不動産の販売活動を行っていきます。
その際に、意識をしておきたいのは、「両手取引」と呼ばれる手法です。
万が一、仲介業者が悪質な両手取引を狙う業者であった場合、不動産売却に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、次は、この「両手取引」に関する主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
両手取引に関するトラブル
仲介手数料は、不動産の売買契約が成立した後に、仲介業者に対して支払いが必要になるということは既に書きました。
そのため、売主と買主の仲介業者が違う場合には、「売主側の仲介業者」と「買主側の仲介業者」に仲介手数料を支払うのが一般的です。
これは、片手取引と呼ばれ、売主と買主は、それぞれ媒介契約を行った仲介業者に仲介手数料を支払います。
それに対して、両手取引では、1つの仲介業者が、売主と買主の双方から仲介手数料を受け取ります。
これは、「売主側の仲介業者」が、不動産の「買主」を見つけてくることによって起こる現象です。
両手取引を行うことができれば、仲介業者は1つの売買契約で、本来の2倍の仲介手数料を受け取ることができます。
そのため、仲介業者の中には、必要以上に両手取引を狙い、販売活動に悪影響を及ぼしている業者も存在します。
こういった悪徳業者は、本来、紹介が必要な不動産に対して、
「商談中です」、
「契約予定です」、
「売り止め、契約交渉中です」、
「図面作成中です」
などの適当な虚偽の回答を作り、他会社に不動産の紹介を拒否するなどの囲い込みを行う可能性があります。
現在は、各地域のレインズの規定改正により、正当な事由がない限り、元付け業者(売主側業者)が不動産の紹介を拒否することができなくなり、不動産の囲い込みが行われることは少なくなりました。
しかし、それにも関わらず、巧妙な手口を用いて、不動産の囲い込みを行っている業者もあり、まだ完全に両手取引を狙った悪徳商法が無くなったとは言えないのが現状です。
やはり、両手取引を狙った悪質な物件の囲い込みについて、第三者が完全に立証することは困難です。
そのため、善良な取引によって、両手取引となってしまった場合は別として、不正に両手取引を行おうとする悪徳業者に対して、まだ十分に警戒をしておくことが大切です。
以上が、「両手取引」に関する主なトラブルと、その解決方法になります。
なお、不動産を売却する方法は、仲介による売買以外にも、いくつか存在しております。
例えば、不動産の買取業者などに直接買い取って貰うといった方法も、その中の1つです。
こういった場合、仲介による売買を選択した際とは違ったトラブル対策が必要になります。
そのため、次は、不動産買取を選択した場合に意識をしておきたい主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
買取を選択した際のトラブル
不動産の買取を選択した場合、通常は売却後の瑕疵担保責任などが免除されます。
そのため、本来、後のトラブルを防止する効果を期待できます。
とはいえ、その際に防止ができるのは、あくまで「売却後」のトラブルだけという点には注意が必要です。
ですから、売却前の「売主と買取業者の交渉時のトラブル」などは、通常通り、対策をしておく必要があります。
やはり、不動産は高額な金銭が動くこともあり、買取会社もなるべく有利になるように取引を行いたいと考えております。
そのため、買取価格などに関して、売主の方の希望通りとならないことも少なくありません。
実際に、それらしい理由を付けて、査定価格を相場よりも低額に見積もられてしまったという事例もあります。
(市場相場よりも1~3割程度安い場合は適正価格の圏内です)
やはり、買取による売却を行った後に、もっと高額な価格で売却をすることができたと後悔をしても後の祭りです。
ですから、事前に不動産の的確な買取価格を調べ、複数の買取会社に査定を依頼しておくことが大切です。
これなら、本来より低い価格で、不動産を買い取られてしまう可能性を低くすることができます。
なお、いくら低価格での取引が嫌だといっても、余りに高額な買取価格を提示してくる会社にも注意が必要です。
こういった会社は、最初に高額な価格を提示し、話が進んでいった段階で、
付帯設備を理由に価格を下げてきたり、
その撤去や修理費を別途負担して欲しいと言ってきたり
する可能性があります。
その際に、取引をやめようとすると、高額な違約金などを請求され、泣く泣く契約をしたといった方も実際にいらっしゃいます。
この場合、契約書にサインをしていなければ、無償で交渉をやめることができるのが一般的です。
そのため、合意した特別な事情がない限り、こういった要求に応じる必要はありません。
以上が、不動産買取を選択した場合に意識をしておきたい主なトラブルと、その解決方法になります。
これで、仲介を依頼した会社との間に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法の説明は終わりです。
なお、不動産を売却する際には、悪徳商法についても十分に注意をしておく必要があります。
もちろん、善良で親身になってくださる不動産会社も多いのですが、こういった悪徳商法によるトラブル事例は後を絶ちません。
そのため、次の項目では、こういった不動産売却時の悪徳商法の例と、その解決方法についてご説明致します。
悪徳商法に関する5つのトラブル
多くの不動産会社は、善良な運営を行ってくださいますが、やはり中には、悪徳な営業を行っている業者も存在します。
ですから、事前にこういった悪徳商法について把握し、意識をしておくことは、トラブルを回避する上で非常に重要です。
やはり、事前にトラブル事例を知っておけば、似たような状況に出くわした際に対処がしやすくなります。
そこで、この項目では、不動産売買時における悪徳商法と、その解決方法について、記載を行っていきます。
では、まずは、土地の売却に関する悪徳商法と、その解決方法についてです。
土地の売却に関する悪徳商法
やはり、土地などは売却をする機会が少ないため、どうしても不明な点が多くなってしまいがちです。
そういった影響で、取引相手が悪徳であることに気が付かず、金銭を支払ってしまう事例が後を絶ちません。
そのため、土地を売却する際には、悪徳商法などについて正確な知識を持っておくことが必要です。
土地売却の際によく使われる詐欺手法には、「原野商法」、「造成商法」、「下取り商法」、「測量商法」などがあります。
【各悪徳商法の説明】
- 原野商法
- 原野商法とは、無価値の土地に対して、さも近い内に「リゾートの開発」、「新幹線の開通」、「高速道路の開通」が行われるため値上がりするなどといった虚偽の話をされ、相場よりも大幅に高い価格で土地を買わされてしまう商法です。
- 更に、原野商法によって購入した無価値の土地を買いたいという人が現れたと連絡があり、売却のためという名目で様々な費用を請求された挙句、そのまま連絡が取れなくなってしまうといった「原野商法の二次被害」もあります。
- 造成商法
- 造成商法とは、今まで野放しにされていた土地に対して、「買主が見つかったため、樹木や草の処理、整地などをしてください」、「お持ちの土地の隣に家が建つ事になり、近隣の方が困っているため、造成を行ってください」などと話を持ち掛けられ、法外な造成費を騙し取られてしまう商法です。
- 費用を支払った後に、買主がキャンセルをしてきたなどといった理由を作り、最終的には業者自体が音信不通となった事例もあります。
- また、通常は、木が邪魔だと申し出た近隣の方が、造成費用を負担するのが普通です。
- こういった詐欺に騙され、売却が成立しない土地の樹木などを伐採してしまった場合、今まで山林として無税だった土地が宅地状態になり課税されてしまうこともあります。
- 下取り商法
- 下取り商法とは、今まで買い手が見つからなかった土地と、業者が所有している価値の低い土地を、いかにも現存する土地よりも価値が高いといったように話を進められ、土地を下取り後に、価値の低い他の土地を買い直させられてしまう商法です。
- この悪徳商法は、2ケ所以上の飛び地となっている原野所有者が対象にされることが多いようです。
- 「2ケ所の飛び地では売れにくいため、2ケ所をまとめて下取りします」などいった好条件を提示し、契約後は「差額の数百万円を支払ってください」と話が進んでいくこととなります。
- 測量商法
- 測量商法とは、お持ちの土地に対して、あらゆる理由を付けられ、法外な測量費を請求されてしまう商法です。
- 突然に、「お持ちの土地の境界杭が不明ですので、立ち会いのもと測量が必要です」などと言われ、測量を行った結果、最終的に法外な測量費を請求されてしまうというのが基本商法です。
- なお、正確な測量図がある場合には、境界杭はそれらを確認することで復元ができますので、別途測量が必要となることはありません。
- その他の悪徳商法
- 近年は、インターネットの普及により、それらを利用した詐欺行為が行われることも多くなってきました。
- 「価値の低い土地をネットサイトで宣伝すれば売れる」とネット上での宣伝を勧められ、宣伝を依頼した後に、高額な広告費用を請求されてしまったという詐欺報告もあります。
- やはり、原野商法などで購入をした土地の評価はかなり低いため、こういった話を持ち掛けられてしまうと、売却をするために広告をお願いしたくなってしまうものです。
- 無価値な土地をネットで宣伝したからといって、確実に売れるという確証はありません。
- そのため、「半年程度で確実に売れます」と説明を受けたとしても、本当に信頼ができるのか、売れる根拠はあるのか、売れなかった場合に広告費はどうなるのかを、しっかりと調べておくことが大切です。
【悪徳業者が行う主な不正行為まとめ】
- 買い手の捏造や費用に関する詐欺行為
- 法外な樹木の伐採・除草・整地の費用請求
- 法外な土地調査費・測量費の請求
- 法外な管理委託費用の請求
- 法外な広告費用の請求(インターネット広告など)
- 無価値な土地との交換・買い替えによる差額請求
万が一、上記のような行為を行われてしまった場合には、容易に取引を行わないことが大切です。
なお、土地の購入、測量、整地などで、こういった詐欺に遭ってしまった場合には、「クーリング・オフ」をすることで、契約を破棄することができます。
訪問販売や電話勧誘販売で土地購入契約などをした場合、「原則、法律で定められた事項が書かれた書面である法定書面(契約書など)を受け取った日から8日以内」であればクーリング・オフをすることができます。
更に、例えクーリング・オフ期間を過ぎていても、業者のセールストークや勧誘方法が、余りにも悪質であった場合には、契約を取り消せる場合があります。
ですから、こういった悪徳商法の被害に遭ってしまった方は、早急に、消費生活センターなどに相談をすることが大切です。
以上が、土地の売却に関する悪徳商法と、その解決方法になります。
これらの詐欺は、いつ、どこで被害に遭ってしまうか分からないものです。
ですから、土地に関する取引を行う際には、こういった詐欺について、常に警戒をしておくことが重要です。
なお、不動産売買の際に行われる詐欺行為は、これだけではありません。
中には、不動産取引に乗じて、仲介先から法外な追加料金を請求されてしまうこともあります。
そのため、次は、こういった不正な料金請求に関する悪徳商法と、その解決方法についてご説明致します。
不正な料金請求に関する悪徳商法
不動産売買時に行われる詐欺は、土地に関するものだけではありません。
やはり、悪徳業者は、いかなる場面においても、利益を上げようと目論んでおります。
そのため、不動産売買について知識が少ない依頼主を狙い、様々な悪徳商法を持ち掛けてくる可能性があります。
例えば、
「媒介業務で行わなかった、建築請負契約に関して、コンサルティングを行ったとして、コンサルティング料を請求してくる」
「実際には行われなかったリフォーム代金を、広告宣伝費という名目で請求をしてくる」
などは、不動産取引に関する知識がない依頼主に対して行われる詐欺行為です。
広告費や詳細が不明なコンサルティング料などは、特別な事情を除き、仲介会社から請求されることのない料金です。
そのため、万が一、上記のような費用を請求されてしまった際には、容易に支払いを行わないことが大切です。
仲介手数料は、法律でその上限額が決められていることから、別途に追加料金が発生することは、ほぼありません。
ですから、仲介手数料に加えて、不明な料金が追加されている場合には、その説明を求めることがポイントです。
その際に、料金の詳細が説明できないようであれば、その料金には不正な項目が追加されている可能性があります。
万が一、こういった不正請求に応じて、料金を支払ってしまった場合には、早急に仲介先に返金依頼を行うことが必要です。
やはり、こういった業者は、いつ音信不通となってしまうか分かりません。
相手が音信不通となってしまった場合、もう支払った料金の返金を請求することはできません。
そうならないためにも、早い段階から手を打ち、業者に支払った不正料金を返金して貰うことが重要です。
支払った料金の返金を申し出たにも関わらず、相手から適切な対処がない場合には、法的な手段によって返金請求を行うこともできます。
この場合、余りに長い期間が経ってしまうと、上手く返金に関する要求が通らない可能性もあります。
ですから、最初から不正請求に応じることがないよう、請求金額に不正がないかを確認した上で、支払いを行うことが大切です。
以上が、不正な料金請求に関する悪徳商法と、その解決方法になります。
なお、不動産売買時における詐欺手法は、こういった不正料金の請求以外にも数多く存在しております。
