共有名義の不動産を売却する6つの方法と意識が必要な注意点
2017/08/31
不動産には所有者の方がいらっしゃいますが、必ずそれが単独であるとは限りません。
中には共有名義の不動産もあり、複数人の方で不動産を所有されていることもあります。
そのような不動産を売却される際には、名義が1人である場合よりも面倒な点が多いです。
今回は共有名義の不動産を売却する6つの方法と意識が必要な注意点についてご説明致しますので、共有名義の不動産を売却される際にはご確認ください。
目次
共有名義の不動産の売却について
不動産を売却される際には、幾つも注意が必要な点があります。
共有名義の不動産を考えなしに現金化してしまいますと、多くの問題へと繋がる可能性もあります。
大きなトラブルの原因となったり、多額の損をしてしまったりする可能性もありますので、よくお考えになってから行動に移してください。
それでは、まず共有名義の不動産とはどういったものなのかご説明致します。
共有名義の不動産とは
共有名義の不動産とは、1つの不動産に複数人の所有者の方がいる状態を意味します。
1つの不動産を複数人の方で所有している状態ですので、登記簿などにも複数人の方が所有者として登録をされます。
共有不動産は、それぞれの方で「持分」が異なります。
売却時には、この「持分」も深く関係をします。
「持分」は各共有者の方で異なり、人数に応じて均等な割合となる訳ではありません。
これはそれぞれの方で異なる点ですので、「持分」につきましては事前にご確認ください。
共有名義の不動産の持分とは
共有名義の不動産は、「持分」によって所有割合が決められております。
この「持分」は勘違いをされている方もいらっしゃいますが、面積や所有場所(範囲)が決められているという訳ではありません。
「持分」は所有権自体の所有割合であり、下記の図のようなイメージです。
下記の図は、AさんとBさんの持分が「1/2」である際の例となります。
こちらを勘違いして売却を行いますと、後に大きな問題となってしまう可能性もあります。
共有名義の不動産といっても、ご自身が自由にできる場所が決まっている訳ではないという点に注意が必要です。
共有名義の不動産の売却
共有名義の不動産の全体を売却される場合、お1人の意思だけで売却をすることはできません。
その際には、必ず共有者全員の承諾が必要となります。
共有者の方の中にお1人でも売却に反対される方がいらっしゃるのであれば、その不動産全体を売却することはできません。
これは法律でも定められていることですので、承諾なしでの売却は認められません。
そのため、共有不動産全体を売却される際には、共有者の方全員でよく話し合いをする必要があります。
離婚などによって共有不動産を売却されるのであれば、特に注意が必要です。
なお、ご自身の持分だけを売却されるのであれば、他の共有者の方の承諾は必要ありません。
法律にも持分だけの売却であれば定めはなく、お1人の意思で売却を行えます。
不動産売却時に必要となるもの
共有不動産全体を売却される際には、共有者全員の承諾に加えて幾つかの書類が必要です。
必要となる書類は、下記のものです。
- 登記済権利証または登記識別情報
- 共有不動産を売却される際には、「登記済権利証」または「登記識別情報」のどちらかが必要となります。
- これらは所有権取得の登記が完了した際に法務局から発行をされるものです。
- 平成18年までに発行をされた場合は「登記済権利証」、それ以降は「登記識別情報」が発行をされております。
- 平成18年から平成20年にかけて法務局ごとに順次切り替わりました。
- (平成18年までに発行をされた「登記済権利証」はそのまま使用しますので、切り替わっても保管をしておく必要があります)
- 「登記済権利証」をお持ちの方はこちらを、「登記識別情報」をお持ちの方はこちらをご用意ください。
- 地積測量図、境界確認図
- 共有名義の不動産は、複数人の方が所有者となります。
- 共有不動産を売却される際には、後にトラブルが起こらないためにも、「地積測量図」と「境界確認図」を準備する必要があります。
- 「地積測量図」は、法務局に備えられる図面で、その土地の情報(土地の形状や面積など)が記載されております。
- 「境界確認図」は、その不動産の境界について記載をされた図面です。
- 地積や境界などがはっきりとしていない場合は、売却をする前に調査をする必要があります。
