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不動産を売却する際に必要な登記識別情報ともう1つの権利証

   

不動産を売却する際には、それに伴い様々な書類などの準備が必要です。

その中には、不動産の権利関係を証明する書類も含まれます。

不動産の権利関係が確認できる書類として、一般的とされるのは「登記簿(謄本)」、「全部事項証明書」、「登記事項証明書」などです。

これらは、不動産の各種情報を登記した際に作成がされる書類です。

登記簿(謄本)、全部事項証明書、登記事項証明書などには、不動産の所有者などの情報も記載されております。

不動産売買を行う際には、この所有者(所有権)の移転なども行わなくてはなりません。

不動産の所有権を現在の方から移転させるためには、「所有権移転登記」が必要となります。

所有権移転登記を行うためには、「登記識別情報通知書」や「登記済権利証」といった権利証の準備が必要不可欠です。

これらの書類は、不動産の登記がされた時点で所有者の方に発行がされております。

登記識別情報や登記済権利証を紛失してしまった場合、不動産の所有権移転登記に少々手間が掛かってしまいます。

スムーズに不動産の売買を行うためには、権利証についてある程度知識を持っておくと安心です。

このページでは、このような登記識別情報通知書や登記済権利証などの権利証についてご説明致します。

目次

登記識別情報通知書と登記済権利証

「権利証」は、不動産の情報が登記された際に、登記が完了したという証明として発行がされる書類です。

これにより、不動産の所有権を取得した際には、その所有者の方に対して必ず権利証が発行されることとなります。

不動産の権利証には、主に下記の2つがあります。

  • 登記識別情報通知書
  • 登記済権利証

登記識別情報通知書と登記済権利証は、登記がされた時期により発行されたほうが異なります。

また、それぞれで書類自体の見た目や記載内容が異なりますので、売主の方がどちらの権利証をお持ちかは、様式などで簡単に判断ができます。

登記識別情報と登記済権利証の違いにつきましては、下記で詳しくご説明致します。

登記識別情報通知書と登記済証の違い

不動産の登記がされた際には、登記識別情報通知書と登記済権利証のいずれかが発行されるのが一般的です。

登記識別情報や登記済権利証をお持ちの方の中には、何故2種類の権利証が存在するのか疑問に感じるかもしれません。

元々、不動産の登記がされた際には、その証明として「登記済権利証」のみが発行されておりました。

登記識別情報通知書が発行されるようになったのは、不動産登記法が大幅に改正された時期からになります。

平成16年6月18日に、登記事務のコンピューター化・オンライン化を前提とした不動産登記法の大改正が行われ、平成18年頃(正確には平成17年3月7日)に施行されました。

この大改正に伴い各地の法務局に、順次、登記のオンライン申請のシステムが導入されていき、平成20年7月14日には、全ての法務局が「オンライン指定庁(オンラインで登記ができる法務局)」となりました。

オンライン指定庁となった法務局では、登記完了の証明書として「登記済権利証」から「登記識別情報通知書」が発行されるように変更され、従来の登記済権利証の発行はなくなりました。

平成17年3月7日~平成20年7月14日まで間は、お住いの地域の法務局が
オンライン指定庁でない場合には「登記済権利証」が、
オンライン指定庁である場合には「登記識別情報」
が発行されていたため、同じ時期に登記がされた不動産であっても、異なる権利証が発行されておりました。

現在は、全ての法務局がオンライン指定庁となりましたので、これから所有権に関する登記などを行った際に発行がされるのは「登記識別情報通知書」のみとなります。

お持ちの権利証の書面を確認しますと、「登記済権利証」や「登記識別情報通知」などといった記載がありますので、どちらを所有していらっしゃるのかは、その記載内容から判断ができます。
(登記済権利証のほうは、記載が「登記済之権利證」などとなっている場合もあります)

どちらの権利証をお持ちの場合でも、不動産の登記を変更できますので、売買の際にはいずれかを準備しておくようにしてください。

登記識別情報通知書の記載内容

不動産の登記が完了しますと、法務局から登記識別情報が記載された「登記識別情報通知書」が発行されます。

登記識別情報通知書には、不動産の登記記録などが記載されている訳ではありません。

登記識別情報通知書には、主に下記のような内容が記載されております。

  • 不動産の所在地
  • 不動産番号
  • 登記の受付年月日や受付番号
  • 登記の目的
  • 登記名義人の住所と名前
  • 登記識別情報(12桁のパスワード)
など

これらの中でも、特に重要なのが最後の「登記識別情報(12桁のパスワード)」です。

登記識別情報(12桁のパスワード)は、登記識別情報通知書の下部に記載されており、「アルファベットと数字の12桁」から作成されております。

このパスワードは、後に不動産の登記を変更する際などに必要となります。

旧様式の登記識別情報通知書では、登記識別情報(12桁のパスワード)が第三者に見えないよう、番号の上にシールが貼られておりましたが、
平成27年2月23日から様式が変更されました。

新様式の登記識別情報通知書では、
登記識別情報(12桁のパスワード)を隠していた目隠しシールが廃止され、A4サイズの紙の下部を上方向に折り込んで隠す折込式となりました。