中には、市場価格の半額以下で不動産を没収しようとする、押し買いなどを行ってくる業者もあります。
やはり、これらの悪徳商法に引っ掛からないようにするためには、事前にトラブルを把握し、対策を知っておくことが大切です。
そのため、次は、こういった押し買いに関する悪徳商法と、その解決方法についてご説明致します。
押し買いに関する悪徳商法
不動産を売却する理由は、人それぞれ異なっておりますが、中には悪徳業者の影響で、不動産を売却せざるを得なくなってしまうこともあります。
実際に、「あなたが所有している不動産を買いたい人がいる」などと売却をしつこく勧められ、仕方なくその業者と媒介契約をしたという方もいらっしゃいます。
この場合、通常通り不動産が売れれば、相応の売却益が手に入るため、損をすることにはなりません。
一方、その業者が悪徳であった場合、不動産に購入希望者が現れたということ自体が、作り話である可能性があります。
そのため、媒介契約を行った後は、
「購入希望者が購入を断念した」
などと、話をうやむやにされてしまうことも珍しくありません。
更には、
「すぐに売却をしたいのであれば、市場相場の半額で買い取りましょう」
と、勝手に話を進められ、泣く泣く不動産を売却するといった「押し買い」が行われてしまうこともあります。
こういった押し買いを回避するためには、不動産の購入話がうやむやになってしまった時点で、その会社との媒介契約を解除することが大切です。
中には、契約解除に関して、高額な違約金を請求してくる悪徳業者もありますが、契約時に同意をしていない違約金は、基本的に支払う義務がありません。
万が一、事前に違約金の説明を受け、同意した上で契約を行ったという場合には、
媒介契約の最大期間である「3ケ月」が来るのを待ち、契約解除をすることで、違約金の支払いを免れることができます。
その際に、契約の更新をしないと違約金が発生する、などと話を持ち掛けてくる悪徳業者もありますが、これは明らかな違法ですので応じる必要はありません。
なお、押し買いに似た手法として、最初は業者から時価で買取をすると言われていたのに、後に大幅に値下げをされ、そのまま買取を強行されてしまうといったような詐欺もあります。
この場合、建物や室内に不具合が見つかったということを言い訳にされるため、素人では判断が難しいです。
ですから、相手の話が事実であるのかを知るためには、取引を行う前に、不動産の状態と相場について、プロの方に査定を依頼してみるなどの対処が必要になります。
なお、悪徳業者が買取を強行しようとした場合には、下記のような組織に相談をすることで解決ができる場合もあります。
- 国民生活センター
- 宅建業者を管轄している都道府県
- 国土交通省の出先機関
- 社団法人全国消費生活相談員協会
- 地方自治体の消費者センター
以上が、押し買いに関する悪徳商法と、その解決方法になります。
こういった悪徳商法に出会ってしまった場合、やはり不動産の売却を焦らないことが大切です。
なお、今までは、媒介契約を行った上で行われる詐欺について、記載を行ってきましたが、中には、媒介契約を行う前から詐欺まがいの行為を行ってくる業者も存在します。
その中の一つに、紹介料を搾取することによって利益を得るというものがあります。
そのため、不動産売却を依頼した際に、何故か数多くの不動産会社を紹介された場合などには注意が必要です。
次は、こういった紹介料を騙し取られてしまうトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
不正に紹介料を騙し取る悪徳商法
不動産を売却する際には、不動産会社などに仲介を依頼します。
その際に、他の仲介会社を紹介され、紹介をして貰った会社に「紹介料」を支払ったという方もいらっしゃるかもしれません。
これは、不動産の売買に詳しくない不動産会社が、売買が得意な他の会社を紹介した際に発生する費用です。
そのため、売主の方を考えて、こういった紹介を行う不動産会社は決して悪徳という訳ではありません。
問題なのは、紹介が不要であるにも関わらず、紹介料を受取するためだけに、不動産会社を紹介していく行為です。
こういった悪徳業者に当たってしまった場合、紹介された次の不動産会社でも、同じように他の会社を紹介されてしまう危険があります。
この悪循環にはまってしまうと、一回の不動産売却で、何度も紹介料を支払わなくてはいけなくなってしまいます。
更には、たらい回しにされた挙句、最終的に高額な紹介料を支払っただけで、大した進展がないこともあります。
そのため、仲介依頼をした際に、不動産会社をたらい回しにされていると感じた際には、早急に他の仲介会社に依頼をし直すことが大切です。
こういった悪徳業者を避けるためには、事前に業者の評判などを調べておくことが重要です。
やはり、不動産売買の経験が多く、評判の良い仲介会社なら、依頼者を他の会社へ紹介する必要はありません。
なお、不動産の仲介依頼をした際に、他会社の紹介を受けた際には、その紹介を断ることもできます。
ですから、少しでもおかしな点を感じた際には、一旦、紹介を断るのも手です。
以上が、不動産会社に紹介料を騙し取られてしまうトラブルと、その解決方法になります。
なお、こういった悪徳な不動産会社が行うのは、紹介料に関する詐欺だけではありません。
中には、不動産の売買代金そのものを、着服してくるような悪徳業者も存在します。
実際に、売買契約までは善良な会社であったのに、取引が成立した途端に、代金の一部を着服しようとしてくる業者も存在します。
売買代金を着服され、行方をくらまされてしまうと、その代金が返ってくることはほぼありません。
そのため、適切な対応を行い、トラブルを解決していくことが大切です。
次は、こういった不動産の売買代金を着服する悪徳商法と、その解決方法についてご説明致します。
売買代金を着服する悪徳商法
本来、不動産を売却する際には、契約内容を記載した売買契約書などを取り交わすのが一般的です。
この契約書により、売主も買主も仲介会社も、契約内容に違反するような行為はきなくなります。
これら売買契約書の交付を受けていない場合、最悪は悪徳業者などに売買代金を着服されてしまう危険があります。
まずは、下記のトラブル事例をご覧ください。
「不動産を2分割し売却した際に起こったトラブル事例」
売主は、不動産を2分割し、仲介を経てそれぞれを別の買主へ売却しました。
そうして、売却益から各種諸費用を差し引いた金額を、仲介会社から受け取る予定でした。
取引が無事終わり、売主が仲介会社から代金を受け取ると、支払われたのは、当初に決めた金額よりも大幅に少ない金額でした。
売主の方は、すぐさま仲介会社に残代金の催促をしました。
それにも関わらず、仲介会社は、その催促に応じませんでした。
そのまま、どれだけ待っても、その仲介会社から残代金が支払われる兆しはありませんでした。
そのため、しびれを切らした売主は、代金を支払って貰うために、法的手段を取ることにしました。
上記のトラブルの原因となったのが、売買前に売買契約書が交付されておらず、代金の証明となるようなものがなかったためでした。
この事例では、相手の仲介会社に非があることが認められ、代金の支払いが行われましたが、中には、そのまま代金を持ち逃げされてしまうケースもあります。
そうなってしまうと、もう着服された売買代金を取り戻すことは、ほぼ不可能と言っても過言ではありません。
そのため、不動産売買時には、きちんと売買契約書の交付を受けておくことが大切です。
やはり、売買契約書があれば、不正に売買代金を変更させられていたとしても、書面によってそれを立証することができます。
ですから、不動産売買時に、売買契約書の交付がない場合や交付が遅い場合には、早急にその交付を求めることが重要です。
以上が、不動産の売買代金を着服する悪徳商法と、その解決方法になります。
これで、不動産売買時の悪徳商法についての説明は終わりです。
なお、不動産売買時には、仲介業者以外の業者とも関わりを持つ可能性があります。
例えば、不動産に対して、リフォームや修理修繕を行う際に、施工会社と契約をする場合などがその例です。
この場合、確実にトラブル無く、各工事を終えることができるとは限りません。
やはり、施工会社と依頼主の間にトラブルが起こってしまう可能性もあります。
そのため、次の項目では、不動産売却の際に施工会社に依頼をした場合のトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
施工業者との間に起こるトラブル
不動産を売却する際には、事前にリフォームなどをしてから取引を行うことも珍しくありません。
その際には、多くの方が、専門の施工会社に工事の依頼をすると思います。
この場合、施工会社と売主との間に、トラブルが起こらないとは言い切れません。
万が一、こういった工事に関するトラブルが起こってしまうと、不動産の売買に多大な影響が出てしまうこともあります。
更には、不動産の売却自体ができなくなってしまうことにもなりかねないため、やはり十分に注意をしておくことが大切です。
そこで、この項目では、施工会社に工事を依頼した場合に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
まずは、施工会社にリフォームや修理を依頼した際に起こり得るトラブルと、その解決方法についてです。
リフォームや修理時のトラブル
不動産のリフォーム・修理修繕を行う際には、殆どの方が、専門の施工会社に作業を依頼します。
こういった施工会社は、基本的に依頼主の望む工事を行うのが一般的です。
そのため、依頼主は、事前にある程度の工事プランを立てておく必要があります。
もし、依頼主の方が無計画な工事を依頼すると、それが原因でトラブルが起こってしまうこともあるため注意が必要です。
住宅やマンションなどには、通常は、近隣に他の住居人が住んでおります。
ですから、そういった方のことを考えずリフォームや修理修繕を行ってしまうと、やはり近隣から苦情が来やすくなってしまいます。
更に、こういったトラブルが原因で、依頼主と施工会社との間にトラブルが起こってしまうこともあります。
そのため、事前に近隣やマンションの住居者に対して、適切な対処を行っておくことが大切です。
なお、下記は、リフォームや修理修繕時に、売主が意識をしておきたい主な事項と、売主と施工会社の間に起こりやすい主なトラブルをまとめたものです。
【無計画なリフォーム・修理修繕によって起こる主なトラブルと解決方法】
- マンションの管理規約に違反した工事を依頼する
- >マンションなどの区分所有建物は、「区分所有法」のルールに従って工事を行わなくてはいけません。
- そのため、マンションの管理規約や使用細則などには、この区分所有法に基づいて作成された規則が記載されているのが一般的です。
- なお、マンションの管理規約には、「個人でリフォームできる範囲(専有部分)とできない範囲(共有部分)」が、使用細則には「床材の防音規定や工事の承認方法」などのルールが記載されております。
- そのため、マンションのリフォームをお考えの方は、これら規約を確認しておくことが大切です。
- 万が一、規約を破った工事を行った場合には、工事の停止・状態の復旧が求められる可能性があります。
- なお、個人でのリフォームの場合、サッシ・玄関ドア・ベランダ部分のリフォームを行えない可能性がありますのでご注意ください。
- マンションの共用部分のリフォーム時期と個人でのリフォーム時期が重なってしまう
- マンションのリフォームが行われる場所は、「個人の専有部分」だけではありません。
- 時には、外壁の塗装や配管修理などの「共有部分」のリフォームが行われることもあります。
- この共有部分のリフォーム時には、広範囲に工事用のシートや足場が掛かったり、施工会社の大型車が出入りしたりする可能性があります。
- そのため、万が一、個人のリフォームと重なってしまうと、材料の搬入や駐車場の問題などでトラブルが起こってしまうことがあります。
- その影響で、依頼主と施工会社自体に揉め事が起こってしまうこともありますので、専有部分の工事を行う際には、マンションの共用部分のリフォーム時期や大規模修繕の時期を確認しておくことが必要です。
- 工事の予定などを近隣の住民や住居者に伝えていない
- マンションや住宅のリフォームは、近隣へ何かしろの影響を与えてしまうことも多いものです。
- やはり、工事の音なども大きくなりやすいため、壁・床などを伝わり、想定よりも遠くまで騒音が聞こえてしまうことも珍しくありません。
- そのため、近隣の方に、工事についての断わりを入れていない場合、そのことでトラブルが起こってしまう可能性があります。
- 時には、近隣の方と施工会社が揉め事になってしまうこともありますので、工事の前に、工事の断わりを入れておくことは非常に重要です。
- また、その際には「工事の開始日」、「工事を行う時間帯」、「工事の終了日」などを伝えておくことも忘れないようにしてください。
- 最近は、リフォーム業者がこういった断わりを入れてくださることも多いのですが、やはり依頼した本人も断わりを入れておいたほうが、その誠意を相手に伝えやすくなります。
- もちろん、その際に伝えた各工事の予定に関しても厳守をすることが大切です。
- 取り付け不可能な機器を施工会社に取り付け依頼した
- 不動産のリフォームを行う際には、その工事が本当に問題ないのかを、しっかりと確認しておくことが大切です。
- やはり、古い戸建やマンションなどの場合、 各戸で使用できる電気とガスの容量が限られている可能性があります。
- それらの確認を怠ると、最悪は工事の再依頼などが必要となってしまうため注意が必要です。
更に、工事に関わる臭いや埃などの問題についても配慮が必要です。
【売主と施工会社との間に起こりやすい主なトラブルとその解決方法】