- 共有者全員の身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票
- 共有不動産を売却される際には、本人確認ができる書類が必要となります。
- 共有名義の不動産を売却されるのであれば、当然に共有者全員の身分証明が必要となります。
- 共有名義の不動産を売却される際には、共有者全員の身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票をご用意ください。
これらの書類が必要となりますので、上記の書類についてご確認ください。
なお、上記でも申し上げておりますように、これは共有不動産全体を売却する場合です。
それ以外の場合では異なることがありますので、事前に仲介などを依頼する不動産会社の方にご確認ください。
共有名義の不動産の売却方法
共有名義の不動産は売却をすることができますが、方法には幾つか種類があります。
それぞれでメリットやデメリットが異なりますので、ご自身と相性のいい方法を選択しなければいけません。
売却後に後悔をしないためにも、事前にこれらを把握しておくことが大切です。
共有者の方との兼ね合いもありますので、早めの行動を心がけましょう。
共有不動産を売却する6つの方法
共有名義の不動産は、通常の売却よりも意識が必要な点が多いです。
まず、どのようにして売却をするのか考える必要があります。
共有名義の不動産は、下記の6つの方法で売却できます。
上記が共有不動産の売却方法です。
上記の売却方法の中には、売却をする前に調査や準備が必要なものもあります。
いずれにせよ知識がない状態では、スムーズに行動をすることは困難ですので、共有不動産の売却をお考えの方はこれらについてご確認ください。
各売却方法につきましては、下記の項目から順次ご説明致します。
持分のみを売却する方法
共有名義の不動産を売却する方法の1つに、持分のみを売却するというものがあります。
こちらの方法は、共有者の方の承諾を得られない場合などに有効です。
あまり売却価格や売却期間などにこだわりがなく、共有者の方の承諾なしで売り出したいという方はこの方法を視野に入れてもいいかもしれません。
下記から持分のみを売却する方法について記載しておりますので、売却方法でお悩みの方などは参考にしてください。
メリットとデメリット
共有名義の不動産は、持分のみであれば所有者の方が自由に売却できます。
持分のみの売却であれば、共有者の方に承諾を得る必要もありません。
ただし、持分のみの売却には、大きな障害があります。
それは売却価格が著しく低下し、加えて売却に時間が掛かる可能性が高まるということです。
「共有名義の不動産の持分とは」の項目でも記載しておりますように、持分とは権利自体の所有割合です。
共有不動産を売却しますと、不動産の一部ではなく、権利の一部を譲渡することになります。
このような場合は当然にその不動産を買主の方が自由に扱うことはできず、利用をするにしても共有者の方との相談が必要です。
(持分を売却するなどは、買主の方でも行えます)
このような不動産を購入される方は少なく、買い手が見つかったとしても売却価格が著しく低下することも珍しくありません。
上記のことを踏まえますと、持分のみの売却方法には下記のようなメリットとデメリットがあります。
- 共有者の方の承諾を得る必要がないこと
- 売却前に分筆や名義について考える必要がないこと
- 売却価格が著しく低下する可能性があること
- 売却をするまでに時間が掛かる可能性があること
- 完全にご自身の独断であれば共有者の方とトラブルが起こる可能性があること
売却価格や売却期間にこだわりがなく、他の共有者の方に承諾を得られないなどの事情がある方は、こちらの方法が向いております。
トラブル防止に必要なこと
共有名義の不動産は、持分だけであれば自由に売却をすることができます。
ただし、共有不動産の持分を他の方に相談なく売却しますと、後にトラブルとなる可能性があります。
共有者の方の中には、その不動産に対して何かしらの計画を立てている方もいらっしゃいます。
それなのに1人の共有者の方が勝手に持分を売却しますと、その方の計画が崩れてしまう可能性もあります。
共有名義の不動産は複数の方が所有されておりますので、それに対する考え方も人それぞれです。
勝手に売却されることに不快な印象を覚える方もいらっしゃいますので、できる限りは持分だけの売却であっても相談をするほうが無難です。