また、登記識別情報(12桁のパスワード)の横にQRコードが追加され、
そのQRコードを読み込むことで、必要事項を登記識別情報提供様式へ転記できるようになりました。

登記識別情報通知書の新様式の見本につきましては、法務局のホームページから確認ができます。

【登記識別情報通知書の見本】
新様式の見本→「http://www.moj.go.jp/content/001131095.pdf

登記識別情報通知書は、登記識別情報(12桁のパスワード)が確認できるのであれば、旧様式であっても新様式であっても効力に違いはありません。

登記済権利証の記載内容

お住いの地域の法務局がオンライン指定庁となる前に不動産の登記を行った際には、登記完了後に登記済権利証が発行されております。

登記済権利証の記載内容は、登記識別情報通知書とは異なる点がいくつもあります。

下記は、登記済権利証に記載がされている内容の一例です。

  • 不動産の所在地
  • 不動産の地番・地目・地積
  • 不動産の家屋番号
  • 不動産の種類
  • 不動産の構造
  • 不動産の床面積
  • 登記の受付年月日や受付番号
  • 登記の目的
  • 登記名義人の住所と名前
など

上記に加え、土地や家屋の売買の際に作成がされた売渡証書なども綴じられている場合が多いです。

書面に押されている判子には、
「登記済」と記載されているものと、
「受付年月日と受付番号」
と記載されているものの2種類があり、これらが確認できた際には登記済権利証である可能性が高いです。

登記済権利証の表紙には、決まった書式があるわけではなく、当時に登記の代理を依頼した司法書士の方が準備してくださったデザインとなるのが通常です。

その影響で、各司法書士事務所によって表紙の記載文字や見た目などが異なります。

一般的にはB5程度の大きさで、中の紙は和紙などが使用されている場合が多いようです。

表紙を開くと、中に「登記申請書」と記載されており、これが登記済権利証の本体となります。

この登記申請書により、第三者に不動産を所有しているという証明ができます。

当時に司法書士の方に登記の代理を依頼していらっしゃらない方は、この書類のみがお手元にある状態となっているはずです。

不動産売却時に所有権移転登記などを行う際には、原則としてこの登記済権利証の添付が必要となります。

登記済権利証などを紛失してしまった場合、所有権移転登記の際に少々面倒な手続きをしなくてはならなくなりますので注意が必要です。

不動産売却時に登記済権利証などが見つからない場合の対処につきましては、同ページの「不動産の権利証が無い場合の3つの対処」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらの項目をご覧ください。

登記済権利証と登記済証の違い

不動産の「登記済権利証」に似た書類として、「登記済証」があります。

登記済権利証は、不動産の所有権などに関する登記が行われた際に発行されていた書類です。

それに対し、登記記済証は、
「土地地目変更登記」
「土地合筆登記」
「分筆登記」
「建物の表題登記」
「抵当権抹消登記」
「登記名義人表示変更登記」
などの不動産の所有権を変更しない登記が完了した際に発行がされておりました。

登記済権利証と登記済証は、名前も見た目も似ていますが、内容は全く異なります。

登記済証は登記済権利証とは異なり、ただ単に登記が済んだという事実を知らせるためだけの書類です。

登記済権利証は、その存在で不動産の所有者を第三者に証明できますが、
登記済証は、不動産の所有者を第三者に証明できるほどの効力はありません。

不動産の売却を行う際には、登記済証ではなく登記済権利証を準備しておく必要があります。

登記済権利証と登記済証は似ているため、不動産売買時に間違えないように意識をしておきたいものです。

登記済権利証と登記済証の見分け方につきましては、次の項目で詳しくご説明致します。

登記済権利証と登記済証の見分け方

登記済証と登記済権利証は、パッと見ただけでは違いが分からないケースも少なくありません。

両方の書類を確認してみますと、どちらも中に「登記申請書」と記載がされております。

元々、登記済証とは前項目で記載をした通り、不動産に対して何かしろの登記を行った際に、「登記が完了しました」という意味で発行がされていた書類です。

登記済証で証明ができるのは、その不動産の「登記が完了している」という部分のみであり、不動産に対する所有者(所有権)の証明は行えません。

一方、登記済権利証は、当時に「その不動産の所有権(持分)を取得した」際に発行がされた書類です。

登記済権利証には、不動産の所有者(所有権)を含め重要な情報が記載されておりますので、不動産の所有権などを証明する書類として使用できます。

これらの影響で、不動産の売却などを行う際には、登記済証ではなく登記済権利証のほうを準備しておく必要があります。

登記済証と登記済権利証は似ているとはいえ、よく確認さえしておけば両者の判断は難しくありません。

通常、登記済証や登記済権利証は、当時に登記の代理を依頼した司法書士の方の事務所や名前などが記載された表紙に挟まれております。

その表紙には、書類の内容に対するタイトルのようなものが記載されているのが一般的です。

登記済証の場合には、書類の表紙に「登記済証」もしくは、それに類似した記載が
登記済権利証の場合には、書類の表紙に「登記済権利証」もしくは、それに類似した記載
がされております。

お持ちの書類が登記済証であるのか、登記済権利証であるのかは、この書類の表紙のタイトルで判断ができます。
(複数の土地を1つの土地にまとめる「合筆登記」の場合には、新たに発行された「登記済証」が「登記済権利証」と同じ効力を持ちます)