- 強引に工事の契約を迫られる
- 戸建のリフォームなどを考えた場合、工事の契約を行う前に、施工会社にその工事に関する見積もりをお願いすることができます。
- 見積もりは、工事の契約とは異なるため、その後に工事の依頼をするかどうかは、依頼主の意思に委ねられます。
- それにも関わらず、悪質な施工会社は、工事の見積もりと同時に、強引に工事の契約を迫ってくるケースがあります。
- 工事の依頼をすることに特に問題がなければ、そのまま契約を行っても良いのですが、他の施工会社と契約を行いたい場合には、それが原因で、トラブルが起こってしまう可能性もあります。
- 更に、こういった会社は、肝心の工事でも、詐欺まがいの行為を行ってくる可能性があるため注意が必要です。
- 工事に関する契約書などの交付がない
- 不動産に関する工事を行う場合、その費用が高額になってしまうことも少なくありません。
- そのため、殆どの場合、契約時にその費用などを記載した契約書の作成を行います。
- 悪質な施工会社と契約をした場合、こういった契約書の交付が行われないことがあります。
- やはり、これではお互いに責任逃れをしやすい環境を作ってしまいます。
- そのため、施工会社と契約をした際に、契約書の交付がなかった場合には、早急にその交付を施工会社に求めることが大切です。
- 住宅所有者になりすまし保険金請求を行われる
- 火災などが原因で、戸建のリフォーム・修理修繕が必要となってしまった際には、火災保険に加入をしている場合に限り、契約先の保険会社から、それ相応の保険金を受け取ることができます。
- なお、火災保険は、風、ひょう・雪災害条項などが付帯していることも多いため、これらの影響による住宅破損に関しても保険金を受け取れるのが一般的です。
- その際に、悪質な施工会社に住宅の修理を依頼してしまうと、 保険契約者である建物所有者になりすまし、勝手に保険金を請求されてしまう可能性があります。
- こういった被害を受けた場合、早急に保険会社に事情を説明し、施工会社に保険金の返金を促す必要があります。
- 虚偽の理由で保険金の請求をされてしまう
- 近年、「保険で0円リフォーム」といったようなキャッチフレーズの業者が多くなってきました。
- 確かに、災害により住宅などが破損した場合、加入している保険会社から相応の保険金を受け取ることができるため、それを利用すれば、実質上、無料でリフォームを行うことも可能です(保険の種類によっては、税込20万円以上でないと、適用ができないなどの規定がある場合もあります)。
- なお、受け取ることができる保険金の金額は、損害保険登録鑑定人が、建物調査を行った上で、損害額の査定を行うのが一般的です。
- その際に、住宅の所有者が悪質な施工会社に住宅の修理・保険金の請求を委任してしまうと、老朽化による破損や自然劣化の部分まで、損害額の見積もりに入れられ、本来よりも過大な保険金請求を行われてしまう可能性があります。
- もちろん、これら老朽化や自然劣化した部分に関しては、本来、保険の適用を受けることはできません。
- そのため、無料で工事ができると聞いていたにも関わらず、最終的に、予定通りの保険金が手に入らず、その分の工事代金を請求されてしまうといった事態に陥る可能性があります。
- 「保険金で0円リフォーム」というキャッチフレーズの施工会社に工事を依頼する際には、施工会社が適切に保険金の金額を見積もっているかを確認しておくことが大切です。
- 法外なキャンセル料や手数料などを要求される
- 施工会社と契約を行い、依頼主の勝手な理由で契約を解除した場合、キャンセル料などを請求されてしまうことがあります。
- 更に、保険金などの請求を施工会社に委任していた場合、それに対する手数料を求められることも少なくありません。
- その際に、悪徳業者と契約をしていた場合、高額なキャンセル料や手数料などを請求されてしまう可能性があります。
- これらの料金について、法外な金額を請求された場合には、相手にそのことを伝え、金額の不満を訴えることが必要です。
- それでも、相手が料金の引き下げに応じない場合には、早めに専門の機関に相談をすることが大切です。
- ずさんな工事を行われてしまう
- 悪質な施工会社に工事を依頼してしまうと、雑でずさんな工事を行われてしまう可能性があります。
- 工事中に、水漏れ、ミス、各所の破損などが起こってしまっても、それを隠蔽したり、簡易的な補強だけで済ませてしまったり、最初から壊れていたなどの虚偽の報告を行ったりして、責任を放棄するような悪徳業者も存在します。
- 更に、近隣への騒音対策、荷物の搬出入に伴うエレベーターの養生、駐車場問題などに対して、全く注意のない業者もあります。
- これでは、近隣の方や住居人とトラブルになってしまう可能性が高くなってしまいます。
- そのため、工事を依頼する施工会社は、実績や評判などを調べ、信頼ができる業者を選ぶことが大切です。
- 各所での追加費用について施工会社と揉める
- リフォームなどの際に、想定外の部分が破損していた場合や、当初の予定と異なる工事が必要になってしまった場合、施工会社から追加料金を請求されてしまうことがあります。
- 中には、事前にこれらの事情説明と追加費用を、依頼主に伝えないまま工事を行い、後にその請求を行ってくる会社も存在します。
- そのため、工事の際には、追加費用の発生などについて細かく施工会社と話し合い、追加費用が必要な工事を行う際には、一度、話をして貰うようにすることが大切です。
- 中には、追加費用の水増しを行ってくる業者もあるため、修理箇所やその規模などについても把握をしておくと安心です。
不動産のリフォームや修理修繕を行う際には、こういったトラブルが起こらないよう、意識をしておくことが重要です。
以上が、施工会社にリフォームや修理を依頼した際に起こり得るトラブルと、その解決方法になります。
なお、不動産を売却する際には、リフォームや修理修繕を行わないまま、売却をするという選択肢もあります。
この場合、不動産に、欠陥部分などが多くなってしまう可能性があるため、その確認を行っておくと安心です。
そうして、明らかな欠陥などがあった場合には、そのことをきちんと買主の方に伝えておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
また、不動産を売却する際には、現存する欠陥だけではなく、気が付かなかった欠陥に関しても意識をしておく必要があります。
売却後の不動産に対して、隠れた欠陥に関する責任を負うことを、一般的に瑕疵担保責任といいます。
この瑕疵担保責任にトラブルは、不動産の売買において非常に重要な部分です。
そのため、次の項目では、この不動産売買後の瑕疵担保責任に関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
瑕疵担保責任に関する3つの注意
不動産を売却する際に、意識をしておきたいことの一つに、瑕疵担保責任があります。
瑕疵担保責任とは、不動産を売却した後の隠れた欠陥(瑕疵)について、売主が負わなくてはならない担保責任のことです。
なお、詳しい瑕疵担保責任の説明につきましては、お手数をお掛け致しますが「所有している不動産を売却する際に知っておきたい基礎知識」の記事にあります「売買時の瑕疵担保責任について」の項目をご覧ください。
この瑕疵担保責任が原因で、不動産売買が失敗に終わってしまうことも決して少なくありません。
そのため、事前に瑕疵担保責任に関するトラブルの解決方法を知っておくことが大切です。
やはり、瑕疵担保責任について知識を持っていれば、買主とトラブルが起こってしまうことも少なくなります。
では、まずは、不動産の設備に関する瑕疵担保責任のトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
設備に関する瑕疵担保責任
不動産売却後の瑕疵担保責任のトラブルは、設備に関係するものが大半です。
そのため、設備の状態を細かく確認しておくと、後のトラブルを回避することに繋がります。
不動産を売買する際には、「告知書」と呼ばれる「付帯設備及び物件状況確認書」を任意で作成できるのが一般的です。
これらに、付帯設備などに関する情報を記載していれば、買主の方も欠陥を承知の上で取引を行うことができます。
とはいえ、「告知書」に記載がされているのは、あくまで、「売主の方が把握できている問題点」のみです。
ここで、瑕疵担保責任の説明を思い出してください。
瑕疵担保責任の対象となるのは、売却前には気が付かなかった「隠れた瑕疵」です。
そのため、例え告知書を作成していても、売却後に気が付かなかった欠陥などが見つかった場合には、その責任を取る必要があります。
更に、こういった設備関連の瑕疵は、それが、売却前からの不具合であったのかが確認できない場合も少なくありません。
こうなってしまうと、売主の方と買主の方との間に、確執が生まれやすくなってしまいます。
そのため、売主の方は、売却前に「隠れた瑕疵」などについても、十分にチェックを行っておくことが大切です。
売却前に「住宅診断(ホームインスペクション)」を行う、第三者立ち合いのもとで設備を確認しておくなど、適切な対処をしておくことで、隠れた欠陥に対して対処がしやすくなります。
特に、エアコン、給湯器、トイレなど頻繁に使用する可能性が高い設備は、十分に確認をしておくことが重要です。
以上が、不動産の設備に関する瑕疵担保責任のトラブルと、その解決方法になります。
なお、瑕疵担保責任は、個人が売主である場合に限り、その責任を免除することもできます。
この場合、瑕疵担保責任に関する心配はなくなりますが、反対に、それが元でトラブルになってしまうこともあるため注意が必要です。
そのため、次は、瑕疵担保責任を免除した上で取引を行った場合のトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
責任免除特約との瑕疵担保責任
個人が中古物件を売却する場合、売主の方は、必ず瑕疵担保責任を負わなくてはいけない訳ではありません。
そのため、買主の方に、瑕疵担保責任を負わない旨を伝えておけば、売却後の責任を免除することもできます。
これは、「瑕疵担保責任免除特約」と呼ばれ、不動産売買時には意識をしておきたい部分です。
なお、この瑕疵担保責任免除特約を結ぶ際に、契約書などに「瑕疵担保責任を定めない」と記載を行う売主の方がいらっしゃいます。
瑕疵担保責任に対して責任を「定めない」とした場合、
「瑕疵担保責任の期間などについて、ただ単に定めない」という意味合い
となってしまう場合が殆どです。
この場合、最悪は「物件の引き渡し後10年以内」までの瑕疵の責任を負うことになる可能性があります。
そのため、不動産売却時に、瑕疵担保責任免除特約を定めたい場合には、
瑕疵担保責任を「定めない」
とするのではなく、
瑕疵担保責任を「負わない」
という内容で契約を行う必要があります。
更に、「瑕疵担保責任免除特約」と「現状有姿」の解釈の違いにも注意が必要です。
現状有姿とは、通常、契約を結んだ時のままの状態で、物件を引き渡すという意味合いで使われます。
そのため、「契約を結んでから物件を引き渡しするまでの間に、何か不具合が生じたとしても、売主は責任を取らない」というのが本来の意味です。
不動産売買時には、この現状有姿の意味を、「中古物件を現状のまま売却し、その後の不具合などに関して一切責任を取らない」といった「瑕疵担保責任免除特約」の意味合いで使用している方もいらっしゃいます。
これでは、お互いの解釈がバラバラで、売買後にトラブルが起こってしまう原因となってしまいます。
そのため、契約を結ぶ前には、一度、こういったことに関して確認を取り、同意をした上で契約を行うことが大切です。
なお、例え瑕疵担保責任免除特約を結んでいたとしても、下記のような場合には、例外となる可能性がありますのでご注意ください。
- 取引後に見つかった瑕疵の規模が、明らかに当初に想定をしていたものよりも大きかった場合。
- 売主の方が意図的に既存の瑕疵を隠して、取引を行っていた場合。
- 未入居の新築住宅を売却する場合(住宅品質確保法により、10年間の瑕疵担保責任を負う義務があるため)。
以上が、瑕疵担保責任を免除した上で取引を行った場合のトラブルと、その解決方法になります。
なお、瑕疵担保責任の対象となる隠れた欠陥は、目に見える要素だけではありません。
時には、周辺の環境などが起因し、それが精神的な瑕疵と認められることもあります。
そのため、次は、不動産売却時の瑕疵担保責任の種類と、それに起因するトラブルについてご説明致します。
物理的瑕疵以外の瑕疵担保責任
不動産売買時に、瑕疵担保責任を負うという内容で契約をした場合、売主の方はその責任を全うしなくてはいけません。
やはり、これら瑕疵について、きちんと対処をしなかった場合、最悪は、買主の方から損害賠償などを請求されてしまう可能性もあります。
そのため、「雨漏り」、「シロアリの被害」、「設備の故障」など、様々な面の瑕疵に対して対処を行っておくことが重要です。
なお、ここで注意をしておきたいのは、「隠れた瑕疵」に分類される要素が、「目に見えるもの」だけではないという点です。
一般的に、不動産の瑕疵として認定される事柄は、以下の4つに分けられております。
【不動産における主な瑕疵の種類】
- 物理的瑕疵
-
取引をした不動産そのものに、物理的な欠陥が存在する場合には、物理的瑕疵となります。
- 雨漏り
- シロアリの被害
- 設備の故障
- 耐震強度の不足
- 土壌汚染
- 地中の埋設物
- 地中に井戸が存在した
など - 法律的瑕疵
-
法令などにより、取引をした不動産の自由な使用が阻害されているような場合には、法律的瑕疵となります。