持分のみを早急に売却しなければならないなどの事情がある場合は仕方がありませんが、そのような場合でも一声かえてみるほうが喜ばれるかもしれません。
また、共有者の方に相談をして持分のみを売却することになった場合でも、注意が必要な点があります。
共有不動産は「共有名義の不動産の持分とは」でも触れておりますように、共有といっても権利を複数の方で所有している状態です。
あくまで権利の所有割合ですので、自由にできる範囲などが明確に決められている訳ではありません。
共有不動産を持分のみ売却しますと、当然に売却をされるのはその不動産の所有割合分の権利です。
買主の方はその持分の新たな所有者となるだけですので、この状態ではその不動産の利用価値は著しく低いです。
やはり、不動産の権利の一部ですので、不動産を分筆するにしても何かに利用するにしても、他の共有者の方と話し合う必要があります。
このような面倒な不動産を購入したがる方は、正直珍しいです。
偶然に買い手が見つかったとしても、利用価値の低い不動産は著しく価格が低下する恐れもあります。
売主の方としては高く売却をしたいものですが、利用価値などが低い不動産は価格が低下しても仕方がありません。
こういった価格面などでトラブルとなることもあるかもしれませんので、高く売却をしたいのであれば他の方法を選択するほうが無難です。
手間はかかりますが、土地を分筆してから売る方法や名義を1つにする方法などもありますので、これらも踏まえた上で売却の計画を立ててみてください。
専門業者に持分を売却する方法
共有名義の不動産を売却する方法の1つに、持分のみを専門業者に売却するというものがあります。
こちらの方法は、早急に売却を行いたい方に向いている方法といえます。
あまり売却価格などにこだわりがなく、早急に売却をしたい方はこの方法を視野に入れてもいいかもしれません。
下記から専門業者に持分を売却する方法について記載しておりますので、売却方法でお悩みの方などは参考にしてください。
メリットとデメリット
共有名義の不動産の持分のみの売却は、買い手の方を探すのに手間がかかります。
事情によりやむを得ず持分のみを売るのであれば、「共有持分買取業者」に買い取ってもらう方法もあります。
これは不動産売却時の「買取」と同じく、持分のみを不動産会社に買い取ってもらう方法です。
買主の方を探す手間が省けますので、多くの場合売却をするまでに掛かる時間が削減されます。
売却価格につきましては、実勢価格よりも安い金額で売却をすることになります。
売却前に共有不動産について相談をすることもできますので、心強いというのも大きなメリットです。
共有不動産について相談をできますので、既にトラブルとなっている場合や心配事がある場合も専門家の方からアドバイスを頂けます。
無料相談を受け付けてくださる不動産会社もありますので、売却前に相談をしてみるのもいいかもしれません。
上記のことを踏まえますと、専門業者に持分のみを売却する方法には下記のようなメリットとデメリットがあります。
- 共有者の方の承諾を得る必要がないこと
- 早期売却をできること
- 専門家の方に相談をできること
- 売却前に分筆や名義について考える必要がないこと
- 売却価格が低下する可能性があること
- きちんと不動産会社の方と話し合いをしていく必要があること
売却価格よりも早期売却を優先される場合には、こちらの売却方法が有効かもしれません。
トラブル防止に必要なこと
こちらの方法は、トラブルが既に起こっている場合などに有効な売却方法です。
ですから、あまり注意が必要な点はありませんが、強いて言うならば売主の方もある程度の知識をお持ちであるほうがいいという点です。
これは不動産会社の方との話し合いをスムーズに進めるためと、不動産会社本位の売却にならないための対策という2つの意味があります。
本当に売主の方の立場となって相談に乗ってくださる不動産会社も多く存在しますが、中には利益のみを考えているような業者も存在します。
そういった業者は、売主の方に知識がないことが分かれば、そこにつけこんでくる可能性も高いです。
知識がないのであれば不動産会社の方の意見に流れることも多いため、この点には注意が必要です。
最初から知識をお持ちであれば、そのような事態を防ぐことができます。
トラブルなく売却をするためにも、事前に売主の方がある程度の知識を有しておくことが大切です。
これは持分を買い取ってもらう場合だけではなく、売却をする方全てに該当をすることですので、売却前にはできる限り知識をつけておくようにしましょう。
