不動産を売却した場合に税金を軽減する3000万円の特別控除
2018/12/21
不動産を売却した際には、「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」を受けられる可能性があります。
この記事では3000万円の特別控除について記載しておりますので、参考にしてください。
目次
居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例について
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」は、多くの方が利用をしているものです。
この特例の適用を受けることで、不動産売却時の税金の負担を軽減できます。
制度の概要
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」は、居住用財産(マイホームなど)を譲渡した場合に、その家屋の所有期間の長短に関係なく譲渡所得から「最高3,000万円」まで控除できるという特例です。
譲渡益が発生してもその金額が「3,000万円」に満たない場合は、その譲渡益の金額が特別控除の限度額になります。
特例を受けるための適用要件
「3,000万円特別控除の特例」の適用を受けるためには、下記の6点の要件を全て満たしている必要があります。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 居住用財産とされる不動産の定義につきましては、お手数をお掛け致しますが、「居住用財産とされる不動産とは」をご覧ください。
- この特例は、次のような家屋には適用されません。
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- この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
- 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋
- また、住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合(更地としてから売却をする場合など)は、次の2つの要件全てに当てはまることが必要です。
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- その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
- 売った年の前年及び前々年にこの特例の適用を受けていないこと(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます)。
- 特例の適用を受けられるのは、3年に一度です。
- 売った年、その前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
- 近年にマイホームに関わる特例を受けた場合には、一度ご確認ください。
- 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
- 他の特例の適用を受けている場合などは、ご注意ください。
- 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
- 東日本大震災の被害に遭われた方は、災害があった日から7年を経過する日の属する12月31日までであればこの特例の適用を受けられる場合があります。
- お手数をお掛け致しますが、詳しくは「【東日本大震災に関する税制上の追加措置について(所得税関係)】」をご覧ください。
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
- 特別な関係につきましては、お手数をお掛け致しますが、「特別の関係がある人とは」をご覧ください。
詳しくは国税庁のホームページの「No.3302 マイホームを売ったときの特例」をご覧ください。
適用を受けるための手続き
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」を受けるためには、確定申告が必要です。
確定申告をする際には、確定申告書の「特例適用条文」の欄に手順に沿って「措法35条」と記載し、他の項目にも必要な情報を記述します。
(お手数をお掛け致しますが、詳しくは「不動産売却の際に確定申告が必要になる状況と各種申請方法」の記事と、その記事にあります「第三表(分離課税用)の書き方」の項目をご覧ください)
確定申告書の作成ができましたら、「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」を添付して所轄の税務署に提出してください。
居住用財産(マイホームなど)の売買契約日の前日においてそのマイホームを売った人の住民票に記載されていた住所とそのマイホームの所在地とが異なる場合には、上記の書類に加えて下記の書類も添付してください。
- 戸籍の附票の写し
- 消除された戸籍の附票の写し
- その他これらに類する書類でその居住用財産(マイホームなど)を売った人がそのマイホームを居住の用に供していたことを明らかにするもの
各不動産を売却した時の計算例
下記の計算例は全てこの特例を適用できるものとして計算しておりますので、参考にしてください。
なお、この特例は「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(10年超所有軽減税率の特例)」と併用をすることができます。
(お手数をお掛け致しますが、10年超所有軽減税率の特例につきましては「不動産売却時の税金計算で適用できる10年超所有軽減税率の特例」の記事をご覧ください)
また、下記の計算例の税額を計算する際に記載をしております「【軽減】」、「【長期】」、「【短期】」につきましては、「軽減税率」、「長期譲渡所得」、「短期譲渡所得」を意味します。
家屋と敷地の所有者が同じ場合の例
家屋と敷地の所有者が同じ場合は、「譲渡所得 = 譲渡価額 – (取得費 + 譲渡費用) – 最高3,000万円」で課税譲渡所得を算出できます。
※取得費は取得価額から減価償却費相当額を差し引いた金額です。
このように、特に難しい計算は必要ありません。
今回は特別控除によって出た譲渡益は「1,000万円」です。
「1,000万円」の譲渡益がある場合は、下記のように計算を行います。
特別控除を差し引いても譲渡益がある場合は、このようにして税額を算出してください。
家屋が共有で敷地が単独の場合の例
家屋が共有で敷地が単独の場合は、家屋の譲渡所得を持分で按分しなくてはいけません。
- 家屋と敷地の譲渡所得を計算します
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【家屋】2,000万円 – (1,000万円 + 200万円) = 800万円
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【敷地】3,000万円 – (2,000万円 + 250万円) = 750万円
- 家屋の譲渡所得を持ち分で按分します
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【Aさん】800万円 × 1/2 = 400万円
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【Bさん】800万円 × 1/2 = 400万円
- 課税譲渡所得を計算します
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【Aさん】400万円 + 750万円 – 1,150万円(譲渡所得分を控除) = 0円
-
【Bさん】400万円 – 400万円(譲渡所得分を控除) = 0円
- 上記の課税譲渡所得から税額(所得税と住民税)を計算します
-
【Aさん】納税義務はありません。
-
【Bさん】納税義務はありません。
家屋と敷地が共有の場合の例
家屋と敷地が共有の場合は、家屋と敷地の譲渡所得を持分で按分しなくてはいけません。
- 不動産の譲渡所得を計算します
- 8,200万円 – (2,500万円 + 300万円) = 5,400万円
- 不動産の譲渡所得を持ち分で按分します
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【Aさん】5,400万円 × 2/3 = 3,600万円
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【Bさん】5,400万円 × 1/3 = 1,800万円
- 課税譲渡所得を計算します
-
【Aさん】3,600万円 – 3,000万円 = 600万円
-