- 土地に法令上の建築制限が課せられている
- 売買された建物が建ぺい率違反の建築である
など - 心理的瑕疵
-
取引をした不動産に、心理的な面において住み心地の良さを欠くような事柄がある場合には、心的瑕疵となります。
- 取引をした不動産内で過去に自殺があった
- 取引をした不動産内で過去に殺人があった
- 取引をした不動産内で過去に火災による焼死が発生した
など - 環境的瑕疵
-
取引した不動産には特に問題がない代わりに、それを取り巻く環境に問題がある場合には、環境的瑕疵となります。
- 近隣環境による騒音・振動・異臭・日照障害
- 冠水しやすい河川がある
- 近隣に好ましくない施設・工場がある
など
これら全てが「隠れた瑕疵」と認識されますので、売却前には十分に確認をしておくことが大切です。
やはり、売主からすると気にならなかった瑕疵でも、買主からすると重大な瑕疵となってしまうこともあります。
物理的瑕疵ならば、見つかった瑕疵を売主負担で改善することで解決ができます。
一方、法律的瑕疵や心理的瑕疵、環境的瑕疵の原因を、売主個人で解決することはほぼ不可能です。
そのため、こういった瑕疵が見つかった際には、買主の方から、その責任を追及されてしまうことになります。
その際には、売買契約を解除されてしまう危険性もゼロではありません。
ですから、万が一、取引不動産に、重大な瑕疵が見つかる可能性がある場合には、それらの情報を買主に伝えておくことが大切です。
そうすれば、後に、買主から責任を追及されてしまうようなことは無くなります。
なお、任意売却などによって不動産を売却した場合には、原則、瑕疵担保責任は免除されますのでご安心ください。
(その代わり、売却価格は相場より低めとなってしまいます)
また、マンションを売却した場合にも、売主が、瑕疵担保責任を問われるケースは、それ程多くありません。
何故なら、土地に対する瑕疵担保責任がほぼ必要なく、木造特有のシロアリなどの問題もないからです。
他にも、給排水設備や雨漏りなどの問題の多くは、共用部分の瑕疵となります。
こういった共有部分の瑕疵は、建物の施工会社や管理組合などが対応するのが普通です。
そのため、マンションを売却する際には、こういった瑕疵担保責任に対して、余りに神経質になってしまう必要はありません。
以上が、不動産売却時の瑕疵担保責任の種類と、それに起因するトラブルの説明になります。
これで、不動産売却後の瑕疵担保責任に関するトラブルと、その解決方法の説明は終わりです。
なお、不動産売買において、起こりやすいトラブルは、瑕疵担保責任に関するものだけではありません。
場合によっては、売却不動産の周りに私道などがある場合にも、様々なトラブルが起こってしまう可能性があります。
そのため、私道部分に面している不動産を売却する際には、私道の環境や条件などを再確認しておくことが大切です。
そこで、次の項目では、こういった私道に面している不動産を売却する際に起こりやすい主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
私道などに関する4つの問題点
現在、存在する道は、主に「公道」と「私道」の2つに分類されるのが一般的です。
公道とは、名前の通り「国や都道府県、市町村や特別区などの地方公共団体が指定・建設・管理をする道路」のことです。
一方、私道とは、「個人又は団体が所有している土地を道路として使用している区域」のことです。
売却予定の不動産が公道に面している場合には、それが原因でトラブルになってしまうことは殆どありません。
反対に、不動産が私道に面している場合には、それが原因でトラブルになってしまう可能性があります。
そのため、そういった際には、事前に、起こり得るトラブルに対して対策をしておくことが大切です。
そこで、この項目では、売却予定の不動産が私道に面している場合に、起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法について記載を行っていきます。
まずは、売主に私道の持分がある場合のトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
私道の持分がある場合のトラブル
不動産を売却する際には、売却する物件や土地の状態だけでなく、周辺の環境にも意識をしておくことが重要です。
やはり、せっかく売却予定の不動産が良いものでも、周辺の環境が、買主の方に悪影響を及ぼしてしまうとなると、何の意味もありません。
そのため、事前に、不動産の周辺環境などについて、よく調査をしておくことが大切です。
その際に、まず確認をしておきたいのは、
売却予定の不動産が私道に面しているかどうかと、
私道に面している場合には、その私道に対して、所有権や持分があるかどうかという
点です。
やはり、私道は、公道と違い、誰もが気軽に使用できる道という訳ではありません。
私道の各種工事などは、私道の所有者が自己負担で行わなくてはいけません。
更に、私道の維持管理のための負担金、通行の制限、道路掘削の制限なども、私道の所有者が独自に取り決めている場合が殆どです。
そのため、私道の所有権や持分がある場合には、私道に関する細かい説明を、買主の方に伝えておく必要があります。
(私道に面している不動産を売却する場合、通常は、私道部分の価格を考慮しないで、その所有権や持分を買主の方に譲渡します)
やはり、私道の費用負担、費用徴収、利用制限、補修場所などは、売主の方しか分からない情報です。
それらをきちんと伝えないまま、買主の方と取引をしてしまった場合、後に重大なトラブルが起こってしまう可能性があります。
また、私道は、その利用に関して何ら制限を設けておらず、広く不特定多数の人が利用できる状態であれば、固定資産税や都市計画税が掛からないことになっております。
そのため、買主の方に、私道の税金は非課税であるのか、納付が必要であるのかをきちんと伝えておくことも大切です。
以上が、売主に私道の持分がある場合のトラブルと、その解決方法になります。
上記では、売主に、私道の所有権や、持分がある場合のトラブルについて記載を行いました。
では、反対に私道の所有権や持分がない場合には、どういったトラブルが起こりやすくなるのでしょうか?
次は、売主に私道の持分がない場合のトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
私道の持分がない場合のトラブル
売却予定の不動産が私道に面している場合、その持分があるかどうかが大きなポイントとなります。
やはり、私道の持分があるのと、ないのとでは、後の生活に大きな違いが出てきてしまいます。
売主の方が、私道を所有している、又は持分をお持ちの場合は、各所での権利が有利になるのが一般的です。
そのため、買主に対して悪い印象を与えることはそれ程ありません。
それに対して、私道の持分がない場合には、私道の権利に関する部分が不利になってしまいます。
そのため、買主から、購入を嫌煙されてしまう可能性があります。
特に、地主の方が単独所有している私道に関しては、何かある毎に、私道利用に関する権利の許可が必要な場合もあります。
もちろん、私道の所有者が単独であっても、厳しい規制を行っているばかりではありませんが、不動産売却の前には、一度、話をしておくことが大切です。
これら私道に関する告知は、「重要事項説明」などで行います。
そのため、売主の方は、それまでに、最低限、下記の事項に関して確認をしておくようにしてください。
- 私道の管理や維持にあたっての「負担金」。
- 私道の通行承諾や通行料について記載がされた「私道通行承諾書」。
- ガス管や水道管などの埋設工事のための「道路掘削承諾書や承諾料」。
- 私道部分に、所有者の方が通行の迷惑になる程の私的使用を行っている場合は、その事情。
- 各種承諾を受けた際には、それらが将来的にも有効であるかどうか(所有者の方が変わった場合や失踪した場合の有効性)。
- 提示している土地面積が、私道込みの面積なのか、除いた面積なのか。
また、売却前に、登記簿や図面などから、私道の所有者や分割の状況などを調査しておくことも大切です(仲介会社に調査を代行して貰うこともできます)。
やはり、これらのことを確認しないまま不動産の売却を行ってしまうと、買主の方が、私道に関するトラブルに巻き込まれやすくなってしまいます。
実際に、周辺の私道の権利関係によって、売主、買主、私道所有者との間に大きなトラブルが起こってしまった事例もあります。
ですから、上記のような事項について十分に確認をし、適切に買主の方に伝えてから、不動産の取引を行うことが必要です。
なお、各種権利の承諾を得ようにも、私道の所有者が行方不明で見つからないなど、承諾を得る方法がない場合もあります。
そういった際には、不動産自体の価値が、無価値に近い状態になってしまうこともあるため注意が必要です。
(所有者に、私道に関する各種権利の承諾を貰えなかった場合も同様です)
以上が、売主に私道の持分がない場合のトラブルと、その解決方法になります。
なお、不動産が私道に面していることは、デメリットばかりがある訳ではありません。
時にはその存在がプラスに働き、不動産が売れやすくなることもあります。
既存の土地に、建物を建築しようとした場合、その土地が建築基準法という決まりを満たしていなければいけません。
そのため、建築基準法を満たしていない土地は、どうしても買い手が見つかりにくくなります。
そこで役立つのが、私道です。
こういった建築基準法を満たしていない土地は、私道を開通することで、建物の建築ができるようになることがあります。
やはり、土地に建物が建築できるようになれば、建築ができない場合に比べて、格段に不動産が売れやすくなります。
なお、土地に私道を開通する際には、それなりにトラブルなどにも意識をしておくことが重要です。
そのため、次は、既存の不動産に私道を開通する場合に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
私道負担に関するトラブル
不動産の買主の方には、それぞれ不動産を購入したい理由があります。
そのため、不動産を売れやすくするためには、買主の方の購入理由に合致しやすいように、不動産の状態を整えていくことが大切です。
その際に、特に意識をしておきたいのは、売却予定の土地が「建築基準法」に適しているかという点です。
この建築基準法の規定を満たしていない土地の場合、そこに建物を建設することはできないため、不動産自体が売れにくくなってしまう可能性があります。
敷地が面している道路の幅員 | 道路に面している敷地の幅 |
---|---|
4m以上(特定行政庁が指定した区域内では6m以上) | 2m以上 |
※クリックで拡大
上記の表・図から、
建築物の敷地は、「原則として幅員4m以上(特定行政庁が一定の手続きを経て指定した区域内では「幅員6m以上」)の道路に、2m以上接しなければならない」
ということが分かります。
なお、これは、不動産を分譲した結果、一部の土地が道路に接さなくなってしまった場合も例外ではありません。
そのため、こういった分譲地に建物を建築するためには、既存の土地の一部に、建設基準法を満たしている私道を開通するなどの対処が必要となります。
このように、建築基準法を満たすために、敷地内に新たな私道を開通することを「私道負担」と言います。
私道負担は、不動産の売買において重要な要素です。
やはり、建物が建築できない土地を売却しようとしても、なかなか買い手が見つからないのが現状です。
そのため、私道負担の存在を明らかにし、建物が建設できることをアピールする必要があります。
なお、売主の方が、私道を開通させてから不動産を売却する場合には、その私道の維持管理や近隣の方との関係などを、買主の方に説明をしておくことが大切です。
一方、買主の方に私道の開通を任せる場合には、私道負担に関する各種情報を、きちんと伝えておくことが必要です。
建物を建築する際の建ぺい率や容積率は、基本的に私道部分を除いた面積となります。
ですから、どの程度の面積が私道となるのか、最終的な敷地面積はどの程度になるのか、などの情報の提示を忘れないことが重要です。
これら私道負担の情報を買主の方に伝えていなかった場合、最悪は契約解除などとなってしまう可能性もあります。
そのため、仲介会社とも、これらの情報を共有し、買主の方に十分な説明ができるようにしておくと安心です。
以上が、既存の不動産に私道を開通する場合に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法になります。
なお、現存する私道には、建築基準法を満たしていない状態で開通されているものも、いくつか存在しております。
これらの私道周辺には、本来、建物の建築をすることができないのが普通です。
それにも関わらず、その道路周辺に住宅などの建物が建っていることもあります。
これは、セットバックと呼ばれる処置を行っているためです。
セットバックが必要な不動産を売却する際には、その内容について、売主の方も十分に理解をしておくことが大切です。
やはり、こういった不動産を売却する際に、説明を疎かにしてしまうと、後の重大なトラブルに繋がってしまいかねません。
そのため、次は、このセットバックに関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
セットバックに関するトラブル
不動産が面している道路が、建築基準法を満たしていなければ、建物の建築ができないことは既に書きました。
現在、この建築基準法を満たしていない私道や公道は、決して少なくありません。
それにも関わらず、その道路周辺の土地に建物が建っていることもあります。
これら道路には、何故、建物の建築が許可されているのでしょうか?
