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相続した不動産を売却する際の4種類の遺産分割方法と登記

      2017/11/30

不動産は高額な資産であり、殆どの建物や土地には所有者の方がいらっしゃいます。

通常、不動産の所有者の方は、登記事項証明書などに所有権者として記載がされているのが一般的です。

これにより、不動産の所有者の方とその方がお持ちの所有権を第三者に証明できます。

不動産の所有権は、一度登記がされますと、その後に登記をし直さない限りずっと継続されます。

不動産の所有権移転登記を行う状況は様々なものがあり、相続などもその中の1つです。

不動産の相続を受けた際には、その不動産の扱いについて適切な対処をとる必要があります。

相続不動産に相続人の方が住み続ける、売却をしてしまう、一定の期間そのままにしておくなど、状況によって様々な道が存在します。

これらのどの選択をした場合でも、将来的に必ずと言っていいほど必要となるのが「相続登記」です。

不動産の相続登記は、相続後の新しい所有者を第三者に示すために大切な手続きです。

このページでは、このような不動産を相続した際の相続登記などについてご説明致します。

目次

不動産売買時の相続登記の必要性

不動産を相続した際には、実質上不動産の所有者が被相続人から相続人へ変わります。

この場合、不動産自体の所有者が移行した状況に変わりはありませんが、登記上の所有権は以前と同じままです。

相続不動産の登記上の所有者を変更するためには、相続人が所有権を移転するための手続きである「所有権移転登記」を行う必要があります。

この手続きをしないまま不動産を所有していても、所有権は以前の所有者である被相続人という扱いとなります。

相続不動産の所有権移転登記は、法的義務ではありませんので、登記をしないからといって違法となってしまう訳ではありません。

その影響で、相続登記を行わない状態で相続不動産を所有することも可能です。

とはいえ、登記上の所有権を変更しないまま相続不動産を所有しますと、様々な面でトラブルが起こってしまう可能性も否めません。

例えば、後に該当不動産の売却を考えた際などに、売却がスムーズに行えなくなってしまうケースも多くあります。

不動産の所有者が登記上の所有者と一致していない状態では、通常は不動産の売買を行えないのが一般的です。

相続不動産を売り出す際には、事前に相続登記を行っておくケースも多いですが、時には都合により買い手が見つかってから登記を変更するというケースもあります。

その場合、事前に相続登記をしている場合の売却活動とは少々異なった手続きなどが必要となります。

不動産の相続登記をしている場合と、していない場合の違いにつきましては下記で詳しくご説明致します。

相続登記をしている状態の場合

不動産を相続した際には、その対処について頭を抱える場合もあります。

今まで思い出のある不動産なら、尚更どのように扱って良いのか悩んでしまう場合も多いものです。

そうして不動産の管理や状態、環境などを総合的に判断した結果、売却という道を選択するケースもあります。

不動産を売却する際には、登記上の所有者と売主の方が一致していなくてはなりません。

これにより、第三者が勝手に不動産を売り出してしまうという事態を防ぐ効果を期待できます。

このような犯罪を防ぐという意味では、登記上の所有権の記載は非常に重要です。

その一方で、相続不動産を売却したい際には、通常の不動産と比べて少々手間が掛かります。

登記上の所有者と売主の方が一致していないと売却ができないというのは、相続不動産であっても例外はありません。

相続不動産の所有者を相続人と一致させるためには、不動産の相続登記が必要です。

相続登記は、通常の所有権移転登記とは異なり、登記済権利証や登記識別情報通知などの情報の準備は必要ありませんが、登記を行うためにいくつかの手続きが必要となります。

相続登記と各種権利証の詳しい説明につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要な登記識別情報ともう1つの権利証」の記事にあります「相続した不動産の権利証」の項目をご覧ください。

また、相続登記を行う際の大まかな手順につきましては、同ページの
相続登記を委任する際の手順」と
相続登記をご自身で行う際の手順
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

相続登記を行った上で不動産の売却を行った場合、売却時には既に登記上の所有者が相続人へと変わっております。

この状態で相続不動産を売却した場合、スムーズに買主の方へ所有権移転登記を行えます。

相続登記をしていない状態の場合

不動産などを相続した際には、いつまでに相続登記をしなくてはならないという規定はなく、基本的にいつ行うかは相続人の自由です。

とはいえ、これは相続不動産を売却しない場合の話です。

相続不動産を売却する際には、既に記載しましたが、後に必ず所有権を他の方に移す所有権移転登記が必要となります。

そのためには、相続登記を事前に行っておかなくてはなりません。

不動産を売却した際に所有権移転登記が必要となるのは、不動産の買主の方が見つかった際です。

その際に所有権移転登記を行える状態としておけば、不動産を譲渡する際に所有権移転登記を行えます。

これらの影響で、買主の方へ不動産を引き渡す(所有権移転登記)際に、間に合うように相続登記を完了すると約束をすれば、相続不動産の売り出し自体は行えるのが一般的です。

ただ、相続登記を終えていない状態での不動産売買は、様々なトラブルの原因となる可能性があります。

時には、重大な問題などにより、土壇場で相続登記ができない状況に陥ってしまったという事例も存在します。

相続登記に関するトラブルは、売主の方でさえ想定していなかったような問題により引き起こされる場合も少なくありません。

相続登記の際に重大な問題が起こってしまった場合、最悪は売買契約自体が破棄され、多額の損害賠償や違約金などの支払いが必要となってしまう場合もあります。

相続登記を行う前に相続不動産を売り出す際には、後に確実に登記を行える状態であると確認した上で選択するようにしてください。

相続不動産を売却する際の特例

被相続人から不動産などを相続した際には、その財産の価値に応じた相続税の支払いが必要です。

その後、相続不動産を売却しますと、今度はその譲渡益に応じて「譲渡税」の支払いも必要となります。

相続不動産を売却する際には、上記のように相続税と譲渡税の2つの二重課税がされる状態となってしまいます。

このような状況を考慮し、相続不動産などを売却する際には、特殊な特例を受けられる場合があります。

不動産売却に関わる手取り金を少しでも増やすためには、ご自身が受けられる特例を適用しておくことも大切です。

この項目では、相続した不動産を売却する際に適用ができる特例についてご説明致します。

相続税の取得費加算の特例の概要

相続により取得した不動産を売却する際には、相続税と譲渡税の2つの支払いが必要となります。

これらの合計金額を少しでも減らすためには、不動産売却に係る特例の適用を受けると効果的です。

相続した不動産を売却する際には、
「相続税の申告期限の翌日から3年以内に売ったほうが得になる」
といったような話を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。

これは、相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続不動産を売却しなくては、せっかくの特例を受けられなくなってしまうからです。

相続税の申告期限の翌日から3年以内に不動産を売却した際には、「相続税の取得費加算の特例」という特例を受けられる可能性があります。

この特例を適用した場合、不動産を相続した際に納付した相続税の一部を、不動産の取得費に加算できるようになります。

不動産の取得費とは、売却した不動産を購入した際に掛かった費用の合計金額のことです。

取得費は、後に不動産の譲渡税を計算する際に、重要な役割を持ちます。

不動産の譲渡税は、不動産の譲渡益(売却価格)を基(課税譲渡所得)として、それに定められた税率を掛けて計算します。

この課税譲渡所得が少ないほど、後の譲渡税は少なくなります。

通常、課税譲渡所得を計算する際には、不動産の譲渡益から取得費などを差し引いて計算をします。

その影響で、取得費が多くなりますと、後の不動産の譲渡税の削減に繋がります。

詳しい取得費に関する説明につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却した際の税金計算時の取得費に計上ができる費用」の記事にあります「不動産売却時の取得費とは?」の項目をご覧ください。

相続税を取得費へ加算できますと、その分、後の譲渡税を減らせるため手取り金額の向上を期待できます。

相続税の取得費加算の特例の適用要件や加算できる相続税の金額の計算方法などにつきましては、お手数をお掛け致しますが、「相続不動産を売却する際の取得費の特例と2種類の税金計算」のページをご覧ください。

相続登記を待ったほうが良い状況

不動産の相続登記は、相続が発生した際にすぐに行うのが理想的だと言われております。

相続後にすぐ行えない場合でも、なるべく早くに登記を行うのが推奨されているのが通常です。

ただ、すぐに相続登記を行ったほうが良いというのは、時に例外も存在します。

何故なら、土地を相続した際には、「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」という特例を受けられる可能性があるからです。

「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」では、一定要件を満たしていれば、
定められた土地面積に対して相続税の課税価格に算入すべき価額を一定の割合で減らせるようになります。

これにより、後の相続税を大幅に減らせるため、大きな節税に繋がります。

「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」は、相続税に対する特例であるため、相続税申告の際に併せて特例の適用を申請する必要があります。

万が一、相続税申告前に相続登記を完了してしまいますと、税制上の問題から特例を受けられなくなってしまう可能性も出てきます。

元々、特例を適用できない状態の場合は問題ありませんが、そうでない場合には相続登記の前に相続税申告などを行っておくと安心です。

不動産売却時の相続登記の時期

相続不動産を売却する際に必要な相続登記は、主に下記の2パターンを選択できます。

  1. 不動産を売り出す前に相続登記を行う
  2. 不動産を売り出した後に相続登記を行う

相続により取得した不動産は、相続登記をしなくても特に違法などにはなりません。

相続登記にはそれ相応の費用や手間などが必要となるため、一旦そのままにしてしまうケースもあります。

相続不動産を売却しようとお考えの場合でも、売却活動を始めてから相続登記を行う方法を選択する方もいらっしゃいます。

確かに、不動産の売却活動は、不動産の相続登記が終わっていない状態でも行えます。

相続不動産を売却する際に、先に相続登記を行っておくのか、後に行うのかは売主の方の自由です。

通常は、相続登記を行った上で不動産を売却する流れが多いですが、状況などによっては例外もあります。

時には、意図的に相続登記を後にするケースもあり、ご自身の状況に応じて効果的なほうを選択する必要があります。

この項目では、
「不動産を売り出す前に相続登記を行った場合」と、
「売り出した後に相続登記を行った場合」
のそれぞれのメリットとデメリットについてご説明致します。

先に相続登記を行うメリット・デメリット

相続不動産を売り出す前に相続登記を行った場合、様々な面でメリットがあります。

例えば、相続登記をした上で不動産を売却しますと、買主の方へ所有権を移転する際に相続登記をしなくても済みます。

これにより、後の不動産の引き渡しの際にスムーズな取引をしやすくなるというメリットがあります。

更に、いつ不動産が売れたとしても所有権移転登記がすぐにできるため、買主の方との都合も合いやすくなります。

後に諸事情により相続登記が行えないなどのトラブルが起こってしまいますと、
多額の違約金や損害賠償などが必要となる可能性もあります。

先に相続登記を終えた上で売却活動を始めれば、相続登記に関する問題も起こりません。

ただ、先に相続登記を行ってから不動産を売り出す際には、多少のデメリットも存在します。

相続が発生した際に、財産の相続を受けるのは1人であるとは限りません。

時には1つの不動産を複数人で相続する場合もあり、その影響で相続人同士の諸事情により、相続登記に時間が掛かってしまう可能性もあります。

相続登記に時間が掛かってしまいますと、それだけ不動産を売り出すのが遅くなってしまいます。

先に相続登記をしてから不動産を売り出す際のデメリットはこの程度ですが、これらのメリットデメリットはあくまで一例ですので、ご自身の状況と照らし合わせた上で最終的な選択をするようにしてください。

【不動産を売却する前に相続登記をする際の主なメリット・デメリットの一例】

メリット
  • 不動産の所有権移転登記をスムーズに行える
  • 相続登記の兼ね合いなどを考えなくてよいため、買主の方との都合も合わせやすい
  • 後に相続登記ができないなどのトラブルが無くなる
など
デメリット
  • 相続人の人数や状況などによって相続登記に時間が掛かり、不動産の売り出すのが遅くなる可能性がある
など

後に相続登記を行うメリット・デメリット

相続不動産を売り出した後に相続登記を行う場合、後の所有権移転登記までに相続登記を行います。

相続登記を行う際には、相続人の人数や状況などによってその完了期間が左右されます。

相続登記を行う前に不動産を売り出しますと、相続登記に関係なくすぐに売り出せるというメリットがあります。

とはいえ、後のトラブルには十分な意識が必要です。

相続登記をする前に不動産を売り出す場合、後に確実に相続登記ができる状態としておかなくてはなりません。

相続人が複数いたり、状況が複雑であったりする際には、売り出し中の間に各問題を解決していくなどの対処が必要です。

後の相続登記が必要な場面までに登記を完了できなかった場合、買主の方から契約破棄などを求められるケースもあります。

期限までに相続登記を行えないというのは、売主側に非がある状況ですので、多額の違約金や損害賠償などの支払いが必要となる可能性も出てきます。

買主の方によっては、相続登記の完了まで取引を延ばしてくださる場合もありますが、どちらにしても取引をスムーズに行えないという面でデメリットといえます。

最悪は、状況の複雑化などにより相続登記自体ができなくなり、結局売買契約の破棄に繋がってしまうケースもあります。

相続登記をする前に不動産を売り出しますと、このようにメリットよりもデメリットが目立ってしまうのが実情です。

相続登記を確実にできる状態である場合以外は、状況に応じて選択するようにしてください。

【不動産を売却した後に相続登記をする際の主なメリット・デメリットの一例】

メリット
  • 相続登記の完了時期に関係なくすぐに不動産を売り出せる
など
デメリット
  • 定められた期限までに相続登記を完了できなかった場合、多額の違約金や損害賠償が必要となる可能性がある
  • 不動産の所有権移転登記などをスムーズに行えない可能性がある
  • 諸事情により最終的に相続登記ができず、売買契約が破棄されてしまう可能性がある
など

相続時の法定相続分とは

法定相続人が1人である場合には、その1人が全ての財産を相続しますが、複数人である場合には財産の分配が必要です。

遺言書がある場合や相続人同士で話し合いなどした際には、その割合に応じて財産を相続するのが通常です。

「相続の際に遺言書が作成されておらず」、
「相続人同士による話し合いなども行われない場合」
には、「法定相続分」という規定に基づいて財産を分配します。

法定相続分とは、法律により定められた相続できる財産の権利や割合のことで、被相続人と相続人の続柄によりその権利や割合が異なります。

不動産を法定相続分により相続する際には、それぞれの法定相続分の割合に応じて、相続人が不動産を共有します(共有不動産となります)。

これらの状況をよく把握するためには、法定相続分の内容を把握しておくことも必要です。

この項目では、このような相続が発生した際の法定相続分について詳しくご説明致します。

なお、以前は摘出子と比べて非摘出子の法定相続分は少なく設定されておりましたが、
現在は、25年12月5日に成立した法の改正により、非摘出子(婚外子)と摘出子の相続分は同等となりました。

摘出子
婚姻関係にある男女の間に生まれた子が該当します。
非摘出子
婚姻関係のない男女の間に生まれた子が該当します。

下記の項目での法定相続分は、摘出子であっても非摘出子であっても同じように計算をします。

相続人が配偶者と子の場合

相続人が被相続人の配偶者と子の場合、法定相続分は下記のようになります。

法定相続人:配偶者、子

【法定相続分】

配偶者
2分の1
2分の1
(子が1人でない場合には、相続分の2分の1を更に均等に分ける)

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の配偶者と2人の子(長男と次男)の3人の場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

配偶者
財産「3,000万円」の「2分の1」が分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
長男
財産「3,000万円」の「2分の1」である「1,500万円」が次男と均等に分配され、相続財産は「750万円」となります。
次男
財産「3,000万円」の「2分の1」である「1,500万円」が長男と均等に分配され、相続財産は「750万円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の配偶者と子の場合

相続人が被相続人の配偶者と子である場合には、このような法定相続分となります。

相続人が子のみの場合

被相続人の配偶者が既に亡くなられており、相続人が被相続人の子のみ場合、法定相続分は下記のようになります。

法定相続人:子のみ

【法定相続分】
子が全財産の相続を受ける
(子が1人でない場合には、人数で均等に分ける)

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の子(長男と次男)の2人の場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

子(長男)
次男と全財産の「3,000万円」が均等に分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
子(次男)
長男と全財産の「3,000万円」が均等に分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の子のみの場合

相続人が被相続人の子のみである場合には、このような法定相続分となります。

相続人が配偶者と親の場合

被相続人に子がおらず、相続人が被相続人の配偶者と親の場合、法定相続分は下記のようになります。

法定相続人:配偶者、親

【法定相続分】

配偶者
3分の2
3分の1
(両親の場合には、相続分の3分の1を更に均等に分ける)

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の配偶者と親(父と母)の3人の場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

配偶者
財産「3,000万円」の「3分の2」が分配され、相続財産は「2,000万円」となります。
財産「3,000万円」の「3分の1」である「1,000万円」が被相続人の母と均等に分配され、相続財産は「500万円」となります。
財産「3,000万円」の「3分の1」である「1,500万円」を被相続人の父と均等に分配し、相続財産は「500万円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の配偶者と親の場合※クリックやタップで拡大

相続人が被相続人の配偶者と親の場合には、このような法定相続分となります。

相続人が親のみの場合

相続人が被相続人の親のみ場合、法定相続分は下記のようになります。

法定相続人:親のみ

【法定相続分】
親が全財産の相続を受ける
(両親の場合には、2人で均等に分ける)

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の親のみの場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

親(父)
全財産の「3,000万円」が被相続人の母と均等に分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
親(母)
全財産の「3,000万円」が被相続人の父と均等に分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の親のみの場合

相続人が被相続人の親のみである場合には、このような法定相続分となります。

相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合

被相続人の両親が既に亡くなられており、相続人が被相続人の配偶者と兄弟姉妹の場合、法定相続分は下記のようになります。

法定相続人:配偶者、兄弟姉妹

配偶者
4分の3
兄弟姉妹
4分の1
(兄弟姉妹が1人でない場合には、相続分の4分の1を更に均等に分ける)

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の配偶者と2人の兄弟姉妹(兄と妹)の3人の場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

配偶者
財産「3,000万円」の「4分の3」が分配され、相続財産は「2,250万円」となります。
兄弟姉妹
財産「3,000万円」の「4分の1」である「750万円」が被相続人の妹と均等に分配され、相続財産は「375万円」となります。
財産「3,000万円」の「4分の1」である「750万円」が被相続人の兄と均等に分配され、相続財産は「375万円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の配偶者と兄弟姉妹の場合※クリックやタップで拡大

相続人が被相続人の配偶者と兄弟姉妹の場合には、このような法定相続分となります。

相続人が兄弟姉妹のみの場合

相続人が被相続人の兄弟姉妹のみの場合、法定相続分は下記のようになります。

法定相続人:兄弟姉妹

【法定相続分】
兄弟姉妹が全財産の相続を受ける
(兄弟姉妹が1人でない場合には、人数で均等に分ける)

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の兄弟姉妹(兄と妹)の2人の場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

全財産の「3,000万円」が被相続人の妹と均等に分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
全財産の「3,000万円」が被相続人の兄と均等に分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の兄弟姉妹のみの場合