【Bさん】1,800万円 – 1,800万円(譲渡所得分を控除) = 0円
- 上記の課税譲渡所得から税額を計算します
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【Aさん】【軽減】600万円 × 14.21% = 852,600円【長期】600万円 × 20.315% = 1,218,900円【短期】600万円 × 39.63% = 2,377,800円
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【Bさん】納税義務はありません。
家屋と敷地の所有者が別の場合
家屋と敷地の所有者の方が別の場合、敷地の所有者の方はこの特例の適用要件を満たしておりません。
ただし、下記の要件を全て満たしている場合には、家屋の所有者の方が控除した後の残額分を譲渡所得から控除できます。
- 敷地を家屋と同時に売ること。
- 家屋の所有者と敷地の所有者とが親族関係にあり、生計を一にしていること。
- その敷地の所有者は、その家屋の所有者と一緒にその家屋に住んでいること。
下記に敷地のみ所有している方が要件を全て満たしているものとした場合の計算例を記載しておりますので、参考にしてください。
- 家屋と敷地の譲渡所得を計算します
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【家屋】3,000万円 – (900万円 + 100万円) = 2,000万円
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【敷地】7,000万円 – (3,100万円 + 150万円) = 3,750万円
- 課税譲渡所得を計算します
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【Aさん】2,000万円 – 2,000万円(譲渡所得分を控除) = 0円
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【Bさん】3,750万円 – (3,000万円 – 2,000万円(Aさんの控除分)) = 2,750万円
- 上記の課税譲渡所得から税額を計算します
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【Aさん】納税義務はありません。
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【Bさん】【軽減】2,750万円 × 14.21% = 3,907,750円【長期】2,750万円 × 20.315% = 5,586,625円【短期】2,750万円 × 39.63% = 10,898,250円
なお、家屋は単独、敷地は共有の場合も、上記と同様の方法で計算を行います。
非居住用部分があるものを売った場合の例
非居住用部分がある場合は、居住用部分の譲渡益に対してのみ「最高3,000万円」を控除することができます。
- 不動産の譲渡所得を計算します
- 3,010万円 – (1,500万円 + 150万円) = 1,360万円
- 居住用部分と非居住用部分の譲渡所得を計算します
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【居住用部分】1,360万円 × 3/4 = 1,020万円
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【非居住用部分】1,360万円 × 1/4 = 340万円
- 課税譲渡所得を計算します
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【居住用部分】1,020万円 – 1,020万円(譲渡所得分を控除) = 0円
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【非居住用部分】特別控除は適用できません。
- 上記の課税譲渡所得から税額を計算します
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【居住用部分】納税義務はありません。
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【非居住用部分】【軽減】要件上、特例は受けられません。【長期】340万円 × 20.315% = 690,710円【短期】340万円 × 39.63% = 1,347,420円
上記の計算例では簡潔にするために割合によって譲渡所得や税額などの計算を行いました。
面積などから算出する場合は、お手数をお掛け致しますが、「居住用の不動産を売却した際に税金の負担を軽減できる5つの特例」の記事にあります「併用住宅などの取り扱いと面積」の項目をご覧ください。
完全分離型の2世帯住宅を売った場合の例
完全分離型の2世帯住宅の場合は、ご自身の居住用部分の譲渡益に対してのみ「最高3,000万円」を控除することができます。
- 家屋と敷地の譲渡所得を計算します
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【家屋】2,100万円 – (1,300万円 + 200万円) = 600万円
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【敷地】4,200万円 – (1,800万円 + 200万円) = 2,200万円
- 家屋の譲渡所得を持ち分で按分します
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【Aさん】600万円 × 2/5 = 240万円
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【Bさん】600万円 × 3/5 = 360万円
- 完全分離型の2世帯住宅ですので、Aさんの居住用部分と非居住用部分の敷地の譲渡所得を計算します
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【居住用部分】2,200万円 × 2/5 = 880万円
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【非居住用部分】2,200万円 × 3/5 = 1,320万円
- Aさんの居住用部分の譲渡所得を計算します
- 240万円 + 880万円 = 1,120万円
- 課税譲渡所得を計算します
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【Aさん】【居住用部分】1,120万円 – 1,120万円(譲渡所得分を控除) = 0円【非居住用部分】特別控除は適用できません。
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【Bさん】【居住用部分】360万円 – 360万円(譲渡所得分を控除) = 0円【非居住用部分】Bさんに非居住用部分の譲渡所得はありません。
- 上記の課税譲渡所得から税額を計算します
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【Aさんの居住用部分】納税義務はありません。
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【Aさんの非居住用部分】【軽減】要件上、特例は受けられません。【長期】1,320万円 × 20.315% = 2,681,580円【短期】1,320万円 × 39.63% = 5,231,160円
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【Bさん】納税義務はありません。
まとめ
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」の適用を受けますと、譲渡益から「3000万円」を差し引くことができます。
適用を受けるためには一定の要件を満たし、確定申告が必要です。
「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(10年超所有軽減税率の特例)」とは重複適用もできます。
重複適用ができない特例もありますので、今後の方針に注意が必要ですが、多くの場合は適用を受けて損をすることはありません。
共有の不動産につきましては、要件を満たしていれば持分に応じて共有者全員が特例の適用を受けられます。
家屋と敷地で所有者の方が別の場合も、一定の要件を満たしていれば、敷地の所有者の方も家屋の所有者の方が控除した残額分を譲渡所得から差し引けます。
非居住用部分のある不動産は、要件を満たしていれば、居住用部分にのみ特例の適用を受けられます。