現在お手元にある書類が登記済権利証でない場合には、不動産を売却する前に探しておくようにしてください。

不動産売却時の権利証の必要性

不動産売却時には、様々な物品の準備が必要です。

その中でも、不動産の権利証は必ずと言っていいほど提示を求められます。

不動産の権利証は、その不動産の権利関係などが記載されている大切な書類です。

現在、不動産の権利証といえば登記識別番号通知書と登記済権利証の2つがありますが、何故これらの書類の提示が必要であるのでしょうか。

この項目では、不動産売却時に何故権利証が必要であるのかについてご説明致します。

売却時に権利証が必要となる場面

不動産を売却する際には、売主の方が登記識別情報通知書や登記済権利証などの権利証を用意しておくのが原則です。

現在、不動産に対して一定の登記を行うためには、権利証が必要不可欠となります。

登記識別情報通知書をお持ちの方は、登記申請時の申請書に、登記識別情報(12桁のパスワード)の記載が(通知書自体の提出は必要ありません)、
登記済権利証をお持ちの方は、書類自体の提出が必要となります。

不動産の売買を行う際には、所有権移転登記などを行う必要がありますので、権利証がない場合にはその手続きができなくなります。

なお、登記識別情報通知書や権利証を紛失してしまったという場合の対処につきましては、同ページの
登記識別情報通知書が無い場合の対処」と
権利証が無い場合の3つの対処
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

所有権移転登記を行った場合、その不動産の新しい所有者(不動産の買主)の方に対して、新たな登記識別情報通知書が発行されます。

これにより、売買を行った不動産の元の登記済権利証や登記識別情報(12桁のパスワード)は無効となります。

不動産の権利証が必要ない登記

不動産の登記を行う際には、全ての登記に対して権利証が必要となる訳ではありません。

登記をする際には、権利証の準備が必要ないケースなども存在します。

登記の際に権利証が必要となるのは、「登記簿上形式的に判断して、不動産の所有者の方に対して不利(マイナス)な登記をしなくてはならない場合」のみであり、
「登記簿上形式的に判断して、不動産の所有者の方に対して有利(プラス)な登記をする場合」には、権利証は必要ありません。

【登記済権利証が必要ない例】
「不動産に抵当権が設定されており、その不動産の「抵当権抹消登記」を行いたい場合」
この場合は、設定されているマイナス要素の抵当権を抹消する「所有者の方にとって有利(プラス)な登記」です。
登記形式上でも、所有者の方にとって有利な登記と判断ができますので、今回は権利証の提出は必要ありません。

【登記済権利証が必要な例】
「不動産を売却し、その不動産の「所有権移転登記」を行いたい場合」
この場合は、設定されているプラス要素である所有権を移転する「所有者の方にとって不利(マイナス)な登記」です。
登記形式上でも、所有者の方にとって不利な登記と判断ができますので、今回は権利証が必要となります。

上記の例の通り、不動産売却後の所有権移転登記には、権利証の準備が必要となります。

万が一、権利証を紛失してしまったという場合の再発行の詳細などにつきましては、同ページの「不動産の権利証の再発行」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

分筆・合筆後の不動産の権利証

土地を売却する際には、
「1つの土地の一部だけを売りたい」
「複数の土地を1つに合わせて売りたい」
など、土地に手を加えた上で売却したいという方もいらっしゃるかもしれません。

土地の一部だけを売りたい場合には、「土地分筆登記」が、
複数の土地を1つに合わせて売りたい場合には、「土地合筆登記」
が必要となります。

これらの登記を行った場合、登記識別通知書や登記済権利証の扱いが、少々ややこしくなる可能性があります。

この項目では、このような土地を分筆・合筆した場合の、権利証の扱いについてご説明致します。

土地分筆後の権利証の発行

お持ちの土地の一部だけを売却したい場合、土地を分筆(分割)した上で売り出す必要があります。

ここで問題となるのは、土地を分筆した後のそれぞれの土地所有権の証明として、どのような書類が必要となるのかという点です。

通常の不動産の場合は、登記識別情報通知書や登記済権利証などで権利者の証明が可能ですが、分筆後の土地の場合は少々注意が必要となります。

土地を分筆した際に必要な「土地分筆登記」では、新たに分筆した土地に対して、登記識別情報通知書などは発行されないのが通常です。

お住いの地域の法務局がオンライン指定庁となる前に分筆登記を行ったという方は、一応「分筆の登記済証」が発行されてはおりますが、これも登記済権利証とは別物となります。