元々、建築基準法は、「昭和25年11月23日」に施行がされた決まりです。
ですから、昭和25年11月23日以前や、都市計画区域に編入される以前から存在していた道路の周辺には、規定を満たしていない場合でも、多くの建物が建築されていました。
こういった土地に対して、建物の取り壊しが必要となると、周辺の住民は困ってしまいます。
そのため、例外措置として、
「建築基準法が適用される以前(昭和25年11月23日)や、都市計画区域に編入される以前から存在し、その通路に沿って建物が建築されている道路」
に限っては、特定行政庁の指定さえ受けていれば、建物を建築できるという特例が制定されました。
これらの道路は、「42条2項道路」、「2項道路」、「みなし道路」などと呼ばれております。
ですから、お持ちの土地が、建築基準法を満たしていない場合でも、上記のような道路に面していれば、建物を建てることができます。
なお、この場合、通常は、建物の建築位置などに制限が設けられているのが一般的です。
敷地に面している道路の反対側が、宅地である場合には、道路の中心線から「2m」後退した位置に建物を建築する必要があります。
また、道路の反対側が、河川・崖・線路などである場合には、河川、崖、線路などから、一方的に「4m」後退した位置に建物を建築しなくてはいけません。
このように、ある地点から一定の距離を後退した上で、建物を建築することを「セットバック」といいます。
(セットバックという言葉自体は、その他の意味を指すこともありますが、不動産取引においてのセットバックは上記の意味の場合が殆どです)
反対側が宅地である場合 | 反対側が河川・崖・線路などの場合 | |
---|---|---|
セットバックの距離 | 道路の中心線から2m | 河川・崖・線路などから4m |
※クリックで拡大
セットバックが必要な土地は、セットバック部分の面積を除外して、建ぺい率や容積率を算出する必要があります。
更に、セットバックとして後退した敷地部分には、塀や門などを立てることもできません。
そのため、セットバックが必要な土地を売却する際には、
買主の方に、セットバックが必要であるという事実と、その後の建ぺい率や容積率を的確に伝えておくことが重要です。
不動産売買時に、セットバックに関する情報を伝えないまま取引を終えてしまった場合、買主の方は、想定していたよりも少ない建ぺい率と容積率の土地を買ってしまったということになります。
この場合、悪いのは情報を提示しなかった売主です。
ですから、最悪は、売買契約が解除されてしまう可能性もあります。
やはり、トラブル無く取引を行うためには、売却に不利となるような情報も、相手の方に提示をするようにすることが大切です。
以上が、セットバックに関するトラブルと、その解決方法になります。
これで、私道に面している不動産を売却する際に起こりやすい主なトラブルと、その解決方法の説明は終わりです。
なお、不動産売買時に懸念されるトラブルは、これだけではありません。
やはり、袋地や囲繞地などを売却する際にも、その特殊性から、様々な面でトラブルが起こってしまう可能性があります。
そのため、こういった特殊な土地を売却する可能性のある方は、それ相応の注意をしておくことが重要です。
そこで、次の項目では、売却予定の土地が特殊である場合に起こりやすい主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
袋地と囲繞地に関するトラブル
不動産は、その存在場所が買主にとって利便性があるかどうかも、評価をされるのが一般的です。
やはり、不動産の地形が特殊である場合、その不動産を買いたいと思う方は少なくなってしまいます。
そのため、購入希望者が限られ、需要が低くなってしまうのが一般的です。
例えば、
「敷地の四方八方を他の土地に囲まれた袋地」
「袋地を囲む周囲の囲繞地」
などは、買い手が見つかりにくい地形の代表です。
※クリックで拡大
上記の図中の【1】,【2】,【3】,【4】,【6】,【7】,【8】,【9】が囲繞地であり、【5】が袋地です。
やはり、こういった土地を売却する際には、様々なトラブルが起こってしまう可能性があります。
そのため、起こり得るトラブルについて把握し、しっかりと対策をしておくことが重要です。
そこで、この項目では、特殊な地形の不動産を売却する際に起こりやすい主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
まずは、袋地を売却しようと考えた際に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法についてです。
袋地を売却する際のトラブル
袋地にお住いの方は、敷地の周りを他の方の土地に囲まれております。
そのため、法で、公道に出るために、他の方の土地(囲繞地)を通ることや通路を開設することが、認められております。
これは、「囲繞地通行権(隣地通行権・袋地通行権)」と呼ばれ、袋地の所有者には自然と与えられている権利です。
この囲繞地通行権によって、他の方の土地を通行する際には、囲繞地の内、相手に最も損害の少ない場所を選んで通行する必要があります。
また、1つの土地を分筆・一部譲渡した結果袋地となってしまった土地の場合は、
「袋地となる前に繋がっていた土地の部分」
以外の土地は通行できませんので、注意が必要です。
万が一、通行予定の囲繞地に、袋地の所有者が通ることのできる通路がない場合には、そこに新たな通路を開設することになります。
その際には、作成する通路の幅員について、一定の規定を守った上で通路を開通しなくてはいけません。
袋地の所有者が作成できる道路は、あくまで「人の通行」を想定したものになります。
そのため、車などが通行する幅は考慮されず、大体90cm~200cm程度の幅員に留まる一般的です。
更に、囲繞地に通路を作るとなると、その近隣の方に迷惑をかけなくてはいけません。
そのため、通路を開設する予定の土地所有者から、それ相応の償金の支払いを求められてしまうこともあります。
通路開通に伴う償金は、工事の際にまとめて支払うケースが多いため、事前に資金の工面をしておくことが大切です。
また、その通路の通行に関して、1年おきに償金の支払いが必要となってしまうこともありますので、そのことに関しても囲繞地の方と話をしておくことが重要です。
(分筆・一部譲渡によってできた袋地の場合は、基本的に、無償で通行をすることができます)
これらのことから、袋地を所有するとなると、
近隣との関係、
使用環境、
金銭的な面
で、様々な問題が起こってしまう可能性があるということが分かります。
そのため、袋地を購入したいという方が現れることは珍しく、売却までに時間が掛かってしまうことも珍しくありません。
また、万が一、購入希望者が現れたとしても、その特殊性からトラブルが多発してしまう危険性もあります。
ですから、袋地を売る際には、近隣との関係(償金・境界含む)を確認し、トラブルがある場合には、そのことを買主の方に伝えておくことが大切です。
特に、囲繞地の所有者と通路の関係性、償金の支払い関してなどは、しっかりと買主に伝えておくことが重要です。
また、現在、囲繞地の通行に関して償金などの支払いが必要ない場合でも、袋地の所有者が変わった時点で、突然に償金の支払いを求められてしまうこともあります。
そのため、将来的に土地の所有者が変わっても、無償で通行ができるのかを確認し、その結果を買主の方に伝えておくことも忘れないようにしてください。
以上が、売却予定の土地が袋地である場合に起こりやすい主なトラブルと、その解決方法になります。
上記では、袋地を売却する際に起こる可能性のあるトラブルについて、記載を行いましたが、こういった特殊な地形の不動産は袋地だけではありません。
やはり、袋地を取り囲んでいる囲繞地を売却する際にも、様々な面でトラブルが起こってしまう可能性があります。
そのため、次は、囲繞地を売却する際に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
囲繞地を売却する際のトラブル
囲繞地は、袋地とは違い、他の方の土地を通らなくても、道路に出ることができます。
そのため、袋地の時のように、他の方の土地を通行することによるトラブルが起こってしまうことは、ほぼありません。
やはり、囲繞地を売却する際には、囲繞地特有のトラブルに対して、意識をしておくことが必要です。
その中でも、特に意識をしておきたいのは、袋地所有者の「囲繞地通行権」です。
お持ちの囲繞地を、袋地の居住者が通路としている場合、将来的にもその通行権が消えることはありません。
ですから、例え土地所有者が変わったとしても、自由にこの通路を廃止することはできません。
万が一、この事実を伝えないまま売買が成立してしまった場合、買主の生活に悪影響が出てしまう可能性があります。
そうなると、悪いのは、これらの説明を怠った売主です。
そのため、買主から、その責任を追及されてしまう可能性があります。
こういったトラブルを防止するには、やはり囲繞通行権の存在を明らかにした上で、取引を行うことが大切です。
もちろん、その際には、囲繞地の通行に関しての償金なども、買主に伝えておくことが必要です。
これらの情報を伝えた上で取引を行っていれば、後に買主が困惑してしまうような状況になってしまうことはありません。
以上が、囲繞地を売却する際に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法になります。
これで、特殊な地形の不動産を売却する際に起こりやすい主なトラブルと、その解決方法の説明は終わりです。
なお、土地売買時のトラブルは、こういった袋地や囲繞地を売却する時だけに起こるものではありません。
やはり、「借地権」が付いた土地などを譲渡する際にも、様々なトラブルが起こってしまう可能性があります。
そのため、こういった不動産を売却する可能性のある方は、各所のトラブルについて十分に注意をしておくことが重要です。
そこで、次の項目では、借地権が設定されている不動産を売却する際に起こりやすい主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
借地権を譲渡する場合のトラブル
土地の権利には、様々なものがあり、中には、土地に借地権が付いているケースもあります。
借地権は、主に「地上権」と「賃借権」の二種類に分かれており、それぞれでその内容が異なっております。
地上権は、その土地に対して、借地人が、所有者と同等の権利を持っているのが特徴です。
そのため、自由に譲渡・転貸をすることができます。
それに対して、賃借権は、借地人にそれ程大きな権利がないのが特徴です。
そのため、賃借権の譲渡・転貸を行うためには、地主から譲渡の承諾を得る必要があります。
地主から、譲渡の承諾を得ることができない場合、借地人が勝手に賃借権を譲渡することはできません。
ですから、賃借権の譲渡を行う際には、通常の取引よりも、ややこしい手続きが必要となってしまうことも少なくありません。
どうしても、地主の方が、賃借権の譲渡を許可してくれない場合、
「借地権を地主に買い取って貰う」
「地主と借地人が共同で土地を売却する」
などといった、特殊な売却方法を選択せざるを得ないこともあります。
そのため、借地権を譲渡する際には、不慮のトラブルに対して警戒をしておくことが重要です。
そこで、この項目では、こういった借地権の譲渡に関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
まずは、賃借権の譲渡時のトラブルと、その解決方法についてです。
賃借権の譲渡に関するトラブル
賃借権は、上記でも説明をした通り、借地人に大きな権利がないのが特徴です。
そのため、地主に承諾を得た上で、譲渡を行う必要があります。
これは、賃借権上の土地に、ご自身で建築をした建物がある場合も同様です。
賃借権上の土地に、借地人が建てた建物があったとしても、土地自体の所有権は地主にあります。
この場合、借地権上の建物だけなら、借地人が自由に譲渡できると思われるかもしれません。
しかし、通常、借地上の建物を譲渡する際には、その借地権も一緒に譲渡をします。
何故なら、借地権がなければ、買主の方は、その借地権上の建物を保有することができないからです。
(なお、借地上の建物を「第三者に賃貸する」場合には、地主の承諾は必要ありません)
そのため、例え借地上に、ご自身で建てた建物があったとしても、その譲渡には地主の承諾が必要となります。
地主の承諾を受けないまま賃借権を売却してしまった場合、借地人は、地主と深刻なトラブルになってしまう可能性があります。
やはり、法的にも賃借権を無断で売却するというのは違法な行為です。
ですから、地主からきちんと承諾を貰った上で、譲渡に関する手続きを進めていく必要があります。
(土地賃借契約の際に、地主から、譲渡に関する承諾を受けている場合は不要です)
地主に賃借権の譲渡承諾を申し出た場合、多くの場合は、承諾料(名義書換料)と呼ばれる料金の支払いを求められます。
承諾料は、借地人と地主の間で話し合った金額となるのですが、相場としては「借地権価格の10%程度」です。
これらの話がまとまりましたら、次は、その他の権利関係について確認を行っていくこととなります。
その際には、借地利用に関する地代などについて、忘れず話をしておくことが大切です。
借地に対する地代などは、通常は、地主が自由に取り決めております。
ですから、ここで、こういった確認をしないまま、賃借権の取引を行ってしまうと、稀ではありますが、
借地権譲渡後に、突然に買主が、地主から地代の値上げや立ち退きを要求されてしまうことがあります。
実際に、事前に賃借権の譲渡承諾を受けたにも関わらず、契約寸前になり、突然に地主から地代の値上げが譲渡の条件だと突き付けられ、そのことでトラブルが起こってしまったという事例もあるようです。
そのため、事前に「譲渡後(地主が変わった後)も現行の賃貸条件と同一であり、立ち退きも要求されない」ということを確認しておくと安心です。
以上が、賃借権の譲渡時のトラブルと、その解決方法になります。
賃借権の譲渡を行う際に、こういった承諾について煩わしいと感じてしまう方は、借地権部分の土地を買い取ってしまうのも一つの手です。
そうすれば、土地自体の借地権が消滅しますので、通常の土地と同じように売却をすることができるようになります。
なお、賃借権の譲渡をする際には、時に、地主から賃借権の譲渡承諾を得ることができない場合もあります。
こういった場合、本来、その賃借権は、譲渡できないのが一般的です。
その際に、どうしても賃借権を譲渡したいという方は、しかるべき手順を踏むことによって、その譲渡を可能にできる場合があります。
そのため、次は、賃借権の譲渡承諾を地主から貰えない場合のトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
賃借権の承諾が貰えないトラブル
賃借権譲渡の際には、地主から、その承諾を得ることができない場合もあります。
この場合、借地人は、賃借権の譲渡を行うことはできません。
更に、上の項目で記載をした通り、その土地上の建物も、自然と売却をすることができないということになります。
土地は、借りたものであるにしても、建物はご自身が所有している財産です。
それを自由に売ることができないというのは、納得がいかないかもしれません。