分筆してから売却をする方法
共有名義の不動産を売却する方法の1つに、分筆してから売却するというものがあります。
こちらの方法は、持分のみの売却ではデメリットが多く、分筆をすることでトラブルなく売却ができる方に向いている方法です。
本来持分以外も含めて不動産を売却するのであれば、他の共有者の方の承諾が必要となります。
しかし、中には不動産の売却に反対をされる方もいらっしゃいますので、そうなりますと不動産全体を売却することはできません。
お1人でも売却に反対をされる方がいらっしゃるのであれば、分筆をすることで、お互いの意思を尊重して売却できる場合があります。
下記から分筆してから売却をする方法について記載しておりますので、売却方法でお悩みの方などは参考にしてください。
不動産の分筆とは
共有名義の不動産は、「分筆」を行うことができます。
「分筆」とは、1つの土地を分割して分けることです。
1つだった土地が複数に分かれ、共有者の方がそれぞれを単独所有することになりますので、分筆後は共有不動産でなくなるというのが特徴です。
こうすることで、売却をしたくない方は分筆をした土地を引き続き所有し、そうでない方は売却をすることができます。
当然に分筆後の土地は単独所有ですので、売却をする際に共有者の方の承諾を得る必要はありません。
ただし、分筆をする際には共有者の方全員の承諾と立ち合いが必要になります。
加えて隣接する建物や道路などがある場合は、その建物の持ち主の方や役所(道路がある場合)の方の承諾、立ち合いも必要になります。
承諾などを得られなければ分筆を行えませんので、他の共有者の方などから反対があれば、この方法は選択できません。
なお、分筆の手順につきましては、下記のようになります。
- 測量を行って境界を確定する
- 分筆をする際には、まず境界を確定する必要があります。
- やはり、曖昧なままで境界を勝手に決めることはできず、事前に調査が必要となります。
- 測量につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産売却の際に確認が必要な境界線の種類と3つの測量方法」の記事にあります「土地境界確定測量の説明」と「土地境界確定測量の測量手順」の項目をご覧ください。
- 場合によっては地積更正登記をする
- 測量した面積と登記されている面積が公差の範囲を超えている際には、地積更正登記が必要となります。
- 地積更正登記は、登記されている地積を正しい地積に修正するものです。
- こちらも上記の記事に記載しておりますので、併せてご確認ください。
- 各種手続き(分筆登記など)をする
- 分筆登記を行う際には、分筆登記申請と所有権移転登記が必要になります。
- 分筆登記申請をする際には、下記の書類を添付してください。
-
- 分筆登記の申請書
- 境界確認書
- 境界の同意書
- 境界の協定書
- 地積測量図
- 分筆登記を専門家の方(土地家屋調査士の方など)に依頼しますと、各事務所で異なりますが「約4~8万円」程度費用が掛かります。
- 加えて、分筆登記には登録免許税が掛かり、こちらは「分筆登記後の筆数 × 1,000円」となります。
- また、分筆登記を行ったとしても、分筆後の土地の所有権は共有者の方全員で持分を共有している状態です。
- 単独名義にするためには、それぞれの土地の持分を交換するために所有権移転が必要です。
- 所有権移転の手続きを司法書士の方に依頼した場合、「約3~5万円」程度費用が掛かります。
- 加えて、「共有物の分割」の際には、「土地の価格 × 0.4%」の登録免許税が掛かります。
分筆をお考えの際には、上記のことも踏まえてご検討ください。
メリットとデメリット
共有名義の不動産は、持分のみの売却ではそれが障害となる可能性も高いです。
分筆をしてから売却しますと、持分のみを売却する際と比べて、デメリットを大きく改善できます。
分筆をすることで売却価格が高くなりやすく、売却に掛かる時間も短縮できる可能性が高いです。
ただし、分筆は共有者の方や近隣の方、市役所の方などの承諾を得て実際に調査を行い、分筆登記を行わなくてはいけません。
売却を急がなくてもいいのであればゆっくりと話し合った上で分筆を行えますが、そうでなければこれが障害となるかもしれません。
分筆をするには費用も掛かりますので、金銭面のデメリットもあります。
上記のことを踏まえますと、分筆をしてから売却する方法には下記のようなメリットとデメリットがあります。