お持ちの土地を分筆した際には、土地の分筆をする前に元々あった
「登記識別情報通知書」や
「登記済権利証」
などの提示が必要です。

例えば、「土地A」があり、それを後に「土地B」と「土地C」に分筆した場合、「土地B」と「土地C」には権利証が発行されません。

土地を分筆した際の権利証
この場合には、「土地A」を取得した際に発行された登記識別情報通知書や登記済権利証を用いて、登記などの処理を行う必要があります。

土地の分筆を行う際には、分筆登記をしたからといって、土地の元々の権利証を手放さないようにしてください。

土地合筆後の権利証の発行

複数の隣接した土地があり、そのいくつか、又は全てを統合して売却したい場合もあります。

複数の土地を統合した上で売却したい際には、土地に対して「合筆登記」が必要となります。

土地に対して合筆登記を行った際には、合筆後の土地に対して登記識別情報通知書が発行されるのが一般的です。

お住いの地域の法務局がオンライン指定庁となる前に合筆登記を行った場合には、「合筆の登記済証」などが発行されておりますので、この書類が登記済権利証となります。

例えば、「土地B」と「土地C」の2つを所有している方が、後にそれらを合筆し1つの「土地A」にした場合、この「土地A」に対して新たに登記識別情報通知書などが発行されます。

土地を合筆した際の権利証
不動産を売却する際には、合筆登記後に発行がされた権利証を準備しておけば、登記などの処理を行えます。

また合筆された土地の登記を行う際には、合筆登記をする前の全ての土地の権利証を併せて提出しても処理を行えます。

先ほどの例の場合は、「土地B」と「土地C」の登記識別情報や登記済権利証を併せて準備することで、「土地A」の権利証が無くとも所有権移転登記を行えます。

多くの場合は、合筆後に発行がされた権利証のほうを用いて登記を行いますが、場合によっては新たに発行がされた権利証を紛失しているケースなどもあります。

このような状況の際には、合筆された全ての土地の権利証を提出しますと、スムーズに登記を完了できます。

【合筆された土地の登記を行う際に準備が必要な権利証の例】

  1. 合筆登記がされた際に新たに発行がされた登記識別情報通知書又は登記済権利証
  2. 合筆された全ての土地の登記識別情報通知書又は登記済権利証

土地の持分を取得した後の権利証

不動産の所有者は、1人だけであるとは限りません。

時には、1つ(1筆)の不動産を複数人で所有し、それぞれが持分を持っているという可能性もあります。

このような共有名義の不動産(共有不動産)を売却する際には、主に下記の3つの方法が考えられます。

  1. 共有名義人全員が売却に同意し、不動産全体を売却する
  2. 不動産の持分をお持ちの方が、ご自身の持分のみを売却する
  3. 他の共有名義人から全ての不動産の持分を取得し売却をする

上記の「1」や「2」の方法を選択する場合には、お持ちの持分に関わる権利証を準備しておくだけで問題ありませんが、
「3」の方法を選択する場合には、少々注意が必要です。

1つ(1筆)の不動産の持分を他の共有名義人から取得した場合には、持分の所有権に対して移転が必要となります。

持分に関わる所有権移転登記を行いますと、通常は所有権を移転した持分1つ1つに権利証が発行されます。

後に土地の全ての持分を取得したとしても、権利証は元々の持分に応じた個数となり、1つにはまとまりません。

このような状態の不動産の売却を考えた際には、持分を取得した際に発行がされた全ての権利証を用いて、所有権移転登記を行う必要があります。

例えば、「Aさん」と「Bさん」と「Cさん」の3人が「不動産X」を所有しており、後に
「Aさん」は「Bさん」から持分を贈与され、更に「Cさん」の持分も売買により取得したとします。

こうなりますと「Aさん」は、「Bさん」と「Cさん」の持分を取得し、最終的に「不動産X」の全ての権利を持っている状況となります。

「Bさん」と「Cさん」から所有権を取得した際には、それぞれの持分の所有権移転登記がされ、その都度持分部分に対して権利証が発行されます。

持分を取得した際の権利証
こうして「Aさん」は、

  • 元々所有していた土地の持分部分の権利証
  • 「Bさん」の持分を取得した際に発行がされた権利証
  • 「Cさん」の持分を取得した際に発行がされた権利証

の合計3枚を受け取っている状況となります。

後に「Aさん」が「不動産X」を売却する際には、これら3通の権利証が必要となります。

権利証を紛失した際の犯罪対策

不動産の権利書を紛失した理由が盗難などであり、第三者に情報を盗まれた可能性がある場合には、後に重大な犯罪に巻き込まれてしまう可能性があります。

不動産の権利証は、様々な登記を行う際に必要となる大切な書類です。

権利証があるからといって、第三者が簡単に所有権移転登記などを行える訳ではありませんが、実際に勝手に第三者に不動産を売却されていたというようなトラブルも存在します。

このようなトラブルを回避するためには、紛失した権利証に対して特定の手続きをしておく必要があります。

現在設けられている手続きには2種類あり、状況などによってどちらの手続きを行えば良いのかが変わります。

【権利証を紛失した際の犯罪防止策】

上記の方法のうち、登記識別情報の失効申出制度のほうは「登記済権利証」を紛失した際には選択ができない方法となります。

これら2つの手続きにつきましては、下記で詳しくご説明致します。

不正登記防止申出の制度

不動産の権利証を盗難された場合、最悪はご自身の不動産が勝手に売り出されてしまうなどの危険があります。

このような犯罪に書き込まれないための対策として、「不正登記防止申出の制度」があります。

この制度をお住いの地域の法務局に申し出た場合、該当不動産に対して登記が行われた際に、申請から3ヶ月の間、法務局が申請人に電話などでその事実を通知してくださるようになります。