そのため、そういった場合には、既に購入者さえ決まっていれば、
借地借家法第19条により、賃借権譲渡許可を裁判所に申し立てることができます(借地非訟手続)。
この借地非訟手続により、裁判所から賃借権の譲渡が認められれば、土地所有者である地主の承諾がなくとも、賃借権の譲渡を行えるようになります。
その際には、許可の条件として、借地条件の変更(地代の増額)や、承諾料などの支払いを命じられることもありますのでご注意ください。
なお、借地非訟手続は、必ずしも譲渡許可が下りる手続きという訳ではないため、そのことにも意識をしておくことが必要です。
やはり、裁判所などが、賃借権の譲渡に関して、不適切だと判断した場合などには、その申し出が否認されてしまうこともあります。
そのため、期日までに、これらの手続きを終えられなかった場合に備えて、適切な対策を取っておくことが大切です。
例えば、売買契約書に、
「売買契約締結(○月○日)までに、地主の借地権承諾書(賃借権譲渡許可)が得られない場合には、契約を白紙に戻す(受領した手付金を即時無利息返還し、違約金は発生しない)」
といった旨の記載を添えておくと、万が一、借地非訟手続によって賃借権の譲渡許可が下りなかったとしても、その取引を無償で白紙に戻すことができるようになります。
やはり、こういった特約は、精神的な負担を軽減する効果もありますので、契約の際には、忘れず記載を行っておくことが重要です。
以上が、賃借権の譲渡承諾を地主から貰えない場合のトラブルと、その解決方法になります。
なお、借地権には、賃借権以外にも地上権という権利があります。
地上権は、借地人にも大きな権利があるのが特徴です。
ですから、地上権の譲渡に関して、何か問題が起こってしまうことはなさそうに思えるかもしれませんが、実は、そうではありません。
地上権を譲渡する際にも、やはりある程度は、トラブルに対して意識をしておく必要があります。
そのため、次は、この地上権の譲渡に関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
地上権の譲渡に関するトラブル
地上権は、その譲渡・転貸について、地主の許可を必要としない強力な権利です。
地上権である土地は、地主に地代を支払っていること以外は、ほぼ所有権を持っているのと同等に使用をすることができます。
更に、万が一、地主が変わったとしても、その権利が変わることはなく、継続されるのが一般的です。
そのため、地上権を譲渡する際には、賃借権の譲渡に比べて、トラブルが起こりにくいのが特徴です。
地上権の譲渡時に考えられるトラブルとしては、契約期間の更新を拒否されてしまった場合などが挙げられます。
地上権は、契約期間が終わっても、改めてその期間を更新することによって、各種権利を持続させることができます。
ただし、これは、地主がその土地を貸すにあたって、何の害も生じない場合に限っての話です。
万が一、地主のほうに正当な事由が存在する場合、地主側はその更新を拒否することができるようになります。
ここで問題となるのが、地上権の譲渡を行った後に、突然に地主が地上権の期間更新を拒否してくるような事態が起こってしまった場合です。
こうなると、当然に買主の方は、せっかく購入した土地を失ってしまうことになります。
この場合、買主と地主が話し合いなどで問題を解決できれば良いのですが、実際には、その交渉が決裂してしまうことも珍しくありません。
やはり、地主からしても都合があるため、そう簡単に相手に折れる訳にもいきません。
そのため、そのまま話がもつれ、深刻なトラブルとなってしまうこともあります。
こうなると、売主は、買主からその責任を追及され、損害賠償の支払いや、契約の解除などを求められてしまう可能性があります。
やはり、こういったトラブルを防止するためには、地上権であっても、地主と意思の疎通を怠らないことが大切です。
そうして、地主と話し合った事項を隠さず買主に伝えておけば、買主もそれを同意した上で不動産を購入することができます。
以上が、地上権の譲渡に関するトラブルと、その解決方法になります。
なお、今までは、借地人が、その借地を譲渡する際に起こり得るトラブルについて記載を行ってきました。
しかし、時には、地主が、その土地を売却したいと考えることもあります。
やはり、そういった際にも、借地権の譲渡と同様に、様々なトラブルが起こってしまう可能性があります。
そのため、事前に起こり得るトラブルを把握し、その対策をしておくことが大切です。
そこで、次は、地主が土地(底地)を売却する際に起こりやすいトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
底地の譲渡に関するトラブル
借地を譲渡する際には、「借地」と「底地」という二種類の呼び方で、取引が行われることがあります。
「借地」とは、建物所有を目的として、地主より借りている宅地のことです。
一方、「底地」とは、建物所有を目的として、他の方に貸している宅地のことです。
つまり、借地とは、借地人から見た土地の呼び名で、底地とは、地主から見た土地の呼び名ということになります。
底地は、借地権とは違い、借地人の承諾を受けることなく自由に売却をすることができます。
そのため、借地権を譲渡する時のように、各種手続きに手間が掛かってしまうことはあまりありません。
ただし、売却に手間が掛からないからといって、売買時にトラブルが起こらなくなるという訳ではありません。
やはり、底地はその特殊性から買い手が見つかりにくく、土地自体が安くなってしまいがちです。
そのため、場合によっては、借地人に立ち退きをお願いし、通常の土地とした上で取引を行うなどの対処を行わなくてはいけないこともあります。
とはいえ、突然に借地から立ち退きをして欲しいと言われても、借地人側からすると、その対応が難しいことも少なくありません。
ですから、地主は、借地人に立ち退きを承諾して貰うために、立退料を支払うなどの対策を取る必要が出てきます。
これで話がまとまれば、借地人は、その借地から立ち退きを行います。
一方、話がまとまらなければ、それ相応の話し合いが必要となり、お互いの合意のもとに条件を決めていかなくてはいけません。
その際には、後のトラブルを防ぐためにも、細かい部分まで確認を取り、できれば書面などにその内容を映しておくのが理想です。
なお、下記のような理由がある場合には、法的に借地人に立ち退きを申請することができます。
【借地人に立ち退きをして貰える正当事由の例】
- 土地を返して貰わなくては地主の住む場所が無い場合
- 借地人が借地に対して違法行為を行った場合
- 建物が朽廃した場合
上記のような理由がなく、借地人の方がその土地から立ち退く気がない場合には、それ相応の対処を考えていくことになります。
【底地を売却する主な方法】
- 底地を借地人に買い取って貰う
- 底地を売却する際には、借地人の方に、底地を買い取って貰うという手段を取ることもできます。
- この場合、借地人の方に対して、無理に立ち退きなどを提示することなく売却を行えるため、それに関連したトラブルを回避しやすくなります。
- なお、この方法の問題点は、借地人が底地を買い取ることを承諾しなかった場合、底地を売却することができなくなってしまうという点です。
- やはり、借地人からすれば、土地価格に比べて地代が低額であり、固定資産税や都市計画税などの負担がない借地の状態のまま、土地を使用したいと考える場合も少なくありません。
- そのため、底地を借地人の方に買い取って貰いたい場合には、「借地権上に建物がある場合には、売却する際にその評価が大幅に下がってしまう」、「底地権を買い取った上で、土地所有者として建物を売ったほうが、価格も高騰しやすい」などといった事実を伝えた上で、話を進めていくことが大切です。
- 更に、「借地権の状態のままでは、土地の譲渡を考えた際に、譲渡に関する承諾料が必要になる」、「土地賃借権を更新する際に、これからずっと更新料が掛かる」などの事実を訴えかけることも重要です。
- 地主の方が借地権を買い取った後に売却する
- これは、上記とは逆に、地主の方が借地人の方から借地権を買い取り、底地であった土地を売却する方法です。
- この方法を選択する際には、借地人の方が、その土地から立ち退きを行える状態でなくてはいけません。
- そのため、万が一、借地人の方から、立ち退きを拒否された場合には、取引が困難になってしまいますので、そのことを想定した上で、売却プランを立てておくことが大切です。
- なお、本来、借地人の立場では、借地権を第三者に譲渡する際には、地主の方へ「譲渡承諾料」などの支払いが必要となります。
- 一方、借地人の方が地主の方へ借地権を譲渡するとなると、基本的に譲渡承諾料は発生しません。
- そのため、そういった事実を伝えた上で、話を勧めれば、借地人の方に、借地権の譲渡を検討して貰いやすくなります。
- 買取業者に買い取って貰う
- 底地の売却を考えた際には、底地の買取を請け負っている業者に、売却をするのも1つの手です。
- この場合、底地の買取業者に、土地の買取依頼をすることになります。
- この方法で底地を売却した場合、簡単に売却ができるようになる代わりに、価格が思うように高騰しないというデメリットがあります。
- そのため、よく業者の話を聞いた上で、取引を行うことが大切です。
- 購入希望者を探し売却する
- 万が一、お持ちの底地を買い取りたいという方がいらっしゃる場合には、そういった方に底地を売却することもできます。
- ただし、底地を買いたいと感じる方もほぼいないといっても過言ではありません。
- そのため、購入希望者を探して売却するというのは、選択肢として現実的ではないのが実情です。
- 借地人の方と一緒に土地と建物を一括して売却する
- どうしても話がまとまらない場合には、地主の方と借地人の方が協力をし、お互いの土地を一括で売却してしまうという方法を取ることもできます。
- この方法を選択する場合、売却後に金銭的なトラブルが起こらぬよう、事前にお互いの取り分を決め、書面などに記載をしておくと安心です。
これらの中から、効果的な手順を検討し実行することで、底地を上手く売却しやすくなります。
やはり、底地の売買を成功させるためには、借地人と良好な関係を築いておくことが重要です。
そのためにも、借地人との関係性を考慮し、冷静に話し合いをしながら、適切な売却方法を選んでいくことが大切です。
以上が、地主が土地(底地)を売却する際に起こりやすいトラブルと、その解決方法になります。
なお、底地や借地を売却する際には、通常の不動産と同様に、仲介会社に売買の仲介を依頼することも可能です。
仲介会社に依頼をすると、第三者が間に入った状態で、話し合いをすることができるため、地主と借地人との間で話がまとまりやすくなります。
その一方で、間違った仲介先に依頼をしてしまうと、反対にトラブルを招いてしまうこともるため、その点に関しては十分に注意が必要です。
そのため、次は、借地や底地の売買仲介を依頼する際の注意点についてご説明致します。
仲介会社が関係するトラブル
借地権の取引では、その特殊性から、トラブルが起こりやすくなってしまうのが難点です。
そのため、個人で借地権を譲渡しようとした場合、様々な問題に見舞われてしまう可能性があります。
そういった際に大きな力となってくださるのが、不動産の仲介会社です。
ただし、これは、あくまで「借地権の売買に詳しい担当者」がその仲介会社にいらっしゃるということが前提です。
仲介会社の中には、「借地権」に関する売買を不得意としている所も存在します。
そういった会社に仲介を依頼してしまうと、反対に、借地権の売買に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
やはり、借地権売買の経験が浅い会社では、地主の方と借地人の方に対して、的確な対応ができない場合も少なくありません。
お互いの意見を事務的に相手に伝えるだけで、適当に取引を行おうとする会社も存在します。
酷い会社になると、地主の方から借地権の譲渡許諾を得るために、借地人の方に、地代の支払いを拒否するよう促すこともあります。
これでは、地主の方と借地人の方の関係が悪化するだけではなく、最悪は借地契約の解除を受けてしまう可能性も否めません。
やはり、借地権の売買を行う際には、双方の感情や意見をきちんと調整してくださる仲介会社に依頼をすることが必要です。
その上で、慎重に交渉や商談を進めていくことができれば、自然とトラブルも起こりにくくなります。
そのため、借地権の売買を仲介会社に依頼する際には、その会社の過去の実績を調べ、借地権の取引が豊富であるかを確認してから依頼をするようにしてください。
以上が、借地や底地の売買仲介を依頼する際の注意点になります。
これで、借地権の譲渡に関するトラブルと、その解決方法の説明は終わりです。
なお、不動産を売却する際には、時には、本人の意思に関係なく売却が必要になってしまうこともあります。
例えば、金銭的な問題で、住宅ローンの返済が行えなくなってしまった場合などがその例です。
そういった際には、任意売却や競売によって、強制的に不動産の売却が行われてしまうのが一般的です。
この競売や任意売却を行う際には、通常の売買とは異なったトラブルについて対策をしておく必要があります。
そこで、次の項目では、不動産の任意売却・競売の際に起こりやすいトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
任意売却・競売に関するトラブル
住宅ローンの返済が困難になってしまった際に、強制的に行われるのが競売や任意売却です。
これらの手続きは、通常の売買と異なり、様々な制約が設けられているのが一般的です。
そのため、任意売却や競売を行う際には、これら制約について意識をしておく必要があります。
やはり、こういった知識が曖昧だと、様々な面でトラブルが起こりやすくなってしまいます。
ですから、競売や任意売却について正しい知識を持ちし、事前にトラブル対策しておくことが大切です。
そこで、この項目では、任意売却や競売を行う際に、起こりやすい主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
まずは、不動産の任意売却を行う際に起こりやすいトラブルと、その解決方法についてです。
任意売却を行う際のトラブル
不動産を任意売却すると、市場価格に近い価格で売却を行えるのが一般的です。
更に、その事実が近隣に知られることなく、引越しもある程度売主の方の希望を通すことができます。
そのため、ローンの返済に難を抱えた際には、この任意売却によって不動産を売却することも珍しくありません。
しかし、近頃は任意売却のメリットばかりが強調され、デメリットの存在が把握しにくくなっているのも事実です。
これでは、後に様々なトラブルとなってしまいかねません。
ですから、任意売却について正しい知識を持った上で、売却を行っていくことが大切です。
まずは、下記をご覧ください。
- 任意売却を行うと、借入先などから高額な引越し代を貰える。
- ブラックリストには載らない。
- 任意売却なら、100%不動産が売れる。
- 任意売却をしたら、残ったローンが無くなる。
- 任意売却をする際には、申請費やコンサルティング料が掛かる。
- 任意売却で不動産が売れなかった場合、掛かった広告宣伝費や交通費などを、仲介業者から請求される。