相続人が被相続人の兄弟姉妹のみの場合には、このような法定相続分となります。

相続人が配偶者のみの場合

被相続人の両親が既に亡くなられており、子や兄弟姉妹もいないなど、相続人が被相続人の配偶者のみの場合、法定相続分は下記のようになります。

法定相続人:配偶者のみ

【法定相続分】
配偶者が全財産の相続を受ける

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の配偶者のみの場合」

被相続人の配偶者に全財産の「3,000万円」が分配され、相続財産は「3,000万円」となります。

【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の配偶者のみの場合※クリックやタップで拡大

相続人が被相続人の配偶者のみの場合には、このような法定相続分となります。

相続人が配偶者と子と孫(代襲相続人)の場合

代襲相続人とは、被相続人の子が被相続人よりも先に亡くなられた際に、その子の孫(亡くなられた子の子供)が子に代わり法定相続人となることです。

【代襲相続人の例】

下記のような続柄の親族を例にご説明致します。

Aさん
遺産の持ち主(被相続人)
Bさん
Aさんの子供(相続人)
Cさん
Bさんの子供(相続人の子供であり「Aさん」の孫)

「Aさん」の財産を受け取る予定であった「Bさん」が、「Aさん」が亡くなる前に既に亡くなられた場合に、「Bさん」の代わりにその子供である「Cさん」が「Aさん」の財産を相続するといった状況が代襲相続人に該当します。

相続人が被相続人の配偶者と子、孫(代襲相続人)の場合、
孫(代襲相続人)は、亡くなられた子が存在した場合と同様の扱いとなり、法定相続分も同様の割合となります。

これにより、相続人が被相続人の配偶者と子、孫(代襲相続人)の場合の法定相続分につきましては下記のようになります。

法定相続人:配偶者、子、孫(代襲相続人)

配偶者
2分の1
子と孫(代襲相続人)
孫(代襲相続人)と2分の1ずつ
(孫(代襲相続人)が1人でない場合には、相続分の2分の1を更に均等に分ける)
孫(代襲相続人)
子と2分の1ずつ
(子が1人でない場合には、相続分の2分の1を更に均等に分ける)

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の配偶者、子(長男と次男)と三男の子供である孫(代襲相続人)の4人の場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

配偶者
財産「3,000万円」の「2分の1」が分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
子と孫(代襲相続人)
子(長男)
財産「3,000万円」の「2分の1」である「1,500万円」が被相続人の子(次男)と孫(代襲相続人)と均等に分配され、相続財産は「500万円」となります。
子(次男)
財産「3,000万円」の「2分の1」である「1,500万円」が被相続人の子(長男)と孫(代襲相続人)と均等に分配され、相続財産は「500万円」となります。
孫(代襲相続人)
財産「3,000万円」の「2分の1」である「1,500万円」が被相続人の子(長男)と子(次男)と均等に分配され、相続財産は「500万円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の配偶者と子と代襲相続人の場合※クリックやタップで拡大

相続人が被相続人の配偶者と子、孫(代襲相続人)の場合には、このような法定相続分となります。

相続放棄者がいる場合の法定相続分

相続人の中に相続放棄をした方がいらっしゃる場合には、被相続人とどのような続柄の方でも法定相続分は0として扱われます。

財産の相続時には、そのまま他の相続人が相続放棄者をなかったことにして、相続分を分配します。

相続人に被相続人の配偶者と子(長男、次男、三男)がおり、そのうち三男が相続放棄をした場合の法定相続分は下記のようになります。

法定相続人:配偶者、子(長男、次男)

【法定相続分】

配偶者
2分の1
子(長男と次男)
2分の1
(子が1人でない場合には、相続分の2分の1を更に均等に分ける)
相続放棄した者(三男)
法定相続分は0(最初からいなかった扱いとなります)

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の配偶者、子(長男、次男、三男)の4人であったが三男が相続放棄をした場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

配偶者
財産「3,000万円」の「2分の1」が分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
三男が相続放棄をしたため、本来の法定相続分である2分の1が長男と次男のみで均等に分配されます。
長男
財産「3,000万円」の「2分の1」である「1,500万円」が次男と均等に分配され、相続財産は「750万円」となります。
次男
財産「3,000万円」の「2分の1」である「1,500万円」が長男と均等に分配され、相続財産は「750万円」となります。
三男
相続放棄をしているため、最初からいなかった扱いとなり、相続財産は「0円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の配偶者と子と相続放棄者の場合※クリックやタップで拡大

相続人が被相続人の配偶者と子で、その中に相続放棄者がいらっしゃった場合には、このような法定相続分となります。

内縁の妻とその子の法定相続分

相続人が被相続人の内縁の妻とその子の場合、内縁の妻には法定相続分がありません。

被相続人と内縁の妻との間の子には法定相続分が存在しますので、他に法定相続人がいらっしゃらない場合には、下記のような法定相続分となります。

法定相続人:子のみ

【法定相続分】

内縁の妻
法定相続分はなし
内縁の妻との子
全て相続

上記の法定相続分による分割の例につきましては、下記のようになります。

【例】

「相続人が被相続人の内縁の妻とその2人の子(長男と次男)の3人の場合」

この条件で被相続人が残した「3,000万円」を法定相続分で分けた場合の金額は次のようになります。

内縁の妻
内縁の妻には、法定相続分がありませんので、相続財産は「0円」となります。
内縁の妻との子
長男
全財産の「3,000万円」が次男と均等に分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
次男
全財産の「3,000万円」が長男と均等に分配され、相続財産は「1,500万円」となります。
【財産の分配の簡易図】
相続人が被相続人の内縁の妻とその子の場合

相続人が被相続人の内縁の妻とその子の場合には、このような法定相続分となります。

相続人が1人である場合の登記

財産の相続は、遺言書などがない限り、親族の方に決まった割合で分配がされます。

財産の相続時には、相続人が複数である場合も多いですが、1人のみであるという状況もあります。

相続人が1人である場合、被相続人の財産の全てを1人の相続人が引き継ぎます。

また、相続人が複数人いらっしゃる場合でも、他の相続人が相続放棄を行った際には、実質上相続人は1人であるとみなされます。

相続人が1人である場合の相続登記は単独で行えますので、事前に協議などを行う必要はありません。

財産の相続を受ける相続人は、主に下記の3つの系統があります。

  1. 相続人は被相続人の子又は代襲相続人
  2. 相続人は被相続人の直系尊属
  3. 相続人は被相続人の兄弟姉妹

上記のような続柄の方が相続登記を行う際には、法定相続人が1人であるという証明書の提出が必要です。
(相続放棄者がいらっしゃる場合には、「相続放棄申述受理証明書」も必要です)

法定相続人が1人であるという証明は、一般的には被相続人の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)などで行います。

必要書類は、被相続人と相続人の続柄で若干異なりますので、事前によくご確認ください。

なお、血縁関係の無い方へ遺言書などを用いて財産を譲るといった場合など、
親族の方以外に死後ご自身の財産を渡した場合は相続ではなく「遺贈」と呼びます。

【相続と遺贈の違い】

相続
被相続人と相続人の間に血縁関係がある場合
遺贈
被相続人と相続人の間に血縁関係がない場合

今回は、被相続人と血縁関係のある相続人が、1人で財産を相続した際に必要な証明書類について詳しくご説明致します。

相続人が子又は代襲相続人の場合

被相続人から相続を受けるのが、被相続人の子又は代襲相続人の場合は、比較的容易に法定相続人を確認できます。

被相続人の子や代襲相続人のいずれかの1人のみが相続人の場合は、他に法定相続人がいないという点を証明する書類の準備を行います。

法定相続人に関する親族などの続柄の確認は、被相続人の出生してから死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)などを用いるのが一般的です。

被相続人の戸籍謄本には、被相続人の子や代襲相続人に該当する全ての親族が記載されているのが一般的です。

これにより、戸籍謄本を確認しますと、相続人が被相続人の子又は代襲相続人のみであり、更に他には相続人といえる続柄の親族がいないと確認ができます。

相続登記の際には、多くの場合この戸籍謄本を併せて提出するだけですので、比較的登記の手間は少なく済みます。

相続人が直系尊属の場合

相続人が被相続人の直系尊属の場合も、子又は代襲相続人の場合と同様に、比較的容易に法定相続人を確認できます。

なお、直系尊属とは、自分よりも前の世代(先祖)の直通する系統の親族を指します。

子と親の関係が養子、養父母などの場合は、養子の直系親族は養父母となります。

自分の直系の親族以外は直系尊属とはなりませんので、配偶者の父母・祖父母、叔父・叔母などは直系尊属とはなりません。

また、自分よりも前の世代の親族以外は直系尊属となりませんので、同じ世代である兄弟姉妹なども含まれません。

【直系尊属に当たる親族の例】

  • 祖父
  • 祖母
  • 曾祖父
  • 曾祖母
  • 養父
  • 養母
など

このような被相続人の直系尊属が相続を受ける際には、子又は代襲相続人の場合と同様に、被相続人の出生してから死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)により、法定相続人の確認をするのが一般的です。

被相続人の戸籍謄本により、相続人に被相続人の直系尊属以外の相続人がいないという証明ができます。

相続登記の際には、直系尊属である方が唯一の相続人であるとの証明書面である、被相続人の戸籍謄本などを併せて提出します。

相続人が被相続人の兄弟姉妹の場合

相続の際には、民法により相続人の相続順位などが定められており、遺言書などが無い場合には、通常はこの順位が適用されます。

民法の規定では、

  1. 配偶者(常に相続人となる)
  2. 子(第1順位相続人)
  3. 直系尊属(第2順位相続人)
  4. 兄弟姉妹(第3順位相続人)

の順番で相続人の相続順位が決まります。

例えば、被相続人に配偶者と子又は代襲相続人がいる場合には、配偶者と第1順位相続人である子が相続人となります。

被相続人に配偶者がおり、その間に子又は代襲相続人がいない場合には、第2順位相続人である直系尊属が相続人となります。

そうして、被相続人に配偶者がおらず、尚且つ子又は代襲相続人や直系尊属がいない場合には、被相続人の第3順位相続人である兄弟姉妹が相続人となります。

相続人が被相続人の兄弟姉妹の場合、被相続人に第3順位相続人よりも高い順位の相続人(子や直系尊属など)がいないとの確認が必要となります。

その際には、被相続人の被相続人の出生してから亡くなるまでの戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)などに加え、直系尊属が亡くなられたと記載のある除籍謄本なども準備をしなくてはなりません。

これらの書面により、第3順位相続人である兄弟姉妹以外に相続人がいないと確認がされますと、唯一の法定相続人として認められます。

相続人が複数の場合の登記申請者

財産の相続時には、相続人が複数人存在するケースもあります。

相続人が複数人いらっしゃる際には、財産の分配や権利の部分で揉め事が起こるケースも少なくありません。

本来、相続財産の分配割合は、法定相続分により定められております。

詳しい法定相続分の説明につきましては、同ページの「相続時の法定相続分とは」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください、

この法定相続分による相続財産の分配は絶対ではなく、遺言書などがある場合や遺産分割協議を行った場合には、その割合を変更できます。

財産の相続を複数人で受ける際には、このように法定相続分により相続する方法と、法定相続分以外の方法で分配する方法の2つがあります。

  1. 法定相続分により財産を分配する方法
  2. 法定相続分以外の割合で財産を分配する方法

相続登記を行う際には、相続人が法定相続分により相続をするかどうかで、登記の方法が変わってきます。

これらの登記方法の違いにつきましては、下記の項目で詳しくご説明致します。

法定相続分により相続する場合

本来、相続人が複数人の場合には、通常はその全員で相続登記を行う必要があります。

ただし、財産の相続の方法によっては例外も存在します。

それは、被相続人の財産を法定相続分により分配して登記する場合です。

相続人全員が、法定相続分により相続を行う場合、相続人全員の登記を1人の相続人が行えるようになります。

例えば、法定相続人が被相続人の配偶者と子である長男と次男の3人だったとします。

この3人が法定相続分に応じて財産を相続した場合は、3人で相続登記を申請する必要はありません。

正確には、この中の誰かが法定相続人全員の相続登記を申請するだけで登記が完了します。

登記の際の登録免許税は、通常通り3人分必要となりますが、登記の手間を大きく省けます。

登記の際に必要な登録免許税は、それぞれの法定相続人が相続した財産の価額に定められた割合を乗じて計算をします。

相続登記時の登録免許税などの必要費用につきましては、同ページの
相続登記を委任する際の費用」と
相続登記をご自身で行う際の費用
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

なお、1人の相続人が他の相続人の相続登記を申請する際には、通常は委任状などの作成は不要ですが、実際は委任状の作成が必要となると考えておく必要があります。

何故なら、不動産の相続登記を1人の相続人のみが行った場合、その1人にしか登記識別情報が発行されないからです。

これでは相続不動産の一部のみの登記識別情報しか発行されていない状態となり、売買の際に面倒な手続きが必要となります。

相続人全員に対して登記識別情報の発行を望む場合には、登記を委任する旨を記載した委任状の作成をしておかなくてはなりません。

作成した委任状の委任事項には、登記識別情報の受領に関する件も忘れずに記載しておく必要があります。

法定相続人のうち、1人が相続登記を行う際には、委任状の作成を忘れずに行うようにしてください。

法定相続分以外の割合で相続する場合

財産の相続時に被相続人の遺言書などがない場合には、その財産を相続人全員が法定相続分の割合で共有している状態となります。
(相続した財産が不動産であった場合、その不動産を法定相続分の割合で共有している状態です)

共有不動産を売却する際には、通常は共有名義人全員の同意が必要となります。

法律上、自分の持分に該当する所有権のみを他の方に売るというのは可能です。

ただ、共有不動産の一部の所有権のみを購入する方は、ほぼいないといっても過言ではありません。

このような現状から、実質上共有不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要となります。

共有不動産の売買は、少人数の共有であれば問題なく進む場合もありますが、通常は少々ややこしい状況となってしまうのが一般的です。

このような事態を回避するためには、財産を法定相続分以外の割合で相続する必要が出てきます。

法定相続分以外の割合で不動産などを相続する際には、相続登記の前に「遺産分割協議」などが必要となります。

遺産分割協議により相続人全員の合意を得られなくては、それに基づいた登記なども行えませんので、場合によっては相続登記までに時間が掛かてしまう可能性もあります。

遺産分割協議につきましては、同ページの「相続時の遺産分割協議とは」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

遺言書の検認手続きとは

相続が発生した際に遺言書が存在する場合には、その遺言書の内容の確認が必要です。

遺言書には、大きく分けて「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つの種類があります。

これらの書面は、内容自体は同じでも、その作成方法や効力に大きな違いが存在します。

【公正証書遺言と自筆証書遺言の違い】

公正証書遺言
公正証書遺言とは、被相続人が公証人役場へ赴き、公証人に作成をして貰った遺言書です。
公証人が作成した遺言書という点で、信ぴょう性が高く、民法で決められた遺言書記載についてのルールも守られた書面の作成がされます。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、被相続人が直筆で個人的に作成をした遺言書です。
被相続人がご自身で作成した書面という点で、民放で決められた遺言書記載についてのルールが守られていない可能性があります。
【遺言書記載の際のルール】

  • 被相続人が遺言書の全文を書く
  • 被相続人が遺言書を作成した際の日付を書面に記載する
  • 被相続人が遺言書の書面に署名をする
  • 被相続人が遺言書に押印をする

これらの影響で、自筆証書遺言の場合には、相続登記の前に遺言の内容を確認するために、「検認手続き」が必要となります。

検認手続きの詳細につきましては、下記の項目で詳しくご説明致します。

遺言書の検認手続きに必要な書類

遺言書の検認手続きを家庭裁判所に申し立てるためには、事前に必要書類を準備しておく必要があります。

必要書類が家庭裁判所に提出されませんと、検認自体の申し立てが却下されてしまいます。

遺言書の検認手続きの申し立てに必要な書類は、主に下記のようになりますので、各自で準備を行います。

なお、状況などによっては下記以外の書類の提出も必要となる可能性がありますので、その際には追加で準備をするようにしてください。

【遺言書の検認手続きに必要な書類の例】

申立書
遺言書の検認の申立てをする場合には、専用の申立書に必要事項を記入します。
その際の申立書のダウンロードは、下記のリンクから行えます。
ダウンロード→裁判所ウェブサイト:「家事審判申立書
申立書の記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(遺言書検認)
標準的な添付書類
【共通】
  • 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】
上記の【共通】に加えて下記の書類が必要となります。

  • 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))で死亡している方がいらっしゃる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
【相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合】
上記の【共通】に加えて下記の書類が必要となります。

  • 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)本
  • 代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

これらの必要書類を準備した上で家庭裁判所へ提出しますと、遺言書の検認手続きが開始されます。

遺言書の検認手続きの流れ

相続が発生した際に遺言書がある場合には、通常はその内容に沿った相続を行います。

ここで注意が必要となるのは、残されていた遺言書が「自筆証書遺言」であった場合です。

自筆証書遺言は、例え被相続人が確実に作成したと証明できる書面であっても、そのままでは後の登記などが行えません。

自筆証書遺言により相続財産の相続登記を行うためには、既に記載をしましたが、事前に「遺言書の検認手続き」をしておかなくてはなりません。

遺言書の検認手続きを行うためには、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に遺言書の検認を申し立てる必要があります。

その際には、裁判所により検認手続きが行われた日時点における遺言書の
「形状」、
「加除訂正の状態」、
「日付」、
「署名」
などの内容が明確にされ、遺言書の偽造・変造の防止がされます。

遺言書の検認は、主に下記のような流れで行われます。

家庭裁判所へ検認の申立
遺言書が公正証書遺言以外の書面である場合には、家庭裁判所へ検認の申し立てを行います。
家庭裁判所から関係者に検認期日が通知される
家庭裁判所に検認の申立がされますと、裁判所から申立人と相続人に対して検認期日が通達されますので、その日に裁判所へ出頭します。
関係者立会いのもとで遺言書を開封する
検認期日には、集まった申立人と相続人の立会いのもとで遺言書が開封されます。
なお、検認期日には申立人以外の相続人は欠席をしても検認を行えます。
家庭裁判所により遺言書の確認がされる
家庭裁判所により遺言の形状、遺言書に書かれていた日付、署名、印などの内容が確認されます。
その結果は、裁判所により「検認調書」にまとめられ、立ち会わなかった申立人、相続人、受遺者その他の利害関係人に対しては、検認手続きが行われた旨が通知されます。
申立人又は相続人が検認済証明書を請求する
遺言書に検認がされた証明である「検認済証明書」を付けるために、裁判所に検認済証明書の申請を行います。