更に、登記申請人に対して法務局への出頭を求め、質問をしたり文書を提供させたりすることによって、本人確認(登記申請権限の有無の調査)がされるまでは登記が行えないようになります。
(本制度の期限である3ヶ月が過ぎた後に、まだ制度を継続したい場合には、もう一度申出の手続きを行わなくてはなりません)

これにより、不動産の所有者であれば本申出の期間中であっても登記を行えますので、不動産売却の際にも所有権移転登記を行えます。

「不正登記防止申出の制度」を利用するためには、お住いの地域の管轄法務局に対して、「不正登記防止申出書」を提出しておく必要があります。

申請の際には、原則、申請人自身が法務局へ出頭する必要がありますが、やむを得ない事情がある場合などには申請を委任できます。

その際には「不正登記防止申出書」と共に、「委任状」の提出も求められますのでご注意ください。

必要書類の記載が終わりましたら、それと一緒に、発行されてから3ヶ月以内の「印鑑証明書」と運転免許証などの本人と確認できる書類を提出します。

法人が「不正登記防止申出の制度」を申請する際には、上記の書類に加え、資格証明書(法人の登記事項証明書)の添付も必要となります。

【不正登記防止申出の制度を申し出る際に必要となる書類まとめ】

  • 不正登記防止申出書
  • 委任状(申請人が申出を委任する場合)
  • 印鑑証明書(発行がされてから3ヶ月以内)
  • 運転免許証などの本人確認書類
  • 法人が申請する場合には資格証明書(法人の登記事項証明書)

なお、「不正登記防止申出の制度」を受けるためには、書類の作成以外にも意識をしておかなくてはならない点があります。

それはこの制度を受けるためには、申出が必要となった理由に対して、対応する措置を採っている必要があるという要件がある点です。

例えば、下記のような状況があり、不正登記防止の申出の制度を利用したい場合、対応する措置は下記のようになります。

権利証や印章又は印鑑証明書の盗難を理由とする場合
警察等の捜査機関に被害届を提出したこと
第三者が不正に印鑑証明書の交付を受けたことを理由とする場合
交付をした市町村長に当該印鑑証明書を無効とする手続を依頼したこと
本人の知らない間に当該不動産の取引がされている等の情報を得たことによる場合
警察等の捜査機関又は関係機関への防犯の相談又は告発等をしたこと

申出の内容が緊急を要するものである場合には、これらの措置を採っていない場合であっても受け付けてくださる場合もありますが、その後直ちに対応する措置を採る必要があります。

これらの条件が揃っていない場合には、制度の申出が却下されてしまいますので注意が必要です。

登記識別情報の失効申出制度

お持ちの権利証が登記識別情報通知書であり、それが盗難などに遭ってしまった際には、「不正登記防止申出の制度」以外の対処法も存在します。

その方法が「登記識別情報の失効申出制度」です。

「不正登記防止申出の制度」のほうは、3ヶ月の間法務局が該当不動産に対して行われた登記を見張ってくださるのに対し、
「登記識別情報の失効申出制度」は、根本的に登記識別情報自体を無効にしてしまう手続きです。

この手続きにより無効にした登記識別情報は2度と復元はできませんので、その点に意識をした上で選択するようにしてください。

「登記識別情報の失効申出制度」を申出する際には、「登記識別情報の失効の申出書」の作成が必要です。

なお、この制度は法務局への出頭以外にインターネットからも申請ができますので、都合の良いほうを選択してください。

オンライン申請を行う際のソフトウェアの入手先と手順は、下記のリンク先をご覧ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji72.html#a04

また、これらの申出をする際には、申請者が他の方に手続きを委任することもできます。

その際には、「登記識別情報の失効の申出書」と一緒に「委任状」の作成も必要となります。

これらの書類の作成が終わりましたら、発行されてから3ヶ月以内の「印鑑証明書」と併せて管轄法務局へ提出をします。

該当不動産の登記名義人が法人の場合には、上記の書類に加え、資格証明書(法人の登記事項証明書)の添付も必要となります。

【登記識別情報の失効申出制度を申し出る際に必要となる書類まとめ】

  • 登記識別情報の失効の申出書
  • 委任状(申請人が申出を委任する場合)
  • 印鑑証明書(発行がされてから3ヶ月以内)
  • 法人が申請する場合には資格証明書(代表者事項証明書又は、履歴事項全部証明書など)

登記識別情報を無効にした場合、当然にその情報を用いて不動産の登記はできなくなります。

この場合、
「登記識別情報を再発行して貰えないのか」という点と、
「登記識別情報を紛失してしまった際に登記を行うにはどうしたら良いのか」
という点に対して疑問を抱いてしまう方も多いかもしれません。

これらの疑問につきましては、同ページの
不動産の権利証の再発行」と
不動産の権利証が無い場合の3つの対処
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