- 持分を売却するよりも高く売却しやすいこと
- 持分を売却するよりも早く売却しやすいこと
- 不動産の利用価値が高まること
- 不動産が単独所有となること
- 共有者の方に売却をしたくない方がいても分筆に応じてくだされば売却ができること
- 売却前に調査や登記などが必要となること
- 分筆のための費用が掛かってしまうこと
- 測量にあたって共有者の方や近隣の方などの承諾、立ち会いが必要なこと
売却をそこまで急いでいない方や、共有者の方が分筆に応じてくださる場合には、こちらの方法を選択してもいいかもしれません。
トラブル防止に必要なこと
分筆を行いますと、1つの土地が複数に分割されます。
その際には、境界線の位置についてよく話し合いをしてから決定することが大切です。
土地は分け方によって、大きく価値に差が出ることもあります。
全く同じように分割をすることも困難かもしれませんが、あまりにも大きな差が出ないように注意が必要です。
あまりにも大きく価値に差が出てしまえば、当然に共有者の方同士でトラブルとなる可能性も高まります。
各不動産によって立地や周辺の環境などが異なりますので、分筆の際にはこれらを踏まえて共有者の方とよく話し合いをしてから分割してください。
また、分筆をしたい土地上に建物がある場合も注意が必要です。
分筆をしたい土地上に建物がある場合、分筆は行えるのですが、十分に効果が発揮されない可能性があります。
例えば、土地は共有ですが、その土地上の建物は売主の方以外の方(他の共有者の方など)が所有されている場合、土地の分筆自体は共有者の方などの承諾があれば行えます。
しかし、土地上の建物につきましては、そのまま所有者の方は変わりません。
そのため、土地を分筆した後に他の方が所有されている建物がご自身の土地にまたがっていても、そのまま土地上に建物を残しておかなくてはいけない場合があります。
建物の取り壊しにつきましては、地上権や賃借権、法廷地上権などの保護が関わります。
これらに保護されている建物は、所有者の方の同意なしでは取り壊せません。
反対にこれらの権利による保護がなければ、建物を取り壊した上で土地を渡さなければいけないことがあります。
(こちらは土地を分筆し、その土地上に売主の方が所有されている建物がある場合などに関係します)
いずれにせよ、トラブルとならないように話し合いを行って、どうするのかを決定することが大切です。
分筆後に問題が起こってしまっては取り返しがつきませんので、事前にこれらのことをよくお考えになってから行動に移してください。
分筆を行っても、その土地上に建物があれば(他の方所有)、売却をすることは困難です。
他の方が所有されている建物が建っている土地は殆どの方が購入を避けますので、分筆を行っても意味がありません。
共有者の方に売却をする方法
共有名義の不動産を売却する方法の1つに、共有者の方に売却するというものがあります。
こちらの方法は、共有者の方からお願いされた場合や、こちらから相談をして買い取ってもらうことが多いかもしれません。
共有者の方からお願いをされた方や、事情があって共有者の方に買い取って欲しい方などは、この方法を視野に入れてもいいかもしれません。
下記から共有者の方に売却する方法について記載しておりますので、売却方法でお悩みの方などは参考にしてください。
メリットとデメリット
共有者の方に持分を売却するのであれば、持分のみを売却してもそれが障害とならないことがあります。
第三者の方に持分のみを売却するのであれば、幾つかのデメリットがありました。
共有者の方に売却をするのであれば、そのデメリットが大きく軽減される可能性が高いです。
特に共有者の方からの申し出であれば、何かしらの事情があることも多いです。
こうなりますと買主の方を探す必要もありませんので、すぐに売却ができるというメリットもあります。
ただし、その分話し合いが上手くいかなければ、普通に売却をするよりも期間が長引いてしまいます。
共有者の方も売却を考えており、お互いの考えが大きく食い違っていれば、こちらの売却方法は向きません。
こちらの方法も、共有者の方の中にお1人でも反対をされる方がいらっしゃれば、売却をすることはできません。
話し合いによって解決をできることもありますが、話がまとまらなければ他の方法を検討する必要があります。
上記のことを踏まえますと、共有者の方に売却をする方法には下記のようなメリットとデメリットがあります。
- 話し合いが上手くいけば早期売却ができること