これら一連の手続きには、約1ヶ月程度掛かりますので、お急ぎの方は早めに手続きを行っておくと安心です。

遺言書の検認手続きに必要な費用

遺言書の検認手続きには、相応の費用が必要となります。

遺言書の数に応じた収入印紙や切手代、書類の収集費用など、様々な出費が必要です。

これらの出費を把握しておきますと、後に想定外の出費が必要となってしまう可能性を抑えられます。

遺言書の検認を申し立てる際には、大きく分けて下記の3つの費用が発生します。

  • 遺言書の検認申立の際に納める費用
  • 遺言書の検認申立に必要な書類を集める費用
  • 遺言書の検認を行う際に依頼した弁護士又は司法書士の費用(依頼していない場合には不要)

これらに分類される費用を全て合計した金額が、遺言書の検認に必要な費用となります。

それぞれの費用の大まか目安につきましては、下記のようになります。

【遺言書検認の費用の一例】
申立書の収入印紙代 800円
切手代 裁判所により異なります
必要書類の収取費用 数千円~数万円

(表の下のリンク先を参照)
弁護士又は司法書士の費用 3万円前後~10万円前後

(交通費などがある場合には別途請求)

戸籍謄本などの必要書類の取得費用につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「その他登記に必要な費用の目安」の項目をご覧ください。

なお、これらの費用はあくまで目安であり、実際は異なる可能性もありますのでご注意ください。

上記の表のうち、確実に必要となるのは収入印紙代、切手代、必要書類の収集費用となります。

遺言書の検認を司法書士の方や弁護士の方に委任しますと、更に必要費用は多くなります。

案件の難易度により、それぞれ必要な報酬は異なりますので、事前に依頼先の司法書士の方・弁護士の方にお問い合わせください。

遺産分割を行う際の分割方法

相続財産の遺産分割を行う際には、相続財産とその相続分を決める以外にも、
相続財産をどのように処理し、どのように分割するのかなども話し合いをするのが一般的です。

特に相続財産に不動産などが含まれる際には、遺産分割の方法についてよく話し合っておく必要があります。

不動産を共有名義として相続登記をした場合、後に様々なトラブルのもととなってしまう場合も少なくありません。

不動産の相続などにおいてトラブルを防ぐためには、遺産分割の方法を十分に検討しておくことが必要です。

遺産分割時には、主に下記の4つの方法があり、それぞれ遺産の分割方法に相違があります。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有分割

これらの説明につきましては、下記で詳しくご説明致します。

遺産分割時の現物分割

遺産分割を行う際に一般的に行われる方法は、この現物分割となります。

現物分割では、それぞれの相続人が、相続分に応じた相続財産をそのままの形で相続します。

例えば、相続財産に
「土地」、
「建物」、
「現金」
があり、その財産を「Aさん」、「Bさん」、「Cさん」の3人で相続する必要があるとします。

3人は遺産分割協議を行い、
「Aさん」が土地を、
「Bさん」が建物を、
「Cさん」が現金を
相続すると決めた場合、それぞれの相続人がそのままの形で各財産を相続します。

このような場合が、現物分割により財産を相続した状況です。

相続財産を現物分割した場合、財産自体の分割がしやすいですが、分割の方法によっては問題もあります。

上記の例では、
「土地」、
「建物」、
「現金」
の3つがありますが、これらの財産としての価値は全てが同等であるとは限りません。

例えば、
「土地」が時価1,500万円
「建物」が時価1,000万円
「現金」が500万円
であった場合には、結果的に
「Aさん」が1,500万円分、
「Bさん」が1,000万円分、
「Cさん」が500万円分
の財産を相続した状態となります。

このように現物分割は、公平な分配が必要な場面では選択ができない可能性があります。

遺産分割時の換価分割

相続財産が、現物分割では公平に分配できないなどの問題がある場合には、この換価分割が選択されるケースもあります。

換価分割では、不動産などの財産を事前に換金し全て現金となった状態で、その現金を相続人の相続分に応じて公平に分けます。

例えば、相続財産に
「土地」、
「建物」、
「500万円の現金」
があり、その財産を「Aさん」、「Bさん」、「Cさん」の3人で相続する必要があるとします。

その際に、3人が換価分割により財産の相続を行うと決めた場合、
一旦土地や建物などを、誰か1人の相続人で相続登記を行う又は、法定相続分により共有名義で相続登記を行います。

ここで法定相続分以外の方法による相続を選択した場合には、事前に遺産分割協議が必要となります。

協議の結果、「Aさん」が単独で土地と建物の相続登記を行い、売却をした後にその売却益を「Bさん」と「Cさん」に公平に分けると決まったとします。

遺産分割協議の後には、その内容を記載した遺産分割協議書の作成を行い、登記のために必要な書類を集めた上で、「Aさん」が土地と建物の相続登記を行います。

そうして不動産を売却した後、売却に伴う譲渡税などの支払いを行い、残った金額を3人で分けます。

例として、不動産を売却した後の手取り金が
「土地が1,500万円」、
「建物が1,000万円」、
であった際には、元々の相続財産であった「現金500万円」と合計した「3,000万円」を3人で分けます。

3人で取り決めた相続分は、3人が公平に金額を分けるという内容ですので、この後
「Aさんが1,000万円」
「Bさんが1,000万円」
「Cさんが1,000万円」
を受け取ります。

換価分割では、このように公平に分け辛い財産を公平に分ける際に効果的な手段となります。

遺産分割時の代償分割

相続財産に不動産がある際に、その不動産に住んでいる相続人がおり、これからも住み続けたいとお考えの場合などには換価分割ができない恐れがあります。

このような場合には、代償分割といった方法が選択される場合もあります。

代償分割とは、ある相続人が不動産などの財産を全て相続する代わりに、他の相続人に対して相応の他の財産や金銭を交付する方法です。

例えば、相続財産が
「不動産」
であり、その財産を「Aさん」、「Bさん」、「Cさん」の3人で相続する必要があるとします。

しかし、その不動産は「Aさん」が被相続人と一緒に住んでいた住宅であり、これからも「Aさん」が住み続けたいとお考えの場合には、換価分割などは選択できません。

このような場合に、不動産自体の相続を「Aさん」のみが行い、「Bさん」と「Cさん」には、本来の相続分に応じた金銭を交付する決めた場合が代償分割です。

「Aさん」の相続した不動産の「時価が3,000万円」であり、それぞれの相続分が同等である場合には、「Aさん」は
「Bさん」に「1,000万円の金銭」、
「Cさん」に「1,000万円の金銭」
を交付する必要があります。

なお、代償分割では、価値が相当している金銭以外の財産を交付することもできます。

遺産分割時の共有分割

相続財産に不動産がある場合には、現物分割、換価分割、代償分割を必ず行わなくてはならない訳ではありません。

不動産に対して各相続人の相続分が存在する場合には、共有分割という方法をとるケースもあります。

共有分割とは、それぞれの相続人の相続分に応じて、不動産を共有する状態を指します。

共有分割により相続登記を行いますと、該当不動産が共有不動産となり、それぞれ決まった持分として相続人名義の登記がされます。

例えば、相続財産に不動産があり、それを「Aさん」と「Bさん」と「Cさん」の3人で相続をするとします。

それぞれの相続分が同じであった場合、不動産対して
「Aさんの持分は3分の1」
「Bさんの持分は3分の1」
「Cさんの持分は3分の1」
となります。

後に該当不動産を売却し、その売却益が「3,000万円」となった場合には、持分に応じて
「Aさんが1,000万円」
「Bさんが1,000万円」
「Cさんが1,000万円」
の利益を得た扱いとなり、それぞれの方が譲渡税なども納付します。

共有分割は、このように不動産などの財産を公平に分割できますが、将来的に様々なトラブルが起こってします可能性もあります。

共有不動産をお持ちの方がそのまま亡くなられた場合、その際に発生する相続により更に細かく共有名義人が増えてしまう場合なども懸念されます。

共有分割を選択する際には、様々な面のトラブルについて考慮した上で、選択するようにしてください。

相続時の遺産分割協議とは

相続が発生した際には、遺産分割協議を行うといったような話を聞いたことのある方もいらしゃるかもしれません。

遺産分割協議は、相続の際に必ず必要となる訳ではありませんが、選択される場合が多い事例の1つです。

これは不動産などの相続を受ける際も例外ではなく、相続人間で重要な段階となるケースも多いです。

遺産分割協議は、主に下記のような状況の際に用いられ、相続人同士の相続の決定を行います。

  • 遺言書がなく法定相続分以外の割合で遺産を相続したい場合
  • 遺言書があるが相続人全員がその内容に反対する場合
  • 遺言書があるが財産の相続する割合のみが記載されており、具体的にどの財産を相続するのか記載がされていない場合

遺言書に記載がされた内容は、被相続人の財産処分に対しての意思表示であり、法定相続分の割合と異なる場合でも、本来はそれを尊重する必要があります。

ただし、これには例外もあり、相続人全員が遺言の内容に反対する際には別の措置を取ることも可能です。

その際に、遺産をどのように分割するのかを話し合う状況が遺産分割協議です。

また、遺言書などがある場合でも、財産の相続する割合が記載してあるのみで、後は具体的に誰が何を相続するのか記載されていないケースもあります。

このような状態では、相続人がどの財産を相続するのか曖昧なままとなってしまいます。

これを解決する際にも遺産分割協議が必要であり、相続する割合を守りつつ、どの財産を誰が相続するのかを協議していきます。

遺産分割協議は、このように様々な場面で選択しなくてはならない可能性があり、特に不動産の相続の際には分割方法などを十分に話し合っておくようにしたいものです。

遺産分割協議の詳細な説明につきましては、下記の項目でご説明致します。

遺産分割協議の詳細

不動産などの財産を法定相続分により相続しますと、後に様々な面でトラブルが起こる可能性もあります。

このような事態を回避するために、事前に財産の相続割合を決め、不動産を単独で相続するようにするという手段もあります。

元々の法定相続分の割合を変更して相続を行いたい場合などには、「遺産分割協議」を行う必要があります。

遺産分割協議とは、相続人全員が遺産分割に関する話し合いを行うことです。

遺産分割協議では、相続人同士で、自由に遺産の分割を協議(話し合い)・決定できます。

遺産分割協議を行った際に、協議が成立するためには、相続人全員の同意が必要です。

遺産分割協議に参加している相続人のうち、1人でも協議の内容に反対してしまいますと、その協議は不成立となります。

協議に参加した全員が内容に賛成して、初めて遺産分割協議が成立します。

遺産分割協議により相続分が決定した後には、「遺産分割協議書」の作成が必要です。

遺産分割協議書には決まった書式などはありませんが、多くの書面には、それぞれの相続人の相続財産(不動産の場合には所在・地番・地目・地積など)とその割合、住所・氏名などの記載が行われております。

協議書は、相続人同士で作成することも可能ですが、司法書士の方などに作成の依頼もできます。

司法書士の方に遺産分割協議書の作成を依頼する際には、多くはその後の相続登記まで代行して貰います。

司法書士の方に遺産分割協議書のみを作成して貰い、後の作業は相続人同士で行うといったケースもありますが、これは比較的珍しいケースです。

なお、遺産分割協議中にそれぞれの意見が食い違い、どうしても遺産分割が成立しない際には、後に「遺産分割調停」などが必要となります。

そうして遺産分割調停でも話がまとまらない場合には、「審判手続き」へと移行します。

【遺産分割協議と不成立時の大まかな流れ】
遺産分割協議の大まかな流れ※クリックやタップで表示

遺産分割協議から遺産分割調停や審判手続きへと移行した際の説明につきましては、次の項目で詳しくご説明致します。

遺産分割調停とは

遺産分割協議の際に話がまとまらない場合、後に「遺産分割調停」が必要となります。

遺産分割調停の際には、相続人同士の話し合いに家庭裁判所が介入し、話し合いを進めます。

本来は、遺産分割協議により遺産分割が成立するのが望ましいですが、時には相続人同士の事情などにより協議がまとまらない場合もあります。

遺産分割調停を行う際には、様々な書類の作成や、一定の費用の支払いなどが必要となります。

現在、遺産分割調停を申し立てる可能性のある方は、事前にこのような知識を持っておくことも必要です。

この項目では、このような遺産分割調停についてご説明致します。

遺産分割調停の内容

遺産分割調停の申立てを行いますと、申立てを行った裁判所により調停委員会が作成されます。

調停委員会は、申立てをした裁判所の裁判官と、民間から選ばれた調停委員の2人(通常は男女1人ずつ)から構成されるのが一般的です。

この調査委員会が、それぞれの共同相続人から事情を聴いた上で、相続人同士の意見を調整し、お互いに納得できるような解決策を考えてくださります。

調停を申立てた側と相手方は、決められた調停期日に裁判所の調停室へ行く必要があります。

その際には、相続人全員が集まる訳ではなく、調停員会に対して、それぞれの相続人が個別に事情を話していくケースが殆どです。
(利害関係が同一の方々の場合は、同時に話を聴かれる場合もあります)

1回の期日では、大体2時間~3時間程度の話し合いが行われます。

調停期日にそれぞれの相続人から話を聴いた調停員会は、
「法律的」
「実務的」
に妥当な結論に向けた歩み寄りを前提として、次回期日までにそれぞれの論点を検討し、話し合いに臨みます。

このように話し合いが進み、通常は半年~1年程度の期間で調停成立を目指していきます。

調停期日の回数では、0~5回の間で解決した場合が、最も多いという統計もあります。

なお、遺産分割調停では、調停の際に弁護士に代理人をして貰っても問題はありません。

弁護士の方に調停の依頼をしますと、依頼主の代理人として、弁護士が調停をしてくださります。

その分、相談費用や報酬などの兼ね合いで、通常よりも出費が多くなってしまいますが、問題をスムーズに解決しやすくなるという大きなメリットもあります。

遺産分割調停により分割案がまとまりましたら、その遺産分割案などが「調停調書」に記載されます。

後には、この調停調書をもとに、預貯金や不動産の名義変更を進めていきます。

この調停調書には、確定判決と同一の強い効力があるのが一般的です。

これにより、後に調停調書に従わない相続人が出てきたとしても、強制執行などにより内容の実現を図れます。

遺産分割調停の申立てに必要な書類

遺産分割調停の申立てを行う際には、事前に相続人・相続財産を確定しておかなくてはなりません。

その影響で、遺産分割調停の申立てを行う際には、遺産分割調停申立書など以外にも、いくつかの書類を作成し提出する必要があります。

遺産分割調停の申立てに必要となる可能性のある書類は、主に下記のようになります。

なお、これら書類は、申し立てを行う裁判所により変わる可能性もありますので、詳しくは申し立て先の裁判所にお尋ねください。

申立書関係
  • 遺産分割調停申立書(申立書の写しは相手方の人数分)
  • 当事者目録
  • 土地遺産目録
  • 建物遺産目録
  • 現金・預貯金・株式等遺産目録
など
遺産分割調停申立書やその他の書面書式のダウンロードは、下記のリンクから行えます。
ダウンロード→裁判所ウェブサイト:「遺産分割調停の申立書
申立書の記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(遺産分割)
書証番号をつけない添付書類
身分関係資料
被相続人の出生から死亡までの連続した除籍謄本、改製原戸籍謄本等戸籍謄本類全ての原本
相続人が被相続人の配偶者・子・親の場合
被相続人の出生から(被相続人の親の除籍謄本又は改製原戸籍等)死亡までの連続した全戸籍謄本
相続人が被相続人の(配偶者の)兄弟姉妹の場合
(1)の資料に加え、被相続人の父母の出生から(被相続人の父方祖父母及び母方祖父母の除籍謄本又は改製原戸籍等)死亡までの連続した全戸籍謄本
相続人が被相続人のうちに子又は兄弟姉妹の代襲相続人が含まれる場合
(1)、(2)に加え、本来の相続人(子又は兄弟姉妹)の出生から死亡までの連続した全戸籍謄本
など
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本(発行後3ヶ月以内の原本)
  • 被相続人の住民票除票(準備不可能の場合は戸籍の附票)
  • 相続人全員の住民票(発行後3ヶ月以内の原本)
など
遺産目録記載の不動産についての資料
  • 登記簿謄本又は登記事項証明書(発行後3ヶ月以内の原本)
  • 固定資産税評価証明書(発行後3ヶ月以内の原本)
  • 公図の写しに建物配置を書き込んだもの、又は住宅地図(住居表示のされているもの)
など
書証番号をつける添付書類
  • 預貯金の通帳,証書の写し又は残高証明書
  • 相続財産に株式がある場合には、株式の預り証又は残高証明書
  • 相続財産に自動車がある場合には、自動車の登録事項証明書写し又は車検証写し
  • 相続税の申告をしている場合は相続税の申告書写し
  • 遺言書がある場合にはその写し
  • など

※預貯金の通帳、証書の写し又は残高証明書は、被相続人が亡くなられた時点の残高でなく、現時点での残高の記載が必要であり、口座番号の記載も行われている必要があります。被相続人が複数の口座を所有していらっしゃった場合には、口座番号ごとに残高の記載が必要です。定期預金等がある場合には、元金の額だけでなく、現時点で解約した場合の税引き後の利息額も記載がされているかをご確認ください。

これら必要書類を準備し、裁判所に提出しますと、書類などに不備がない限りは調停の申立てが受理されます。
(場合によっては、賃貸借契約書や葬儀費用明細書などの提出を求められるケースもあります)

戸籍謄本や住民票(除票)、固定資産税評価証明書は「市区町村の役場」などで、
登記簿謄本又は、登記事項証明書や公図は「法務局」などで取得できます。

戸籍謄本や住民票、登記事項証明書などの取得費用につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「その他登記に必要な費用の目安」の項目をご覧ください。

遺産分割調停の申立ての方法

遺産分割調停を行う際には、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てが必要です。

調停を申立てることができるのは相続人であり、1人で(残りの相続人全員を相手方として)調停の申立てを行っても問題ありません。

調停を申立てる家庭裁判所は、相手方の住所地、又は調停の当事者となる者が合意して決めた裁判所となります。

相手方が複数人いらっしゃる場合は、そのうちの1人の住所地を選んでも申立てを行えます。

調停を申立てる際には、作成した遺産分割調停申立書と併せて、必要書類を裁判所に提出します。

これらの書類に不備などない場合には、裁判所が調停の申立てを受理し、各手続きが開始されます。

裁判所が調停の準備を終えますと、当事者の方に調停期日などの連絡が来ますので、その日に裁判所に出頭して話し合いを行っていきます。

遺産分割調停の大まかな流れ

遺産分割調停を行うためには、事前に必要資料や書類を準備し、家庭裁判所へ提出します。

その後には、実際に遺産分割調停が始まるのですが、実際の調停の流れについて、よくご存じないという方もいらっしゃるかもしれません。

遺産分割調停は、大まかに下記のような流れで行われます。

遺産分割調停の大まかな流れ

【遺産分割調停の大まかな流れ】

相続人・相続財産の調査
遺産分割調停を行うためには、まず相続財産とその相続人を確定する必要があります。
(これらの調査は、調停の申立てを行った際に提出した必要書類から行われます)
遺産分割調停の申立てに必要な書類の例につきましては、同ページの「遺産分割調停の申立てに必要な書類」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。
遺産分割協議の申立
遺産の配分に関して相続人同士で揉め事などが起こった際には、まず遺産分割協議を行い、協議が不成立となった後に「遺産分割調停」を申立てます。
遺産分割事件の場合は、他の家事事件のように裁判前に調停をしなければならないという調停前置主義ではありませんが、裁判所の判断で遺産分割調停から始めるケースが殆どです。
遺産分割調停は裁判所を交えた上で話し合いを行いますので、相手方の住所地又は、調停の当事者となる者が合意して決めた家庭裁判所に必要書類を提出し、手数料と当事者に調停を伝えるための切手代を納付します。