不動産の権利証の再発行

何度も言うようですが、不動産を売却した後の所有権移転登記には、原則、対象不動産の権利証が必要となます。

不動産の権利証を紛失してしまった場合、売却後の所有権移転登記などの際に支障が出てしまいます。

不動産を売却する前には、登記識別情報通知書や登記済権利証などの準備をしておくと安心です。

ここで不動産の権利証が簡単に見つかれば問題ありませんが、場合によっては、どれだけ探しても権利証が無いというケースもあります。

売却予定の不動産の権利証を紛失してしまった際には、所有権移転登記の際に少々面倒な手続きが必要となるのが一般的です。

これらの手間を懸念し、不動産の権利証が見つからない際には、書類の再発行をしたいと考える場合もあります。

この項目では、不動産の登記識別情報通知書や登記済権利証などといった権利証を無くした際の再発行について詳しくご説明致します。

不動産の権利証の再発行

不動産の所有権を取得した際には、通常、権利証が発行されます。

権利証は、多くの場合その不動産の所有権者やその関係者が保管をしますが、様々な理由により紛失してしまう可能性があります。

通常、日常の中で発行がされる書類などは、紛失してしまっても適切な手続きを行えば、再発行が行える場合も少なくありません。

しかし、不動産の登記識別情報通知書や登記済権利証は違います。

不動産の権利証は、一度紛失してしまうと、どのような理由があったとしても2度と再発行ができません。

不動産の権利証を無くしたからといって、その所有権が無くなってしまう訳ではありませんが、後に登記などができなくなってしまうという問題があります。

所有権移転に関する登記ができない不動産を購入する買主の方は、ほぼいないといっても過言ではありません。

権利証を紛失した不動産を売却するためには、権利証無しで不動産の所有権移転登記などを行えるようにする必要があります。

権利証を紛失した状態の不動産を売却するための対処につきましては、次の項目で詳しくご説明致します。

登記識別情報通知書が無い場合の対処

登記識別情報通知書の中には、登記識別情報と呼ばれる12桁の英数字のパスワードが記載されております。

この書面を紛失してしまった際には、書面に記載されていた登記識別情報が分かる状態であるか、そうでないかで対処が変わっています。

登記識別情報を覚えていらっしゃる場合には、比較的簡単に不動産の所有権移転登記を行えます。

それに対して、記載されていた登記識別情報が分からない状態である場合には、少々面倒な手続きが必要となります。

この項目では、登記識別情報が分かる状態での対処についてご説明致します。

登記識別情報が分からない状態の場合の対処法につきましては、同ページの「不動産の権利証が無い場合の3つの対処」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

登記識別情報を覚えている場合

登記識別情報通知書の中には、不動産の所有権を取得した際に発行された登記識別情報が記載されております。

登記識別情報は、その不動産専用のパスワードのようなものです。

このパスワードを知っているのは、登記識別情報通知書を受け取った方やその関係者のみとなるのが通常です。

これにより盗難などの非常事態を除き、登記識別情報は第三者が知り得ない情報となります。

不動産に関わる登記に対して登記識別情報が必要となるのは、このように所有者本人が申請しているのかを確認するという意味合いが含まれております。

ここで重要となるのが、登記の際に必要となるのは「12桁のパスワードである登記識別情報」の記載のみであり、
「登記識別情報通知書」の添付などは必要がないという点です。

その影響で通知書自体を紛失してしまったとしても、登記識別情報さえ分かる状態であれば、所有権移転登記などを行えるということになります。

なお、お持ちの権利証が登記済権利証のほうであり書面自体を紛失してしまった場合には、このような対処法は行えません。

また、登記識別情報通知書を紛失した場合でも、記載されている登記識別情報が不明である場合には、登記済権利証と同様に特別な手続きを行う必要があります。

登記済証を紛失してしまった際や登記識別情報が不明である場合の対処法につきましては、次の項目で詳しく説明致します。

権利証が無い場合の3つの対処

先ほどは、登記識別情報通知書の紛失に関する説明を記載致しました。

通知書内の登記識別情報を覚えていらっしゃる場合には、書面が無くとも簡単に登記が行えますが、
覚えていない場合には登記済権利証同様に、特別な手続きが必要となります。

以前は、登記を受けたことのある成年者2名が、登記義務者(不動産の所有権者)が間違いなく本人であると保証した、「保証書」という書面を作成しますと登記を行えました。

しかし、平成17年3月7日に施行された不動産登記法の改訂により、この保証書に関する規定は廃止されました。

現在は、主に下記の3つのいずれかの方法を用いて、不動産の登記を行うのが一般的です。

上記の3つの方法は、いずれもメリットとデメリットが存在するため、ご自身の状況に合ったものを選択することが大切です。

この項目では、上記の3つの方法の内容について詳しくご説明致します。

事前通知制度とは

不動産の登記を行う際に権利証無しで手続きをした場合、その手続きが即却下される訳ではありません。

登記の申請がされ、その際に登記済権利証の添付や登記識別情報の記載がない場合には、法務局がそれを受け付けた後に一旦保留にします。

その後、法務局から現在登記簿に登記されている売主の住所に対して、申請に間違いないかを確認する書類が
個人なら「本人限定受取郵便」
法人なら「書留」
にて送られてきます。

その書類は「事前通知書」と呼ばれており、これら一連の手続きは「事前通知制度」と呼ばれております。

事前通知書には、申請した登記に関する内容が記載されておりますので、それを確認します。

【事前通知書に記載されている項目の例】

  • 不動産所在事項及び不動産番号
  • 登記の目的
  • 受付番号
  • 登記原因
  • 申請人
  • 通知番号
など

これらの情報を確認し、間違いがない場合には書面下部の「回答欄」に申請人の氏名を記入し、登記申請書などに押した印鑑で押印をして法務局へ持参又は、郵送により返送します。