- 売却前に分筆や名義について考える必要がないこと
- 持分のみでもそこがデメリットとなり辛いこと
- 話し合いが長引けば普通に売却をするよりも長引くこと
- お互いの考えが異なり、共有者の方に反対の方がいれば、売却自体ができないこと
- 買い取りたい共有者の方が複数人いる場合は、話し合いが長引きやすいこと
共有者の方が買い取ってくださる場合で、話し合いもスムーズにできるのであれば、こちらの方法が向いております。
トラブル防止に必要なこと
共有者の方に売却をするのであれば、話し合いが重要となります。
上手く話し合いができないのであれば、多くのトラブルに繋がります。
トラブルを防ぐためには、まず共有者の方全員の意見を尊重しつつ、慎重に話し合うことが大切です。
お2人で共有をされている不動産であれば、話し合いを行いやすいですが、そうでなければ注意が必要です。
3人以上で共有をされている場合、売主の方以外の複数人の共有者の方がその不動産を買い取りたいということもあり得ます。
この方法を選択するのであれば、共有者の方全員の承諾が必要ですので、話し合いが長引けば売却に時間が掛かります。
説得が困難であれば、他の売却方法を選択するほうがいいかもしれません。
話し合いで強くご自身の意見を通そうとするのも、トラブルを招く原因です。
不動産は今後にも大きく関わることですので、多くの方はご自身が損にならないように慎重になります。
そこでご自身のことだけを考えた発言ばかりをしてしまいますと、関係悪化にも繋がりやすいです。
1人の名義にして売却をする方法
共有名義の不動産を売却する方法の1つに、1人の名義にして売却するというものがあります。
こちらの方法は、共有名義の不動産を1人のものにしてから売却するという方法です。
名義を1人にしてから売却をしたいという方は、この方法を視野に入れてもいいかもしれません。
下記から1人の名義にして売却する方法について記載しておりますので、売却方法でお悩みの方などは参考にしてください。
メリットとデメリット
共有名義の不動産を1人の名義にしてから売却をされる場合、それは共有不動産ではありません。
単独所有の不動産であれば、通常の不動産と変わりなく売却ができます。
共有不動産よりも買い手を見つけやすく、価格も著しく低下することは少ないです。
こうすることで共有名義の不動産を売却するデメリットが大きく改善される反面、この方法は大きなデメリットもあります。
それは「贈与税」が掛かってしまう場合があるという点です。
単独所有にする際に、対価なし、又は著しく低い対価で共有者の方から不動産の譲渡を受けた場合、それは「贈与」とみなされます。
「贈与」を受けた場合、「贈与税」を納税しなくてはいけません。
共有者の方に必要な対価を支払って不動産の譲渡を受けた場合、贈与とはならず、贈与税の納税義務はありません。
ただし、持分を相応な価格で購入するのであれば、それなりの金銭を準備する必要がありますので、こちらの場合もここが大きなデメリットとなる可能性があります。
これらのことを踏まえた上で、どちらのほうが結果的に有利かどうかよくお考えになってください。
なお、購入をする場合でも贈与の場合でも、共有者の方全員の承諾を得る必要があり、加えて所有権が移転しますので、「不動産取得税」や「登録免許税」などが掛かります。
上記のことを踏まえますと、1人の名義にする売却方法には下記のようなメリットとデメリットがあります。
- 普通の不動産として売却ができること
- 売却時の手間が省け、書類の準備なども楽になること
- 対価なしに名義を変更する場合は「贈与税」が、購入をして名義を変更する場合は「購入代金」が掛かること
(「不動産取得税」、「登録免許税」などはどちらの場合も掛かります) - 共有者全員から承諾を得て所有権移転(購入又は贈与)が必要であること
売却前に手間をかけてでも1人名義で売却をするほうがいいという方は、こちらの方法が向いております。
トラブル防止に必要なこと
単独名義にする際には、「共有者の方の持分を買い取る方法」と「贈与」の2つがあります。
上記の2つの違いは、「その不動産に見合った対価を共有者の方に支払って譲渡を受けるかどうか」という点です。
対価なし、又は著しく低い対価で譲渡を受けた場合、それは「贈与」となります。
贈与となってしまいますと、「贈与税」が掛かります。
例えば、AさんとBさんのお2人で不動産を共有されている場合、お1人の名義にするためには所有権移転が必要となります。