遺産分割調停の申立手数料
遺産分割調停に必要な申立手数料は、「被相続人1人につき1200円分(収入印紙による納付)」となります。
遺産分割調停の切手代
切手代は、各裁判所により必要な額や切手の組み合わせが異なりますので、ご自身が申立てを行う裁判所に従って納付を行ってください(現金納付が認められている裁判所もあります)。
切手代は、650円前後必要な場合もあれば、3,000円前後必要という場合もあり、それぞれの裁判所で大幅に異なりますので、事前に申立てる裁判所にお尋ねください。
遺産分割調停期日に出頭・話し合い
遺産分割調停の申立てが受理されますと、裁判所から「調停を行う日(期日)」が当事者に対して通達されます(およそ1ヶ月~1ヶ月半後程度に第1回の調停期日が決定されます)。
その期日に各相続人は裁判所へ出頭し、裁判官や調停委員に対して、主張を伝えていく必要があります(1ヶ月~1ヶ月半に1回程度の頻度で期日が開かれます)。
調停の際には、申立人とその他の相続人は控え室が異なり、順番に調停室へ入室して主張を行います。
この影響で、当事者が顔を合わせることは殆どなく、期日の初回と最終回のみ、手続内容などを当事者全員に説明するために顔を合わせる程度となります。
話し合いが成立・話し合いが不成立
話し合いが成立
相続人同士が遺産分割に対して合意をしましたら、調停は成立となります。
話し合いが不成立
期日に遺産分割の話し合いに応じない相続人がいた場合や、一定の期間内(通常は半年~1年程度)に解決が見込めない場合には、調停は不成立となります。
遺産分割調停の成立・自動的に審判手続き
遺産分割調停の成立
調停が成立した際には、その後に調停により決定した内容を記載した「遺産分割調停書」の作成が行われ、各相続人はその内容に従い相続を行います。
自動的に審判手続
調停により話がまとまらなかった場合には、自動的に「審判手続き」が行われます。
審判手続きを行いたくない場合には、申立てた調停を取り下げておかなくてはなりません。
審判決定
通常の裁判と同様に、当事者の主張立証が行われた後、必要な審理を行った上で、審判によって結論が出されます。

遺産分割調停では、遺産分割協議と同様に、相続人の誰か1人でも納得しない者がいれば不成立となります。

調停が不成立となりますと、その後は自動的に「審判手続き」が行われます。

この遺産分割審判につきましては、次の項目で詳しくご説明致します。

審判手続きとは

遺産分割協議・遺産分割調停と話がまとまらなかった場合、後に遺産分割審判へと移行します。

とはいえ、遺産分割審判は、遺産分割調停を行った上で申立てる必要はありません。

実際は、遺産分割調停の前に、いきなり遺産分割審判を申立てることも可能です。

ただ、裁判所はいきなり遺産分割審判の手続きがされたとしても、通常は調停の実施に付します。

このような影響で、多くのケースでは最初に遺産分割調停が行われます。

そうして調停が不成立となった際に、自然と遺産分割審判の手続きが進められます。

この項目では、このような遺産分割審判について詳しくご説明致します。

遺産分割審判の内容

遺産分割審判は協議や調停と異なり、話し合いだけで進行される訳ではありません。

相続人同士の主張を裁判官が聴き、審判をするという通常の裁判と同様の流れで進行していきます。

遺産分割審判では、相続人らが主張を行い、それを裏付ける証拠資料を提出します。

その後、裁判官が当事者の主張内容と提出された証拠を考慮しながら審理が行われます。

審理が終わりますと、裁判官により、最終的に妥当だと考えられる遺産分割方法が決定(審判)されます。

その際の審判では、法律に従った分け方しかできないため、事案に応じた柔軟な解決方法が実現できない場合も少なくありません。

その影響で、相続人全てに平等な判決が出るとは限らず、最悪は相続人全てが納得できないような結果となる場合もあります。

【遺産分割審判の失敗例】

「不動産の相続に関して遺産分割審判を行った際の例」

相続人同士で、どうしても協議や調停が成立せず、遺産分割審判となりました。

相続人同士は、それぞれ意見を主張し、証拠なども提出しましたが、
最終的な審判では、「競売」で不動産を売却し、その売却益を相続人で分割するよう指定されてしまいました。

競売で不動産を売却した場合、通常の不動産の市場価格よりも数割低くなるのが一般的です。

その影響で、通常の方法であればもっと高く売れたはずの不動産を安く売却し、それぞれの相続人で分けざるを得なくなってしまいました。

このように、審判による遺産分割は良い方向で収束できるとは限らないのが難点です。

遺産分割の審判が行われますと、後日、申立てを行った家庭裁判所から審判の結果が記載された「審判書」が送られてきます。

審判書に記載がされた内容は、書類の送達後2週間で確定されますので、それから裁判所に「確定証明書」の交付申請を行います。

審判書と確定証明書の発行が終わりましたら、この2つを持って、各相続手続きを進めます。

なお、審判書の内容に不満がある場合には、原審の審判書を受け取ってから14日以内であれば、即時抗告という不服申立を行えます。

即時抗告は、高等裁判所宛に「即時抗告申立書」を作成して、家庭裁判所に提出します。
即時抗告申立書のダウンロード→裁判所ウェブサイト:「家事審判申立書
申立書の記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(認容審判に対する即時抗告)

抗告審が行われた際には、追加の主張書面や証拠などを提出して、最終的に高等裁判所によって再審判がされます。

この場合も、結果は法律に従って判断がされますので注意が必要です。

遺産分割審判の大まかな流れ

遺産分割審判は、通常は遺産分割調停の後に行われます。

遺産分割審判では、調停の際とは異なり、裁判と同様の流れで各手続きが進行していきます。

遺産分割審判の大まかな流れにつきましては、下記のようになります。

遺産分割審判の大まかな流れ

【遺産分割審判の大まかな流れ】

遺産分割審判の手続きが開始
遺産分割協議に続き、遺産分割調停が不成立となった場合には、当事者が調停の取り消しを行わない限り、自動的に審判手続きが開始されます。
ここで意識をしておきたいのは、審判の途中でも、当事者間での話し合い(調停)は進められるという点であり、それにより相続人同士が合意しますと調停が成立したとみなされ、調停調書が作成され審判も終了します。
審判期日に裁判所へ出頭
遺産分割審判の手続きが始まりますと、審判期日が決定しますので、その期日に家庭裁判所へ出頭します。
遺産分割審判では、期日の回数・期間に制限はなく、それぞれの相続人の主張内容や争点が整理できるまで何度でも期日が開かれます。
場合によっては、1年以上も裁判が続く場合もあり、調停の期間と合わせると、終了までに3年以上も掛かってしまったというケースもあります。
当事者間での主張・立証
遺産分割審判の期日には、基本的に話し合いではなく、当事者が主張と立証を行っていきます。
当事者は、ご自身の主張を行うと共に、主張を法律的にまとめた書面と、その内容を証明するための証拠などを提出します。
相手の主張に反論がある場合にも、反論の書面を作成し、その内容を証明するための証拠を提出する必要があります。
各相続人が主張・資料提出を尽くすまでは審判手続きとして審判期日が設けられ、その度に当事者は裁判所へ出頭します。
家庭裁判所による審判
当事者の主張と立証が尽くされた後、審判官(裁判官)が、これらをもとに審判(結論)をくだします。
審判は、当事者の主張内容と提出された証拠を考慮した上で、法律に従いながら、ケースに応じて最も妥当とされる遺産分割方法が選択されます。
審判に納得・審判に不服
審判に納得した場合
くだされた審判に対して不服がない場合には、そのまま審判の確定を待ちます(審判の確定は、告知の翌日から2週間です)。
審判に不服がある場合
くだされた審判に対して不服がある場合には、審判の結果が確定する期日(告知があった2週間後)までに「即時抗告」を申し立てる必要があります。
即時抗告(審判に不服がある場合)
即時抗告を行う際には「即時抗告申立書」を作成し、家庭裁判所に提出します。
これにより、裁判を再び行えるようになりますが、結果が良い方向に変わるという確証はありません。

審判による決定は必ず従う必要がありますので、その点を意識した上で手続きなどを行うようにしてください。

相続登記の3パターンと必要書類

相続が発生した際には、様々な状況が考えられます。

例えば、
「遺言書が存在する」、
「遺言書が存在しない」、
「親族同士で相続の争いが起こっている」
など、それぞれの方により状況は様々です。

どのような問題が起こっている場合でも、最終的には財産を分配し、相続登記などの処理が必要となります。

相続登記とは、相続をした不動産などの財産の所有権を被相続人から相続人に移す登記を指します。

相続登記の際には、相続時の状況により、その流れや必要書類などが若干異なってくるのが一般的です。

これらは、財産の相続時に

  • 相続時に遺言書がある場合
  • 相続時に遺言書がなく、遺産分割を行う場合
  • 相続時に遺言書がなく、法定相続分に基づく場合

などで変わります。

【相続登記の大まかな流れ】
相続登記を行う際のパターン※クリックやタップで拡大

ご自身の状況を確認し、相続登記に必要な書類などを知っておきますと、実際の手続きをスムーズに行いやすくなります。

この項目では、このような状況別の相続登記に必要書類などについて詳しくご説明致します。

なお、下記の項目で記載のある「本籍地」と「住所地」は、

本籍地
戸籍が保管されている市区町村
住所地
実際に住んでいる市区町村

という意味ですので、該当場所から書類の取得を行ってください。
 
下記項目の各書類の取得費用などにつきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「その他登記に必要な費用の目安」の項目をご覧ください。

被相続人の遺言書がある場合

被相続人の遺言書がある場合には、比較的簡単に相続登記を行えます。

遺言書が
公正証書遺言である場合には、そのまま相続登記に必要な書類の準備を行い、
自筆証書遺言である場合には、検認を行った上で相続登記に必要な書類の準備を行ます。
(遺言書の検認につきましては、同ページの「遺言書の検認手続きとは」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください)

遺言書がある場合、ない場合に比べ、相続登記の際に添付する書類の量がずっと少なくなるのが通常です。

遺言書がない状態では、被相続人の全ての戸籍謄本を揃え必要がありますが、遺言書がある状態では被相続人が亡くなった時点の戸籍謄本のみで済みます。

遺言書の内容に沿って相続をするため、遺産分割協議書なども不要です。

遺言書がある状態で相続登記を行う際には、主に下記のような書類が必要となります。

なお、これらの書類は、あくまで一般的とされる書類であり、実際には他の書類も必要となる可能性がありますのでご注意ください。

【遺言書がある状態での相続登記に必要な書類の例】
必要書類 取得場所
被相続人の

関連書類
遺言書 各自所有
被相続人が亡くなられたとの記載がある戸籍謄本(除籍謄本) 本籍地の

市区町村役所
被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票) 住所地の

市区町村役所
相続人の

関連書類
不動産を取得する相続人の戸籍謄本 本籍地の

市区町村役所
不動産を取得する相続人の住民票 住所地の

市区町村役所
その他書類 対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) 法務局(登記所)
対象物件の最新の固定資産評価証明書 市区町村役所

(不動産の所在地)
都税事務所

(東京23区)

これらの書類を集めましたら、今度は実際に相続登記を行っていきます。

実際の相続登記の流れにつきましては、同ページの
相続登記を委任する際の手順」と
相続登記をご自身で行う際の手順
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

遺産分割を行う場合

相続が発生した際に、被相続人の遺言書がない場合もあります。

遺言書がない状態で相続登記を行う場合、最初に遺産の分配方法などを決めなくてはなりません。

遺産の分配を決める際には、遺産分割協議・遺産分割調停・遺産分割審判を行う方法が多く選択されます。

それぞれ
遺産分割協議により遺産分割をする場合には「協議分割」
遺産分割調停により遺産分割をする場合には「調停分割」
遺産分割審判により遺産分割をする場合には「審判分割」
と呼ばれ、全て遺産分割の種類となります。

遺産分割協議・遺産分割調停・遺産分割審判の詳しい説明につきましては、同ページの
相続時の遺産分割協議とは」、
遺産分割調停とは」、
審判手続きとは」、
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

遺言書がない場合、遺言書がある場合と比べて、相続登記の際の必要書類が多くなるのが通常です。

遺産分割により相続登記を行う際には、主に下記のような書類が必要となります。

なお、これらの書類は、あくまで一般的とされる書類であり、実際には他の書類も必要となる可能性がありますのでご注意ください。

【遺産分割による相続登記に必要な書類の例】
必要書類 取得場所
被相続人の

関連書類
被相続人の出生時から死亡までにさかのぼる

全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)
本籍地の

市区町村役所
被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票) 住所地の

市区町村役所
相続人の

関連書類
相続人全員の現在の戸籍謄本 本籍地の

市区町村役所
不動産を取得する相続人の住民票 住所地の

市区町村役所
遺産分割により作成した書類

(遺産分割協議書、遺産分割調停書など)
遺産分割時

に作成
相続人全員の印鑑証明書 住所地の

市区町村役所
その他書類 対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) 法務局(登記所)
対象物件の最新の固定資産評価証明書 市区町村役所

(不動産の所在地)
都税事務所

(東京23区)

遺産分割を行う際には、これらの書類を集めた上で相続登記を行う必要があります。

実際の相続登記の流れにつきましては、同ページの
相続登記を委任する際の手順」と
相続登記をご自身で行う際の手順
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

法定相続分に基づく場合

法定相続分に基づき財産を分配する際には、遺産分割協議などを行わない状態でも相続登記を行えます。

詳しい遺産相続時の法定相続分の説明につきましては、同ページの「相続時の法定相続分とは」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

法定相続分に基づいて相続登記を行う場合、遺産分割の場合と比べて必要書類が少なるなるのが一般的です。

ただ、法定相続分による相続登記は、後に相続人同士でトラブルなどが起こりやすくなる可能性もありますので、その点には注意が必要です。

法定相続分に基づいた状態で相続登記を行う際には、主に下記のような書類が必要となります。

なお、これらの書類は、あくまで一般的とされる書類であり、実際には他の書類も必要となる可能性がありますのでご注意ください。

【法定相続分による相続登記に必要な書類の例】
必要書類 取得場所
被相続人の

関連書類
被相続人の出生時から死亡までにさかのぼる

全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)
本籍地の

市区町村役所
被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票) 住所地の

市区町村役所
相続人の

関連書類
相続人全員の現在の戸籍謄本 本籍地の

市区町村役所
不動産を取得する相続人の住民票 住所地の

市区町村役所
その他書類 対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) 法務局(登記所)
対象物件の最新の固定資産評価証明書 市区町村役所

(不動産の所在地)
都税事務所

(東京23区)

法定相続分による相続登記の際には、これらの書類の添付が必要となる可能性があります。

実際の相続登記の流れにつきましては、同ページの
相続登記を委任する際の手順」と
相続登記をご自身で行う際の手順
に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

被相続人の戸籍謄本の取得方法

戸籍謄本の取得は、通常は本籍地の市区町村役場で行います。

相続人の戸籍も同様で、現在の戸籍を取得するだけであれば、それ程手間は掛かりません。

問題となるのは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集める場合です。

戸籍謄本は本籍地の市区町村役場のみで取得ができる書類であり、生前に被相続人が多くの地域に引越しをしているなど、戸籍が各地で編製されている際には、収集に相当な手間が必要となります。

元々、戸籍には、
「氏名」、
「生年月日」、
「親子や夫婦関係」、
「結婚、離婚」
など、人が出まれてから亡くなるまでの様々な身分関係が記載されております。

これだけを聞きますと、戸籍謄本を1通だけ取得すれば、ことが足りるような気がするかもしれませんが、
戸籍は結婚や転籍、法改正などで新しく編製されます。

その際には、それまで戸籍に記載があった方や、一部の身分関係者(離婚や認知など)の記載が消えてしまうのが通常です。

このような実情から、人の全ての親族関係を調べるためには、出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本が必要となります。

この項目では、被相続人が生まれてから亡くなられるまでの戸籍謄本について詳しくご説明致します。

被相続人の戸籍の動きの説明

戸籍は人が生まれた際に編成され、その後様々な理由により新たな戸籍が編製されます。

例えば、転籍や婚姻や法改正による戸籍改製など、人の一生に係る戸籍は1通ではありません。

被相続人が生まれてから亡くなられるまでの戸籍謄本も、通常は複数通存在するのが一般的です。

下記の画像は、被相続人が生まれてから亡くなられるまでの戸籍謄本の動きの例です。

上記の例では、被相続人の戸籍は下記の4つとなります。

  • 生まれた際の戸籍(改製原戸籍謄本)
  • 婚姻前の戸籍(除籍謄本又は、改製原戸籍)
  • 婚姻時の戸籍((平成)改製原戸籍謄本)
  • 亡くなられた際の戸籍(現在戸籍謄本又は、除籍謄本)

上記の「改製原戸籍(原戸籍)」とは、戸籍法が改正され戸籍の様式などが変更された際に、閉鎖された古い形式の戸籍です。

「除籍」とは、婚姻や転籍、死亡などにより本来戸籍に記載があった名前が取り除かれた状態のことです。
(除籍された人の名前の箇所には、名前の上から×印がされます)

これらの戸籍は、全てそれぞれ被相続人が本籍地としていた市区町村の役所で取得しなくてはなりません。

被相続人の本籍地が生まれてから亡くなられるまで一緒である場合には、同じ役所で全ての戸籍謄本を取得できます。

それに対して、一度でも本籍地が他の地域へ変更されている場合には、その都度本籍地を調べていかなくては戸籍が取得できません。

例えば、引越しなどにより県外に行き、その際に転籍などを行い本籍地の変更している場合には、転籍前の戸籍は、引越し前に本籍地としていた地域の市区町村の役所で取得する必要があります。