- 任意売却による媒介契約を行うことで、仲介先から金銭が受け取れる。
これらは全て、任意売却に対する誤解です。
上記「1」の事例は、完璧に誤解という訳ではないのですが、実際には、借入先が必ず引越代を出さなければならないという規定はありません。
数年前までは、引越し費用や残置物処理費用などの名目で、借入先から100万円~150万円程度の金銭を出して貰うことが可能でした。
現在は、2006年5月以降の住宅金融機構(旧住宅金融公庫)の方針改革により、極力、借入先が売主の引越し費用を負担しないことになっております。
これは、他の金融機関でも同じです。
そのため、任意売却を行う際には、必ず引越し費用を貰える訳ではなく、貰えたとしても数十万円程度の額に留まるのが普通です。
次に、上記「2」のように、任意売却だと、ブラックリストに載らないとお考えの方も多くいらっしゃるようです。
ブラックリストに載るというは、「個人信用情報」と呼ばれる、ローンやクレジットの利用履歴に、滞納などの「事故情報」が登録されてしまった状態のことを指します。
ですから、不動産の任意売却を行う際には、住宅ローンを滞納している状態ですので、一応ブラックリストには載ってしまうのが普通です。
任意売却によってブラックリストに載るのではなく、ブラックリストに載るからこそ任意売却が行えるというのが正しい解釈です。
なお、上記「3」と「4」のように、任意売却をすると必ず不動産が売れる上に、ローン残債が無くなる(返済しなくても良い)といった話を聞くこともあります。
これも、実際には間違った解釈となります。
やはり、例え任意売却を行ったとしても、制限である6ヶ月間を過ぎまでに、物件が確実に売れるという確証はありません。
更に、ローン残債が任意売却によって得た売却益よりも少ない場合以外には、ローン残債が無くなることもありません。
また、任意売却を行う際には、必ず仲介会社が仲介に入らなくてはいけません。
その際に、上記の「5」、「6」、「7」のように、不正な料金を請求してくる、又は金銭が貰えるといった主張を行う業者も存在します。
任意売却は、不動産取引の一種であり、仲介会社は通常の売買と同様、仲介手数料しか受け取れないのが一般的です。
もちろん、媒介契約によって金銭が貰えるといったことも、本来はあり得ません。
そのため、こういった主張を行い、契約を迫ってくる業者は、その多くが悪徳業者である可能性があります。
やはり、こういった悪徳業者に依頼をしないようにするためには、仲介を依頼する不動産会社を見極めることが大切です。
ですから、上記のような話を持ち掛けてくる不動産会社や、下記のような営業を行ってくる不動産会社には、基本的に依頼を控えておくのが無難です。
- 任意売却について、明らかに素人であるスタッフが対応している。
- 相談をしても答えがないのに、査定のことだけは返答がある。
- 仲介会社が、近隣などに任意売却の情報を漏らしている。
- 市民税や固定資産税など、税金の差押の解除を把握していない。
- 非常に高額な価格設定で、任意売却を行おうとする。
- 契約に反して、進捗の報告が一切されない。
- 専門知識がない状態にも関わらず、専門家の方(弁護士など)と提携をしていない。
以上が、不動産の任意売却を行う際に起こりやすいトラブルと、その解決方法になります。
任意売却を行う際には、正しい知識を身に付け、トラブルの対策をしておくようにしてください。
なお、任意売却に失敗した、あるいは最初から選択するつもりがないという方は、自然と競売を選択することになります。
競売は、任意売却と比べてデメリットが多いのが難点です。
そのため、なるべくトラブルに見舞われないよう、各所で意識をしておくことが重要です。
そこで、次は、不動産の競売に関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
競売を行う際のトラブル
競売で不動産を売却する場合、その相場は通常よりも、かなり低くなってしまいます。
更に、物件が競売に掛かったことが近隣に知られてしまい、住居の立ち退きも融通が利かないのが一般的です。
これらのこともあり、競売を選択した際に、相重なってトラブルが起きてしまうと、売主の方は大きな負担を抱える羽目になってしまいます。
そのため、事前に規定を把握し、違反をしないように対処をしておくことが大切です。
その際に、まず、意識をしておきたいのは、競売が終わった後の占有者の立ち退きです。
やはり、競売のトラブルの中で多いのは、この占有者の立ち退きの問題になります。
競売に出され、落札がされた物件は、もう以前の占有者のものではありません。
そのため、落札が行われた物件に、元の持ち主などが居座っていると、新たな購入者が困ってしまいます。
こういった問題が起こってしまった場合、購入者と居座っている者は、立ち退きに関する交渉を行っていかなくてはいけません。
その際に話がまとまれば、それ程大きなトラブルになってしまうことはありませんが、万が一、決裂した場合には、裁判問題になるなど、深刻なトラブルに発展してしまう危険性があります。
とはいえ、この場合、本来、前の住宅所有者などが、落札された物件に居座るのは違法です(落札者からの了承があれば、違法ではありません)。
したがって、裁判などになったとしても、住宅の前所有者に有利な判決となることは殆どありません。
ですから、住宅の前所有者は、不動産が競売に出された時点で、その物件から立ち退く準備をしておく必要があります。
なお、その際には、立ち退きと一緒に、各方面の滞納金と必要物の持ち出しなどに関しても意識をしておくことが重要です。
万が一、競売に出された物件に関する管理費や必要経費などを滞納していらっしゃる場合や、必要物をそのまま置いて行ってしまった場合、新たな所有者となった方が、これらの滞納金の支払い、不要物を処分しなくてはいけなくなってしまいます。
必要物を競売物件に置いたままにしてしまった場合、引渡命令により、一定期間後に勝手に処分されてしまう可能性もあります。
ですから、不動産が競売に出された際には、物件内の必要な荷物をまとめ、各種滞納金の支払いを行っておくことが大切です。
なお、競売を行う際には、こういった競売落札者の方との間に起こるトラブル以外にも、競売に関する悪徳商法についても、注意をしておくことが必要です。
やはり、こういった悪徳業者は、自宅を失いたくない、少しでもお金が欲しい、といった売主の方の弱みに付け込み、詐欺を行ってきます。
例えば、
「競売に対する不服申し立てを行って差し上げますので、自分たちに手数料を支払って欲しい」
といったようなことを提示してくる、「事件屋」や「抗告屋」、
「手元に数百万円残して差し上げます」
「売却後も住んでいられるようにして差し上げます」
「専任媒介を結んだら数万円差し上げます」
「売却基準価格の~%を現金にてお渡しします」
などといったような甘い話を持ち掛け、契約を迫ってくる悪徳商法など、その手法は様々です。
これらの業者は、競売物件の所有者の方から、金銭を受け取ると音信不通となってしまうことも珍しくありません。
そのため、魅力的に思える話を持ち寄られた場合には、その話が真実であるかを確かめてから、金銭の取引を行うようにしてください。
以上が、不動産の競売に関するトラブルと、その解決方法になります。
これで、任意売却や競売を行う際に、起こりやすい主なトラブルと、その解決方法の説明は終わりです。
不動産の購入希望者が見つかりましたら、次は、売買契約を締結していきます。
やはり、売買契約を結ぶ場面は、不動産売買の中でも、非常に重要な部分です。
そのため、トラブルなども起こりやすく、売主の適切な対応が求められます。
そこで、次の項目では、不動産の売買契約を結ぶ際に起こりやすいトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
売買契約締結時のトラブル
不動産の販売活動を終え、購入希望者の方が見つかった場合、とうとう売買契約を結んでいきます。
この売買契約を締結する段階で、何かトラブルが起きてしまうと、せっかくの契約が白紙に戻ってしまう危険もあります。
そのため、トラブルなどが起らぬよう、慎重に契約を行っていくことが大切です。
そこで、この項目では、こういった不動産の売買契約締結時に起こりやすいトラブルと、その解決方法について記載を行っていきます。
まずは、不動産の売買契約締結の直前に、他の好条件の買主が現れた場合の注意点についてです。
他の買い手が現れた際のトラブル
不動産を売却する際には、購入希望者の方が一人であるとは限りません。
そのため、なるべく高価格で売買を行える買主の方を見つけるためには、不動産の売却を焦らないことが重要です。
やはり、不動産の売却を焦ってしまうと、もっと好条件で不動産を買い取ってくださる買主の方がいるにも関わらず、その存在に気が付かず、他の方と売買契約を締結してしまうといった事態に陥ってしまいかねません。
また、契約寸前までいった購入希望者の方がいる段階で、他の好条件の買主の方が現れてしまうといったような状況になってしまうこともあります。
なお、不動産取引の慣習では、当事者間で「買い付け証明書」や「売り渡し承諾書」を取り交わしたとしても、それで契約を締結したことにはならないのが一般的です。
そのため、この場合、契約寸前まで話の進んだ買主の方に、
「契約の取り消し」や
「売買価格の再交渉」
「その他条件の再交渉」
などを行っても法的には問題ないということになります。
ただし、このようなことは、現買主の方からすれば、不快この上ない話です。
そのため、契約寸前になって契約の白紙や、条件の変更を申し出たい場合には、誠意をもって謝罪をするなどの誠実な態度を取ることが大切です。
また、できる限りはこういった事態にならないように、事前にしっかりと交渉を行っておくことも重要です。
やはり、契約内容について確認をし、他の購入希望者の方が、これ以上の条件で購入を希望していないかを確認してから話を進めておけば、こういったトラブルが起こってしまうことは無くなります。
以上が、不動産の売買契約締結の直前に、他の好条件の買主が現れた場合の注意点になります。
これで、不動産の売買契約締結時に起こりやすいトラブルと、その解決方法の説明は終わりです。
不動産の売買契約を締結すれば、後は、順々に必要な手続きを終えていくだけです。
その際には、最終段階に向けて、より一層、各種トラブルを意識した対応を取っていくことが大切です。
やはり、不動産の売買契約を締結したことによる安堵感から、気が緩み、本来有りえないミスをしてしまうこともあります。
そのため、次の項目では、不動産の売買契約を締結した後に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
売買契約締結後の4つの注意点
不動産の売買契約を終えた後は、実際に不動産の取引を行う日を待つだけです。
売主は、それまでに、様々な不動産の引き渡し準備を進めておく必要があります。
新たな住居への引越し、引渡が必要な物の準備など、取引に向けて順番に準備をしていくことが大切です。
これらの準備を怠ってしまうと、相手と深刻なトラブルになってしまう可能性があります。
やはり、せっかく売買契約を締結したにも関わらず、トラブルによって契約が決裂してしまっては、何の意味もありません。
そのため、契約の締結後も、こういったトラブルに対してして警戒をしておくことが重要です。
そこで、この項目では、不動産の売買契約を締結した後に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
まずは、売買不動産が、再建築不可や都市計画法が施行されている地区のものだった場合の主なトラブルと、その解決方法についてです。
再建築不可・都市計画法のトラブル
売却予定の不動産に、
「再建築不可」
「都市計画法」
などの制限がある場合、そのことを買主の方に伝えておかなくてはいけません。
やはり、こういった法令が定められている地区の不動産は、その使用に関して、様々な制限が設けられているのが一般的です。
ですから、買主の方がその事実を知らない状態で、売買契約を締結してしまった場合、最悪は契約解除・違約金の支払いを求められてしまうこともあります。
これは、例え売主がその事実を知らないまま契約をしていたとしても同様です。
そのため、売主が、こういった事実を契約後に知ってしまった場合には、早急に買主の方にその事実を打ち明けることが重要です。
売主からすると、こういった不利な事実を相手に伝えたくはないかもしれません。
しかし、そのまま取引が行われてしまったほうがトラブルは大きくなります。
ですから、こういった事実を隠すことなく、正直に買主に話をした上で、その対処を話し合っていくことが大切です。
以上が、売買不動産が、再建築不可や都市計画法が施行されている地区のものだった場合の主なトラブルと、その解決方法になります。
もちろん、これら以外にも、新たな制約などが判明した場合には、早急にその事実を買主に打ち明けることが大切です。
なお、不動産の売買契約締結時には、こういった制約以外にも、様々な取り決めについても確認をしておく必要があります。
その際には、危険負担に関する取り決めなども、十分に確認をしておくことが重要です。
やはり、危険負担について軽く考えていると、後に大きなトラブルが起こってしまう可能性があります。
そのため、次は、この危険負担に関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
危険負担に関するトラブル
不動産取引では、契約から実際の引き渡しまで数ケ月掛かってしまうことも珍しくありません。
そのため、極稀な事例ですが、引き渡し前に天災や事故などによって、取引予定の不動産を損失してしまうこともあります。
この場合、後に不動産の取引を行うことが困難となってしまうのが一般的です。
そういった際に必要となるのが、「危険負担」という決まりになります。
本来、民法による危険負担は、売買対象の物品が無くなっても、買主が売買代金の全てを支払わなくてはいけません。
ただし、この取り決めでは、不動産売買時の買主の方への負担が甚大なものとなってしまいます。
そのため、不動産売買時には、「危険負担を売主側とする」とするよう決まりを変更するのが一般的です。
これにより、
「売買契約締結後に、売主が責を負わない事由(天災や事故、犯罪に巻き込まれたなど)によって、不動産の引渡義務が履行できなくなった場合、その契約を解除できる(又は売主負担で状態を元に戻す)」
といった内容で契約を行うことになります。
ですから、売主の方は、この危険負担について、正しい解釈を持っておかなくては、いざという時に適切な対応を取ることができなくなってしまいます。
これら危険負担に関する取り決めは、売買契約書に記載がされている場合が殆どです。
なお、その際には、「危険負担」といった名目ではなく、「引渡し前の滅失」などと言い換えられている場合もあります。
そのため、例え危険負担といった言葉が契約書に記載されていなくても、他の言葉などで定めがないかを確認しておくことが重要です。
以上が、危険負担に関するトラブルと、その解決方法になります。
なお、危険負担は、あくまで、売主側に責任がない状況下で不動産が損失した場合の負担です。
では、もしも売主の方に責任がある状況で不動産を損失又は消失してしまった場合には、どういった対応が求められるのでしょうか?