Aさんがお1人の名義にするのであれば、Bさんから譲渡を受ける必要があります。
この時に対価なし、又は著しく低い対価で譲渡を受けた場合、AさんはBさんから「贈与」を受けたことになります。
それなりの対価で譲渡を受けた場合、こちらは「贈与」とはなりません。
「贈与」となってしまった場合、Aさんは「贈与税」の納税も必要です。
また、その贈与税をBさんが代わりに支払った場合、それも更に贈与となってしまいます。
上記のことをご存じでない場合、それがトラブルとなることもありますのでご注意ください。
相続により換価分割をする場合
不動産は相続によって得られることもありますが、このような場合では「換価分割」を選択する方もいらっしゃるかもしれません。
「換価分割」とは、遺産分割協議の結果、不動産を売却してその譲渡益を複数人で分配するという相続方法のことです。
この方法は公平に遺産の分配を行いたい、相続を現金で行いたい場合などに使われます。
遺産分割の調停によりこの方法を選択されるのであれば、多くの場合面倒を省くために、お1人の名義に相続登記をした上で売却を行います。
売却をした後に譲渡益を分配しますが、これでは「贈与税」の対象となるのではないかと疑問に感じられている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに贈与となってしまいそうな流れではありますが、上記の場合では譲渡益を分配しても「贈与」とはなりません。
これは国税庁のホームページでも、解説されております。
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。
出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/sozoku/13/01.htm)
相続の際に「換価分割」を選択されるのであれば、特に「贈与税」を意識する必要はありません。
この時注意が必要なのは、必ず遺産分割協議の割合と同じ割合で譲渡益を分配するという点です。
そうでなければ、それは贈与とみなされることがあります。
全体を売却して代金を分ける方法
共有名義の不動産を売却する方法の1つに、全体を売却して代金を分けるというものがあります。
こちらの方法は、共有者の方の承諾や協力を得て、名義変更などを行わずに共有不動産の権利を全て売却します。
不動産を売却した後、その売却代金や経費などは、持分によって分配します。
(確定申告も共有者の方全員が行う必要があります)
多くの共有者の方が売却に前向きである場合や、あまり売却価格を下げたくない方などはこの方法を視野に入れてもいいかもしれません。
下記から全体を売却して代金を分ける方法について記載しておりますので、売却方法でお悩みの方などは参考にしてください。
メリットとデメリット
共有不動産を持分のみ売却するのであれば、著しく売却価格が下がったり、売却までに時間が掛かったりすることが多いです。
こちらの方法は不動産全体を売却できますので、殆どの場合で上記のデメリットはなくなります。
しかし、その分今までの方法よりも共有者の方の承諾を得るのは難しくなります。
共有者の方全員に売却の意思があり、協力を得られる場合でないとこちらの方法は選択できません。
共有者の方の中にお1人でも売却を望まない方がいらっしゃれば、話し合いが必要となりますし、それでも承諾を得られないのであれば他の方法を選択する必要があります。
この方法では共有者の方全員が売主となり、一緒に売却を進めていきます。
手続きなども共有者の方全員で立ち会いますし、不動産売却時に必要な本人確認書類なども全員分が必要です。
上記のことを踏まえますと、全体を売却して代金を分ける方法には下記のようなメリットとデメリットがあります。
- 持分を売却するよりも高く売却しやすいこと
- 持分を売却するよりも早く売却しやすいこと
- 不動産の利用価値が高まること
- 共有者の方全員の承諾と協力が必要となること
- 売却時に手間が掛かる可能性があること
共有者の方全員が売却をする意思がある、又は説得により売却を前向きに検討してくださる可能性が高い場合には、こちらの方法を選択してもいいかもしれません。
トラブル防止に必要なこと
こちらの売却方法は、共有者の方の協力なしでは選択できません。
やはり、共有不動産全体を売却しますので、より共有者の方との話し合いが重要となります。
中にはご自身の持分は売却を行いたくないという方もいらっしゃいますので、そのような場合はその方を説得する必要があります。