被相続人の本籍地が何処であるのかを知るためには、ご自身で戸籍を確認していく作業が必要となります。

戸籍謄本などから、被相続人の本籍地を調べる方法につきましては、次の項目でご説明致します。

被相続人の戸籍の収集方法

被相続人の戸籍を全て集めたい場合には、新しい戸籍から古い戸籍にさかのぼり取得をしていくのが一般的です。

ここからの作業は、被相続人の戸籍の状態などにより手続きが変わってきますので、順を追って必要な作業を行います。

【出生から死亡までの戸籍謄本の取得手順】

被相続人の亡くなられた時点の戸籍謄本を取得する
本籍地の市区町村役所で被相続人の亡くなられた時点の戸籍謄本を取得します(戸籍謄本とは戸籍全部事項証明書のことです)。
「1」と同じ役所の窓口で他の戸籍も請求する
被相続人が亡くなられた時点の戸籍謄本を取得した後には、同じ役所の窓口で「出生から死亡までの戸籍を取れるだけ欲しい」といった旨を伝えます。
被相続人が一生同じ本籍地に戸籍があった場合には、これで全ての戸籍が揃いますが、これで揃わない場合には、次の手順に進みます。
取得した戸籍の記載内容を確認する
取得した戸籍の内容を確認し、取得できなかった戸籍を何処の役所で取得できるのかを確認します。
戸籍謄本には、最初に「本籍」、「氏名」が記載されており、その下に「戸籍事項」という欄がありますので、その欄を確認した後に、下記の記載を見つけて適切な手順を行います。
「改製」と記載されいる(従前の本籍がどこにも書かれていない)場合
戸籍を確認した際に、「○年△月□日改製」やそれに類似した記載がある場合には、改製前の戸籍を取得する必要がありますので、最初の戸籍謄本を取得した本籍地と同じ役所で「改製原戸籍謄本」を請求します。
「転籍」という記載がある場合
戸籍を確認した際に、「○○県△△市□□町××番地から転籍」といったような記載がある場合には、「○○県△△市□□町××番地から本籍地が移された」という意味となりますので、転籍前の本籍地である「○○県△△市□□町」の該当する役場で「除籍謄本」を請求します。
「婚姻(離婚)」といった記載がある場合
戸籍を確認した際に、「~と婚姻(離婚)届出○○県△△市□□町××番地**戸籍から入籍」などといった記載がある場合には、「婚姻(離婚)によって○○県△△市□□町××番地の戸籍筆頭者**の戸籍から移ってきた(本籍地が変わった)」という意味となりますので、婚姻前の本籍地である「○○県△△市□□町」の該当する役場で「除籍謄本(場合によっては戸籍謄本や改製原戸籍謄本となります)」を請求します。
役場の窓口で戸籍を取得した際には、窓口の担当の方に、次はどの戸籍を取れば良いのか聞けば教えて貰えます。
各本籍地が遠い場合には郵送による請求をする
戸籍を確認した結果、本籍地が県外であるなど遠くで行けそうにない場合には、各役場へ郵送により必要戸籍を請求します。
郵送により戸籍を請求する方法は、請求先の役所のホームページなどに記載してあります。
下記は、一般的な郵送による戸籍請求の手順です。

  1. 該当する役所のホームページから指定されている戸籍請求用紙をダウンロードし、記載する
  2. 免許証などの本人確認資料のコピーを準備する
  3. 初めに取得した戸籍謄本など、被相続人と自分の関係を証明する書面をコピーする
  4. 郵便局で、取得する戸籍の種類と枚数に応じた定額小為替を購入する
  5. 今までに揃えた各書類、定額小為替、返信用封筒を一緒に封筒に入れ郵送する
郵送の際の切手代は、取得する戸籍の数により異なりますので、対応する額を貼ってください。
郵送時の切手代の目安につきましては、同ページの「書類を取得する際に必要な切手代」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。
定額小為替の金額につきましては、請求する戸籍の種類(戸籍謄本は1通450円、除籍謄本、原戸籍謄本は1通750円)により変わりますが、戸籍の編成数が不明である場合には、予定よりも多めに準備しておきますと、複数の戸籍があった場合でも安心です。
「3」と「4」を繰り返して全ての戸籍を集める
「3」や「4」で取得した「改製原戸籍謄本」、「除籍謄本」、「戸籍謄本」などを順番に確認し、記載内容からさかのぼって戸籍を取得していきます。
被相続人の「出生事項」が初めて記載された戸籍を見つける
順を追って戸籍を確認し、被相続人の「出生事項」が初めて記載された戸籍が見つかりましたら、出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍を取得できた状態となります(戸籍の編製時を確認し、被相続人の「出生」と書かれた欄にその戸籍の編製時期よりも後の年月日が記載されている状態です)。

「分籍」、「養子縁組」なども上記と同様の手順により戸籍を取得していきます。

これらの作業が終わりましたら、被相続人の戸籍は全て集まりました。

郵送により書類を取得する際の注意

相続登記に必要な書類を取得する方法は、主に下記の3つがあります。

  • 直接役所や法務局などの窓口で取得する
  • 郵送により取得する
  • 一部のオンライン申請対応書類をオンライン申請により取得する

これらのどの方法を選択するかにより、若干書類の取得手順と費用が変わります。

オンライン申請の場合は、「事前に登録」が必要であったり、「住民基本台帳カード」と「公的個人認証サービス(電子証明書の交付)の交付が必要であったりと、事前に様々な手続きが必要です。

これらの条件を満たしていない方は、
「役所や法務局の窓口で取得する」か、
「郵送により書類を取得する」
方法のいずれかを選択する必要があります。

ただ、役所や法務局は平日にしか開いていない場合も多く、時間的な問題でそう何回も足を運べない場合もあります。

そのような場合には、郵送により書類の取得申請をしておきますと、忙しい方でも順に書類を取得していけます。

この項目では、このように相続登記に必要な各書類を、郵送により取得する際の方法や費用などについてご説明致します。

郵送により書類を取得する際の封筒

郵送により相続登記に必要な書類を取得する際には、主に下記の書類などを準備し、1つの封筒に入れて郵送します。

戸籍謄本など
  • 役所所定の戸籍請求用紙(各地で違いあり)
  • 申請手数料の定額小為替(取得書類に応じた)
  • 切手を貼った返信用封筒
  • 戸籍謄本を取得する方の免許証などの身分証明(写真付きでない証明の場合には2種類の証明が必要となる場合があります)
  • 被相続人との続柄を証する書面(役所で戸籍が確認できない場合)
など

上記請求書の様式につきましては、各市区町村のホームページからダウンロードしてください。

住民票(除票)
  • 役所所定の住民票請求用紙(各地で違いあり)
  • 申請手数料の定額小為替(1通300円程度)
  • 切手を貼った返信用封筒
  • 住民票(除票)を取得する方の免許証などの身分証明(写真付きでない証明の場合には2種類の証明が必要となります)
など

上記請求書の様式につきましては、各市区町村のホームページからダウンロードしてください。

印鑑(登録)証明書
法人の場合(印鑑証明書)
  • 印鑑証明書交付申請書
  • 申請手数料の収入印紙(1通450円程度であり、申請書の「収入印紙欄」に貼付する)
  • 切手を貼った返信用封筒
  • 法務局印鑑カード
など

上記請求書の様式につきましては、下記のリンクよりダウンロードしてください。

出典:「申請書様式」(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001236220.pdf
出典:「記載例」(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001236221.pdf
個人の場合(印鑑登録証明書)
郵送による取得はできません。
不動産の登記事項証明書
  • 登記事項証明書等の請求書
  • 申請手数料の収入印紙(1通600円であり、請求書の「収入印紙欄」に貼付する)
  • 切手を貼った返信用封筒
など

上記請求書の様式につきましては、下記のリンクよりダウンロードしてください(リンク先の下部に記載例もあります)。

個人の場合
出典:「請求書様式1【PDF】」(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/000130851.pdf
出典:「請求書様式2【PDF】」(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/000130852.pdf
法人の場合
出典:「申請書様式」(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001188552.pdf
出典:「記載例」(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001188554.pdf

上記の通り、郵送する封筒の中には、取得した書類が返送されるための返信用封筒の準備が必要となります。

封筒は、基本的に書類が入るのであればどのサイズでも構いませんが、一般的にはA4サイズ(角形A4号)が使用される場合が多いようです。

返信用封筒には、戸籍謄本の郵送請求書類の身分証と同じ住所と氏名を記入し、切手を貼っておきます。

貼り付ける切手代につきましては、次の項目でご説明致します。

書類を取得する際に必要な切手代

輸送により各書類を取得する際には、申請書などの書類を入れて送る封筒と、書類が送られてくる返信用封筒の2つに切手を貼り付ける必要があります。

書類申請の際に、A4サイズ(角形A4号)の封筒を使用する際には、主に「定形郵便物」となり、その分の郵送代金分の切手を貼り付けます。

定形郵便の国内の郵送料は下記の表のようになります。

【定形郵便物の基本料金】
25g以内 82円
50g以内 92円

戸籍謄本、登記事項証明書、その他の書類などは、1通が大体「25g以内」の定形郵便物となります。

その影響で、必要な切手代は取得する書類1通につき「82円」となるのが一般的です。

返信用封筒の切手も同じ「82円」となりますので、合計で取得する書類1通につき「164円」の切手代が必要となります。

ただ、相続登記の際の書類は、一度に複数枚取得する可能性も高いです。

このような場合には、その取得する書類の枚数に応じた切手を封筒に貼り付ける必要があります。

目安としては、取得書類が2通となった場合には、必要な切手代は「50g以内」の定形郵便物の料金である「92円(返信用封筒の分も含めて184円)」となります。

3通以上となる場合には、定形外郵便物の料金となる可能性がありますので、下記の表を参考に切手代を準備してください。

【定形外郵便物の基本料金】
規格内

※規格内は、長辺34cm以内、短辺25cm以内、厚さ3cm以内および重量1kg以内とします。
50g以内 120円
100g以内 140円
150g以内 205円
250g以内 250円
500g以内 380円
1kg以内 570円
2kg以内 取り扱いません
4kg以内
規格外
50g以内 200円
100g以内 220円
150g以内 290円
250g以内 340円
500g以内 500円
1kg以内 700円
2kg以内 1,020円
4kg以内 1,330円

目安としては、
3通の書類を取得する際には「120円(返信用封筒の分も含めて240円)」の切手代が、
取得枚数が不明である場合や多くなりそうな場合には「200円(返信用封筒の分も含めて400円)」
の切手代が必要になる場合が多いようです。

切手を「200円分」用意した場合、取得する戸籍謄本の枚数が、5、6通であっても、不足する可能性が低くなります。

なお、書類の取得枚数が不明である場合には、必要最低限の切手を返信用封筒に貼り、予備の切手を封筒内に同封しておきますと、必要に応じて書類送付時担当者の方が返信用封筒に貼り付け送付してくださいます。

同封された切手が余った場合には、書類と共に返されますので、不安な方は多めに切手を封筒に入れておきますと安心です。

相続人に未成年の方がいる場合

未成年者は、通常は法律に関わる行為を行えません。

これにより相続が発生した際にも、未成年者が自ら財産に関わる法律行為を行えないのが一般的です。

このような状況の際には、親権者である親が未成年者の法定代理人などとなるケースもありますが、相続の際にはそうといえない状況も存在します。

相続の際に、法定相続分に基づき相続登記を行う際には、登記手続きを法定代理人である親が単独で申請できます。

それに対して、遺産分割協議を行うなど、法定相続分以外の割合で財産の相続を行いたい場合には、親は子の法定代理人とはなれません。

この場合、子の法律に関わる行為を代理で行う、「特別代理人」を選任しなくてはなりません。

特別代理人の選任は、事前に家庭裁判所などに申立てが必要となります。

特別代理人の選任の申立ての手順や必要な費用などにつきましては、下記で詳しくご説明致します。

特別代理人選任の必要書類

相続人の中に未成年の方がいらっしゃる場合には、相続の際に注意が必要となります。

本来、未成年者の法定代理人は、親権者である親などとなりますが、相続の際に遺産分割協議などが必要となる際には例外も存在します。

相続の際には、相続財産の分配方法を決めるなど、相続人同士で利益の相反(利関相反行為)が行われます。

この利益相反行為の際には、親にその気がない状態でも、子に不利な協議を行う可能性があるとの疑いが向けられます。

これでは公正な遺産分割が行われたという確証がなくなるため、子に対して親以外の代理人が必要となります。

親権者以外の代理人を選任するためには、家庭裁判所などに「特別代理人選任の申立て」を行います。

特別代理人選任の申立ての際には、主に下記のような書類が必要となります。

なお、状況などによっては下記以外の書類の提出も必要となる可能性がありますので、その際には追加で準備をするようにしてください。

【特別代理人選任に必要な書類の例】

申立書
特別代理人選任を行う場合の申立書に、必要事項を記入します。
特別代理人選任を行う場合の申立書のダウンロードは、下記のリンクから行えます。
ダウンロード→裁判所ウェブサイト:「特別代理人選任申立書
記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(特別代理人選任(遺産分割協議))
標準的な申立添付書類
  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案,契約書案・抵当権を設定する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)等)
  • (利害関係人からの申立ての場合)利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)等)

これらの必要書類を準備した上で、子の住所地の家庭裁判所へ提出しますと、特別代理人選任手続きが開始されます。

本申立てを行えるのは、特別代理人が必要となる未成年者の親権者又は、利害関係人となります。

特別代理人候補者の選定方法

特別代理人選定の際の代理人には、特に制限はありません。

財産の相続ついての利益相反行為に利害関係の無い方であれば、未成年者の親族であっても特別代理人となれます。

特別代理人の選任は、家庭裁判所が行うのですが、実際には特別代理人選任申立書に記載した「特別代理人候補者」がそのまま選ばれるケースが多いのが一般的です。

【特別代理人に選任されるケースの多い未成年者の親族の例】

  • 祖父
  • 祖母
  • 伯父(叔父)
  • 伯母(叔母)
など

特別代理人は未成年者の人数に応じて選任しなければならないため、未成年者が2人いらっしゃる場合には、特別代理人も2人の選任が必要です。

親族に代理人を頼める方がいらっしゃらない場合などは、司法書士の方などに特別代理人候補者となって貰うという方法もあります。

特別代理人の選任申立てをした後は、家庭裁判所から特別代理人候補者に対して、文書による照会が行われるのが一般的です。

その際には、照会のための照会書などの記載が必要となりますが、照会事項は特に難しい内容はありませんので、書き方に困るケースはそれ程多くありません。

特別代理人の選任が終わりましたら、その方を含めた相続人同士で遺産分割協議などを行います。

そうして、その内容をまとめた遺産分割協議書の作成を行った後に、相続登記が可能となります。

特別代理人選任に必要な費用

特別代理人選任の申立てには、相応の費用が必要となります。

未成年者の人数に応じた収入印紙、切手代、書類の収集費用など、様々な出費が必要です。

特別代理人選任を申立てる際には、大きく分けて3つの費用が発生します。

  • 特別代理人選任申立の際に納める費用
  • 特別代理人選任申立に必要な書類を集める費用
  • 特別代理人選任を行う際に依頼した弁護士の方又は司法書士の方費用(依頼していない場合には不要)

これらに分類される費用を全て合計した金額が、特別代理人選任に必要な費用となります。

上記のうち、収入印紙の金額以外は、それぞれの方の状況や申立てを行う裁判所により異なりますので、事前に申立て先の裁判所でご確認ください。

それぞれの費用の大まか目安につきましては、下記のようになります。

なお、これらの費用はあくまで目安であり、実際は異なる可能性もありますのでご注意ください。

【特別代理人選任の費用一例】
申立書の収入印紙代 未成年者1人につき800円
切手代 裁判所により異なります
必要書類の収集費用 数千円~数万円

(表の下のリンク先を参照)
弁護士又は司法書士の費用 3万円前後~5万円前後

(交通費などがある場合には別途請求)

戸籍謄本などの必要書類の取得費用につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「その他登記に必要な費用の目安」の項目をご覧ください。

上記の表のうち、確実に必要となるのは収入印紙代、切手代、必要書類の収集費用となります。

特別代理人選任申立書の作成などを司法書士の方や弁護士の方に委任しますと、更に必要費用は多くなります。

更に、司法書士の方などに特別代理人候補者となって貰う場合には、上記の表に加えて数十万円の費用が必要となる可能性もあります。

案件の難易度により、それぞれ必要な報酬は異なりますので、事前に依頼先の司法書士の方・弁護士の方にお問い合わせください。

遺産分割協議をやり直したい場合

遺産分割協議を行った場合、最終的に必ず遺産分割が成立します。

ここで問題となるのは、一度、相続人全員が合意した遺産分割協議に対して、不服を理由に再度協議を行えるのかという点です。

通常、遺産分割協議が無効となる状況は、その協議が不正に行われたと判断がされる場合となります。

例えば、
「詐欺・脅迫により遺産分割が行われた場合」や
「遺言書が存在していたにも関わらず、存在しないと錯誤し協議を行ってしまった場合」や
「一部の相続人を除外して協議を行った場合」
などには、遺産分割協議は無効となります。

では、上記のような問題がない状況の際には、遺産分割協議を再度行えるのでしょうか。

この項目では、このように特に不正などが状態で成立した遺産分割協議に対して、再度協議を行えるのかどうかという点についてご説明致します。

遺産分割協議を再度行うための条件

遺産分割協議が成立した後に、何かしらの事情により、再度協議を行いたい状況となってしまう場合もあります。

協議をやり直したい理由が、不正な協議が行われたといった内容の場合には、通常は再度協議を行えます。

それに対して、協議内容に特に問題はない状態での協議のやり直しは簡単なものではありません。

通常、遺産分割協議を一部の相続人が望んでいる状況では、協議のやり直しは実現できないのが一般的です。

一度成立した遺産分割協議を再度行うためには、相続人全員の合意が必要です。

相続人全員の合意がある際には、一度成立した遺産分割協議を解除できます。

これは相続登記後も例外ではなく、例え不動産の所有権移転登記などの相続登記を済ませてしまった後でも、遺産分割協議を再度行った場合には、その登記を一旦抹消することが可能です。

登記を抹消した後には、再度行った遺産分割協議に基づいて改めて相続登記をやり直します。

ただ、遺産分割協議をやり直した際の弊害として、課税に関する問題が起こる可能性があります。

遺産分割協議をやり直した際の課税に関する問題につきましては、次の項目でご説明致します。

遺産分割協議のやり直し時の課税

遺産分割協議のやり直しは、相続人全員の合意がある場合に限り行えます。

その際には、相続税の申告後であるのか、申告前であるのかで、少々状況が違ってきます。

以前に行った遺産分割協議の後、それぞれの相続人が既に相続予定の財産に対して相続税の申告をしていた場合には、その財産は既にその相続人が所有しているとみなされます。

その影響で、再度遺産分割協議を行い、財産を再分配しますと以前の協議の際の所有状況に基づき、財産の
「贈与」、
「交換」、
「売買」
などが発生したとみなされるのが一般的です。

財産の贈与、交換、売買などが発生した際には、通常は
「贈与税」
「譲渡税」
などといった税金の納付が必要となります。

例えば、不動産の相続が発生した際に、最初の遺産分割協議で長男のみが相続をすると決まったとします。

長男は不動産の相続税を支払いましたが、後に次男と不動産を共有名義にしたくなりました。

長男は相続税を支払った不動産を次男との共有名義としましたが、これは長男から次男に不動産が贈与されたといった扱いとなります。

不動産の贈与が発生した際には、その価値に応じた「贈与税」の支払いが必要となります。
(ここで贈与税の納付を避けるために、長男から次男へ不動産の持分を売却した場合には「譲渡税」が掛かります)