次は、こういった売主の方の責任で不動産を消失してしまった際のトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
売主の過失による消失トラブル
危険負担の範囲となるのは、売主に責任がない状況で不動産を損失した場合です。
万が一、売主が原因で不動産を損失又は消失してしまった場合、これは危険負担の範囲とはなりません。
売主は、買主に対し、不動産の引き渡しを完了するまで、売買物件の管理をする義務を負っております。
ですから、売買契約時の期日までに、通常の引き渡しが行われなかった場合、これによって生じた損害の賠償が必要になるのが一般的です。
例えば、売主の不注意によって火事などが起きてしまい、不動産が損失又は消失してしまったとします。
これは、明らかに売主が起因した事故であるため、危険負担の範囲とはなりません。
そのため、売主負担で建物の完全修理を行うなどの対処が必要となります。
更に、引き渡し時期が遅れることによる損害や、火事という買主の心理的瑕疵の慰謝料・賠償も必要となる可能性があります。
なお、こういった際に、売主・買主双方が契約解除をしたいと申し出た場合には、契約解除をすることでトラブルを解決することができます。
それに対して、どちらか一方にしか契約解除の意思がない場合には、簡単に契約の解除ができないのが実情です。
これは、買主が契約解除を申し出た場合も同様です。
したがって、どうしても契約解除を行いたい場合には、裁判などによって、法的に手続きを行うなどの対処が必要となります。
この場合、売主も買主も、本来必要のない心身ダメージを負ってしまうことになります。
そのため、やはり売主は、こういったトラブルが起こることがないように、売買不動産に関して十分に注意を払って生活することが重要です。
以上が、売主の方の責任で不動産を消失してしまった際のトラブルと、その解決方法になります。
なお、不動産の売買契約の解除が必要となってしまう場面は、上記のような場合に限った話ではありません。
時には、売主・買主の事情により、売買契約の解除が必要となってしまうこともあります。
その際には、売買契約の解除・違約金について、正しい知識をもっておくことが大切です。
やはり、こういった知識がない状態で、各種手続きを行おうとした場合、後に重大な問題が起こってしまう可能性もあります。
そのため、次は、こういった契約解除や違約金に関する情報についてご説明致します。
契約解除と違約金のトラブル
不動産の売買では、多くの場合、高額な金銭の動きがあります。
そのため、一度、売買契約を締結してしまうと、基本的にどちらか一方の都合で、契約を解除することはできないと考えておかなくてはいけません。
売買契約締結後に、諸事情によりその契約を解除したくなった場合には、解除が認められるような正当事由が必要となります。
下記は、不動産の売買契約締結後の契約解除に関して、認められる可能性のある事例をまとめたものです。
【契約締結後の契約解除の種類と違約金】
- 手付解除
- 売主・買主が契約の履行に着手する以前に取り決めた手付解除期日までに限り、売買契約を解除することができます。
- その際には、売主側は、手付金の倍返し、買主側は手付金の放棄を行うのが一般的です。
- 危険負担による解除
- 売主に責任のない事柄(天災など)によって取引不動産が毀損し、修復が不可能である場合には、無条件で契約を解除することができます。
- 契約違反による解除
- 売主又は買主のいずれかが、売買契約時に取り決めた内容に違反した場合、その売買契約を解除することができます。
- 例えば、契約書通りに取引を進めなかった場合などは、この契約違反による契約解除を行えるのが一般的です。
- この場合、不動産売買代金の10%~20%程度の違約金の支払いが必要となります。
- 瑕疵担保責任に基づく解除
- 建物に重大な隠れた欠陥(瑕疵)があった場合や、その瑕疵によって売買契約時の目的が果たせなくなってしまった場合には、買主は無条件で売買契約を解除することができます。
- 特約による解除
- 「ローン特約」など、契約の際に合意した特約の内容に応じて、それぞれ契約の解除を行うことができます。
- 合意による解除
- 売主・買主の双方が合意した場合には、お互いに取り決めた条件で契約を解除することができます。
これらの理由がない限り、基本的に、不動産の売買契約を取り止めることはできません。
しかし、時には売主・買主に落ち度がないにも関わらず、上記のような契約解除・違約金トラブルが起こってしまうこともあります。
例えば、仲介会社などが、双方の意向を全く相互に伝えていなかったことにより、お互いの意思が食い違い、問題が発生してしまった場合などが、その例です。
こうなると、仲介会社に責任を丸投げすることもできないため、結局は売主・買主の間で話し合いを行うことになります。
とはいえ、この場合、売主も買主も、事前に契約書に目を通し、
契約内容に不満があれば、契約の前に、そのことを確認し修正・提示することで解決ができました。
ですから、こういったトラブルが起こった際には、契約書に記載がされた内容通りに、取引を行うことになる場合が殆どです。
ただし、きちんと双方の意向などを伝えていなかった不動産会社にも、非がないとは言い切れません。
そのため、売主・買主が、不動産会社にそのことを相談することで、
「売主・買主に伝え損じたために、負うこととなった各種負担金などを、不動産会社が負担する」
「売買の際に生じた仲介手数料の支払いが免除になる」
などといった対処を取って貰える場合もありますので、早めに相談をしてみることが重要です。
以上が、契約解除や違約金に関する情報の説明になります。
なお、売買契約締結後には、不動産の引き渡しと代金の決算が行われます。
この作業が終われば、晴れて不動産取引に関する全ての手続きを終えることができます。
やはり、この段階で余りにも気を緩めてしまうと、思いもよらないミスが起こってしまうこともあります。
ですから、最後まで、気を抜くことなく、トラブルに対して警戒をしておくことが重要です。
次の項目では、こういった不動産の引き渡し・決算時などに起こる可能性のあるトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
決算時などに起こるトラブル
やはり、不動産の引き渡しや決算の際に、トラブルが起こってしまうことは避けたいものです。
これらのトラブルは、深刻になりやすく、最悪は、契約解除といった重大な問題になってしまうこともあります。
そのため、事前にトラブルのもとを作らないように、意識をしておくことが必要です。
そこで、この項目では、決算時に起こる可能性のある主なトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
まずは、不動産の引き渡し当日に、必要物を忘れてしまった場合に起こり得る主なトラブルと、その解決方法についてです。
必要な物を忘れた際のトラブル
取引の決算日には、買主の方は不動産の購入代金を支払い、売主の方は不動産の引き渡しを行います。
その際には、所有権移転登記を一緒に行うのが一般的です。
これらの手続きには、権利証、印鑑証明証、資格証明書(法人の場合)、実印などが必要になる可能性があります。
なお、詳しい必要物につきましては、お手数をお掛け致しますが、「所有している不動産を売却する際に知っておきたい基礎知識」の記事にあります「引き渡しまでに準備が必要なもの」の項目をご覧ください。
これら必要物を決算当日に忘れてしまった場合、主に下記のような対処を取ることになります。
- 早急に忘れた物を取りに帰り、取引を予定通りに終わらせる。
- 司法書士に本人確認情報を作成して貰い、登記をする(権利証を忘れた場合)。
- 取引を後日に延期して貰う。
上記「1」の方法では、予定通り取引を終えることができるため、大きなトラブルにはなってしまうことは、殆どありません。
更に、「2」の方法を取った場合も、司法書士へ追加の手数料が掛かってしまうこと以外は、通常通り、取引を終えることができます。
問題なのは、上記「3」の手段を取らざるを得ない状況です。
上記「3」の方法を取る場合、売主個人の事情で、取引日時を変えてしまうことになります。
これは、買主の方に対して、契約に反する取引を行ったことに他なりません。
したがって、買主の方へ損害賠償の支払いが必要となってしまう可能性があります。
更に、稀なことではありますが、契約の解除を申し立てられてしまうことも、可能性としてゼロではありません。
ですから、売主の方は、決算当日までに、これらの必要物を準備しておくことが大切です。
必要物について分からないことがある際には、早急に、仲介を依頼した不動産会社などに確認をしておくようにしてください。
以上が、不動産の引き渡し当日に、必要物を忘れてしまった場合に起こり得る主なトラブルと、その解決方法になります。
なお、不動産売買時の決算・引き渡しにおいてのトラブルは、代金の振り込み時にも起こってしまう可能性があります。
そのため、売主も買主も、再度、代金の振り込みについて、確認を行っておくことが重要です。
次は、こういった不動産の売買代金の振り込みに関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
売買代金の振り込みトラブル
不動産を引き渡すと、当然に買主の方からその売買代金を受け取ることができます。
この売買代金は、主に銀行振り込みなどによって支払われるのが一般的です。
万が一、不動産に住宅ローンが残っており、抵当権が設定されている場合には、この代金をその残債に充てることとなります。
その際に、もしも買主の方が振込先や振り込み金額を間違えてしまうと、売主の方はローン残債の支払いができなくなってしまいます。
ローンを完済できないということは、抵当権を解除することができないということです。
そうなると、自然と不動産決算日に、抵当権の解除ができないという問題が出てきてしまいます。
この場合、売主の方が正確な振込先を提示していたにも関わらず、買主の方が振込金額や振込先を間違えたのなら非は相手にあります。
一方、売主の方が誤った振込先の情報を提示していた場合には、非は売主側にあると言えます。
そのため、この場合、売主の方は、買主の方に対して、相応の償いが必要となる可能性があります。
もちろん、これは抵当権が設定されていない不動産においても同様です。
これらのトラブルは、売主の方が振込先の情報をきちんと確認しておけば、簡単に回避をすることができます。
ですから、売主の方は、振込先の情報に関して、何度も確認をしてから相手に提示することが大切です。
以上が、不動産の売買代金の振り込みに関するトラブルと、その解決方法になります。
やはり、不動産の決算時には、こういったミスがないように、十分に意識をしておくことが必要です。
なお、不動産取引における決算トラブルは、こういった振り込みに関する間違い以外にも、いくつか存在しております。
その中でも、特に深刻なのが、不動産を引き渡したにも関わらず、代金の支払いが行われないといったトラブルです。
せっかく不動産が売れたとしても、最後の最後でその売買代金が手に入らなかったとなると、何の意味もありません。
そのため、最後は、この不動産の売買代金の未払いに関するトラブルと、その解決方法についてご説明致します。
売買代金の未払いトラブル
不動産を売買する際には、代金の受け取りと所有権移転登記が同時履行の関係にあります。
そのため、不動産の所有権移転登記を行ったのに、その代金を支払って貰えないといったトラブルはさほど多くはありません。
とはいえ、不動産売買時には、時に特殊な取引を行うケースもあり、全くこういったトラブルが起こり得ないとは言い切れないのが現状です。
何らかの理由で、先に所有権移転登記・不動産の引き渡しを先行し、その後に代金を受け取る取引方法によりトラブルに至ることもあります。
こういったトラブルが起こってしまった際には、まず買主の方に対して、支払いの早期履行を請求し、支払いの意思があるかを確認することが必要です。
そうして、買主側に支払いの意思がない場合には、相応の期間を定めた上で、履行の催告を行っていきます。
それでも買主から代金の支払いがない場合には、売主は契約解除・損害賠償の請求を行うことが可能となります。
なお、契約の解除を行った際には、基本的に当事者間での原状回復義務を負います。
ですから、もしも買主の方から売買代金の一部を受領していれば、それを買主の方に返戻する必要がありますのでご注意ください。
また、どうしても買主の方から売買代金を受取したいという方は、内容証明郵便の作成・送付、公正証書の作成、仮差押え、民事訴訟の提起などの手段によって解決をする必要があります。
これらを行う際に重要となるのが、
「売買契約書」
「契約書以外で当事者間のやり取りを記した書面」
などの証拠です。
万が一、こういった書類を作成していらっしゃらない場合には、口頭の合意があったことを立証することで、それを証拠とすることができる場合もあります。
そのため、売買契約書などがないからといって諦めることはありません。
以上が、不動産の売買代金の未払いに関するトラブルと、その解決方法になります。
これで、不動産売却を行う際に起こり得る主なトラブルと、その解決方法に関する説明は終わりです。
ここまで、様々なトラブル事例を記載してきましたが、これらの多くは、売主の方が適切な対応をすることで回避をすることができます。
そのため、不動産を売る際には、事前にトラブルを把握し、正しい対策を実行するようにしてください。
そうして、万が一、何かしろのトラブルに出会ってしまった際には、そのトラブルを早急に解決できるよう、意識をすることが大切です。