これにより本人確認が完了しますと、後に申請した登記が実行されます。

「事前通知制度」は、手続きに費用が掛からないため、費用的な負担が無いというメリットがあります。

ただ、登記完了までに時間が掛かり、事前通知書を法務局へ返送しなくては、登記が却下されてしまう可能性があるというデメリットも存在します。

特に不動産売買などの高額な金銭が絡む取引では、買主の方からしますと、代金の支払いと同時に所有権移転登記をして欲しいというのが本音です。

その影響で、売主の方に対して大きな信頼がある場合以外には、選択できる可能性が低い方法となります。

買主の方などと相談し、この方法を選択できない場合には、その他の方法を用いて登記を行う必要があります。

【事前通知制度を選択した際の主なメリット・デメリット】

メリット
  • 手続きに費用が掛からない
デメリット
  • 登記完了までに時間が掛かるため、不動産売買時には選択できない可能性がある
  • 送られてきた事前通知書を返送しなくては、登記が否認されてしまう

本人確認情報の提供の制度とは

権利証を紛失した不動産を売却する際によく用いられる方法として、「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」というものがあります。

不動産売買時には、売主と買主の間で多額の金銭が動く場合が殆どです。

その影響もあり、買主の方の中には、売買代金の支払いと共に所有権移転登記が行える状態でないと、代金は支払いたくないといった意見をお持ちの方もいらっしゃいます。

「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」は、売買代金の受領と共に所有権移転登記を行える上に確実性が高い制度ですので、多くの不動産取引で選択される方法です。

この制度を利用するためには、まず代理人となる司法書士の方に、本人確認情報を作成して貰います。

その際には、原則として司法書士の方が権利証を紛失した方と面談をしながら、申請者が確実に不動産の所有者であるという確認を行っていきます。

面談の際には、不動産の所有者に対して、様々な質問などがされる可能性もありますので、ある程度はその心構えをしておくと安心です。

他にも、下記のいずれかの書類の提示を求められる可能性もあります。

顔写真付きの公的な本人確認書類
顔写真付きの公的な本人確認書類は、1つ以上の提示を求められる可能性があります。
  • 運転免許証
  • 住民基本台帳カード
  • パスポート
  • 在留カード
など
顔写真付きではない公的な本人確認書類
顔写真付きではない公的な本人確認書類(住所、氏名、生年月日の確認できるもの)は、2つ以上の提示を求められる可能性があります。
  • 保険証
  • 年金手帳
など

面談後、間違いなく本人であるとの確認が取れた場合には、司法書士の方が登記申請の際に必要な本人確認情報を作成してくださいます。

本人確認情報の作成が終わりましたら、後は登記申請時に該当書面を提出するだけです。

本制度により登記を行いますと、不動産の売買代金の受領と共に登記が完了できる以外にも、本人確認手続きが一番慎重なので安心感があるというメリットもあります。

ただ、他の手段と比べ、手続きに必要な費用が高額であるというデメリットもあります。

司法書士の方に本人確認情報の作成を依頼した場合、大体5万円前後の費用が掛かるのが一般的です。

費用が高額とはいえ、不動産売買のように高額なお金が動く取引では、この「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」が選択されやすいのも事実です。

買主の方も、この方法で登記をすると聞いて不満を訴える方は少ないため、スムーズに取引が行える可能性が高まります。

【資格者代理人による本人確認情報の提供の制度を選択した際の主なメリット・デメリット】

メリット
  • 不動産の売買代金の受領と共に所有権移転登記を行える
  • 他の方法に比べ本人確認がしっかりとしているため安心感がある
デメリット
  • 他の方法と比べ高額な費用が必要となる

公証人による本人確認とは

不動産の売買代金の受領と共に所有権移転登記を行いたい場合には、「公証人による本人確認」を選択することもできます。

「公証人による本人確認」では、本人確認を司法書士の方ではなく、公証人に行って貰います。

そうして本人確認情報を公証人に作成して貰い、登記申請の際に一緒に提出します。

「公証人による本人確認」を行う際には、
発行がされてから3ヶ月以内の「印鑑証明書」や、
不動産の所有権などに関する公的書面(登記簿謄本など)
といった書類を準備した上で、公証人役場へ行く必要があります。

また、申請を他の方に委任する場合には、それに対する「委任状」も必要となります。

個人の方が「公証人による本人確認」を申請する際には、これらの書類を準備するだけで手続きができますが、
法人が手続きを行う際には、上記の書類に加え、資格証明書(法人の登記事項証明書)の準備もしておかなくてはなりません。

【公証人による本人確認に必要となる主.な書類まとめ】

  • 印鑑証明書(発行がされてから3ヶ月以内)
  • 不動産の所有権などに関する公的書面(登記簿謄本など)
  • 委任状(申請人が申請を委任する場合)
  • 法人が申請する場合には資格証明書(代表者事項証明書又は、履歴事項全部証明書など)