遺産分割協議をやり直す際には、このように余計な税金の納付が必要となってしまう可能性があります。

相続財産に対して相続税を申告する前の場合には、まだ財産の所有者が変わっていない扱いとなりますので、贈与税や譲渡税の納付は発生しません。

遺産分割協議をやり直す際には、一度、再協議により発生する税金についてご検討ください。

相続人全員と連絡が取れない場合

相続財産を遺言書や法定相続分通りに相続する場合には、遺産分割などは必要ありません。

遺産分割が必要となるのは、相続人同士で独自に相続財産を分割する場合です。

遺産分割協議では相続放棄をした方がいらっしゃる場合などを除いて、相続人全員で話し合いをするのが原則です。

その際に、1人でも相続人が揃わなくては、遺産分割協議は成立しません。

相続人の中に、例え遠方にお住いの方がいらっしゃったとしても例外はありません。

相続の際に遠くにお住まいの相続人がいらっしゃる場合には、お互いに予定を調整して直接会うか、手紙などで協議をする必要が出てきます。

遺産分割協議を行うために相続人に連絡を取ろうとした際に、時には音信不通や消息不明などで連絡ができない場合もあります。

相続人のうち、1人でも連絡を取れない状態では、遺産分割協議を行えません。

このような場合には、事前に消息不明の相続人を探すなどの対処が必要となります。

消息不明の親族の方を探す方法などにつきましては、下記で詳しくご説明致します。

相続人と連絡が取れない際の対処

相続人に消息不明や音信不通である方(不在者)がいらっしゃる場合には、その状態の解決が必要です。

親族の方が消息不明・音信不通である際には、複雑な事情が存在するなど、改善が難しい場合も少なくありません。

相続人となっている親族の方の住所や連絡先をご存知の場合には、それらを用いて状況を説明し、遺産分割協議への参加をお願いできます。

それに対して、消息不明の親族の方の住所も連絡先も分からないという場合には、すぐに事情の説明などを行えません。

そのような場合には、主に下記のような手段を用いて親族の方に連絡をとる必要があります。

消息不明の親族の方の戸籍謄本を取得する
戸籍謄本には記載人物の本籍地が記載されておりますので、不在者となっている親族の方が本籍地としている場所を調べられます。
被相続人の戸籍謄本を取得しますと、子などの情報が記載されておりますので、そこから転籍などを辿り、消息不明の親族の方を辿っていきます。
消息不明の親族の方の本籍地の役所から戸籍の附票を取得する
不在者となっている親族の方の本籍地が分かりましたら、次はその本籍地の役所にその方の「戸籍の附票」を請求します(戸籍の附票の取得方法は戸籍謄本などとほぼ同じです)。
戸籍の附票には、対象となる方がその本籍地を定めてからの住所履歴が記載されておりますので、本籍地と現住所が異なる場合でも、実際の住所が分かります。
判明した住所に事情を記載した手紙などを出す
判明した住所に対して、必要な事情を記載し、ご自身の連絡先を記載した上で手紙を送ります。
解決しない場合には専門家へ相談又は、裁判所に各申立てを行う
該当住所に対して手紙などを出したにも関わらず、相手からの連絡がない場合には、専門家への相談などが必要となります。
他にも、「不在者財産管理人の選任申立」や「失踪宣告の申立」などといった方法が選択される場合もあります。

上記の「不在者財産管理人の選任申立」や「失踪宣告の申立」につきましては、次の項目で詳しくご説明致します。

不在者財産管理人の選任申立

遺産分割協議の際には、相続人の中に消息不明、音信不通などの不在者(行方不明者)が存在する可能性もあります。

遺産分割協議は、相続人全員が揃った上で協議を行わなくてはなりません。

その影響で、不在者が存在する状況で遺産分割協議を行うためには、その不在者を探し、協議に参加をして貰う必要があります。

しかし、時にはどれだけ探しても、不在者が見つからないなどの問題が起こる可能性もあります。

行方不明の親族の方が遺産分割協議に参加しませんと、いつまで経っても財産の相続を完了できません。

このような事態を回避するために、「不在者財産管理人の選任申立」といった手続きが存在します。

この項目では、この不在者財産管理人の選任申立についてご説明致します。

なお、不在者が行方不明の状態が7年間続いた場合などには、
「不在者財産管理人の選任申立」ではなく、
「失踪宣告の申立」
を行うのが原則ですので、ご自身の状況に応じて申立てを行ってください。

失踪宣告の申立につきましては、同ページの「失踪宣告の申立」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

不在者財産管理人の詳細

不在者財産管理人の選任申立では、行方不明の親族の方(不在者)の代わりに、相続人の代理人となる人物(不在者財産管理人)が選任されます。

選任された不在者財産管理人は、不在者に代わり、不在者が相続する予定の財産を管理します。

不在者財産管理人は、財産目録の作成と裁判所への報告などの義務を負いますが、報酬などは不在者の相続財産から支払われる場合もあります。

相続時に不在者財産管理人を選任する際には、通常は、相続に利害関係のない第三者が候補となります。

これは、相続人の1人と親密な関係のある方の場合、親密な相続人に対して、本来は不在者のものである相続分を、親密な相続人に対して多く分配してしまう可能性などがあるからです。

不在者財産管理人の選任の際に、候補がいらっしゃらない場合には、家庭裁判所が弁護士や司法書士などの専門家を選任します。

不在者財産管理人は、「不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立」を行えば、後に遺産分割協議などへの参加も可能です。

「不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立」につきましては、同ページの「不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

不在者財産管理人の選任申立の必要書類

相続人の中に1人でも不在者がいらっしゃる場合には、不在者財産管理人などを選任する必要があります。

不在者財産管理人を選任するためには、家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任申立」を行わなくてはなりません。

不在者財産管理人の選任申立の際には、主に下記のような書類が必要となります。

なお、状況などによっては下記以外の書類の提出も必要となる可能性がありますので、その際には追加で準備をするようにしてください。

【不在者財産管理人の選任申立に必要な書類の例】

申立書
不在者財産管理人の選任申立を行う場合の申立書に、必要事項を記入します。
不在者財産管理人の選任申立を行う場合の申立書のダウンロードは、下記のリンクから行えます。
ダウンロード→裁判所ウェブサイト:「家事審判申立書
申立書の記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(不在者財産管理人選任)
標準的な申立添付書類
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 不在者の戸籍附票
  • 不在の事実を証する資料
  • 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等)
  • 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)、賃貸借契約書写し、金銭消費貸借契約書写し等)

これらの必要書類を準備した上で、不在者の従来(行方不明となった時点)の住所地又は、居所地の家庭裁判所へ提出しますと、不在者財産管理人の選任手続きが開始されます。

不在者財産管理人の選任申立を行える申立人は、利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者など)や検察官となります。

不在者財産管理人の選任申立に必要な費用

不在者財産管理人の選任申立には、相応の費用が必要となります。

申立書に貼り付ける収入印紙、切手代、書類の収集費用など、様々な出費が必要です。

不在者財産管理人の選任申立を行う際には、大きく分けて3つの費用が発生します。

  • 不在者財産管理人の選任申立の際に納める費用
  • 不在者財産管理人の選任申立に必要な書類を集める費用
  • 不在者財産管理人の選任申立を行う際に依頼した弁護士の方又は司法書士の方費用(依頼していない場合には不要)

これらに分類される費用を全て合計した金額が、不在者財産管理人の選任申立に必要な費用となります。

上記のうち、収入印紙の金額以外は、それぞれの方の状況や申立てを行う裁判所により異なりますので、事前に申立て先の裁判所でご確認ください。

それぞれの費用の大まか目安につきましては、下記のようになります。

なお、これらの費用はあくまで目安であり、実際は異なる可能性もありますのでご注意ください。

【不在者財産管理人の選任申立の費用一例】
申立書の収入印紙代 800円
切手代 裁判所により異なります
必要書類の収取費用 数千円~数万円

(表の下のリンク先を参照)
弁護士又は司法書士の費用 5万円前後~15万円前後

(交通費などがある場合には別途請求)

上記の表のうち、確実に必要となるのは収入印紙代、切手代、必要書類の収集費用となります。

司法書士の方などに不在者財産管理人をお願いする際には、上記に加えて何十万円の費用が必要となる可能性もあります。

案件の難易度により、それぞれ必要な報酬は異なりますので、事前に依頼先の司法書士の方・弁護士の方にお問い合わせください。

不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立

不在者財産管理人の選任申立により選任された不在者財産管理人は、あくまで不在者の相続財産を管理する義務のみを負っております。

不在者財産管理人に選任されただけでは、後の遺産分割協議などには参加ができません。

不在者財産管理人の選任申立により選任された不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するためには、別途に「不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立」が必要となります。

不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立を行う際の必要書類などは、不在者財産管理人の選任申立と同様です。

それに加え、下記の申立書を作成し、家庭裁判所に提出します。
ダウンロード→裁判所ウェブサイト:「家事審判申立書
申立書の記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(不在者財産管理人権限外行為許可)

申立書には、「800円」の収入印紙を貼り付ける必要があります。

不在者の財産管理人の権限外行為許可の申立が行われ、手続きが終わりましたら、不在者の財産管理人が遺産分割協議へ参加できるようになります。

失踪宣告の申立

相続が発生した際に、一部の相続人の消息が不明である場合には、事前に適切な手続きを行う必要があります。

連絡の取れない相続人が、7年間以上音信不通である場合には、不在者財産管理人の選任申立でなはなく、「失踪宣告」を選択するのが一般的です。

不在者財産管理人の選任申立により、遺産分割協議を行う場合、最終的には不在者の失踪宣告によって遺産分割が行われます。

その影響で、不在者が確実に生存しており、後に失踪宣告が取り消される見込みがあるような場合を除いては、初めから失踪宣告のほうを選択するケースが多いのが実情です。

この項目では、このような失踪宣告の申立てについてご説明致します。

失踪宣告の申立の詳細

相続が発生した際に、相続人の1人が不在者(消息不明)となる場合には、失踪宣告の申立を行う場合もあります。

失踪宣告とは、生死が不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす手続きです。

消息不明の相続人に対して失踪宣告がありますと、その相続人は法律上死亡したとみなされます。

失踪宣告は、申立てを行うために条件があり、その条件を満たしていなくては受理がされません。

失踪申告を選択する際の条件は主に、下記の2つとなります。

【失踪宣告の条件】

普通失踪
不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき
特別失踪
戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき

普通失踪の場合は、不在者の生死が不明となった時点から、
特別失踪の場合は、上記の通り、危難が去った後から
失踪期間をカウントします。

不在者が、上記の条件を満たしていない場合には、失踪宣告ではなく、不在者財産管理人選任の申立のほうを選択する必要があります。

また、不在者が生存していると確認している状態での音信不通や連絡先不明の際にも、失踪宣告ではなく不在者財産管理人選任の申立を選択するようにしてください。

失踪宣告の申立の必要書類

相続人の中に、1人でも普通失踪者や特別失踪者がいらっしゃる場合には、遺産分割協議などを行う前に失踪宣告が必要となります。

失踪宣告の申立の際には、主に下記のような書類が必要となります。

なお、状況などによっては下記以外の書類の提出も必要となる可能性がありますので、その際には追加で準備をするようにしてください。

【失踪宣告の申立に必要な書類の例】

申立書
失踪宣告の申立を行う場合の申立書に、必要事項を記入します。
失踪宣告の申立を行う場合の申立書のダウンロードは、下記のリンクから行えます。
ダウンロード→裁判所ウェブサイト:「家事審判申立書
申立書の記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(失踪宣告)
標準的な申立添付書類
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 失踪を証する資料
  • 申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))

これらの必要書類を準備した上で、不在者の従来(行方不明となった時点)の住所地又は、居所地の家庭裁判所へ提出しますと、失踪宣告の手続きが開始されます。

失踪宣告の申立を行える申立人は、利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者)となります。

失踪宣告の申立に必要な費用

失踪宣告の申立てには、相応の費用が必要となります。

申立書に貼り付ける収入印紙、切手代、書類の収集費用など、様々な出費が必要です。

失踪宣告の申立てを行う際には、大きく分けて4つの費用が発生します。

  • 失踪宣告の申立の際に納める費用
  • 失踪宣告の申立に必要な書類を集める費用
  • 官報公告料(失踪に関する届出の催告及び失踪宣告の費用)
  • 失踪宣告の申立を行う際に依頼した弁護士又は司法書士の方費用(依頼していない場合には不要)

これらに分類される費用を全て合計した金額が、失踪宣告の申立に必要な費用となります。

上記のうち、収入印紙と官報公告料以外は、それぞれの方の状況や申立てを行う裁判所により異なりますので、事前に申立て先の裁判所でご確認ください。

それぞれの費用の大まか目安につきましては、下記のようになります。

なお、これらの費用はあくまで目安であり、実際は異なる可能性もありますのでご注意ください。

【失踪宣告の申立の費用一例】
申述書の収入印紙代 800円
切手代 裁判所により異なります
官報公告料 4298円

(失踪に関する届出の催告2725円 + 失踪宣告1573円)
必要書類の収取費用 数千円~数万円

(表の下のリンク先を参照)
弁護士又は司法書士の費用 5万円前後~15万円前後

(交通費などがある場合には別途請求)

上記の表のうち、確実に必要となるのは収入印紙代、切手代、官報公告料、必要書類の収集費用となります。

失踪宣告の申立書の作成などを司法書士の方や弁護士の方に委任しますと、更に必要費用は多くなります。

案件の難易度により、それぞれ必要な報酬は異なりますので、事前に依頼先の司法書士の方・弁護士の方にお問い合わせください。

失踪宣告の取り消しの申立

失踪宣告後にその相続人の生存が確認された際には、家庭裁判所に対して失踪宣告の取り消しを申立てる必要があります。

失踪宣告の取り消しによって、消滅した身分関係は復活します。

失踪宣告の取り消しを行った際には、失踪宣告を原因として開始した相続により取得した財産などは、原則として失踪宣告がされた相続人に返還しなければなりません。

ただ、失踪宣告を信じた方(善意)が既に相続財産を消費していた場合や、相続不動産を売却していた際などには、返還はしなくても良いとされております。

例えば、「不在者Aさん」に対して失踪宣告がされ、それを信じた「Bさん」が「Aさん」の不動産を取得し、「Aさん」の生存を知らない「Cさん」に売却したとします。

その後、「Aさん」の生存が確認され、「Aさん」の所在地なども判明しました。

今回の一連では、「Bさん」は本当に「Aさん」が失踪したと信じ(善意)、「Cさん」も「Aさん」が生存していると知らない状態(善意)で、不動産の売買が行われております。

この場合、双方が善意により財産の売買を行っていると判断され、「Bさん」は「Aさん」に対して相続不動産を返還する必要がありません。

それに対して、「Bさん」が本当は「Aさん」の生存を知った上で、不動産の相続・売却を行った場合(悪意)には話は変わってきます。

「Bさん」に明らかな悪意がある状態で、「Aさん」が相続予定であった不動産を「Cさん」に売却した場合、後に「Bさん」は「Aさん」に対して不動産の返還を行わなくてはなりません。

これは既に買主の方に対して所有権移転登記が行われた場合も例外ではなく、その所有権移転登記は無効となります。

相続放棄をした相続人がいた場合

相続が発生した際に、法定相続人となる相続人であっても、その相続を放棄できます。

相続人の中に相続を放棄した方がいらっしゃる際には、そのまま残りの相続人で相続を進めていける訳ではありません。

ここできちんとした手続きを行っておかなくては、後の相続登記の際に登記が行えないなどのトラブルに発展してしまう可能性があります。

これは、遺産分割協議中などであっても例外はありません。

通常、相続人の中に相続放棄をした方がいらっしゃる場合には、「相続の放棄の申述」が必要となります。

相続の放棄の申述を行う際の手順や必要な費用につきましては、下記で詳しくご説明致します。

相続の放棄の申述の必要書類

相続人の中に、1人でも相続の放棄をする方がいらっしゃる場合には、事前に必要な手続きを終えた上で相続登記を行う必要があります。

相続放棄をした方は、最初から相続人ではなかったとみなされ、他の方にその分の相続分が移行します。

相続放棄者がいらっしゃる際に、相続登記を行うためには、その方が相続を放棄したという証明が必要です。

相続放棄に関する詳細は、戸籍などを確認しても分かりません。

その影響で、登記の前にその証明となる書類などを取得しておく必要があります。

通常、相続人の相続放棄を証明する際には、家庭裁判所に対して「相続の放棄の申述」を行います。

相続の放棄の申述の際には、主に下記のような書類が必要となります。

なお、状況などによっては下記以外の書類の提出も必要となる可能性がありますので、その際には追加で準備をするようにしてください。

【相続の放棄の申述に必要な書類の例】

相続放棄の申述書
相続放棄の申述を行う場合の申述書に、必要事項を記入します。
相続放棄の申述を行う場合の申述書のダウンロードは、下記のリンクから行えます。
ダウンロード→裁判所ウェブサイト:「相続放棄の申述書
20歳以上の方の申述書の記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(相続放棄(20歳以上))
20歳未満の方の申述書の記載例→裁判所ウェブサイト:「記入例(相続放棄(20歳未満))
標準的な添付書類
【共通】
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
【申述人が、被相続人の配偶者の場合】
上記の【共通】に加えて下記の書類が必要となります。

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
【申述人が、被相続人の子又はその代襲者(孫、ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】
上記の【共通】に加えて下記の書類が必要となります。

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人((孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
【申述人が、被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
上記の【共通】に加えて下記の書類が必要となります。

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
【申述人が、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
上記の【共通】に加えて下記の書類が必要となります。

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

これらの必要書類を準備した上で、不在者の従来(行方不明となった時点)の住所地又は、居所地の家庭裁判所へ提出しますと、相続放棄の申述手続きが開始されます。

相続の放棄の申述を行える申立人は、相続人(相続人が未成年者又は、成年被後見人である場合にはその法定代理人や特別代理人)となります。

なお、相続放棄は、相続開始を知った日から「3ヶ月以内」に手続きをしておく必要があります。
(相続の際に相続財産が無いと思い込んでいた場合や、財産が不明であったなど、やむを得ない理由がある場合には3ヶ月が経過した後でも手続きができる場合もあります)

3ヶ月を過ぎた後の相続の放棄の申述を司法書士の方に委任した際には、費用が高額となりやすいため、その点に関しても意識が必要です。

相続の放棄の申述に必要な費用

相続の放棄の申述には、相応の費用が必要となります。

申述書に貼り付ける収入印紙、切手代、書類の収集費用など、様々な出費が必要です。

相続の放棄の申述を行う際には、大きく分けて3つの費用が発生します。

  • 相続の放棄の申述の際に納める費用
  • 相続の放棄の申述に必要な書類を集める費用
  • 相続の放棄の申述を行う際に依頼した弁護士又は司法書士の方費用(依頼していない場合には不要)