ここの話し合いで話がもつれてしまいますと、売却は困難となります。
これが原因で共有者の方々と関係が悪化してもいけませんので、慎重に話し合うことが大切です。
全員が共有不動産の売却に前向きであり、お互いの協力を得ることが容易であれば、特に上記のことは気にする必要はないかもしれません。
そのような場合には、売却時(内覧時の対応やスケジュール調整など)にトラブルが起きないようにご注意ください。
売却方針や内覧時の対応などは、共有者の方全員で話し合って決定をする必要があります。
手続きの日程なども人数が多ければ合わせることが大変ですので、事前にお互いの予定を合わせておくと売却がよりスムーズに進みやすくなります。
利益や必要経費などの分配
この売却方法を選択された場合、1つの不動産に複数人の所有者の方がいらっしゃいます。
このような場合では、利益や必要経費などの分配に疑問を抱かれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
共有不動産を売却されたのであれば、利益や必要経費などはその共有者の方の持分によって計算します。
例えば、AさんとBさんが「1/2」ずつ所有されている不動産を売却された場合、その不動産の売却代金と売却に掛かった経費を「1/2」ずつにして譲渡益の計算を行います。
売却価格が「1,300万円」、取得費が「600万円」、譲渡費用が「300万円」の不動産では、下記のように譲渡益を計算します。
Aさん | 650万円 – ( 300万円 + 150万円 ) = 200万円 |
---|---|
Bさん | 650万円 – ( 300万円 + 150万円 ) = 200万円 |
上記のように特に難しい計算は必要ありませんので、持分に応じて分配してください。
共有不動産売却の委任
共有不動産を共有者の方全員が売主となって売却される場合、お互いのスケジュール調整などが必要となります。
しかし、中にはご事情により、スケジュール調整などが難しい方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合には、委任をして他の共有者の方に手続きなどをお願いすることも可能です。
委任をする場合には、ほぼ確実に「委任状」を作成します。
「委任状」は必ず必要なものではありませんが、多くの購入希望者の方はこれがなければ信頼をしてくださいませんし、書面がなければ共有者の方同士でも後にトラブルとなることもあります。
(不動産売却時の「委任状」などにつきましては、お手数をお掛け致しますが「不動産売却の契約を第三者に委任する場合は代理人が必要」の記事をご覧ください)
加えて、委任状を作成しても委任した共有者の方の売却意思を確認されることも多いため、この点にも注意が必要です。
なお、受任者の方がお1人で、他の全ての共有者の方が「一切の権限を委任する」とした場合、受任者の方が買主の方から売却代金を全て受け取ります。
この後に受任者の方から持分分の代金を受け取ることになりますが、ここで気になるのが受任者の方から売却代金を受け取ることで、それが「贈与」となってしまわないかという点です。
このような場合では、受任者の方から売却代金を受け取っても贈与とはなりません。
しかし、どうしてもここが気になる方は、売却代金の受領を委任しなければこの問題を解決できます。
売却代金の受領について委任をしなければ、買主の方から直接売却代金を受け取れます。
各共有者の方が買主の方から代金を受け取る場合、共有者の方全員が領収書を準備し、買主の方に渡す必要があります。
(これは委任をしない場合も同様です)
まとめ
共有名義の不動産を売却されるのであれば、面倒な点が多いです。
共有名義の不動産を売却する際には6つの方法を選択することができ、それぞれでメリットやデメリットも異なります。
どの売却方法を選択するか決定するには、共有者の方との話し合いが必要であり、殆どの売却方法はご自身の意思だけでは選択できません。
トラブルを防ぐためには、共有者の方同士の話し合いが大切であり、勝手な行動は関係などを悪化させる原因にもなります。
持分のみの売却はご自身の意思のみで可能ですが、その場合でも慎重に行動をする必要があります。
不動産は高額な取引となることが多いため、今後の人生にも大きく関係をする可能性が高いです。
後に後悔をする方法を選択しないように、事前に売却方法などを比較して、ご自身に合ったものを選択するようにしましょう。