「公証人による本人確認」を選択した場合、不動産の売買代金の受領と共に所有権移転登記を行える上、比較的手続きの費用が低く済むというメリットがあります。

本手続きに必要な費用は、認証費用の3,500円のみです。

「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」と比べると、大体46,500円前後も費用を削減できます。

ただ、公証人による本人確認は非常に大雑把であり、司法書士の方ほど正確な確認は行われません。

その影響で、最悪は登記時に本人確認情報が不正とされ、登記の申請自体が無効とされてしまう可能性があります。

他にも、本人確認情報が無効となった後の責任が曖昧になりやすいというデメリットも存在します。

「公証人による本人確認」は、登記実行の時期や金銭的な面を考えると魅力的な手段ですが、その後の責任や信ぴょう性に関しては注意が必要です。

【公証人による本人確認を選択した際の主なメリット・デメリット】

メリット
  • 不動産の売買代金の受領と共に所有権移転登記を行える
  • 「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」と比べ費用が安い
デメリット
  • 本人確認が大雑把で後に無効となる可能性がある
  • 本人確認が無効となった後の責任が曖昧になりやすい

相続した不動産の権利証

不動産を取得するきっかけはいくつかあり、その中の1つに相続があります。

不動産の相続を受けた際には、その所有権は被相続人から相続人へ変わります。

相続した不動産をどうするのかは、相続人の方次第ですので、時には売却をしてしまう場合もあります。

相続不動産を売却する際の手順は、通常の不動産の場合とほぼ同じですが、その際の権利証の扱いはどうなるのかご存じないという方もいらっしゃるかもしれません。

この項目では、このような相続不動産の権利証について詳しくご説明致します。

相続不動産の権利証がない場合

不動産の相続を受ける際には、その不動産がかなり古いものである可能性があります。

この場合、不動産の権利証がどうしても見つからないというケースも少なくありません。

不動産の相続を行う際には、その所有権を被相続人から相続人へ移す登記が必要です。

こうなりますと、所有権移転登記の場合と同様に、権利証が必要となると思われるかもしれません。

しかし、相続した不動産の所有権を変更する際には、多くの場合、権利証は不要です。

何故なら、権利証が無くとも登記簿と戸籍と住所証明などを用いて、相続人を特定できるからです。

その際には、不動産の新しい所有者(相続人)に対して、新しい登記識別情報通知書も発行されます。

これにより、不動産の相続がされる前に存在した権利証は、後の売却の際にも必要が無くなります。

相続不動産を売却する際に必要となるのは、相続後に発行がされた新しい登記識別情報のみです。

なお、下記のような状況の場合には、相続登記に対して権利証が必要となりますのでご注意ください。

【相続登記の際に権利証が必要となる状況の例】

「被相続人が亡くなってから5年以上が経過した後、相続人が所有権の移転に関する登記を行った場合」

通常、住民票や戸籍附票は、転出や死亡などで除かれた、あるいは除籍となった日から「5年」が経過しますと、その保存期間が終了します。

住民票・戸籍附票の両方の保存期限が切れてしまいますと、亡くなった被相続人と登記簿上の所有者が同一であると証明ができなくなります。

こうなりますと、該当不動産の権利証により、住所の繋がりなどを証明する必要が出てきます。

上記のような住所の繋がりを証明できない状況以外では、通常は相続登記に対して権利証は求められません。

まとめ

不動産の権利証には、登記識別情報通知証と登記済権利証の2つが存在します。

不動産を売却する際には、所有権移転登記を行うために、原則このような権利証の準備が必要です。

不動産を分筆や合筆して売却する際には、権利証の扱いについて少々注意が必要となります。

土地の分筆後には、分筆された土地に対して新しい権利証は発行されません。

その影響で、分筆した土地が含まれていた元の土地の権利証が、分筆した土地の権利証となります。

土地を合筆した際には、合筆後の土地に対して新たな登記識別情報通知書が発行されますので、そちらが権利証となります。

また、共有不動産の売却をお考えの際に、その持分を他の共有名義人から全て取得した際にも注意が必要です。

この場合、合筆登記とは異なり、元々存在した持分の個数分の権利証が発行されます。

これらを1つの権利証にまとめることはできませんので、売却の際には全ての持分部分の権利証が必要となります。

なお、不動産売却の際に権利証がどうしても見つからない場合、事前に適切な対処をしておかなくてはなりません。

権利証を紛失した理由が盗難などである場合には、

  • 不正登記防止申出の制度
  • 登記識別情報の失効申出制度

の2つの対処があります。

これらの申出をしたとしても、後に権利証の再発行はできませんので、不動産売却の際には、下記のいずれかの方法を用いて所有権移転登記を行う必要があります。

  • 事前通知制度
  • 資格者代理人による本人確認情報の提供の制度
  • 公証人による本人確認

権利証を紛失した不動産が相続予定のものである場合には、相続登記の際に権利証は必要ありませんのでご安心ください。

相続登記の後には、相続人に対して新しい登記識別情報通知書が発行されますので、売却の際にはその書面のみが必要となります。

不動産売却時には、このような登記識別情報通知書や登記済権利証を準備し、紛失した場合には適切な対処をしておくことが大切です。

 - 不動産売却の基礎知識, 不動産売却の流れ, 不動産売却時の登記識別情報と権利証