これらに分類される費用を全て合計した金額が、相続の放棄の申述に必要な費用となります。

上記のうち、収入印紙の金額以外は、それぞれの方の状況や申述を行う裁判所により異なりますので、事前に申立て先の裁判所でご確認ください。

それぞれの費用の大まか目安につきましては、下記のようになります。

なお、これらの費用はあくまで目安であり、実際は異なる可能性もありますのでご注意ください。

【相続の放棄の申述の費用一例】
申立書の収入印紙代 800円
切手代 裁判所により異なります
必要書類の収取費用 数千円~数万円

(表の下のリンク先を参照)
弁護士又は司法書士の費用 3万円前後~6万円前後

(交通費などがある場合には別途請求)

上記の表のうち、確実に必要となるのは収入印紙代、切手代、必要書類の収集費用となります。

相続放棄申述書の作成などを司法書士の方や弁護士の方に委任しますと、更に必要費用は多くなります。

案件の難易度により、それぞれ必要な報酬は異なりますので、事前に依頼先の司法書士の方・弁護士の方にお問い合わせください。

相続の放棄の申述後の証明書取得

相続の放棄の申述を家庭裁判所に申述し、それが受理されますと、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が交付されます。

ただ、相続登記の際には、この相続放棄申述通知書のみでは登記を完了できません。

相続登記の際に、相続人の相続放棄を証明するためには、その後にきちんとした証明書の交付を受ける必要があります。

その証明書は「相続放棄申述受理証明書」となります。

相続放棄申述受理証明書がありますと、相続放棄の申述が裁判所で受理されたと証明ができます。

相続放棄申述受理証明書は、相続の放棄の申述に関する手続きが完了したとしても、裁判所から自動的に交付がされる訳ではありません。

相続放棄申述受理証明書の交付を受けるためには、別途、裁判所に交付申請をする必要があります。

申請の際には、相続放棄申述受理通知書が交付された際に同封されていた「相続放棄申述受理証明書の交付申請書」を使用します。

相続放棄申述受理証明書の交付申請書には、相続放棄をした申述人の氏名、相続放棄の事件番号、受理年月日などの記載が必要です。
(これらの情報は、相続放棄申述通知書に記載されております)

相続放棄申述受理証明書の交付手数料は1通につき150円ですので、相続放棄申述受理証明書の申請書に、収入印紙を貼り付けます。

なお、相続放棄申述受理証明書の申請書を紛失してしまった方は、申述先の家庭裁判所のホームページからダウンロードができます。

相続登記を委任する際の手順

相続不動産を売却する場合、売却時に必ず相続登記を行う必要があります。

登記には、様々な専門知識が必要となり、個人では手続きがスムーズに行えないケースも珍しくありません。

これらの手続きをスムーズに行うために、登記の専門家である司法書士の方などに手続きを委任するという方法もあります。

司法書士の方は、登記などに関する知識が豊富であり、必要書類の収集、申請書の作成なども全て代行してくださいます。

司法書士の方に登記の代行を依頼した際には、通常は相続の発生から登記申請までの一連に、司法書士の方が関与してくださいます。

場合によっては、遺産分割協議書の作成のみを依頼したり、遺産分割協議書作成後の相続登記のみを依頼したりするといった方法をとることも可能です。

どの段階から司法書士の方に依頼をするのかは、相続人の自由ですので、状況に応じてご検討ください。

この項目では、相続登記などを司法書士の方などに委任した際の実際の流れなどについてご説明致します。

相続登記を委任する際の流れ

司法書士の方に、相続登記の委任を依頼した際には、必要作業の殆どをご自身で行う必要がなくなります。

相続関係などが難しい場合や手続きが難航しそうな場合でも、司法書士の方であれば必ず問題の解決をしてくださいます。

相続登記を司法書士の方に委任した際の大まかな流れにつきましては、下記のようになります。

なお、これらの流れは、あくまで一例ですので、実際は少々異なる流れとなる可能性もありますのでご注意ください。

司法書士に相続登記の相談をする
相続登記の委任をお願いする司法書士の方に、登記手続き委任の依頼をします。
実際の相談の日には、下記のような書類の提示を求められる可能性がありますので、事前に準備した上で司法書士の方のもとへ持参します。

  • 被相続人が亡くなられたと記載のある戸籍謄本
  • 不動産の所在の分かるもの(登記済権利証など)
  • 固定資産税の納付通知書
  • 依頼者の本人確認のできる資料(運転免許証など)
  • 委任状押印のための印鑑(認印で問題ありません)
など
司法書士の方から費用の見積もりが提示される
司法書士の方が、相談の内容や必要な手続き、実費などから必要な費用を見積もってくださいます。
相続登記に必要な書類の収集
最初に提示をした書類をもとに、司法書士の方が戸籍関係書類などの必要書類の収集をしてくださいます。
その際には、取得書類1通につき「1,000円前後~1,500円前後」の取得代行手数料と、書類取得の際に必要な費用が実費として報酬に加えられます。
事前にご自身で必要書類を取得していらっしゃる場合には、これらの追加費用は発生しませんので、費用を抑えたい場合には、事前にご自身で必要書類を収集しておき、司法書士の方に提示する方法を選択すると効果的です。
相続人及び相続財産の確定
集められた資料から、相続人と相続財産が確定されます。
相続登記に必要な作業が選択される
遺言書がある場合
遺言書に基づく相続登記の準備がされます。
遺産分割が必要な場合
最初に遺産分割協議が行われ、成立した際には司法書士の方が「遺産分割協議書」の作成を代行してくださいます(遺産分割協議書には相続人全員の署名押印などを行います)。
遺産分割協議が不成立となった際には、遺産分割調停へと移行し、遺産分割調停申立書の作成と各サポートを司法書士の方が行ってくださいます。
遺産分割調停が不成立となった際には、遺産分割審判へと移行しますが、司法書士は家事審判の代理権がありませんので、代理人を立てるためには、別途弁護士の方への依頼が必要です。
法定相続分に基づく場合
法定相続分に基づいた相続登記の準備がされます。
登記に必要な書類の準備
相続の方法や分割方法などが決まりましたら、相続登記に必要となる書類の準備をし、司法書士のもとへ持参するか郵送で提出します。

【準備が必要な書類】
相続人全員の印鑑証明書 各1通ずつ
相続人全員の戸籍謄本 各1通ずつ
不動産を取得する相続人の住民票 各1通ずつ
相続登記の申請がされる
依頼先の司法書士の方が、相続登記の申請を行ってくださいます。
相続登記が完了する
相続登記が完了した後には、司法書士の方から登記識別情報、戸籍等相続関係書類、登記事項証明書(登記簿謄本)などの書類が直接渡される又は、書留郵便などで送られてきます。

これらの作業が終われば、不動産の相続登記は完了です。

相続登記を委任する際の費用

相続登記を司法書士の方に委任した際には、多くの手間と時間が削減できるのが一般的です。

分からない部分は、すぐに司法書士の方に相談もできますので、登記の作業が楽になります。

ただ、司法書士の方に登記を委任しますと、それ相応の報酬の支払いが必要となります。

相続登記に必要な報酬額は、それぞれの司法書士の方で異なりますので、一概に何円とは言えません。

この項目では、一応の費用の目安について記載をしますが、これらはあくまで一例となりますので、正確な金額は依頼先の司法書士の方などにご相談ください。

まず、司法書士の方に相続登記を委任した場合には、大きく分けて

  • 司法書士の方への報酬
  • 実費(書類取得など)
  • 登録免許税

のような費用が発生します。

上記の登録免許税とは、登記の際に必要となる印紙税です。

相続登記時の登録免許税につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります
必要になる登録免許税額の目安」の項目を、
司法書士の方の報酬目安につきましては、
登記の代理申請時の報酬目安」の項目を、
実費目安につきましては、
その他登記に必要な費用の目安
の項目ををご覧ください。

相続登記を委任した際に必要な大まかな司法書士の方への報酬目安は、大体「3万円前後~10万円前後」と大きく幅がありますが、
「日本司法書士会連合会」が平成25年2月に行ったアンケートによりますと、「57,399円」が平均額となります。

必要な登録免許税は、「不動産の固定資産税評価額の1000分の4(0.4%)」となります。

なお、遺産分割協議書の作成のみを司法書士の方に依頼した場合には、大体「10,000円~15,000円」程度の報酬が掛かる場合が多いようです。

その後、遺産分割調停申立などが必要となった場合には、大体「5万円前後~10万円前後」の報酬が必要となります。

更に、遺言書の検認申立書などの作成も委任しますと、追加で「5万円前後」の報酬が必要となる場合もあります。

遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判などを弁護士の方に代理人として依頼した場合などには、別途に報酬も発生します。

その際の必要費用につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります「売却時の弁護士への相談費用」の項目をご覧ください。

なお、相続に関する案件では、弁護士の方に着手金と基本報酬以外にも、回収報酬などの支払いが必要となる可能性があります。

各費用は、依頼する弁護士の方で異なりますが、旧報酬基準の着手金と報酬の金額は計算が可能です。

計算の際に、それぞれの割合を掛ける基準額につきましては、下記のようになります。

着手金
依頼者の方が請求する相続財産の時価の価額
基本報酬金
遺産分割協議・調停・審判において成功した際に認められた相続価額
回収報酬金
遺産分割の際に実際に取得した財産の価額

これらを基準として、先ほどのリンク先の旧報酬基準の計算式に当てはめますと、従来の着手金と報酬の金額を計算できます。

委任による相続登記費用の計算例

先ほどの項目の内容を基に、実際に委任による相続登記に必要な費用を計算してみます。

なお、下記の内容はあくまで一例であり、実際の費用額とは異なりますので、実際の金額は依頼先の司法書士の方などに見積もりをして貰う必要があります。

【相続登記に必要な費用の一例】

被相続人が、固定資産税評価額「3,000万円」の不動産を残しており、相続人である「配偶者」と「長男」と「次男」の3人で遺産分割協議を行い、結果その不動産を長男だけが相続するとします。

その際に、司法書士の方に相続登記を依頼した場合の報酬金額の一例を計算します。

今回は、相続登記を司法書士の方に委任しますので、
「被相続人が亡くなられた時点の戸籍謄本」、
「相続人全員の印鑑証明書」、
「相続人全員の戸籍謄本」、
「不動産を取得する相続人の住民票」
「不動産の固定資産評価証明書」
のみをご自身で取得します。

その他の書類の収集は司法書士の方が代行してくださるため、書類1通につき
「1,000円~1,500円(郵送代が掛かる場合には2,500円程度掛かる場合もあります)」の書類取得代行費用と、
「書類取得のための実費」
が追加されます。

今回は、書類取得代行費用を、「1,500円」として計算をします。

司法書士の方が収集をしてくださる書類は、
「被相続人の出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)」、
「被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)」、
「対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)」
と仮定します。

「被相続人の出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)」は、下記の3つの場合で計算をします。

  1. 婚姻時の戸籍(平成6年の改製原戸籍)
  2. 婚姻前の戸籍
  3. 出生時の戸籍((昭和32年の改製原戸籍)

(被相続人が亡くなれた時点の戸籍謄本は最初に取得し、司法書士の方に提出しておりますので必要ありません)

また、司法書士の方が書類を取得する際に、郵送による方法を使用したと仮定して計算を行います。
(実際は、司法書士の方が役所や法務局などに足を運んでくださる場合もありますので、必ずしも切手代が書類取得枚数分掛かる訳ではありません)

各費用の概算
概要 取得費用
ご自身での書類取得費用 亡くなられた方の戸籍謄本 450円
相続人全員の印鑑証明書 300円 × 3 = 900円

(窓口で取得)
相続人全員の戸籍謄本 450円 × 3 = 1,350円
不動産を取得する相続人の住民票 300円

(地域により変動)
不動産の固定資産評価証明書 300円

(地域により変動)
司法書士の報酬 「日本司法書士会連合会より」 57,399円
実費 婚姻時の戸籍(平成6年の改製原戸籍)

(改製原戸籍謄本1通750円 + 取得代行費用1,500円)
2,250円
婚姻前の戸籍

(除籍謄本1通750円 + 取得代行費用1,500円)
2,250円
出生時の戸籍(昭和32年の改製原戸籍)

(除籍750円1通 + 取得代行費用1,500円)
2,250円
被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)

(1通300円 + 取得代行費用1,500円)
1,800円
対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)

(1通600円 + 取得代行費用1,500円)
600円

(窓口で取得)
各書類を郵送により取得した際の切手代

1通(82円 + 82円(返信用封筒の分) × 6)円
984円
登録免許税 固定資産税評価額3,000万円 × 4/1000(0.4%) 120,000円

上記の金額を合計しますと、今回の例では相続登記に「190,833円」が必要という計算となります。

万が一、「ご自身での書類取得」の際に、窓口ではなく郵送を選択した場合には、1通につき「82円 + 82円(返信用封筒の分)」円の切手代が加算されます。
(上記の例の場合は「82円 + 82円(返信用封筒の分) × 5 = 810円」が加算されます)

上記は相続登記の費用の一例ですので、全ての方がこの金額となるという訳ではありません。

正確な金額は、実際に相談をしてみなくては分からないのが現状です。

相続登記をご自身で行う際の手順

相続が発生した際の相続登記は、専門家に依頼をしなくてはいけないという規定はありません。

ある程度知識をお持ちの方の場合には、ご自身のみで手続きを行えるケースもあります。

この場合は、司法書士の方に登記を委任した状況とは異なり、全ての作業をご自身で行わなくてはなりません。

相続登記などを行うためには、事前に必要書類の収集や相続人・相続財産の確定などが必要です。

これらの確認を怠った場合、後に様々なトラブルが起こってしまう原因となります。

また、相続登記をご自身で行うためには、最終的に登記申請書などの記載も行わなくてはなりません。

司法書士の方に手続きを委任しない分、必要な費用は万単位で少なくなりますが、手続きなどのために何度も法務局などへ足を運ぶ必要も出てきます。

最悪は相続登記が長期間終わらず、相続不動産の売却などに時間が掛かってしまう可能性もあります。

特に複雑な相続関係などの場合には、個人では問題の解決に多大な時間を要してしまいかねません。

相続登記の際には、状況と照らし合わせた上で、ご自身で登記を行うかどうかを選択するようにしてください。

ご自身で相続登記を行う際の流れにつきましては、下記の項目でご説明致します。

相続登記をご自身で行う際の流れ

ご自身で相続登記を行う際には、事前に必要な書類の収集を行わなくてはなりません。

戸籍謄本や住民票、登記事項証明書など、必要書類の全てを余さずご自身で収集します。

必要書類の収集の後には、戸籍謄本などから相続人の確認・確定を行います。

個人で相続登記を行う際の大まかな流れの一例につきましては、下記のようになります。

なお、これらの流れは、あくまで一例ですので、実際は少々異なる流れとなる可能性もありますのでご注意ください。

被相続人の戸籍謄本の収集・調査をする
相続登記を行う際には、まず被相続人の出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本の収集を行い、記載内容から相続人の確定を行います(隠し子などがいないかどうかも確認します)。
法務局や市区町村役場は、平日しか開いていない場合が殆どですので注意が必要です。
戸籍謄本の収集方法や内容の確認方法につきましては、同ページの「被相続人の戸籍謄本の取得方法」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。
状況に応じて相続財産の相続方法を決定する
遺言書がある場合
遺言書に基づいて相続登記を行います。
遺産分割が必要な場合
遺産分割協議・遺産分割調停・遺産分割審判などを行い、遺産を分割します。
法定相続分に基づく場合
法定相続分に基づいて相続登記を行います。
相続登記に必要な書類を集める
相続人と相続財産の決定がされましたら、実際に登記に必要な書類などを集めていきます。
必要書類は、相続人の状態と、相続財産を決定した方法により少々異なってきますので、ご自身の状況に応じた書類を収集してください。
状況別の必要書類の例につきましては、下記のリンク先をご覧ください。

遺言書がある場合
同ページの「被相続人の遺言書がある場合」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。
遺産分割を行った場合
同ページの「遺産分割を行う場合」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。
法定相続分に基づく場合
同ページの「法定相続分に基づく場合」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。
相続登記の申請書を作成する
相続登記に必要な書類の取得が終わりましたら、実際に相続登記の申請書を作成し、登記申請を行います。
相続登記の申請書の記載方法などにつきましては、同ページの「相続登記の申請書の作成方法」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。
相続登記が完了する
相続登記が完了した後には、法務局から登記識別情報が記載された「登記識別情報通知書」が発行されます。
登記識別情報通知書を郵送により受け取りたい場合には、本人限定受取郵便などにより送付されますので、「書留料金 + 100円」の郵券が追加で必要となります。

これらの作業が終われば、相続登記は完了です。

相続登記の申請書の作成方法

相続登記を申請する際には、「所有権移転登記申請書(相続登記)」や「相続関係説明図」などの作成が必要です。

所有権移転登記申請書は、法務局のホームページなどからダウンロードできます。
(形式につきましては、「一太郎」、「Word」、「PDF」がありますので、ご自身の使いやすいものをご使用ください)

その際には、相続の状況により、使用する申請書が若干異なります。

出典:「不動産登記の申請書様式について」(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

【使用する申請書の書式】

公正証書遺言による相続の場合
18)所有権移転登記申請書(相続・公正証書遺言)
自筆証書遺言による相続の場合
19)所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言)
法定相続分による相続の場合
20)所有権移転登記申請書(相続・法定相続)
遺産分割による相続の場合
21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)
遺産分割時に数次相続が発生している状態での相続の場合
22)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)
数次相続とは、最初に発生した相続時の「遺産分割協議」前に本来その財産を相続するはずであった相続人のうち1人が死亡し、その地位を死亡した相続人の法定相続人が引き継ぎ、次の遺産相続が開始されてしまう状態のことを指します。

それぞれの申請書の様式の欄には、記載例も一緒に掲載されておりますので、それを基に作成を行ってください。

「相続関係説明図」につきましては、上記のリンク先にテンプレートはありませんので、
記載例を参考にご自身で作成するか、
別途テンプレートをダウンロード
する必要があります。

インターネットで検索をしますと、「相続関係説明図」のテンプレートなどを配布してくださっているホームページがありますので、そちらからダウンロードができます。

対応した相続登記の申請書と相続関係説明図の準備が終わりましたら、記載例を見ながら書面に必要事項を記載します。

内容の記載は「黒色インク」、「黒色ボールペン」、「カーボン紙(摩擦等により見えにくくなるもの以外)」などで行います。

パソコンでの記入も可能ですので、都合の良い方法で記載をしてください。

記載が終わりましたら、A4の上質紙などに相続登記の申請書と相続関係説明図を印刷します。

なお、登記をオンライン申請する方は、下記のリンク先より必要ソフトウェアをダウンロードし、指示に従って申請書の作成、申請を行ってください。
出典:「登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと」(http://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/download_kani.html

登記申請書と必要書類の提出方法

登記申請書などの作成が終わりましたら、申請書と必要書類を下記の順番で左とじにします(ホッチキスで左はじを2~3か所程度とめる)。
(下記は一般的な登記申請書の提出方法であり、状況によっては少々手順が異なる場合もありますのでご注意ください)

下記の手順に出てくる「契印(割印)」とは、書類の1枚目を縦に半分に折り、その縦に折った1枚目の用紙の折り目と2枚目の用紙の境目にかかるように、印鑑を押す作業を指します。

登記申請書
申請書を他の書類とまとめる前に、書面の申請者(相続人)の氏名の横に印鑑を押しているかを確認します。
作成した登記申請書が複数枚になる場合には、不動産の相続を受ける方(登記の申請人)が「契印」を行ってください。
印紙台紙
登記に必要な収入印紙を貼り付けるための台紙です(収入印紙台紙の準備をしていらっしゃらない場合には、白いA4の紙でも問題ありません)。
事前に金額に間違いがないかを確認しましたら、この用紙に収入印紙を貼り付けます。
印紙台紙を綴じる際には、申請書との間に契印を押します。
相続関係説明図
書面に作成者の押印があるかをご確認ください。
遺産分割協議書(ない場合は必要ありません)
作成した遺産分割協議書が複数枚になる場合には、相続人全員で「契印」を行ってください。
印鑑登録証明書(遺言による相続の場合には不要の場合もあり)
相続人全員の印鑑証明書を年齢順に並べます。
被相続人の住民票(除票)など
相続人の住民票よりも上に、被相続人の住民票(除票)を綴じます。
相続人の住民票
被相続人の住民票(除票)の下に、不動産の相続を受ける相続人の住民票を綴じます。
相続人が複数人の場合には、年齢順に住民票を並べます。
固定資産評価証明書
最新の年度のものを綴じます。

これらを順番に綴じ(申請書が一番上で、固定資産評価証明書が一番下にくるように)、ホッチキスで左はじをとめましたら、下記の3つをクリップでとめます。

  • ホッチキスで止めた登記申請書と必要書類
  • 被相続人の出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本(遺言による相続の場合には不動産を相続する相続人の戸籍謄本のみで済む可能性があります)

登記をオンライン申請する際には、登記申請書は既にオンラインで提出しておりますので、添付書類のみを上記のようにして法務局に持参又は郵送します。

なお、これらの書類は基本的に原本の添付が必要であり、提出した書類は
「被相続人の出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍」
「相続人全員の戸籍謄本」
以外は申請人のもとには返ってきません。

添付書類の還付を受けるためには、「原本還付手続き」が必要となります。

原本還付手続きにつきましては、次の項目で詳しくご説明致します。

添付書類の還付を受けたい場合

登記申請時に添付する書類は原則、原本であり、手続きが完了した後でも一定の書類以外は還付されません。

後にこれらの書類の還付を受けるためには、「原本還付手続き」を行う必要があります。

原本還付手続きを行うためには、まず必要となる書類のコピーを作成します。

その後、作成したコピーのページの余白か裏面に「原本に相違ありません。」と記載し、申請書に押印した方が、その書面に署名をし押印をします。

書類が2枚以上になる場合には、申請書の場合と同様に、1枚目の書類を縦に折り、1枚目の用紙の折り目と2枚目の用紙の境目に掛かるように契印(割印)をします。

これらの準備ができましたら、後は法務局で保管される書類(コピーの書類)のほうを登記申請書と一緒にホッチキスでとめます。

登記完了後に還付を受ける予定の書類(原本)は、登記申請書と共に綴じたコピーとは別に、まとめて綴じておきます。
(被相続人の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本は、「相続関係説明図」を提出していますと、このような手順を踏まなくとも還付がされますので、その他の原本を戸籍謄本などと一緒にまとめてクリップでとめておきます)

なお、下記のような書類は原本還付手続きをしたとしても、還付はされませんのでご注意ください。

  • 登記申請のためだけに作成・取得したもの(遺産分割協議書、戸籍の附票、固定資産税評価証明書など)
  • 印鑑証明書
など

これらの書類を手元に残しておきたい場合には、書類を提出する前にコピーを取り、保管しておく必要があります。

還付を受けられない書類につきましては、登記申請前に法務局でご確認ください。

相続登記をご自身で行う際の費用

相続登記をご自身で行う場合、司法書士の方へ報酬などの支払いが必要なくなります。

その影響で、数万円単位で必要費用が低く抑えられる可能性もあります。

ご自身で相続登記を行う際に必要となる費用は、大きく分けて

  • 実費(書類取得など)
  • 登録免許税

の2つのみとなります。

相続登記時の登録免許税につきましては、お手数をお掛け致しますが、「不動産を売却する際に必要になる各費用の計算方法と合計金額」の記事にあります
必要になる登録免許税額の目安」の項目を、
実費目安につきましては、
その他登記に必要な費用の目安
の項目ををご覧ください。

上記の情報から、相続のための所有権移転登記に必要な登録免許税は、「固定資産税評価額 × 4/1000(0.4%)」となります。

実費(必要書類の取得費用など)は、
住民票(の除票)の取得費用が「1通200円~500円程度」、
戸籍謄本が「1通450円」、
除籍謄本・改製原戸籍謄本が「1通750円」、
戸籍の附票が「1通300円程度(地域で異なっている可能性が高いです)」
法人の印鑑証明書が、
登記所(法務局・支局・出張所)にて請求・取得した場合は「1通450円」、
オンラインで請求し、郵送で取得した場合は「1通410円」、
オンラインで請求し登記所で取得した場合は「1通390円」、
個人の印鑑登録証明書が「1通300円~400円程度」、
固定資産評価証明書が「1通300円程度(増えるごとに200円増額)」、
登記事項証明書(登記簿謄本)が、
登記所(法務局・支局・出張所)にて請求・取得した場合は「1通600円程度」(1通が50枚を超える場合は、超える枚数50枚ごとに100円加算)、
オンラインで請求し、郵送で取得した場合「1通500円程度」(1通が50枚を超える場合は、超える枚数50枚ごとに100円加算)、
オンラインで請求し登記所で取得した場合は「1通480円程度」(1通が50枚を超える場合は、超える枚数50枚ごとに100円加算)
必要となります。
これらの書類を郵送により取得した場合には、郵送に伴う切手代も追加されます。

上記のうち、登記申請時に取得した書類の取得費用と、登録免許税を合計した金額が、ご自身で相続登記を行う際に必要となる費用の金額です。

なお、遺産分割協議時に「遺産分割協議書」の作成を司法書士の方に依頼した場合には、実費と登録免許税の合計に加え、大体「10,000円~15,000円」程度の報酬が加算されます。

どのような書類が必要であり、どのような方法で取得するのかはそれぞれの方の状況などで変わりますので、都合の良い方法をご選択ください。

相続登記をご自身で行う際の計算例

先ほどの項目の内容を基に、実際にご自身で相続登記を行う際に必要な費用を計算してみます。

なお、下記の内容はあくまで一例であり、実際の費用額とは異なりますので、実際の金額とは異なります。

【相続登記に必要な費用の一例】

被相続人が、固定資産税評価額「3,000万円」の不動産を残しており、相続人である「配偶者」と「長男」と「次男」の3人で遺産分割協議を行い、結果不動産を長男だけが相続するとします。

その際に、長男がご自身で遺産分割協議書などを作成し、相続登記を行った場合の費用の一例を計算します。

この場合には、ご自身で下記の書類を全て取得します。

  • 被相続人の出生時から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍など)
  • 被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を取得する相続人の住民票
  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 不動産の固定資産評価証明書

「被相続人の出生時から亡くなったまでにさかのぼる全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)」は、下記の4つの場合で計算をします。

  1. 被相続人が亡くなれた時点の戸籍
  2. 婚姻時の戸籍(平成6年の改製原戸籍)
  3. 婚姻前の戸籍
  4. 出生時の戸籍((昭和32年の改製原戸籍)

また、各書類の取得は、郵送により行ったと仮定して計算を行います。
(実際は、複数枚の書類をまとめて送付して貰える場合もありますので、必ずしも切手代が書類取得枚数分掛かる訳ではありません)

書類を郵送により取得する際の注意点や切手代などにつきましては、同ページの「郵送により書類を取得する際の注意」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

各費用の概算
概要 取得費用
亡くなられた方の戸籍謄本 被相続人が亡くなれた時点の戸籍謄本

(改製原戸籍謄本1通450円 + (切手代82円 × 2))
614円
婚姻時の戸籍(平成6年の改製原戸籍)

(改製原戸籍謄本1通750円 + (切手代82円 × 2))
914円
婚姻前の戸籍

(改製原戸籍謄本1通750円 + (切手代82円 × 2))
914円
出生時の戸籍(昭和32年の改製原戸籍)

(改製原戸籍謄本1通750円 + (切手代82円 × 2))
914円
その他の被相続人の関係書類 被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)

(1通300円 + (切手代82円 × 2))
464円

(地域により変動)
相続人の関係書類 相続人全員の印鑑証明書

(1通300円 × 3 + (切手代82円 × 2))
1,064円

(地域により変動)
相続人全員の戸籍謄本

(1通450円 × 3 + (切手代82円 × 2))
1,514円
不動産を取得する相続人の住民票

(1通300円 + (切手代82円 × 2))
464円

(地域により変動)
相続不動産に関する書類 対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)

(1通600円 + (切手代82円 × 2))
762円
不動産の固定資産評価証明書

(1通300円 + (切手代82円 × 2))
462円

(地域により変動)
登録免許税 固定資産税評価額3,000万円 × 4/1000(0.4%) 120,000円

上記の費用を合計しますと、今回の例では相続登記に「128,086円」が必要という計算となります。

上記は相続登記の費用の一例ですので、全ての方がこの金額となるという訳ではありません。

正確な金額は、実際の状況や取得書類などにより変わりますのでご注意ください。

相続登記に必要となる期間

相続登記には、様々な書類の取得や手続きが必要となりますので、完了までにある程度の時間が掛かってしまうのが一般的です。

特に、ご自身で相続登記を行う場合や、ややこしい相続関係となっている場合には、登記に時間が掛かってしまう可能性が高まります。

相続不動産の売却をお考えの際には、事前に相続登記に必要な期間を考慮しておくようにしたいものです。

いざ不動産を売却しようとした際に、相続登記に想像以上の期間が掛かってしまいますと、後の作業に大きな影響が出てしまいます。

相続登記前に不動産を売り出した場合には、相続登記のトラブルにより、最終的に契約が破棄となってしまう可能性もあります。

相続登記のトラブルによって売買契約が破棄された際には、買主の方に対して多額の損害賠償が必要となるケースも少なくありません。

このような最悪の事態を避けるためにも、事前に登記完了までに必要となる日数の目安を立てておくと安心です。

ただ、相続登記に決まった期間はなく、実際は登記の準備に掛かる時間などにより変動します。

  1. 相続登記申請前の準備にかかる日数
  2. 相続登記申請後から登記完了までの日数

上記のうち、相続登記申請後から登記完了までの日数は、書類に不備がなければ1週間~10日程度となるのが一般的です。

問題となるのは、相続登記申請前の準備に掛かる期間となります。

この項目では、このような状況別による相続登記に必要な期間についてご説明致します。

なお、下記の期間の目安はあくまで想定であり、実際は期間に誤差などがありますので、ご自身の状況と照らし合わせて判断してください。

遺言による相続登記期間の目安

遺言により不動産を相続する際には、被相続人が亡くなられたと記載のある戸籍謄本(除籍謄本)のみが必要であり、その他の戸籍は必要ありません。

その影響で、出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要がありません。

なお、遺言書がある状態での相続登記に必要な書類につきましては、同ページの「被相続人の遺言書がある場合」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

被相続人が亡くなられたと記載のある戸籍謄本は、現在の本籍地で取得ができます。

その他の書類に関しても、お住いの地域の役所や法務局などで取得できます。

これらの影響で、書類を役所や法務局の窓口で取得しますと、数日間(手際よくいけば1日)で全てを揃えられる可能性があります。
(書類の申請を郵送などにより行う場合には、大体1つにつき1週間~2週間程度掛かります)

ただ、問題となるのは、遺言書が公正証書遺言以外の書面であった場合です。

遺言書が自筆証書遺言の際には、裁判所による遺言書の検認が必要となります。

遺言書の検認が必要となった場合、結局は
「被相続人の出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本」と
「相続人全員の現在の戸籍謄本」
が必要となります。

遺言書の検認には、約1ヶ月程度の期間が掛かり、更に書類の取得に多くの時間が必要な可能性があります。

被相続人の戸籍謄本を揃えるためには、戸籍の記載内容を確認しつつ、適切な役所に取得申請を行わなくてはなりません。

被相続人の本籍地が全て一緒であれば、すぐに書類が揃う場合もありますが、本籍地が異なる際には、その都度異なる役所で戸籍の取得が必要です。

これらの作業を行う場合、大体1ヶ月、長ければ3か月程度の期間となってしまう場合もあります。

更に、その後に相続関係説明図や登記申請書をご自身で作成しますと、数日~数週間程度掛かります。

これらの期間を考えますと、相続登記の準備だけで2ヶ月程度、長い場合には数ヶ月間の期間が必要となる可能性があります。

なお、遺言書が公正証書遺言である場合には、被相続人の全ての戸籍や遺言書の検認手続きが不要ですので、1週間程度で登記申請の準備を終えられる場合があります。

この場合、2週間前後で相続登記が完了します。

遺産分割による相続登記期間の目安

遺産分割を行った上で相続登記を行う場合、相続登記までに長い期間が必要な場合があります。

なお、遺産分割により相続登記を行う際に必要な書類につきましては、同ページの「遺産分割を行う場合」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

遺産分割により不動産を相続する際には、被相続人の出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本が必要となります。

その影響で、被相続人の本籍地が各地を転々としている場合には、大体1ヶ月、長ければ3か月程度の取得期間が掛かる可能性があります。

本籍地が一生涯同じである場合には、数日程度で取得が終わる可能性もありますが、これはあまり多くないケースです。

書類の申請を郵送などにより行う場合には、大体1つにつき1週間~2週間程度は掛かりますので、取得戸籍が多い場合には注意が必要です。

その他の書類に関しても、役所や法務局の窓口で取得する場合には数日(早ければ1日)、郵送により取得する場合には1週間~2週間程度は掛かります。

遺産分割を行う際には、必要書類の収集と共に、遺産分割のための協議・調停・審判などが必要です。

これらの期間は、相続人同士の話し合いの内容や状況などにより大きく変動し、目安などは立てにくいのが一般的です。

遺産分割協議は、それぞれの方の話し合いですので、話し合いの進行状況により期間が異なります。

目安としては、6ヶ月以内ではありますが、実際にはこれよりも早い期間や遅い期間であるケースもあります。

遺産分割調停は、通常は半年~1年程度の期間を目安に解決が想定されます。

遺産分割審判は、場合によっては1年以上も裁判が続く場合もあり、調停の期間と合わせると、3年以上の期間が掛かってしまったという事例もあります。

このような現状から、遺産分割と必要書類の取得だけでも数ヶ月~数年程度の期間が必要となるケースもあります。

その後に遺産分割協議書、相続関係説明図、登記申請書をご自身で作成する際には、更に数日~数週間の作成期間が必要です。

これらから、遺産分割により相続登記の際には、数ヶ月~数年程度の期間が必要となってしまう可能性があります。

法定相続分による相続登記期間の目安

法定相続分により不動産を相続する際には、遺産分割の際と同様に、
「被相続人の出生から死亡までにさかのぼる全ての戸籍謄本」
が必要となります。

法定相続分による相続登記に必要な書類につきましては、同ページの「法定相続分に基づく場合」に記載しておりますので、お手数をお掛け致しますが、そちらをご覧ください。

各書類は役所や法務局の窓口で申請するか、郵送などにより取得できます。

各書類を役所や法務局の窓口で申請する場合には、通常は即日で書類の発行がされます。
(多くの書類を集めなくてはならない場合には、取得に数日程度掛かるケースが多いようです)

書類取得の際に運が良ければ、同じ役所で被相続人の戸籍謄本が全て揃いますが、本籍地が一生涯一緒であるのはそれ程多い事例ではありません。

多くの場合は、本籍地が現在と異なり、以前の本籍地へ戸籍の取得を申請する作業が必要です。

その際に、被相続人の戸籍謄本の本籍地が遠い場合や、忙しく役所や法務局に足を運べない場合には、郵送などにより書類を取得できます。

書類の申請を郵送などにより行う場合には、大体1つにつき1週間~2週間程度の期間が必要となります。

被相続人の戸籍の収集時には、数にもよりますが、多くの時間が掛かってしまう可能性も否めません。

戸籍を含めた必要書類の収集には、大体1ヶ月、長ければ3ヶ月程度の期間が必要な場合もあります。

なお、相続の際に相続人の誰かが相続放棄をした場合には、家庭裁判所に相続の放棄の申述も行わなくてはなりません。
(遺言書・遺産分割による相続の際も、相続放棄者がいらっしゃる場合には、相続の放棄の申述が必要です)

相続放棄の申述が受理され、相続放棄申述受理証明書を入手するまでには、約1ヶ月弱掛かります。

これらを考えますと、法定相続分により相続登記を申請する際には、その準備に1ヶ月~4ヶ月程度の期間が必要となる可能性があります。

まとめ

相続不動産を売却するためには、事前に相続登記が必要となります。

不動産の相続登記は不動産自体を売り出した後でも行えるため、ご自身の状況に応じて効果的なほうを選択するようにしてください。

財産を相続する際には、主に「遺言書」、「遺産分割協議」、「法定相続分」による相続方法があり、適切な方法を選択する必要があります。

遺言書がなく、遺産分割なども行わない場合には、相続順位と法定相続分に基づき相続を行います。

遺言書や遺産分割により相続を行う際には、遺言の内容や遺産分割の結果に基づき相続を行います。

遺言により相続登記をする際には、遺言書が公正証書遺言であるのか、自筆証書遺言であるのかの確認が必要です。

自筆証書遺言の場合には、事前に遺言書の検認手続きをする必要があります。

また、遺言書がなく、法定相続分による相続も行わない場合には、遺産分割を行わなくてはなりません。

遺産分割協議を行い、協議が不成立となった場合には、遺産分割調停・審判により遺産分割が行われます。

これらのいずれかの方法により、財産を相続する準備が整いましたら、相続登記に必要な書類の収集などを行っていきます。

書類を取得する際には、窓口や郵送など、ご自身が取得しやすい方法を選択するようにしてください。

必要書類の収集が終わりましたら、各相続人が実際に相続登記を行います。

相続登記を行う際には、登記をご自身で行う方法と、登記を司法書士の方に委任する方法の2通りがあります。

ご自身で相続登記を行う場合は、必要な費用を削減しやすくなりますが、多くの手間や時間が掛かってしまう可能性があります。

相続登記を司法書士の方に委任する場合は、委任に関する報酬などが掛かってしまいますが、登記自体をスムーズに完了しやすくなります。

相続登記を行う際には、様々な手続きや書類の取得が必要となりますので、ご自身の状況に応じて適切な登記方法を選択するようにしてください。

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